Anniversary

最後の定期試験も終わり、これから卒業するメンバーはありあまる時間を持て余している。
しかし、これからまだ授業が続き、部活もしっかりある二年生メンバーは忙しいことこの
上ない。殊に鳳はそれに加え、バイオリンの演奏会とピアノの演奏会が一週間後に迫って
いるために、その忙しさは尋常ではなかった。
「はあ、この後、ピアノの練習もしなくちゃいけないのか。さすがにキツイな・・・」
部活を終え、着替えをしながら、鳳はポツリと呟く。ここのところ、睡眠時間はいつもよ
り2、3時間短くなり、少しずつではあるが疲れが着実に蓄積されてきている。
〜〜〜♪ 〜〜〜〜♪
「おい、鳳。携帯、鳴ってるぞ。」
「えっ?・・・ああ、ゴメンありがと。」
あまりにぼーっとしていて、鞄の中で携帯が鳴っていることさえ気づけなかった。日吉に
指摘され、携帯電話を手に取ったが、電話に出ようと思った瞬間切れてしまった。
「あっ・・・」
「何ぼーっとしてんだ?俺、これから家で古武術の練習しなくちゃいけないから、先帰っ
てるぞ。戸締り、ちゃんとしておけよ。」
「う、うん。俺ももう帰るから・・・」
携帯の画面には、滝の名前が表示されていた。一瞬、かけ直そうとも思ったが、これから
の予定のことを考えると何だか面倒くさくなってしまう。
(ピアノのレッスンが終わってからでいいよね。ゴメンナサイ、滝さん。)
携帯電話をそのまま鞄のポケットにしまうと、鳳は戸締りをして部室を出た。部室を出て
家に帰った後、ピアノのレッスンを終えた鳳はすっかり疲れ切ってしまい、電話がかかっ
てきたことなど忘れ、すぐに眠りについてしまった。

それから数日、同じようなことが続き、連絡を取りたいと思っている滝はあまりの鳳の無
視っぷりにだんだんとイライラが募ってくる。しかし、イライラだけではない。自分のこ
とが嫌いになってしまったのかという不安も心の内に積み重なってゆく。
「・・・き・・・おい、滝っ!!」
「えっ?」
「どうしたんだよ?さっきから話しかけてんのにさあ。」
「あー、ゴメンゴメン。」
「最近様子が変やで。何かあったん?」
あまりにも鳳のことで頭がいっぱいだったために、岳人と忍足が目の前にいることに滝は
気づけなかった。さすがに様子がおかしいと岳人と忍足は心配するような言葉をかける。
「うーん、なんかさ、最近長太郎に無視されてる気がするんだよね。」
「えっ、でも、ここのところ部室とかにもあんまり行ってねぇじゃん。無視されてるって
どういうことだ?」
「電話とかメールとかするんだけど、出てくれないし、返事も返してくれない。連絡取れ
ないと会おうにも会えないし・・・」
「忙しいとかそういうことやないの?」
「そうかもしれないけど、ここまで何にも連絡がないのは初めてだし・・・」
滝がかなりヘコみ気味なのを見て、岳人と忍足は顔を見合わせる。どうしたらよいものか
と岳人がふと窓の外を見てみると、鳳と宍戸の姿を発見する。
「あっ・・・」
「どないしたん岳人。」
「噂をすればって奴?ほら、あそこに鳳いるぜ。」
「えっ!?どこどこ!?」
ガタッと椅子から立ち上がり、窓にかじりつく。ふと下の方を見てみると、鳳が宍戸と楽
しげに話しているのが目に入る。自分とはほとんど連絡を取ってくれないのに、宍戸とは
あんなに楽しそうに話していると、滝は嫉妬というよりも大きなショックを受けた。ふら
