infancy

「やーめーろー!!」
「アーン?大人しくしてろ。別に体に悪いもんじゃねぇよ。」
ただいま宍戸は、跡部が作った薬の実験台にされかけている。見かけはただの栄養ドリン
クか何かにしか見えないのだが、宍戸はそれを作る過程を見ていた。よく分からないもの
を混ぜてあるそれを飲めと言われても、素直に飲むはずがない。
「そういうのをいきなり人に飲ませるってのは、どう考えても間違ってんだろ!?」
「動物に飲ませたって意味ねぇんだよ。ほら、飲め。」
必死で抵抗する宍戸だが、思ったより跡部の力が強いので負けてしまいそうになる。しか
し、本気で飲みたくないので、死に物狂いで抵抗した。
「全く世話の焼ける奴だな。」
そんな宍戸を前に跡部は、大きな溜め息をつき、自分でその薬を飲む。それを見て、宍戸
は呆然。思わず抵抗するのをやめてしまった。隙が生まれたのを跡部は見逃さない。薬を
口に含んだものの、飲み込んではいなかった。口に薬を含んだまま、跡部は宍戸にキスを
する。そして、口の中のそれを宍戸の口の中へ移した。
「んぐっ・・・!?」
そのまま口を塞いでいれば、宍戸は薬を飲み込むしかない。しばらくは飲み込むまいと我
慢していたが、半分上を向かされ、口を塞がれていたら、そのうち息が苦しくなってくる。
意識に反して宍戸は口にある薬を飲み込んでしまった。
「ん・・・んっ・・・・」
宍戸が薬を飲んだのを確認すると、跡部はニヤリと笑って唇を離す。解放された宍戸は、
信じられないという表情で跡部を見る。どうなるのか分からない恐怖から、その目は次第
に潤んでくる。
「マジ・・・信じらんねぇ。最悪だな、テメェ。」
「別に気分悪くなったりはしてねぇだろ?大丈夫だって、俺を信用しろよ。」
「信用出来るか!!・・・っ・・・何かすげぇ頭がくらくらする。」
一発殴ってやろうかと思ったが、その瞬間、宍戸は激しい目眩を感じる。そして、そのま
ま跡部にもたれかかるように気を失ってしまった。
「おっと。ちょっと副作用が強すぎたか。」
宍戸を受け止めながら、跡部はそんなことを呟いた。しかし、その声に全く悪びれた様子
は感じられない。しばらく寝かしておいてやるかと、跡部は宍戸を自分のベッドに運んで
やった。

宍戸が目を覚ますまで、お気に入りの本を読んでいた跡部だったが、ふとベッドに目をや
ると、薬の効果が表れていることに気づく。
「おっ、ちゃんとなってるじゃねぇか。」
寝かされている宍戸の体は、明らかにさっきと違っていた。今ベッドで眠っている宍戸の
姿を跡部は十年近く前に見たことがあった。そう、宍戸の体は幼い頃のものに戻っている
のだ。年の頃で言えば、4歳くらいであろう。
「ん・・ん〜・・・」
実験は大成功だと思いながら、小さくなった宍戸を眺めていると、宍戸が目を覚ます。く
りくりとした大きな瞳を開けると、跡部を見て、不思議そうな顔で首を傾げる。
「にいちゃん、だぁれ?」
「俺は、跡部景吾だ。」
「けーご?」
「そう、景吾だ。お前は宍戸だろ。それは分かるよな?」
「あたりまえだろ!じぶんのなまえくらいわかるぜ!」
宍戸の様子を見たところ、どうやら体だけでなく中身も幼児化しているようだ。ここまで
あの薬は効き目があるのかと、跡部は自分で作りながらもその薬の効果に感心した。
「なあ、なんでおれ、こんなぶかぶかなふくきてんの?おれのふくは?」
「ああ、今持ってきてやる。ちょっと待ってろ。」
中身は幼児になっていても、跡部に対する警戒心はほとんどない。自分がどうしてここに
いるのかなど全く気にせず、宍戸は自分の思ったことを素直に跡部に伝える。これはまた
好都合だと、跡部はニヤニヤしながら宍戸の服を取りに行った。
「今回の薬は大成功だな。こんなに上手くいくとは思わなかったぜ。さてと、どこに連れ
