「ったく、跡部の奴、マジムカツクし!!」
今日もどうしようもないことで、跡部と喧嘩してしまった宍戸は、イライラしながら商店
街を歩いていた。特に目的もなしにずんずんと歩いていると、ふと見たことのある顔が目
に入る。
「あれ?あいつ・・・」
キョロキョロと辺りを見回しているその人物に、宍戸は迷わず声をかける。
「おい、お前。」
「えっ?俺っスか?」
「お前、六角の天根だろ?こんなとこで何してんだよ?」
天根は氷帝で100人斬りをしたことがあるので、一目見て宍戸はすぐに天根ということ
が分かった。何となしに尋ねた質問に、天根は気まずそうに答える。
「えっと・・・淳さんに会いにこっちに遊びに来てて、バネさんと買い物してたんだけど、
いつの間にかバネさんがいなくなってて・・・・」
「要するに、黒羽とはぐれて、迷子になっちまったってことか?」
「うっ・・・そうです。」
迷子とは認めたくなかったが、言われたらそうとしか答えられない。図体は大きいのに、
なかなかガキっぽいところがあるなあと、宍戸はくすくす笑った。
「何かガキみてぇだな。」
「だって、こっちにはそう滅多には来ないから・・・」
「だったら、俺も一緒に探してやるよ。あっ、その前にどっかで何か食べねぇ?俺、練習
帰りですげぇ腹減ってんだよな。」
「・・・別に構わないですけど。」
いきなり話しかけてきて、そんなことを言ってくる宍戸に、多少戸惑いながらも天根は、
その誘いに応じる。そんなにしっかりと食べたいというわけではなかったので、すぐ側に
あった喫茶店に、宍戸は天根を引き連れ入った。
時間が時間なので、そんなに混んでいるということもなく二人は窓際の席に座った。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「俺は、チーズサンドとオレンジジュースで。」
「えっと、俺は・・・イチゴチョコレートパフェで。」
「以上でよろしいですか?」
『はい。』
ウェイトレスが去っていくのを見た後、宍戸は視線を天根に戻し、再び口を開く。
「お前、チョコレートパフェってすげぇな。」
「本当はイチゴチョコレートパフェスーパーデラックスがよかったんですけど、この店に
はなかったから。」
「・・・なんか、ものすっごい大きそうなパフェだな。」
「うちの学校の近くの店にあるんスけど、すげぇ美味いんですよ。」
「へ、へぇ。」
自分は絶対食べられないだろうなあと思いながら、宍戸は苦笑いをする。注文した品はそ
れほど時間をおかず二人のテーブルに運ばれてくる。それぞれ自分の注文した品を口にし
ながら、二人は雑談を始めた。
「そういえばさぁ、ちょっと聞いてくれよ。今日な、跡部の奴が俺の食ってた弁当、横取
りしやがるんだぜ!自分はそれはそれは豪勢な弁当持ってきてるのによ。」
「へぇ、跡部さんって、氷帝の部長さんですよね?」
「そうそう。超腹立つよな!!」
「うーん、でも、俺もよくバネさんに弁当横取りされるからなあ。でも、バネさんは自分
のおかずくれるから俺はそんなに怒らないけど・・・っていうか、跡部さんがそんなこと
するなんて、ちょっと意外・・・」
「へっ?」
宍戸にとっては当たり前のことなのだが、天根からすれば信じられないことなのだ。あの
氷帝の部長が、人の弁当を横取りして楽しんでいるところなど想像出来ない。そんな子供
っぽいことはしないだろうというのが、天根の跡部のイメージなのだ。
「宍戸さんって、跡部さんと仲良いんスか?」
「えっ!?今の話で何でそうなんだよ?」
