Good Schedule

朝のHRの時間、突然変更になった今日の時間割を見て、宍戸は跡部に話しかける。
「今日の時間割、すげぇよくねぇ?」
「そうか?水泳とか結構着替え面倒くせぇと思うけど。」
「えー、いいじゃねぇか。こんな暑い日はやっぱプールだろ。それに午後は、家庭科の調
理実習だけだし。」
宍戸がはしゃいでいる今日の時間割は、1時間目が歴史、2時間目が国語、3・4時間目
が体育(プール)で、5・6時間目が家庭科(調理実習)というものだ。プールや調理実
習は準備や片付けに時間がかかるので、他の曜日の教科と入れ替えになったのだ。
「1時間目も歴史だし、今日は一日いい日になりそうだぜ。」
「まあ、確かに面白さを求めたら、いつもよりはいいかもしれねぇな。」
「そうだ!水泳で勝負しねぇ?ここのプール、デカイからたぶん出来ると思うんだけど。」
「テメェが俺様に勝てると思ってんのか?」
「や、やってみなきゃ分からねぇじゃねーか!!」
「フッ、面白ぇ。そんなに言うだったら、勝負してやるよ。」
自信満々に笑いながら、跡部は宍戸の誘いに乗った。よくよく考えてみれば、プールは水
着で、調理実習はエプロン着用だ。いつもとは違う格好の宍戸が見れると跡部は顔を緩ま
せる。
「何、ニヤついてんだよ?」
「別にニヤついてなんかねぇぜ。ただテメェが俺様に負けるのを想像すると面白ぇなあと
思ってよ。」
本当の理由を言うと、宍戸の機嫌を損ねると思い、跡部は挑発をするようなことを言う。
当然、そんなことを言われたら宍戸もやる気にならないわけにはいかない。
「お前、本当ムカツクな。絶対、倒してやるから覚悟しろよ!!」
「ああ。楽しみにしてるぜ。」
楽しみにしてるのは勝負ではないけどな、と心の中で続けながら、跡部は笑う。しかし、
宍戸はそんなことに気づくはずもなく、闘志満々で自分の席へと戻っていった。

1時間目の歴史の時間、宍戸は大好きな教科ということでやる気満々で受けていたが、跡
部はといえば、中学で習う歴史の内容など基礎の基礎ばかりでつまらないと暇を持て余し
ていた。そんな暇を埋めるために、自分より前の席である宍戸の様子を観察する。じっと
宍戸を眺めていると、頭の中にとある情景が思い浮かぶ。

ゴシック式のキラキラした教会の中に、ステンドグラスから太陽の光が差し込む。赤や青、
金色の光の中心に、キリスト教の袈裟を纏った宍戸が立っている。広い大聖堂の中に二人
きり。ニコッと笑いながら、手を差し出す。
「跡部。」
名前を呼ばれ、ゆっくりと宍戸に近づく。その手を取ると、宍戸の方から甘いキスをして
くれる。まるで天使のキスを受けているようなその感覚に浸っていると、教会の鐘がなる。
このまま宍戸を攫っていってしまおうかと思ったその瞬間、ふと現実の世界に引き戻され
る。