ふらと窓から離れ、机の上に突っ伏す。
「あー、逆効果。」
「そんなに落ち込むことないで滝。宍戸は元ダブルスのパートナーやし、たまたま会った
だけやろ。」
「でも・・・」
「気分変えてさ、今日の帰り、飯でも食いに行こうぜ!」
「うう・・・」
あまりにも落ち込みまくっている滝をどうすることも出来ず、岳人と忍足は困惑したよう
な表情を浮かべる。もう一度声をかけようとした瞬間、休み時間の終わりを告げるチャイ
ムが鳴った。
キーンコーンカーンコーン・・・
『あっ・・・』
「ゴメンね。岳人も忍足も。今日は寄り道しないで、家に帰るよ。」
「そ、そっか。じゃ、また今度行こうな!」
「せや。それに俺らに何か出来ることがあったら、何でも言ってな。」
「ありがとう、岳人、忍足。でも、俺、大丈夫だから。」
全然大丈夫じゃないだろうと心の中で突っ込みつつ、岳人と忍足は滝のいる教室を後にし
た。
「はあ・・・」
岳人と忍足がいなくなると、滝は再び大きな溜め息をついた。

その日の夜、滝はもう一度鳳に電話をかけてみる。
(今日も取ってくれないかなあ・・・)
そんな不安を胸に抱え、滝は呼び出し音を聞く。七回ほど呼び出し音が鳴り響いた後、呼
び出し音が途切れた。
『もしもし?』
「あっ・・・ちょ、長太郎?」
『滝さんですか?』
「う、うん。今、電話、大丈夫かな?」
『・・・ゴメンナサイ。明日、ピアノとバイオリンの演奏会があって、出来れば早く寝た
いんですけど。』
「・・・・・。」
『・・・・滝さん?』
「長太郎さ・・・俺のこと嫌いになった?」
『えっ・・・?』
「忙しいのは分かるけど、あんなに無視することなくない?」
『それは・・・』
「俺とは、全く連絡取ってくれないのに、宍戸とはあんなに楽しそうに話してさ。」
せっかく出てもらえたのに、これ以上電話はしていたくないというニュアンスの鳳の言葉
を聞き、滝は思わず最近溜まっていた不満を思わず口にしてしまった。もちろんそれは、
鳳も悪いと自覚していた。しかし、どうしようもないこともあるのだ。日々の疲れとスト
レスから、思わず鳳も感情的になってしまう。
『俺だって・・・いろいろ頑張ってるんです!いきなりそんなこと言われても、困ります
よっ!!』
「じゃあ、もう俺からは電話もしないし、メールもしない!長太郎なんて・・・」
その後に滝はもう言葉を続けることが出来なかった。どんなにイライラしていて、腹が立
っていてもその言葉は言ってはいけない。無意識のうちに滝は電話を切っていた。
ツーツー・・・
「切っちゃった・・・せっかく出てもらえたのに、俺、何言ってるんだろう・・・」
電話を手に持ったまま、滝は呆然とし、後悔の念に押しつぶされそうになっていた。イラ
イラが発散されるどころか、鳳と喧嘩をしてしまったことで、胸の内にあったもやもや感
はより一層強くなる。
「長太郎・・・」
涙声で鳳の名前を呟きながら、滝は枕に顔を埋め、ぎゅっとシーツを握り締めた。

それから数日後、鳳は忙しかった日々も一段落し、いつもの落ち着きを取り戻す。そうな
って、今、一番頭の中にあるのは、数日前喧嘩をしたまま、まだ一度もしゃべっていない
滝のことであった。
「滝さんと喧嘩しちゃったのって、どう考えても俺の所為だよな・・・どうしよう。」
そんなことを呟きながら、鳳は図書室の前の廊下を歩いていた。しっかりと、前を見てい
なかったので、前から来た人物と激突する。
ドンっ!
