1月もそろそろ終わりに差しかかった頃、滝と鳳は買い物をするために商店街を歩いてい
た。買いたいものを全て買ってそろそろ帰ろうかというその時、二人は見たことのある人
物を見つける。
「あれ?あれって、忍足さんですよね?」
「えっ?どこどこ?」
「ほら、あそこに。」
「あっ、本当だ。しかも、女の人と一緒で超楽しそう。」
「誰なんでしょうね?あの人。」
「うーん、分かんない。うちの学校の人じゃ・・・というか、中学生には見えないねぇ。」
自分達よりも年上の女の人と歩いている忍足を見つけ、二人は首を傾げる。忍足とその女
の人も買い物帰りのようで、いくつかの袋を手に提げ、楽しそうに話している。
「あっ、バスに乗った。」
「すごい気になるもの見ちゃったって感じですね。」
「岳人にこのこと言ったらどうなるかな?」
「えー、言わない方がいいんじゃないっスか?」
「でも、これで忍足が浮気してるとかなったら、言わないでいるってのは無理っしょ。」
「それはないと思いますけど・・・」
まさか浮気ではないだろうと思いつつも、万が一ということもある。このことを岳人に知
らせるか知らせないか迷っていると、突然滝の携帯が鳴り出す。
「うわっと・・・あっ、岳人からメールだ。」
「噂をすればですね。」
「何か自主練してたらしくて、今帰りみたいだよ。これから何か食いに行かないかだって。」
「ちょうどいいじゃないですか。一応、会ってみたらどうです?」
「そうだね。一人で会うのは微妙だからさ、長太郎も一緒に来てくれる?」
「今日は特に予定もないですし、いいですよ。どんな反応するか気になりますしね。」
「じゃあ、そういうふうに返信しとくね。」
さっき見たことを伝えようと、滝は岳人の誘いに応じる。かちゃかちゃとメールを打つと、
滝は送信ボタンを押した。
「マジかよ?侑士の奴そんなこと・・・」
滝と鳳の話を聞いて、岳人は驚きつつも少し心当たりがあるというような、微妙な表情を
見せる。
「何か心当りでもあるの?」
「うーん、最近侑士、いっつも用があるって言って、先に帰ることが多いんだよ。電話と
かしてもなかなか出てくれねーし。でも、だからって、俺に対する態度が変わったってわ
けじゃねぇんだよな。」
「微妙ですね。」
「でも、お前ら侑士が女の人と歩いてんの見たんだろ?何なんだよ・・・侑士の奴っ。」
少しイライラしたような口調で岳人は呟く。それを聞いて、滝と鳳は顔を見合わせる。ま
だ、あの女の人が忍足とどんな関係なのかが分からないので、何とも言えないが、ハッキ
リさせておく必要はありそうだ。
「だったらさ、今度忍足が先に帰るとか言った時、つけてみればいいんじゃない?」
「えっ?」
「自分の目でちゃんと確認した方がいいでしょ?もしかしたら勘違いってこともあるかも
しれないし。」
「そうですね。俺もそれがいいと思います。」
「でも・・・本当に侑士が浮気とかしてたらどうしよう・・・」
不安気な表情を浮かべる岳人の頭をポンと叩き、滝は優しく微笑む。
「大丈夫だよ。そんなに心配しなくても。」
「う、うん・・・」
「その時は俺達もついて行きますし。」
「サンキューな二人とも。」
二人の言葉に少し笑顔を見せる岳人だが、その表情は実に複雑だ。心の中で交錯する不安
と心配。どんなに取り繕うと思ってもやはり外に滲み出てしまう。これ以上、この二人に
迷惑はかけたくないと、岳人は残っていた飲み物を飲み干すと、ガタンと立ち上がった。
「俺、もう帰るな。俺から誘っておいたのに悪ぃ。じゃ、また、明日!」
「うん、また明日。」
「気をつけて帰って下さいね。」
パタパタと店から出て行く岳人を見送ると、滝と鳳は軽く溜め息をつく。
「結構、深刻だったね。」
「そうですね。まさか思い当たりがあるなんて思ってなかったですし。」
「たぶん平気だとは思うけど、ちょっと心配だな。」
「とりあえず、尾行してちゃんと確かめなきゃですね。」
「うん。岳人、そこまで落ち込んでないといいんだけど・・・」
余計なことを言ったとは思っていないが、やはり心配になってしまう。後でまたメールで
も送ってあげようと思いつつ、滝はカップの中に残っていた紅茶を一口口に含んだ。