「だって、お弁当の取り合いなんて仲良くなきゃ出来ないじゃないっスか。少なくとも俺
は、仲良くない人とは出来ないですけどね。」
「うっ、まあ、確かにそう言われてみればそうだな。」
「それに何かそういうふうにじゃれあうのって楽しいじゃないですか。跡部さんとそうい
うこと出来るなんて、俺はすごいと思いますけど。」
そんなことを言われ、宍戸はポカンとしてしまう。今までそんなふうに考えたことなんて
なかった。そう考えてみると、今日跡部と喧嘩してしまったのは、本当にバカらしいこと
だったなあと思えてくる。
「あー、俺、激ダサだったかも・・・」
「何がですか?」
「今日、そのことで跡部と喧嘩しちまったんだよ。確かに弁当の取り合いなんて、仲良く
なきゃ出来ねぇもんなあ。それなのに俺、マジになっちまって・・・」
先程までイライラしてたのが嘘のように宍戸はそんな言葉を口にする。すると、天根はす
かさず口をはさんだ。
「だったら、謝ればいいじゃないっスか。」
「でもなあ・・・跡部、きっと怒ってるぜ。」
「そのままだったら、そりゃ怒ったままですよ。でも、謝ればそこで終わりじゃないっス
か。俺はバネさんと喧嘩したら、たぶんすぐ謝っちゃいますよ。バネさんと話せなくなる
なんてありえないし。」
「お前、黒羽のことそんなに好きなのか?」
「はい。超好きっスよ。」
あまりにもキッパリハッキリ言いきる天根に宍戸は笑ってしまう。いきなり笑われて、天
根は困惑したような顔を見せる。
「何でそんなに笑うんスか?」
「いやあ、黒羽の奴、本当愛されてるなあと思ってよ。そんだけ素直に自分の気持ちが言
えんだったら、さぞ黒羽も嬉しいだろうな。」
「でも、バネさんは恥ずかしいから人にそういうこと言うなって言いますよ。」
「まあ、人前で言われたら恥ずかしいだろうな。俺もそうだし。」
「えっ?」
話の流れで宍戸はさらっとそんなことを言う。それは興味深いと天根は興味津々というよ
うな目で宍戸の顔を見る。
「跡部がさぁ、部活中だろうが教室でだろうが平気でそういうこと言ってくんだよな。最
近はもう慣れちまったんだけどよ、初めは恥ずかしくてたまらなかったぜ。」
「・・・宍戸さんの好きな人って跡部さんなんですか?というか、ラブラブ?」
「へっ?・・・おわっ、俺何言ってんだ!!」
自分が跡部と付き合っているようなことを口にしてしまったことに気づき、宍戸の顔は火
がついたように赤くなる。そこまで動揺されるとは思っていなかったので、天根はビック
リしてしまう。
「い、今のは何だ・・・その・・・」
「バレバレっスよ。」
「あー、もう激恥ずかしい!!天根、このこと六角に帰ってから他の奴に話したりするな
よ!!」
「どうしようかなあ。じゃあ、このパフェ奢ってくれたら。」
「お前っ・・・分かった、パフェ奢るからマジで言うなよな。」
こんなことを六角の他のメンバーにバラされてはたまらないと、宍戸は泣く泣く天根の条
件を呑む。
(宍戸さんって、意外と面白い人かも・・・)
そんなことを思いながら、天根は窓の外を眺めた。
ちょうどその頃、天根がいないことに気づいた黒羽は、商店街のあちこちを歩き回り、天
根のことを探していた。
「おーい、ダビデどこだー。いるんなら出てこーい。」
そんな黒羽の姿がたまたま買い物に来ていた跡部の目にとまった。
「何やってんだ?アイツ。」
いつもなら素通りする跡部だが、昼間宍戸と喧嘩したこともあり、何か気を紛らわせる面
白いことが欲しいとゆっくりと近づいていって声をかける。