「わっ、ス、スイマセン!!」
「どこ見てやがる!!・・・って、鳳じゃねぇか。」
「跡部さん。」
「悪ぃ悪ぃ。カウンター、混んでてよー。あれ?長太郎。どうしたんだよ?」
跡部と宍戸も図書室に来ていたようで、二人そろって鳳に会う。二人の顔を見て、鳳はじ
わっと涙を目に滲ませた。
「えっ!?ちょ、長太郎!?跡部、何長太郎のこと泣かしてんだよ?」
「アーン?俺の所為じゃねぇよ!どうした、鳳?何があった?」
「ふっ・・ひっく・・・」
「こ、こんなとこじゃあれだからよ、ちょっと場所変えようぜ!」
いきなり鳳に泣かれ、二人は困惑しまくり。廊下で話しているのも何だということで、三
人は交友棟へと移動した。
「それで、何があったんだ?」
交友棟のテーブルで飲み物を飲みつつ、跡部と宍戸は鳳に問う。初めは言いにくそうに口
をつぐんでいた鳳だったが、ポツリポツリのこの前あったことを話し始めた。
「ついこの間まで、俺、すごく忙しくて・・・」
「あー、そういや演奏会があるとか何とか言ってたな。」
「それがどうした?」
「部活もあって、ピアノもバイオリンも練習しなくちゃいけなくて・・・あまりにも忙し
かったから、滝さんからの電話もメールもほとんど無視しちゃったんです。」
『あー・・・』
滝の様子がおかしいことには、跡部も宍戸も気づいていた。それは、このことが理由だっ
たのかと二人は納得してしまう。
「それで・・・演奏会の前日に滝さんから電話がかかってきたんですよ。」
「それで?」
「一応、出たんですけど、俺すごく疲れてたから早く寝たくて・・・そのことを伝えたら、
滝さんが・・・・」
そこまで話すと鳳の目に再び涙が溜まってくる。勘のいい跡部はそこまでの話で、二人が
喧嘩をしたことを理解した。
「あー、長太郎、泣くなよ!」
「つまり、テメェが忙しくてイライラしてるのと同時に、滝はテメェに会えなくてイライ
ラしていた。その気持ちがぶつかっちまって喧嘩したってわけだな。」
跡部の言葉に鳳はコクンと頷く。何だそんなことかと、宍戸は飽きれたような溜め息を漏
らす。
「何だよ、ただの喧嘩か。だったら、さっさと謝っちまえばいいじゃねぇか。」
「分かってますけど・・・」
「別にもう滝に対して怒ってはねぇんだろ?」
「悪いのは、俺ですから!!怒ってるなんてこと・・・」
「俺らが喧嘩するのはいつものことだが、テメェらに喧嘩は似合わねぇ。さっさと仲直り
しろよ?」
「跡部さん・・・」
「それによ、明日はちょうどお前の誕生日じゃねぇか。いいチャンスだぜ?自分が悪いと
思ってるなら、自分から謝るのが一番だ。滝だったら、許さないってこともねぇしな。」
「本当ですか?」
『ああ。』
二人にそう言われ、鳳は明日必ず滝に謝ろうと心に決める。やると決めた鳳は強い。先程
までの涙を拭って、ガタンと立ち上がった。
「俺、明日滝さんに謝ります!!」
「ああ、それがいいぜ。な、跡部。」
「そうだな。ま、その前に滝から連絡があるかもしれねぇが・・・」
「えっ?」
「いや、何でもねぇ。一度決めたんだからな。ちゃんとやり通せよ?」
「はい!!」
跡部と宍戸に後押しされ、鳳は笑顔になって自分の教室へと戻っていった。自分達が喧嘩
をしている時も周りから見るとああなのかと思うと、苦笑してしまう。
「俺達も教室帰るか。」
「そうだな。」
二人も立ち上がり、自分達の教室に向かって歩き始めた。

そして、2月14日。今日は鳳の誕生日だ。学校から帰ると鳳は早速滝に電話しようと、
携帯電話を手に取った。電話帳を開き、滝の名前のところで通話ボタンを押そうとしたそ
の瞬間・・・
〜〜〜♪ 〜〜〜〜♪

「わっ・・・!」
突然電話が鳴り出し、鳳は心臓が止まるのではないかと思うほど驚く。開かれている携帯
の画面には、『滝萩之介』の文字が表示されていた。慌てて鳳は電話を取る。
「も、もしもし?」
『よかった。出てくれたんだね。』
「滝さんですよね?」
『うん。今、長太郎の家の前にいるんだ。もしよかったら、出てきてもらってもいい?』
「は、はい!今行きます!!」