ていってやるかな。」
自分好みの服を用意しながら、跡部はその服を持って宍戸のもとへと戻る。部屋に入ると
だぼだぼのTシャツを着た宍戸が、ベッドの端にちょこんと腰かけ、跡部のことを待って
いた。その姿に跡部は撃沈。思わず持ってきた服を床に落としてしまう。
「あっ、けーご、おかえり。それ、おれのふく?」
「あ、ああ。」
跡部を見つけると宍戸は、ちょこちょこと跡部の足元まで駆け寄ってくる。床に落ちた服
を拾い上げて、いそいそと着替える。着替えようとするのだが、ズボンを持って宍戸の動
きが止まった。
「どうした?」
「けーご、どっちがまえかわかんない〜。」
ウルウルと目を潤ませて、宍戸はそう訴える。その犯罪的な可愛さに跡部はもうどうにか
なりそうだった。
「あー、前はこっちだ。自分で穿けるか?」
「おう!どっちがまえかわかればよゆうだぜ!!」
根拠なしに自信満々なところはやはり宍戸だなあと、跡部は思う。上着はパーカータイプ
だったので、多少手伝ってやりながら、跡部は宍戸の着替えを済ませる。
「よし、できた!」
「ピッタリじゃねぇか。似合ってるぜ。」
跡部に褒められ、宍戸は嬉しそうに笑う。さっきからコロコロと変わる表情を、ただ見て
いるだけではもったいない。そんなことを考えた跡部は、机の引き出しにしまってあった
デジカメを取り出した。
「なぁに?それ?」
「カメラだ。宍戸のこと撮ってやろうと思ってな。」
「ホントかあ!?とって、とって!!」
嫌がると思ったが、中身まで幼児になっている宍戸はむしろ撮って欲しいらしい。カメラ
を前にして、テンションの上がった宍戸は跡部に元気いっぱいの子供らしい笑顔を見せる。
そんな笑顔の宍戸を跡部は何枚もデジカメに収めた。
「宍戸、うちに居ても面白くねぇだろ。どこか遊びに行くか?」
「うん!!いく!!」
「どこ行きたい?お前の好きなとこ、どこでも連れてってやるよ。」
「んっとな、んっとな、おれ、こーえんいきたい!!」
「公園か。いいぜ、連れてってやる。」
「やったー!!」
公園に行けば、いろいろなもので遊べると宍戸は大はしゃぎ。心の底から4歳児に戻って
いる。そんな宍戸を連れ出し、跡部はこれからどうしてやろうかと頭の中で考えた。

公園に到着すると、宍戸はまずブランコの方へと駆けてゆく。
「おい、そんなに慌てると・・・」
ズベッ!
勢いよく走っていった宍戸は、小石につまずき、思いきりこけた。言わんこっちゃないと
跡部は呆れながら、宍戸に近づく。
「大丈夫かよ、全く。」
ひょいっと体を起こしてやると、宍戸は今にも大泣きしそうに顔を歪ませている。
「ひっ・・ひっく・・・・」
「あー、痛かったな。大丈夫だから泣くんじゃねぇ。」
こんなところで大泣きされては、まるで自分が悪いみたいだと跡部は慌てて宍戸をあやす。
小さな体を抱きかかえるように頭を撫でてやると、宍戸は大泣きはしなかったものの、ぐ
しぐしと涙を流す。
「ふぇ・・ひっく・・・」
「どこ怪我した?見せてみろ。」
「ここー。」
膝小僧を指差しながら、宍戸は言う。確かに少し擦り剥けているが、それほど大きな怪我
ではない。軽く洗って、ハンカチでも巻いておいてやれば大丈夫だろうと、跡部は水道の
ある場所まで、宍戸をつれていった。
「少し痛いかもしれねぇが、我慢しろよ。」
水で膝を流しながら、跡部は宍戸に言う。宍戸はコクンと頷いて、泣くのをやめる。綺麗
に傷口を洗うと跡部は宍戸の膝に持ってきたハンカチを巻いてやった。
「よし、これでひとまずオッケーだろ。」
「あんがと、けーご。」
「次からは気をつけろよ。」
「うん!」
手当てをしてもらって、宍戸は笑顔になって頷く。確かに宍戸であるのは分かるが、本当