「大声出して何やってんだよ、黒羽。」
「おー、跡部か。いやな、ダビデと一緒に買い物してたんだけどよ、いつの間にかあいつ
いなくなっちまって。あれほど、俺から離れるなって言ったのに。」
「ダビデって、うちに乗り込んで100人斬りしたっていう奴のことか。」
「うーん、まあ、そうだな。でも、レギュラーは一人もいなかったんだろ?それじゃ、意
味ねぇと俺は思うんだけどな。」
「へぇ、言ってくれるじゃねぇか。そんなことは、まあいい。人探し、俺も手伝ってやろ
うか?」
「本当か?いやー、俺もこっちにはあんまり来ないからよ、土地勘がほとんどねぇんだよ
な。手伝ってくれるなら、本当助かるぜ。」
さわやかな笑顔で黒羽は言う。氷帝にはいないタイプのキャラなので、話してみたら面白
いだろうと跡部は考え、天根を探すのを手伝うなどと言い出したのだ。キョロキョロと辺
りを見回しながら、二人は歩き始める。とりあえず、はぐれた場所に戻った方がいいと跡
部は黒羽を連れて商店街の道を辿った。
天根を探しながら、二人はとりとめもない話をする。
「本当あいつはガキでさ、目離すとすぐこんなふうになるんだ。」
「でも、あいつ結構背デカイし、すげぇ目立つ髪形してるから、すぐ見つかるんじゃねぇ
の?」
「いや、それが迷子になったらその場で動かなきゃいいんだけど、ダビデの奴ときたら、
勝手にその辺を歩き回るもんだからなかなか見つかんねぇんだ。」
「へぇ、そりゃ大変だな。」
自分だったら探す気にもならないと思いながら、跡部は呆れたようにそんなことを言う。
しかし、困ったようにそんなことを話ながらも黒羽の顔は笑顔のままだ。
「でもよ、そこが放っておけないっつーか、可愛いところなんだよな。」
「放っておけないか・・・」
放っておけないところが可愛いというのは、跡部もよく分かる。ふと宍戸のことが頭をよ
ぎり、跡部は昼間の喧嘩のことを思い出してしまった。
「チッ・・・」
思わず舌打ちをしてしまい、それに気づいた黒羽はどうしたのかと率直に尋ねる。
「どうした?何か気に入らないことでもあったか?」
「ああ、悪ぃ。テメェは関係ねぇから安心しろ。」
「誰かと喧嘩でもしたか?」
図星を指され、跡部は驚いたような顔を見せる。
「何で分かったんだ?」
「あはは、マジで!?適当に言ったのに当たっちまった。」
「何だよ。適当か。」
「で、どんな理由で誰と喧嘩したんだ?」
興味津々とばかりに尋ねてくる黒羽に跡部は呆れたような顔を見せる。どうしてそんなこ
とまで話さなければならないのだと思いつつ、ここで何も言わないと会話が止まってしま
うので、跡部はしぶしぶそのことについて話し始めた。
「昼飯の時間に宍戸のおかずを冗談で取り上げたら、宍戸がキレて喧嘩になった。」
「ぶはっ・・あはははっ・・・そんな理由で喧嘩したのかよ!?」
まさか跡部がそんな理由で喧嘩するとは思わなかったので、黒羽は大笑い。信じられない
とばかりに笑いまくっている。
「テメェ、それは笑いすぎだろ・・・」
「だってよ、跡部がそんなガキっぽいことするなんて思ってなかったから。」
「俺だって・・・」
そこまで言って跡部は言葉を続けられなくなる。確かによくよく考えてみれば、そんなこ
とで喧嘩をするのは、ガキ以外の何ものでもない。それでもそういうことをしてしまう理
由、それを跡部は考えた。
(何で俺、あんなことしたんだ?普通だったら絶対ありえねぇのに・・・でも、少しから
かってやった時の宍戸の反応が、面白くて可愛いんだよな。・・・って、もしかして、こ
れが理由じゃねぇ?)