まさか滝の方から電話がかかってくるとは思っていなかったので、鳳は感激しながらパタ
パタと階段を下り、玄関を飛び出す。
ガチャっ
「あっ、長太郎。」
「滝さん・・・」
白い息を吐きながら、滝は鳳の方を振り返る。相当外で待っていたようで、頬は寒さから
か赤く染まっている。久しぶりに会った感動から鳳が何も言えないでいると、滝はぎゅっ
と鳳の首に抱きつき、心からの謝罪の言葉を述べた。
「この前は本当にゴメン長太郎。長太郎がすごく忙しいってこと分かってたのに、あんな
こと言っちゃって。でも、今日会えて本当に嬉しかった。もう話してもらえないと思って
たから。」
「滝さん・・・」
「それから、誕生日おめでとう。これ、大したものじゃないけど、俺からのプレゼント。」
すっと鳳から離れて、滝は用意してきた誕生日プレゼントを鳳に渡す。プレゼントを受け
取り、鳳は久しぶりに滝に会い話せた嬉しさと、喧嘩の原因は自分にあるにも関わらず、
滝に謝らせてしまった罪悪感からポロポロと涙を流し始める。
「えっ!?どうしたの!?長太郎!!」
「ゴメンナサイ・・・ゴメンナサイ滝さん・・・」
「長太郎は別に何にも悪くないよ。だから、そんなに泣かないで。」
「俺が悪いんですよ・・・忙しいのを理由にして、滝さんの気持ちも考えないで・・・・
あんなこと言っちゃって、滝さん傷つけて・・・」
「俺は本当に大丈夫だから。ね、だからそんな顔しないで。」
「滝さん・・・」
どこまでも優しい言葉をかけてくれる滝に、鳳は余計に胸が締めつけられる。流れる涙を
止められず、滝に抱きしめられながらしばらく声を殺して泣き続けた。
「少しは落ち着いた?」
「・・・はい。」
鳳が泣き止むと、とりあえず部屋に入ろうということで二人は鳳の部屋へと移動した。改
めてお互いの顔を見ると恥ずかしさから何だか笑えてきてしまう。
「ふふ、何かこんなふうに長太郎の顔見るのって超久しぶりかも。」
「そうですね。滝さん・・・」
「んっ?何?」
少し恥ずかしそうにうつむいた後、鳳はちゅっと滝の唇にキスをした。突然のことで驚い
た滝は、目をパチクリさせ、ありえないほど近距離にある鳳の顔をまじまじと見つめてし
まう。
「何か・・・言葉で謝っても俺の気が済まないので、行動で表してみたんですけど・・・」
「超ビックリした。・・・でも、嬉しい。」
「うわっ!!」
鳳からの謝罪の気持ちがこもったキスが嬉しくて、滝はベッドに鳳を押し倒す。そして、
ニコッと笑ってちゅっちゅとキス落とす。
「くすぐったいですよ、滝さん。」
「何か久しぶりに長太郎に触れたから、したくなってきちゃった。」
「えー、そんな・・・」
「今日は長太郎の誕生日だし、しちゃダメかな?」
少し迷う鳳だったが、自分も久しぶりに滝にあったので、触れて欲しい気持ちはもちろん
あった。しかし、すぐに頷くのは恥ずかしい。
「恥ずかしいですよぉ・・・」
「そんな可愛いされると余計にしたくなっちゃう。」
「ひゃっ・・・!」
したい気持ちを煽るかのように指を服の中に入れ、すっと横っ腹を滑らせるように撫でる。
「別に言葉でしたいとかは言わなくてもいいから、俺の言うことに頷いて。」
「・・・はい。」
「してもいい?」
滝の言葉に鳳は素直に頷く。そんな鳳を見て、滝は笑顔を見せて優しく鳳の服を脱がし始
めた。

胸の突起を咥えながら、滝は利き手で鳳の熱を擦る。ビリビリ痺れるような快感に鳳は、
甘い声を上げ、滝の服をぎゅっと掴む。
「あっ・・・ああ・・・」
「本当可愛い声。もっと鳴かせたくなっちゃう。」
「ひあっ・・やっ・・・滝さんっ!」
かりっと少し強くぷっくりと膨らむその実を噛み締めれば、ヒクンと鳳の身体は跳ね、よ
り大きな鳴き声を滝に聞かせる。その声が滝の耳には心地よく響き、じわじわと興奮の波
を大きくしてゆく。
「すごいね、もうトロトロ。そんなに気持ちイイ?」
「滝さんの手・・・あったかくて・・・・すごく気持ちイイです・・・」
「ふふ、そっか。じゃあ、もっとたくさん擦ってあげる♪」
先程よりももっと強く擦ってやれば、鳳の反応はそれに比例して大きくなる。