の4歳児と遊びに来たようだと跡部は少しばかり困惑。しかし、それはそれで、いつもと
は違う宍戸が見れていいかとも思う。
「もう平気だろ。初めはブランコに乗るんだったっけか?一緒に行ってやるぜ。」
「おう!」
跡部に手当てをしてもらったので、もう平気だと宍戸は再び駆け出した。今度は転ばない
ように気をつけながらブランコのところまで行く。跡部に背中を押してもらいながら、し
ばらくブランコを楽しむと、今度は砂場で遊びたいと跡部の手を引っぱった。
「けーご、すなばでやまつくろー!!」
「はあ?俺も作るのかよ?」
「ダメか・・・?」
嫌そうな顔をすると、またウルウルと目を潤ませる。そんな顔をされれば、しないわけに
はいかない。跡部は宍戸に連れられるまま、砂場に入る。
「けーごは、そっちのほうつくって。おれはコッチつくるから。」
「あ、ああ。」
何年ぶりに砂に触っただろうと考えながら、跡部は宍戸と共に砂山を作る。初めは仕方な
く嫌々ながらやっていた跡部だが、作っているうちに次第に夢中になってゆく。
「結構高くなったな。」
「おう!そうだ、どうせだったらトンネルもつくろうぜ!」
「そうだな。」
せっかくなのでトンネルも作ろうと、山の中心に穴を開けてゆく。二人で、そんなことを
していると、ふと上から聞き慣れた声が聞こえる。
「あれ?跡部。」
「何してるんですか?跡部さん。」
たまたま公園に散歩に来ていた滝と鳳が砂場の側を通りかかった。跡部が砂遊びをしてい
るという珍しい状況に出くわしたのだ。声をかけずにはいられなかった。
「けーごのしりあい?」
「ま、まあな。」
「跡部が砂遊びしてるなんて、何か面白い光景だね。その子誰?」
「跡部さんの知ってる子ですか?」
幼くなった宍戸を見て、滝と鳳はそんなことを問う。どう誤魔化そうかと跡部は一瞬答え
につまった。何も言えないでいると、滝がとあることに気づく。
「この子、何か小さい時の宍戸にそっくりだね。」
「そうなんですか?」
「うん。超似てる。」
「おれ、ししどっていうんだぞ。」
『えっ?』
「こ、こいつ、宍戸の従弟なんだ。父方の方の。だから、名字が同じなんだよ。」
宍戸の一言に跡部はかなり焦りながら、そんなことを言う。一応納得したような感じで、
二人は頷いた。
「ふーん。で、何で跡部がその宍戸の従弟と砂遊びしてんのさ?」
「宍戸に頼まれてな。まあ、宍戸に似て可愛いし、少しくらい付き合ってやってもいいか
なあなんて思ってな。」
「言われてみると、本当宍戸さんにそっくりですね。従弟ってこんな似るんだ。」
「あんまり宍戸似て可愛いからって、手出しちゃダメだよ〜。跡部だとやりかねないから
ね。」
「するわけねーだろ!つーか、用がないならさっさとどっか行けよ。」
これ以上話しているとボロが出そうだと、跡部は二人にさっさとこの場を去るように言う。
面白いものを見たなあと思いながら、滝と鳳は跡部に手を振り、その場を去る。
「分かったよ。じゃあね、跡部。」
「誘拐しちゃダメですよー。」
「だから、しねぇって言ってるだろ!!さっさと行け!!」
「けーご、おこっちゃやだぁ。」
「うっ。」
「あははは、じゃあねー。」
「頑張って下さいね。」
笑いながら去る二人を見て、跡部は大きな溜め息をつく。恥ずかしいところを見られてし
まったと、頭を抱えていると宍戸が不思議そうな顔で見てくる。
「どした?けーご。」
「いや、別に何でもねーよ。それより、さっさとトンネル完成させちまおうぜ。」
「うん!」
またしばらく砂遊びに夢中になっていると、ポケットの中の携帯が鳴る。着信音からする
と、どうやらメールのようだ。
「けーご、けーたいなってるぞ。」
「ああ。誰だ?」
携帯を開いてみると、そこには『滝萩之介』と書かれている。ボタンを押し、本文を読ん