突然黙り込んでしまった跡部に、黒羽は心配になって声をかける。
「跡部?どうした?」
「あー、別に何でもねぇよ。その・・・弁当のおかず取り上げるとかガキっぽいことした
のは、たぶん相手が宍戸だからだ。宍戸以外だったら、そんなガキっぽいこと、俺様がす
るはずがねぇ。」
「へぇ、でも、何で宍戸だからって理由になるんだ?」
「アイツ、からかってやると可愛いんだよ。」
「ぶっ・・・」
黒羽は再び跡部の言葉に吹き出す。どうしてまた笑われなければいけないのかと、跡部は
何だか恥ずかしくなってくる。
「テメェ、俺に喧嘩売ってんのか?」
「いや、悪い悪い。跡部って、宍戸のこと大好きなんだな。」
「なっ、急に何言ってんだよ!?」
「だって、そうだろ。お前は他の学校の生徒、いや、氷帝内でだって傍から見たら、自分
達とは違う世界に住んでるって感じさせてるんだぜ?それなのに、宍戸を前にすると、そ
ういうガキっぽいというか、素の部分が出る。それは、宍戸がお前にとって特別な存在だ
からだろ?」
黒羽の言っていることが、一つも間違っていないので跡部は何も言い返せなくなる。ぶす
っとした表情で黙りこくるが、跡部の頭の中は宍戸のことでいっぱいになってきていた。
しばらくどちらも何もしゃべらず歩いていく。すると、たまたま宍戸と天根が軽食を取っ
ている喫茶店の前を通る。
『あっ!!』
四人全員が同じように声を上げる。もう宍戸も天根も注文した品は、とうに食べ終わって
いたので、慌てて会計を済ませ、外に出た。
「ダビデ、あれほど俺から離れるなっつったろ!!しかも、勝手に歩き回りやがって。」
「ゴメン、バネさん。」
「ったく、本当お前はしょうがねーなあ。」
呆れたように笑いながら、黒羽は天根の頭をげんこつでぐりぐりする。
「痛い、痛い、バネさんっ。」
「しかも、宍戸にまで迷惑かけやがって。本当、すまねぇな、宍戸。」
「いや、別に俺大したことしてねぇし・・・」
「でも、パフェ奢ってくれたじゃないっスか。」
「ま、まあ、それはな・・・」
奢ったんだから、さっきの話は言うなよなという目で宍戸は天根を見る。しかし、今の天
根の視界には黒羽しか入っていなかった。
「あと、跡部もありがとな。無事見つかったから、俺らは千葉へ帰るぜ。」
「あ、ああ、気をつけてな。」
「ほら、行くぞ、ダビデ。今度ははぐれないように、絶対手離すんじゃねぇぞ。」
「はーい。」
大柄の中学生二人が手を繋いで歩いている姿は、なかなか滑稽だが、会話の内容を聞いて
いれば、兄弟か保護者と子供のような感じなので、なんとなく納得出来てしまう。二人を
見送ると、その場に残された跡部と宍戸は大きな溜め息をついて、お互いに顔を見合わせ
た。しばらくは気まずさから何も言えないでいる二人だったが、跡部がそれほどハッキリ
とはしていない口調で、ボソボソと宍戸に話しかけた。
「あー、何つーか、その・・・昼間は悪かった。」
「へっ?」
「昼飯の時の話だ。」
「あ、ああ。俺ももう別に気にしてねぇし。あの程度のことで怒っちまった俺も悪ぃ。」
「じゃあ、もう今日の喧嘩はチャラだな。」
「そうだな。」
謝ってしまえば、もういつも通りに戻れる。すっきりしたというような顔で、二人は顔を
見合わせて笑った。
「喧嘩もチャラになったし、こんなところで偶然会ったんだ。宍戸、これからうちに来ね
ぇか?」
「まあ、別にこの後、予定もねぇしな。いいぜ、行ってやるよ。」
せっかくこんなところで会ったんだから、もう少し一緒にいたいと、跡部は宍戸を家へと
誘う。宍戸も同じようなことを考えていたので、迷わず跡部の誘いに頷いた。
自宅に到着すると跡部は宍戸を自室ではなく、いつも音楽鑑賞をする部屋に連れ込んだ。
宍戸自身滅多に入らない部屋なので、どうして今日に限ってこの部屋なのか、宍戸は不思