「このように中世のヨーロッパの建築には様々な種類がある。跡部、ゴシック建築の特徴
を答えてみろ。」
宍戸を見ながら妄想をしていた跡部だったが、授業を聞いていないわけではない。カタン
と立ち上がり、先ほどまで頭に思い浮かんでいたゴシック式の建物の特徴をスラスラと答
えた。
「ゴシック建築は、高い尖塔・尖塔アーチ・大きな窓にステンドグラス・細い柱・崇高な
感じがその特徴で、ドイツのケルン大聖堂やパリのノートルダム大聖堂がその代表です。」
「さすが跡部だな。完璧な解答だ。」
これくらい答えられて当然だと思いながら、跡部が椅子に座ると、振り返って跡部を見て
いた宍戸と目が合う。その瞬間、先ほど頭で考えていた情景が蘇った。思わず顔がニヤけ
てしまうのを隠せず、口元が上がる。それを宍戸は、バカにされていると勘違い。くるっ
と跡部に背を向けると、自ら手を上げ、他の建築の特徴を答え始めた。
「先生、俺、他の建築の特徴も答えられます!」
「そうか。じゃあ、説明してみろ。」
「はい。まず、バリシカ式は長方形の身廊と側廊が特徴で、サンタ=マリア=マジョーレ
聖堂がその代表。ビザンツ式が正十字の平面形と円屋根・モザイク壁画が特徴で、セント
=ソフィア聖堂やサン=ヴィターレ聖堂がその代表。ロマネスク式がローマ風の半円形ア
ーチ・短く太い柱・重厚な感じが特徴で、ピサ大聖堂やクリュニー修道院がその代表です。」
宍戸がここまで答えられるとは思っていなかったので、歴史の教師も他のクラスメートも
感心する。
『おおー。』
「すごいじゃないか、宍戸。そこまで覚えられているのなら、次のテストは期待出来そう
だな。」
跡部への対抗心が歴史の教師の好感度につながった。しかし、そんなことは宍戸にとって
どうでもよかった。宍戸としては、とにかく跡部の鼻を明かしたかっただけなのだ。どう
だという気持ちを込め、跡部の方を振り返ると、跡部は丸めたメモ用紙を宍戸に向かって
投げた。それを宍戸はキャッチした。
「?」
席に着きながら、そのメモ用紙を開いてみる。そこには、今のことを褒めるような言葉が
並べられていた。
『やるじゃねーの。まさか、テメェがそこまで答えられるとは思ってなかったぜ。さすが
に少し驚いた』
それを読んで、宍戸はどうしようもなく嬉しくなる。教師に褒められるのと跡部に褒めら
れるのとでは、嬉しさの度合いに雲泥の差がある。緩む顔を抑えられず、宍戸はにこにこ
しながら、その後の授業を受けた。