「あっ・・・ああっ・・・滝さ・・そんなにしたら・・・俺・・・」
「出していいよ。別に気持ちいいの我慢する必要なんてないんだし。」
「ひっ・・あ・・・もう・・・あっ・・・ああ――っ!!」
トクンと掌に熱いミルクを放たれ、滝は満足そうな笑みを浮かべる。そのミルクを口に運
ぶ仕草を見て、鳳の心臓はドクンと高鳴る。乱れる呼吸を整えつつ、鳳はゆっくり起き上
がった。
「どうしたの?長太郎?」
ペロペロと手の平を舐めながら、滝は問う。顔をよい感じに紅潮させながら、鳳は滝の顔
を見て、一言呟いた。
「滝さんの・・・してもいいですか?」
「えっ!?・・・あー、うん。」
鳳の言葉にドキドキさせられながらも、滝は頷く。滝の許しを得ると鳳は、パクッと滝の
熱を口に含んだ。何の躊躇もないその行動に滝は内心驚かされる。
(うっわー、長太郎ってば今日は積極的。これはヤバいな。)
「んくっ・・・んぅ・・・」
一生懸命になって自分のモノを咥えている鳳を見て、滝は目が離せなくなる。じっと鳳を
見ていると、無性にその銀色の髪に触れたくなり、滝は優しく頭を撫でた。
「?・・・滝さん?」
「続けて。あっ、それから腰はもっと高く上げて欲しいな。俺の手が届くくらい。」
「こうですか・・・?」
「そうそう。」
少し恥ずかしいなあと思いつつ、鳳は滝に言われた通り、腰を高く上げる。手の届く位置
に双丘が来ると、指をペロッと舐め、その中心に濡れた指を持っていった。
「あっ・・・!」
「ほら、長太郎。口離しちゃダメだよ?ちゃんと続けて。」
「は、はい・・・」
ぐちゅぐちゅと指で蕾の中を探りながら、滝はそんなことを言う。内側を掻き回される刺
激と口の中で滝の熱がだんだんと高まってゆく刺激があいまって、鳳の身体は次第に熱を
持ってゆく。
「んっ・・・んんっ・・・んくっ!」
「ハァ・・・長太郎。」
「は・・ふ・・・滝さんっ・・・俺・・も・・・」
「一回は長太郎の口の中でイキたいなあなんて思うんだけど、ダメ?」
「ダメじゃない・・です・・・でも、俺も・・・」
パクッと再び鳳は滝の熱を咥える。それと同時に、滝は鳳の内側で一番敏感な部分をぐり
っと刺激してやった。
「くっ・・・」
「んんっ・・・ふっ・・あっ・・・ああ――っ!!」
滝の放った蜜を口と顔に浴びながら、鳳も同時に達してしまう。足をがくがくと痙攣させ
ながら、鳳は腰を上げたままシーツの上に上半身を預ける。
「あー、顔汚しちゃったね。ゴメンね。」
「いえ・・・あ、あの・・・滝さん・・・」
「うん。分かってる。今度はこっちの口で楽しませてね。」
蕾が疼くのか、顔を真っ赤にしながら鳳は滝を見る。滝の蜜で汚れているその顔は、普段
の鳳からは想像出来ないほどの色気を放っている。そんな鳳を、仰向けに寝かせて、滝は
足をぐいっと広げた。
「長太郎のココ、俺のが早く欲しいってひくひくしてる。」
「やっ・・・見ないで下さ・・・」
「ねぇ、長太郎の口から聞きたいな。俺が欲しいって。」
「あっ・・・」
滝の熱はもう蕾に触れるか触れないかのところにあるのに、まだ中には入って来てくれな
い。焦らされているようなそんな状況に耐えられなくなり、鳳は羞恥心を必死で堪えなが
ら、滝を求めるような言葉を放った。
「滝さんが・・・欲しいです・・・だから、早く・・・挿れて下さ・・ぃ・・・」
「よく出来ました。」
鳳の言葉を聞くと滝は一気に鳳の中に入り込む。いきなり奥まで熱い楔が入ってくる感覚
に鳳は甘い悲鳴を上げる。
「ひゃあっ・・ああ――っ!!」
「熱いな、長太郎の中。でも、超気持ちイイ。」
「あっ・・ぅ・・・滝さぁん・・・」
「大丈夫?キツイ?」
「へーきです・・・」
涙を目尻に溜め、赤く染まった頬で、そんなことを言われれば、滝でなくともときめいて
しまう。鳳が大好きだと思っている滝ならなおさらだ。もっとそんな顔が見たいと、少し
激しめに滝は動き始める。
「んっ・・あっ・・・滝さんっ!?」
「あー、もう長太郎、超可愛いっ!そんな顔見せられたら止まらなくなっちゃうよ。」
「別に・・・滝さんがそうしたいなら・・・俺は構わないですよ・・・?」
「!?」