議でたまらなかった。
「何?この部屋。」
「音楽を聴くための部屋だ。防音設備も完璧だし、音楽機器も高性能なもんばっかだぜ。」
「へぇ、それはまあ見りゃ分かるんだけどよ、何でこの部屋なんだ?跡部の部屋には行か
ねぇの?」
「たまには場所を変えるってのもいいだろ。それに今日は音楽を聴きたい気分なんだよ。」
ふーんというような表情で宍戸は部屋の奥へと入る。この部屋にはレコードが並んだ棚と
音楽機器以外は一つの椅子と、一つのテーブルしかない。
「今日はこの曲にするか。」
お気に入りのレコードの中から一つを選び、跡部はレコードプレーヤーにそれをセットす
る。針をレコードに触れさせると、クラシカルな雰囲気に満ち溢れた音が流れ出した。そ
のまま、跡部は部屋に一つだけしかない椅子に深々と腰掛ける。そして、部屋の真ん中あ
たりで立ち尽くしている宍戸を手招いた。
「宍戸、鞄はその辺に置いてこっちに来い。」
「おう。」
跡部に招かれるまま、宍戸は椅子の近くへ歩いてゆく。手の届く場所まで近づくと、跡部
は宍戸の腕をぐいっと引っ張り、自分の膝の上へ宍戸を半強制的に座らせた。
「うわっ・・・何すんだよ!?」
「あいにくこの部屋には椅子が一つしかねぇんだ。せっかくの客人を座らせないのはよく
ねぇだろ?」
「だからって・・・」
しっかりと後ろから抱きしめられ、動くことはほとんどままならない。ただベタベタした
いだけだろうと思いつつ、宍戸はそれ以上の文句は言わなかった。
「おっ、急に大人しくなったな。」
「まあ、立たされっぱなしは嫌だからな。」
「言ってくれるじゃねぇか。それなら・・・」
宍戸が抵抗しないのをいいことに、跡部はすっと手を動かし、ワイシャツの上から宍戸の
胸の突起を探る。薄いワイシャツ越しにその突起はすぐに見つかった。
「うわっ、テメェ、どこ触ってやがる!!」
「どこって、触られて分からねぇか?」
きゅっとその突起を抓み、跡部はニヤニヤしながら尋ねる。敏感な場所をいきなり抓まれ、
宍戸は思わず声を上げてしまった。
「あっ・・・ぅ・・・」
「やらしい声上げて、こんな程度で感じてんのか?」
「う、ウルセーっ!!つーか、んなとこ触んなっ!!」
「アーン?ワイシャツ越しでも分かるくらい立たせておいて何言ってやがる。」
宍戸の言葉など全く聞く耳持たずで、跡部は指で簡単に抓めるほど立ち上がったその突起
をくりくりと弄る。こんなことをされ、抵抗したいのは山々だが、あまりの気持ちよさに
宍戸は跡部の手を振り払うことが出来ない。
「んっ・・・はっ・・はぁ・・・」
「何だよ?威勢がいいのは口だけか?嫌がるようなこと言ってる割には、全然抵抗してね
ぇじゃねぇか。」
「ち、力が抜けて、そんな余裕ねぇんだよっ!!」
「そんなこと言って、本当は気持ちイイからやめて欲しくねぇんだろ?」
そう言いながら、跡部は宍戸の突起を抓み、力任せに捻ってやる。そんなことをすれば、
痛いに違いないはずなのだが、宍戸にとっては電気が流されるような快感に変わってしま
う。
「はぁんっ!!」
ビクビクと体を震わせ、宍戸は爪が立つほど跡部の腕を強く掴む。
(口は素直じゃねぇくせに、身体は驚くほど正直なんだよな。ま、そこがいいんだけど。)
そんなことを考えつつ、跡部は宍戸の頬にちゅっちゅと何度もキスをしてやる。胸の突起
を弄られている快感からか、宍戸の目は今にも泣いてしまいそうなほど、ひどく潤んでい
る。
「宍戸、脚開いてココに乗せろ。」
ソファの肘掛けの部分を指で示し、跡部はそんなことを言う。あまりに楽しそうにしてい
る跡部の顔をキッと睨みながら、宍戸は片足だけ開き肘掛けの部分に脚を乗せた。
「今日は随分素直じゃねぇか。」
宍戸の素直さにニヤけながら、跡部はほんのり膨らんでいる宍戸のズボンの中心に手を置