3・4時間目の体育は、忍足や岳人のクラスと合同で行われることになっていた。今日は
快晴で多少日差しが強すぎる感はあるが、絶好のプール日和だ。
「やっぱ、こういう暑い日はプールに限るよな!」
「おう!こんな日に教室で授業とかマジやってられねぇもんな。」
「元気やなあ、二人とも。こんな日差しの強い日にプールなんて入ったら日焼けしてまう
やん。」
「別に日焼け止め塗っときゃあ、いい問題だろ。」
「面倒やん、そういうの。プールは部活とは違って露出してる部分多いから、それだけ広
い範囲に塗らなアカンやろ?」
「そんなこといちいち気にしてねぇでさ、ほら、早く入ろうぜ!!侑士!」
準備体操を終えると岳人は忍足の手を引っぱり、プールの中へ入っていった。程よい水温
のプールは、いい感じに体を冷やしてくれる。それが何ともいえない心地よさを醸し出し
ていた。
「跡部、さっきの約束、忘れてねぇよな?」
「ああ。水泳で勝負するって奴か。覚えてるぜ。」
「それじゃあ、さっそくやろうぜ!あっちのコース空いてるみてぇだからよ、そこに移動
しようぜ。」
誰も使っていないコースを使い、跡部と宍戸は水泳で勝負を始める。そんなに長い距離で
勝負しても疲れてしまうので、25メートル短距離勝負にすることにした。半分くらいま
では、同じくらいだったが、そこを越えたところで跡部が若干前に出た。それに気づいて
慌ててスピードを上げようとする宍戸だが、走るのとは違って思うようにスピードは上が
らない。結局、一メートルほどの差で跡部が先に壁に手をついた。
「ぷはっ!くっそー、負けたあ!!」
「テメェが俺様に勝とうなんて、10年早ぇーんだよ。」
「あー、疲れた。俺、少し上がって休むな。」
「ああ。俺はもう少し泳いでから休むぜ。」
「おう。」
いきなり全力で泳いで疲れてしまったと宍戸は跡部より一足早くプールサイドに上がった。
そのまま上がって座っていると暑いので、足だけを水につけるという形で跡部が泳ぐのを
眺める。
(おっ。)
宍戸の方に向かって泳いでいると、跡部はとあることに気がつく。水の中に入っても、水
面に顔を出しても宍戸の綺麗な脚が見えるのだ。水の中に見える脚を見ながら、跡部はあ
らぬことを考える。
(あー、すげぇ触りてぇ。でも、いきなり触ったら、絶対蹴られるだろうな。どうすりゃ
怪しまれずに触れられる?触るっつーより、もう舐めてぇ。水の中だったら、平気か?い
や、でもさすがにそれはヤバイか。うーん・・・)
水の中にもぐったまま、どうしようかと跡部は頭を働かす。あまりにもそんなことに夢中
になっているために、息継ぎをするのも忘れている。全く水の中から上がって来ない跡部
を宍戸は心配し始める。
「跡部、全然上がってこねぇ・・・。別に潜水とかしてるわけじゃねぇよな?大丈夫なの
かよ。」
不安になりつつ、プールの中を凝視していると、脚を下ろしている水面のすぐ横から跡部
が顔を出す。
「ぷはっ!!」
「うわっ!!」
「はーはー、死ぬかと思った・・・」
「な、何だよっ、いきなり!!ビックリするじゃねぇか!!」
息が続くギリギリまで、水中で宍戸の脚を眺めていた跡部は、無意識に宍戸の脚に近づい
ていた。そして、触れようとしたその瞬間、突然、息を止めていることを思い出し、苦し
くなって、顔を出したのだ。
「いや、テメェの脚見てたらよ、息するの忘れちまって。」
「はあ!?何、アホなことぬかしてんだよ?ったく、別に脚なんてプールじゃなくても見
れるだろうに。」
「ほう。テメェは、俺に脚を見られること自体は何とも思ってねぇんだな。」
それは好都合だと、跡部はニヤけながらそんなことを言う。
「別にテメェだけに見せてるわけじゃねぇし。こんな格好してたら、誰だって見るだろ。」
呆れたように宍戸は言う。しかし、跡部にとってはそれが気に入らなかったようだ。
「・・・じゃあ、テメェは俺以外の奴らに見せるために、その脚を晒してるってのか?」
「は?そんなこと言ってねぇだろ。」
「気に入らねぇ・・・」
そう言いながら、跡部は宍戸の脚をしっかり掴み、水の外に出ている太腿へ何の躊躇いも
なしにキスマークをつける。さすがにこの行動には宍戸も驚き、思わず思いきり顔を蹴飛
ばしてしまった。
「うっわあっ、何すんだよ!!ふざけんな!!」
バシャンっ!!
大きな水音を聞いて、周りにいた者は一斉に二人の方に顔を向ける。水の中に沈められた
跡部はなかなか上がってこない。
「何やってんだよ?アイツら。」
「また、跡部が何かちょっかい出したんちゃうん?」
「でも、跡部いないぜ。」
「ホンマやな。何があったんやろ?」
初めは怒り心頭だった宍戸も、いつまでも浮いてこない跡部が心配になる。
「お、おい、跡部・・・?」
蹴りどころが悪くて気を失ってしまったのかと、不安でドキドキしながら宍戸はプールの
中に入る。その瞬間、足がぐいっと引っ張られた。
「うわっ・・・」
当然、宍戸の体は水中の中に沈む。犯人はもちろん跡部。軽く仕返しをしてやろうと思い、
そんなことをしたのだ。いきなり水の中に沈められれば、鼻や口に水が入るなど多少のダ
メージを受けるのは避けられない。水面から顔を出すと、宍戸は激しく咳き込んだ。
「ゲホっ、ゲホ・・・跡部っ、何しやがんだ!!」
「アーン!?テメェが先に俺のこと沈めたんだろ!」
「それはテメェが、変なことしてくるからじゃねぇか。俺だってしたくて蹴ったんじゃね
ぇ!!」
プールでも喧嘩になる二人に、岳人と忍足は呆れつつも仲裁に入る。二人が妙な争いを繰
り広げている間に、集合がかかっていたのだ。
「喧嘩してるとこ悪いんだけど、集合かかってるぜ。」
「早よぅ行かんと、先生に怒られるで。」
どちらもイライラした表情で、プールから上がった。ところが、さっき跡部にいきなり水
に沈められたダメージが意外に大きく、宍戸はプールサイドに立ち上がった瞬間、バラン
スを崩し、背中からプールの中へ倒れそうになる。
「わっ・・・」
「危ねぇっ!!」
倒れそうになる宍戸の体を跡部は見事に抱きとめる。絶対にプールの中に落ちると思って
いた宍戸は、その意外な展開にドキンと胸が高鳴った。
「あ、跡部・・・?」
「ったく、何してんだよ?気をつけろよな。」
「お、おう。」
今の出来事で、宍戸の頭の中から跡部に対するイライラ感はさっぱり消えてしまった。跡
部も跡部で、思ってもみないところで宍戸の肌に触れることになり、ドキドキしている。
妙な空気が流れる中、二人はクラスメートが集合している場所に向かった。