「だから・・・もっとたくさんしてください。」
乱れる呼吸の中でニッコリと笑いながら鳳はそんなことを言う。これには滝も撃沈だ。も
うどうにでもなれと、欲望の趣くままに滝は鳳を攻めた。
「あっ・・・あんっ・・・あっ・・あ・・・」
「ねぇ、もっと俺の名前呼んで?長太郎。」
「滝さんっ・・・あっ・・ひぅ・・・滝さ・・ぁん・・・」
「長太郎、俺のこと好き?」
「好きです・・・すごく・・・すごく・・・好きですっ!」
「ありがとう。俺も長太郎のこと大好きだよ。」
そう言って滝はニコッと笑うと、今までになく奥の奥まで楔を突き刺した。その瞬間、ビ
クンと鳳の身体は跳ねる。そして、堰を切ったかのように真っ白な蜜が熱の先から溢れ出
した。
「あっ・・・あ――っ・・・」
「長太郎っ・・・」
トクトクと流れる蜜が二人の身体に滴る。お互いのぬくもりに浸りながら、二人はゆっく
りと唇を重ね合わせた。

ある程度の事後処理を済ますと、どちらも心地よい疲労感からベッドに横になって身体を
休めていた。うつらうつらと滝が眠りに落ちかけていると、ぎゅっと鳳が服を掴んでくる
のを感じる。パチッと目を開け、鳳の方に身体を向けると、顔を肩のあたりに埋めてきた。
「どうしたの?」
「何か、久しぶりに滝さんとあーいうことしたから、もっともっとくっついていたいなあ
と思って。迷惑ですか?」
「そんなことあるわけないじゃない。もっと甘えてきていいよ。」
ポンポンと鳳の頭を撫でながら、優しい口調で滝は言う。それを聞いて、鳳は恥ずかしそ
うな、しかし、嬉しさに満ち溢れた笑顔を滝に見せる。
「ありがとうございます。」
「・・・長太郎って、本当俺のツボを得てるよね。」
「へっ?」
「いや、別に何でもない。」
「そうですか?あっ、そういえば!」
滝にくっつきながら何かを思い出したかのような声を鳳は上げる。
「ちょっと待っててください。」
すっとベッドから下りると、机の引き出しから何かを出し、ベッドの方へそれを持ってき
た。何だろうと不思議そうに滝が眺めていると、ふいに唇に何かがあたるのを感じる。
「?」
少し口を開けると鳳の唇が触れると同時に、口の中に何かが入っていった。そして、甘い
香りが口の中いっぱいに広がる。
「・・・・チョコレート??」
「はい。今日は俺の誕生日でもありますけど、バレンタインでもありますから。俺からの
バレンタインチョコです。」
「そっか。うわあ、何かすごい嬉しい。」
思ってもみない鳳からのプレゼントに滝は顔を緩ませる。嬉しそうな滝の顔を見て、鳳も
また笑顔になった。
「喜んでもらえてよかったです。俺、滝さんの笑ってる顔が一番好きなんで。」
「本当に?じゃあ、長太郎の前じゃたくさん笑わなくちゃね。まあ、意識しなくても長太
郎といれば、勝手に顔は緩んできちゃうけど。」
「俺も滝さんといると自然と笑顔になれます。滝さんと一緒にいるの、楽しいですから。」
「ありがとう。何か・・・とても数日前に喧嘩してたなんて思えないよね。」
「そうですね。でも、たまには喧嘩も悪くないんじゃないですか?」
「どうして?」
「こういうふうに笑って一緒にいられるのが、より嬉しくなるじゃないっスか。」
「あはは、確かにそうだね。でも、喧嘩は本当にたまにでいいよ。出来れば俺は長太郎と
は、仲良く話せてた方がいいし。」
「そりゃそうですよ。・・・跡部さんと宍戸さんは喧嘩しすぎですけどね。」
「あの二人は例外。あれを基準にしたら、大変だって。」
「あはは、そうですよね。」
もうすっかり仲直りをした二人は、笑いながらそんな話をする。喧嘩をしたことでほんの
一瞬離れてしまった二人だったが、その後はその離れた時間をなくすかのようにお互いの
ことを想い、一緒に同じ時を過ごす。誕生日の日が仲直り記念日になったその日の夜、鳳
の部屋はチョコレートの香りと楽しげな笑い声でいっぱいになるのであった。

                                END.

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