でみると、そこには思ってもみないようなことが書かれていた。
『随分、面白そうな薬作ったみたいだね。宍戸の従弟っていうか、それ、宍戸でしょ?黙
っててあげるから、今度俺にもその薬貸してねー♪』
「滝の奴。分かっていやがった。ったく・・・」
「だれから?」
「あー、さっきの茶髪の方だ。大した用じゃねぇよ。よし、宍戸、山も完成したことだし、
写真撮ってそろそろ帰るか。お前、泥んこになっちまってるからな。うちに帰って綺麗に
してやるよ。」
「おう。」
完成した山をデジカメに収めると、そろそろ帰ろうと跡部は立ち上がる。宍戸の手を取っ
て歩き出そうとしたその時、小さな黒猫が宍戸の足元にやってきた。
「にゃあん。」
「わー、けいご、にゃんこだ!かわいいーvv」
足元の子猫を宍戸はひょいっと抱き上げる。小さな宍戸と小さな子猫。猫好きの跡部にと
っては、堪らない最強コンボだ。
「へぇー、可愛いな。宍戸、写真撮ってやる。そのままじっとしてろ。」
「うん!」
これはベストショットが撮れると跡部は、宍戸にカメラを向け、何度もシャッターを押し
た。人懐っこい猫で向かい合わせのように抱かれると、その黒猫はペロペロと宍戸の顔を
舐める。
「あはは、くすぐってぇよ。」
そんな瞬間も見逃さず、跡部はしっかりとその光景をカメラに収める。もう最高に可愛い
と、跡部はすっかりミニ宍戸に心を奪われていた。ある程度じゃれた後、飽きてしまった
のか、その黒猫は宍戸の腕からぴょんっと飛び降り、その場から去ってしまった。
「あーあ、いっちゃった。」
「猫は気ままだからな。そろそろ俺らも帰るか。」
「そうだな。けーご、てつないで。」
「ああ、いいぜ。」
しばらく手を繋いで歩いていると、突然、宍戸の歩みが止まる。
「どうした、宍戸?」
「けーご、おれ、もうつかれたあ。だっこー。」
遊びすぎて疲れてしまった宍戸は、腕を伸ばして跡部にそんなことをねだる。これは反則
だと、ドキドキする鼓動を抑えて、跡部は宍戸を抱き上げた。
「仕方ねぇなあ。」
そう言う顔はこれ以上なく緩んでいる。抱き上げてやると、宍戸はぎゅっと首に手を回し、
顔を肩に埋めてくる。子供体温で熱くなった体を抱え、跡部はどうしようもなく嬉しくな
った。そのうち、耳元で小さな寝息が聞こえてくる。
「寝ちまいやがった。マジで子供になっちまってるんだな。」
さっきから始終子供っぽい行動をされ、跡部は少々戸惑いつつも楽しくて仕方がない。我
ながらいい薬を作ったと、満足しながら、跡部は自分の家に向かって歩き出した。

眠ったままの宍戸を風呂に入れてやると、もとの宍戸が着ていたシャツを着せて、さっき
と同じように自分のベッドに寝かせてやった。まだ、しばらく起きそうにないので、跡部
は先程撮った写真の数々をパソコンを使って現像し始めた。
「さすが、俺様だな。どれもいい写真ばっかだぜ。」
プリンターで印刷される写真を見ながら、満足気に跡部はそう呟く。次々に印刷される写
真には、中学生の宍戸では、絶対見せないような表情が山ほど写っていた。ちらっとベッ
ドの方へ目を向けると、いまだに気持ちよさそうに宍戸は寝息を立てている。天使のよう
なその寝顔を見て、跡部は無性に宍戸に触れたくなった。
「あいつらは手出すなって、言ってたけど、こんな顔見せられたら何もせずにはいられね
ぇよなあ。」
滝と鳳の言った言葉を思い出しながらも、跡部はその欲望を抑えられない。しかし、こん
な小さな宍戸を相手に出来ることなど限られている。キスくらいは許されるだろうと思い、
跡部はマシュマロのようにぷにぷにとした宍戸の柔らかい唇に、そっと触れるだけのキス
をした。
「・・・柔らけぇ。」
その柔らかさに跡部は感動。これ以上宍戸を見ていると犯罪も犯しかねないので、最後に