昼休みが終わり、次の授業は家庭科室で調理実習だ。今回の調理実習の班は自由だったの
で、当然のことながら跡部と宍戸は同じ班だ。エプロンと三角巾を身に着け、さっそく準
備に取り掛かる。
「跡部、エプロンと三角巾、激似合わねぇ。」
普段は絶対見れないような跡部の格好を見て、宍戸はくすくす笑う。ちょっとムッとする
跡部だが、宍戸のエプロン姿が見れるということで、そこは怒りを抑えることにした。
「うるせー。でも、テメェは似合ってるよな。」
「そ、そうか?」
「ああ。新婚ほやほやの若奥様って感じだぜ。」
似合っていると言われ、素直に喜ぼうとした宍戸だが、そんなことを言われたら喜ぼうに
も喜べない。反応に困りながら、顔を赤くしていると、それを見て跡部が笑っていること
に気づいた。
「テメェ、マジムカツク!」
「何でだよ?似合ってるって言っただけだぜ。」
「っるせー、さっさと準備しろよ。」
素直でない宍戸を見て、可愛らしいなあと跡部はニヤける。そんなことを思っていると、
また、妙な妄想が頭の中に思い浮かぶ。

跡部が自分の家(どこかのマンション)に帰ってくると、台所からはトントンと料理をす
る音がし、よい匂いが漂ってくる。その匂いに誘われて、キッチンへ行くと、宍戸がエプ
ロン姿で晩御飯の準備をしている。そして、跡部が帰ってきたことに気づいて、くるっと
振り向いた。
「あっ、おかえり、景吾。もうちょっとで、夕飯出来るから待ってろよな。」
晩御飯のよい匂いと宍戸の愛らしい姿があまりにも魅力的で、跡部は思わず、後ろから宍
戸を抱き締める。驚く宍戸だが、照れ笑いを浮かべながら、振り返り跡部を見た。
「ったく、料理中にそういうことすると危ねぇだろ。本当、もう少しだからさ、ちょっと
待っててくれよな。」
素直に跡部が宍戸から離れると、宍戸はちゅっと跡部の頬にキスをして笑う。
「楽しみは夕飯の後だ。食後のデザート、楽しみにしてろよ?」
悪戯っ子のような顔で、宍戸はそんなことを言う。それを聞いて、跡部の胸は期待感で躍
る。食後のデザートは、イコール宍戸だ。早く夕飯、いや、宍戸が食べたいと跡部は、宍
戸が料理する姿を眺めた。