「あっ、滝さん、俺、そろそろ帰らないと。」
「えっ?ああ、もうこんな時間か。じゃあ、俺達も帰ろうか。」
「はい。」
思った以上に時間が経っていることに気づき、二人は店を出る。忍足が何を考えているの
か掴めない。岳人が心配。いろいろなことを考えながら二人は家路を辿った。
それから数日後、岳人は忍足に自主練に付き合ってくれと頼んでみる。
「侑士、これからちょっと練習したいんだけど付き合ってくれねぇ?」
「悪ぃなあ。今日はちょっと用事があって、早めに帰らなアカンねん。」
「そっか。じゃあ、他の奴に頼んでみる。」
「ホンマにゴメンな。また、今度たくさん付き合ってやるから。」
「おう!じゃあ、気をつけて帰れよ。」
「おおきに。じゃあな。」
いつも通りを装い、岳人は忍足を送り出す。忍足が昇降口を出るのを確認すると、側で控
えていた滝と鳳が顔を出す。
「岳人の言う通りだったね。」
「早く追いかけないと見失っちゃいますよ?」
「おう。分かってる。んじゃ、行くか。」
しっかり帰り支度をすると、三人は忍足を追いかける。しかし、バレては元も子もないの
で、ある程度の距離を取りながら、見失わないように尾行をする。駅のところまで来ると、
忍足はこの前の女の人と落ち合っていた。
「あっ、この前一緒にいた女の人!」
「本当ですね。」
「侑士の奴・・・マジムカツク!!」
即行でその場から出て行こうとする岳人を滝と鳳は必死で止める。まだ、そうと決まった
わけではないのに出て行くのは、余計に事を混乱させると思ったからだ。
「ちょっと待って、岳人っ!!」
「今、出てっちゃマズイですよ。」
「何でだよ!?」
「もう少し、もう少しだけ、様子を見よう。」
「でもっ・・・」
信じられないものを見てしまったと岳人は今にも泣きそうな顔をしている。それを見て、
滝も鳳も怯んでしまうが、ここで行かせるわけにはいかない。
「きっと何かわけがあるんですよ。」
「わけって何だよ!?」
「それは、分からないですけど・・・」
「とにかく落ち着いて、岳人。もう少しつけてみて、それで浮気だと思ったらいくらでも
出てっていいから。」
「くそっ、分かったよ!!」
まだ浮気とは決まったわけではないので、飛び出して行きたい気持ちを抑えつつ、岳人は
滝と鳳の言うことを聞く。しばらく後をつけていると、二人は大きなスーパーに入った。
何を買うのか見ていると二人が向かったのは、バレンタインデーのための手作りお菓子コ
ーナーだ。
「・・・・あのコーナーって、男女二人ではなかなか行かないよね?」
「そう・・・ですよね。もし、手作りする相手が忍足さんなら一緒に行くとか絶対ありえ
ないですし。」
「何やってんだ?侑士の奴。」
さすがにこれはおかしいと岳人も落ち着きを取り戻す。もう少し近づいて、二人の会話を
聞きたいと、三人は二人からは死角になるバレンタインコーナーの真後ろに回った。ここ
ならば、二人に見つからずに会話が聞き取れる。
「いやあ、ホンマに助かるわ。うちの姉貴は、料理はそんなに出来ないし、ましてお菓子
作りなんて全く出来へんからな。」
「バレンタインに手作りで何かすごいもの作ってあげたいなんて、渡される子もさぞ喜ぶ
でしょうね。岳人くんだっけ?」
「ああ。岳人は甘いもんも好きやし、手作りしてやったらメッチャ喜んでくれると思うね
ん。何がええかな?」
「この前、作ったケーキはなかなかだったと思うよ。でも、他にいろいろ作って試してみ
るってのも、悪くないよね。」
「じゃあ、次は・・・チョコクッキーでも作ってみようかな。作れます?」
「うん、もちろん。クッキーならケーキほど手間かからないしね。じゃあ、今日はとりあ
えずクッキーの材料を・・・」
二人の会話を聞いて、三人は事の真相を理解する。どうやら忍足はバレンタインデーに岳
人に手作りのプレゼントあげるために、料理の得意な人に作り方を教えてもらっているら
しい。そんな会話を聞いて、岳人は緊張感が一気に解ける。思わず座り込み、後ろの棚に
体を預けてしまう。
「あっ、岳人っ、棚がっ!!」
グラ・・・
「へっ?」
ドサドサドサっ!!