寝顔を一枚カメラに収め、跡部は写真の現像に意識を傾けた。

「ん・・・うーん、あれ?」
跡部がしばらくパソコンに向かっていると、宍戸がふと目を覚ます。その姿は既に4歳児
のものではなかった。さっきのキスでどうやらもとに戻ったようだ。どうして、跡部のベ
ッドで寝ているのか思い出せないでいると、宍戸は今自分がしている格好に驚く。シャツ
は着ているものの、下は何もつけていないのだ。
「うわあっ!!跡部っ、俺に何しやがった!?」
宍戸の声を聞き、跡部は振り返る。いつの間にかもとに戻ってしまっている宍戸を残念に
思いながらも、少しホッとする。これ以上あの姿のままでいられたら、本当に理性を抑え
られなくなっていたかもしれない。さすがに幼児に手を出すのはヤバイだろうということ
は、跡部も十分承知していた。
「あー、起きたか。別に何もしてねぇから安心しろ。」
「嘘つけ!だったら、何で俺下何も穿いてねぇんだよ!?」
「いろいろあってな。よし、こんなもんだろ。」
「ん?何してんだよ、跡部?」
いろいろって何だと疑問に思いながらも、跡部が今何をしているのかが気になる。ベッド
から下り、宍戸は跡部に近づいていった。Tシャツが長いので、かろうじて大事な部分は
隠れてくれる。
「うわっ!何だよそれ!?」
机の上いっぱいの写真を見て、宍戸は目を疑う。どうして跡部が自分の小さい頃の写真を
こんなにも持っているのか。しかも、自分が見たことない写真ばかりだ。ありえないと宍
戸は驚いた様子で跡部の顔を見た。
「これ、さっき撮った写真だぜ。可愛かったぜ、小さい宍戸。」
「はあ!?どういうことだよ!?」
「テメェ、何にも覚えてねぇのか?」
宍戸の反応を見た限りでは、さっきあった出来事を覚えているとは到底思えない。それは
またからかい甲斐があると、跡部はニヤリと笑った。
「公園に行って、走って転んで泣くわ、砂山作りたいって砂場ではしゃぐわ、挙句の果て
に疲れたから抱っこーだぜ。もう可愛いったらありゃしないぜ。」
「う、嘘だ!」
「本当だって。ほら、ここにいくらでも証拠があるじゃねぇか。」
「うっ・・・本当だ。あっ!テメェさっきの薬、こうなる薬だったんだな!」
記憶がないのに、確かに写真はある。何故だと考えていると、眠る前に無理矢理飲まされ
た薬のことを思い出す。あの薬に体を小さくさせる効果があっても何もおかしくない。そ
れが目的だったのかと、宍戸は一発跡部にお見舞いしてやった。
「ってぇ・・・いきなり何すんだ!!」
「それはこっちのセリフだ!!ったく、何考えてんだよ、テメェは。」
「ちょっとした余興だ。・・・にしても、お前、いい格好してるじゃねぇか。それは、俺
を誘ってんのか?」
ふと自分のしている格好を思い出し、宍戸は恥ずかしくなる。しかも、跡部の目を見る限
りでは、かなり盛っているようだ。
「ち、違ぇーよ!!つーか、テメェがこんな格好にさせたんだろ!?」
「知るか。さっきの宍戸には、手出せなくてすげぇ我慢してたんだよな。今なら問題ねぇ
よな?」
「大ありだ!!」
「いいじゃねぇか。ほら、ベッド行くぜ。」
「だー、もう!!ふざけるなー!!」
どんなに騒いでも抵抗しても、跡部のペースに流される。どうしていつもこうなるのかと
悔しく思いながら、宍戸はベッドへと引きずられて行く。どんなに困ることをされても、
嫌がることをされても、相手は跡部だ。どこか自分の中で許容してしまうことがあるのを
感じつつ、宍戸はまた、ベッドに逆戻りするのであった。

                                END.

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