「跡部っ、危ねぇよ!!」
「へっ?」
ふと気がつくと、野菜を切っていた包丁が今にも自分の指を切ろうとしていた。思わず妄
想に浸ってしまい、自分が何をしているかすっかり忘れてしまっていたのだ。宍戸に声を
かけられなかったら、確実に自分の指を切っていただろう。
「何ぼーっとしてんだよ?刃物使ってるときは、ちゃんと集中しろよな!」
「ああ。悪ぃ。」
「俺の分担、もう終わっちまったからテメェの手伝ってやるよ。あと、これだけだよな?」
「ああ。」
宍戸が隣で料理しているのを、跡部はまたじっと眺める。その視線に気づき、宍戸は文句
を言った。
「手動かせ、跡部。」
「お前さ・・・」
「何だよ?」
「いい嫁になれるぜ。」
意味の分からない跡部の言葉に、宍戸の顔はかあっと赤くなる。他のグループのメンバー
はそんな二人のやりとりを見て、くすくす笑っている。
「だあー、もう!!テメェはさっきから何なんだよ!?野菜はこれで終わり!次の工程行
くぞ!」
恥ずかしさを誤魔化すように、宍戸は切った野菜を大きな鍋に入れた。今回の調理自習で
はホワイトシチューを作ることになっているのだ。野菜が煮えるまで、使わないものの片
付けをしようと、宍戸は包丁やまな板を洗い始める。
「宍戸って意外としっかりしてるよな。」
「手際がいいっていうか、跡部じゃないけど、本当いいお嫁さんになれるって感じだよな。」
「当然だろ?宍戸は俺の嫁になるんだからよ。」
ガシャンっ
クラスメートと跡部の会話を聞いていて、宍戸は思わず包丁を流しに落とす。冗談とは言
えども、さすがにそこまで言われたら聞いていられなくなる。
「テメェは・・・そんなに俺を怒らせてぇのか?」
「別に怒らせるつもりなんて、さらさらないぜ。何、そんなにカリカリしてんだよ?」
「ウルセー!!テメェは鍋の灰汁でも取ってろ!!」
そう怒鳴ると宍戸はおたまを跡部に投げつける。それをキャッチし、跡部は鍋に浮いてく
る灰汁を掬って、使わないボールに入れ始めた。そんなこんなで、何とか味付けまで終わ
り、味見の段階に入る。宍戸が中心となって、味見をするが、何か一味足りない。
「跡部、これちょっと飲んでみてくれねぇ?」
「ああ。」
「何か一味足りないんだけどよ、何が足りねぇと思う?」
「味は薄くはねぇけど、もう少しコクが欲しいな。これなんて入れてみたらどうだ?」
跡部が手にしたのは、主食になるサンドイッチ用に用意したチーズだ。確かに乳製品で、
ホワイトシチューに入れても味がおかしくなることはなく、コクは加えられる。どうなる
か分からないが、一応入れてみるかと、宍戸は隠し味程度の量を、ぐつぐつと煮立つシチ
ューの中に入れてみた。そして、ぐるっとかき回し、もう一度味見をしてみる。
「おっ、すげぇ!美味くなったぜ、跡部!!」
さっきよりも確実に美味しくなったと宍戸は嬉しげな声を上げる。自分の味見した小皿に
入れたシチューをそのまま跡部に渡し、味見をさせる。
「確かに美味くなってるな。いいんじゃねぇ?これで。」
「よーし、完成!あとは盛り付けるだけだな。」
さっきまでは、何となく喧嘩モードだった二人が、仲良さげに味見をし合っているのを見
て、二人と同じ班のメンバーは見ていて飽きないなあと感心する。やっぱり、この二人は
本当は仲がよいのだと確信しつつ、二人の作業を手伝った。

家庭科の授業も無事に終わり、HRもいつも通りに終わった。今日は部活がないので、帰
りにどこかに寄って帰るかと、跡部と宍戸は一緒に帰ることにする。
「あー、やっぱ、今日は全体的に楽しい授業だったぜ。」
「確かにな。テメェのいい格好もいっぱい見れたしよ。」
「はあ?どういう意味だよ、それ?」
「別に。言葉通りだぜ。」
「テメェが余計なことしなきゃ、もっと楽しかったのになあ。ま、いいけどな。」
言葉ではそんなことを言っているが、他の人がいる前で言われなければ、跡部の言ったこ
とやしたことは、宍戸にとっても嬉しいものばかりだったのだ。ちょっと不機嫌顔に嬉し
さを滲み出しつつ、宍戸は跡部の鞄を引っ張る。
「なあ、今日は部活ないけどよ、テニスしに行こうぜ!ストリートのコートでも跡部んち
のコートでもいいからよ。」
「悪くねぇな。いいぜ。ストリートのコートだと誰かに邪魔される可能性があるからよ、
うちに来い。」
「おう!久々に跡部とテニスだ。楽しみだぜ!」
「そうだな。」
宍戸は純粋に跡部とテニスが出来ることを楽しみにしているが、跡部はまだまだ宍戸のこ
とが見ていられると、これからすることに対して楽しみを抱く。本当に今日はよい一日だ
と心の中で思いながら、跡部は宍戸がはしゃぐのを見るのであった。

                                END.

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