く。そして、くにくにとそれを刺激するかのようにそこをマッサージし始めた。
「ふあっ・・・!!」
「フッ、分かりやすい反応だな。ココ、マッサージされんの気持ちイイだろ?」
「んんっ・・・うっ・・・ぅ・・・」
ふるふると頭を横に振るが、その顔は真っ赤に染まり、口からは堪えきれない吐息が漏れ
る。本気で嫌がってはいないということは一目瞭然だ。しばらくやんわりとマッサージを
した後、跡部は膨らみの中心を今度をぐりぐりと力を込め、指の腹で擦りまくる。そんな
刺激に宍戸は喉を仰け反らせ、高い声を上げる。
「あっ・・・あはっ・・・!」
「きっと中はもう濡れまくってんだろうなあ?」
「いやっ・・・このまま、出したくな・・ぃ・・・」
「じゃあ、どうして欲しいかちゃんと言えよ。そしたら、その通りにしてやるぜ。」
頭では跡部の言うことに従いたくないと思っていても、口は勝手に言葉を紡いでしまう。
荒くなる呼吸の中、宍戸は唇を震わせ、ねだるような言葉を放った。
「ちゃ、ちゃんと直接触って・・・ハァ・・跡部の手ん中に・・・だ、出させて・・・」
「フッ、いいぜ。お望み通り、ちゃんと触ってやるよ。」
鮮やかな手さばきでベルトを外し、ズボンも下着も取り去ってしまうと、跡部はそれを床
に投げ、露わになった宍戸のそれに手を触れる。数回擦ってやるだけで、宍戸はあっとい
う間に達してしまった。
「あっ・・・ああぁぁ――っ!!」
跡部の手の中に思う存分熱を放つと、宍戸はくたっと跡部の体に寄りかかる。
「ハァ・・・ハァ・・・」
「俺の手、テメェの出したのでヌルヌルだぜ?」
「そ、そんなこと言わなくていいっ!!」
「もう片方の脚も、こっちの肘掛けに乗せろよ。そうした方がこの後、進めやすいからな。」
どれだけ羞恥心煽れば気が済むんだと思いつつ、宍戸はもう片方の脚も肘掛けに乗せる。
跡部からはそんなに見えないものの、全てをさらけ出すようなその格好に、宍戸は激しい
羞恥心を感じる。
「テメェので濡れてるから、ここも弄りやすいぜ?」
さらけ出された後ろの蕾に、跡部は手についた宍戸の蜜を塗りつける。そして、つぷっと
一本の指をその内側に埋め込んだ。
「うあっ・・・」
「なかなかいい感じじゃねぇか。吸い付いてくるみたいに締め付けてくるし、だからって
キツすぎるわけでもねぇ。少し慣らせばすぐにでもいけそうだな。」
(あー、マジ恥ずかしいっ!でも、跡部の指、気持ちよくて勝手にココが・・・)
跡部の指の動きに合わせて、宍戸の蕾はきゅうきゅうと収縮する。それが心地よくて、宍
戸は自ら腰を揺らしていた。
「三本目っと。」
宍戸の蕾がほぐれてくるのを確認しつつ、跡部はだんだんと指の本数を増やしていく。そ
れほど、長い時間をかけず、宍戸は跡部の指を軽々三本呑み込んでしまっていた。
「ひぅっ・・・あぁ・・・!!」
「腰も揺れてきてるし、そろそろ俺様のが欲しいんじゃねぇか?」
「う・・・んんっ・・・」
コクコクと首を縦に振り、宍戸はふるふると身体を震わせる。ズプッと指が内側から抜け
る感覚に思わず腰を浮かせ、濡れた声を漏らす。
「ひゃあんっ!!」
「随分感じやすくなってるみてぇだな。俺のを挿れるのが楽しみだぜ。」
宍戸の反応を楽しみにしつつ、跡部は既に十分すぎるほど固くなっているそれを外気にさ
らす。それで貫かれることを期待しているのか、宍戸の双丘は小さく震えている。
「入れてもいいか?」
「う・・うんっ・・・」
ドキドキと胸を高鳴らせながら、宍戸はその時を待つ。跡部は宍戸の腰に手を回し、ゆっ
くりとその腰を下ろさせた。十分に慣らされたそこは何の抵抗もなく、跡部の楔を受け入
れてゆく。
ズッ・・・ズプ・・ズズッ・・・
「あっ・・・あはぁ――っ!!」
「ああ、すげぇ入ってく・・・そんなに俺様のを入れられたかったのかよ?」
「あうっ・・・深っ・・・すげぇ奥まで入っちまう・・・」
どちらもたまらず甘い吐息を吐き、繋がってゆく感覚に夢中になる。しばらく奥の奥で繋
がっているという感覚を満喫すると、跡部はゆっくりと宍戸の腰を動かし始めた。
「ひあっ・・あっ・・・あんっ・・・」
「やっぱ、動かすとまた違った気持ちよさがあるな。」
「なぁ・・・自分でもちょっと動いて・・・いい?」
「ああ、もちろんいいぜ。その方が俺も楽だしな。」
体勢的に跡部に動かしてもらうよりは、自分で動いた方がよりよく動けると宍戸は自ら腰
を動かす。跡部の楔が一番いい場所に当たるように、宍戸は夢中になって腰を動かした。
「あ・・はぁんっ・・・あっ・・・あっ・・・」
「すげぇイイ・・・テメェん中、マジで最高だぜ。」
「跡部・・・前も触って・・・」
「ああ。いいぜ。」
宍戸の可愛らしいおねだりを聞き、跡部は先走りの蜜でトロトロになっている宍戸の茎を
両手で擦る。その快感に便乗するかのように、宍戸はさらに激しく腰を動かし始める。
「ひぃんっ・・・あんっ・・・あっ・・ああぁっ・・・!」
「ハァ・・・宍戸っ・・・くっ・・・」
「はぁ・・・気持ちイイっ・・・跡部っ・・・止まんないっ・・・」
「いいぜ。もっと乱れちまえよ。」
「ひっ・・・あぁんっ・・・イイっ・・・ああっ・・・!!」
箍が外れたかのように宍戸は快楽に身を任せ、跡部の楔で自分の中を掻き回す。宍戸が激
しく動けば動くほど、跡部の快感も高まりだんだんと余裕がなくなってゆく。
「もうダメっ・・・イクっ・・・イッちゃう・・・!!」
「ああ、俺も・・・ハァ・・・限界だ・・・」
どちらも激しく息を乱し、迎えつつある絶頂感に身を震わせる。宍戸が一際激しく前立腺
のあたりを穿つと、どちらもその刺激に耐えられず、ありったけの熱い蜜を思いきり放つ。
「あっ・・・ああぁぁ―――っ!!」
「うっ・・ああっ!!」
跡部の熱で内側が満たされてゆく感覚に、宍戸は恍惚となり、二重の絶頂を迎える。身体
が溶けてしまいそうな快感の余韻浸りながら、二人はしばらくそのまま繋がっていた。
汚れてしまった床を掃除しながら、宍戸はぽわわんとした何とも言えない心地よさに浸る。
あまりにぽけーっとしている宍戸の様子に、跡部はからかい半分に言葉をかける。
「そんなによかったのかよ?」
「へっ?何が?」
「テメェの顔、すげぇとろけてるぜ。」
「いや、だって何か今、すっげぇイイ気分でさあ。疲れてはいるんだけど、体はすっきり
みたいな。」
「本当、テメェは正直だな。」
あまりにも素直な宍戸の言葉に、跡部は思わず笑ってしまう。気分がいいのは自分も同じ
だ。ああいう行為をした後で、同じような気分を共有出来るのが嬉しいと、跡部の顔は自
然と緩んでいた。
「あっ。」
と、突然何かを思い出したかのように宍戸が声を上げる。
「どうした?」
「いや、別に大したことじゃねぇんだけど・・・」
「?」
何故か照れたような態度を見せる宍戸に跡部は首を傾げる。しばらくもじもじとしていた
宍戸だったが、突然意を決したように跡部に近づき、ちゅっと軽く跡部の唇にキスをした。
「!」
「きょ、今日はまだ一度もキスしてなかっただろ?何かさっきみたいなことだけして、キ
スだけしないとかだと、ちょっと気分的に許せなくて・・・・」
恥ずかしそうにそう呟く宍戸に跡部は撃沈。どんだけ可愛いところを見せたら気が済むん
だと言わんばかりに、思いきり宍戸の体を抱きしめた。
「お前、マジ可愛すぎ・・・」
「はっ?何で??」
「今のは反則だろ。そんなにキスして欲しいなら、俺が存分にしてやる。」
宍戸からキスしてきてくれたということが嬉しくて、浮かれながら跡部は宍戸にキスをし
まくる。何なんだよ〜と思いつつ、宍戸も満更でもない。明るい曲調のメロディーが流れ
る部屋で、二人は飽きるまでイチャイチャしまくっていた。
END.