その棚自体に影響はなかったが、その前にあったバレンタインコーナーの棚が傾き、そこ
に並んでいた商品が忍足とその女の人に降り注ぐ。
「うわっ、何や!?」
「ご、ゴメンナサイっ!!」
思わず立ち上がり、岳人は叫ぶ。姿は見えないが確かに岳人の声だ。忍足は首を傾げ、そ
の裏側に回り込む。
「何してるん?岳人・・・」
「い、いや、あの・・・」
「あー、俺らの所為なんだ。忍足が知らない女の人と歩いてたの見て、浮気じゃないかっ
て煽ったから・・・」
「すいません、忍足さん。」
「はあ・・・」
呆れつつ忍足は大きな溜め息をつく。岳人にバレないようにしていたのに、ひどい誤解を
受けた上でバレてしまった。しかし、バレてしまったのなら仕方がない。浮気と思われた
のも自分のミスだと、忍足は自分が悪いかのように岳人に謝った。
「誤解させるようなことして、スマンかったな岳人。さっきの話聞いてたなら、それは違
うって分かっただろうけど、ホンマは秘密にしときたかったんやけどなぁ。」
「お、俺の方こそ、ゴメンっ!!尾行みたいなことしちゃって・・・」
「まあ、仕方ないやろ。悪いんは、岳人じゃなくて、こっちの二人なんやから。」
「あ、あはは・・・」
「ゴメンナサイ。」
そんな会話をしている四人のもとへ、商品を片付け終わった一緒にいた女の人がやってく
る。
「あら、何か大人数になってる。」
「迷惑かけちゃってすんまへん。俺から言い出したことやのに・・・」
「いいの、いいの。それより、今日はその岳人くんとやらと一緒に帰ってあげたらどう?
バレンタインまではまだ日はあるし、私はいつでも暇だから。」
「でも・・・」
「誤解ちゃんと解かなきゃでしょ?それに、最近はあんまり一緒にいてあげてないんじゃ
ないの?」
「・・・はい。」
最近はお菓子作りの練習に熱中してしまって、岳人とあまり一緒にいられないのは確かだ
った。誤解は完全に解けているが、岳人と一緒にいた方がいいというのは、忍足も思うこ
とであった。忍足が頷くのを確認すると、その女の人はニコッと笑って岳人に話しかける。
「あなたが岳人くんね。」
「はい。」
「私は、侑士くんのお姉さんの友達。ただそれだけよ。お菓子作りを教えて欲しいって言
われて教えてあげてるだけなの。だから心配しないでね。」
「・・・はい、すいません。」
「ふふ、別に謝らなくてもいいよ。いろいろ楽しい話もいっぱい聞かせてもらってるし。」
「えっ?」
「何でもない。それじゃ、私はもう帰るから。侑士くんのこと怒らないでやってね。」
ひらひらと手を振ると、忍足の姉の友達だと言う女の人をその場から立ち去ってしまった。
「俺達もきっとお邪魔だよね?」
「お邪魔虫はさっさと帰らせてもらいます。」
これ以上忍足に怒られたくないと、滝と鳳はさっさと帰ってしまった。その場に残された
二人は、ほんの少しだけ気まずい雰囲気になりながら顔を見合わせる。
「・・・俺らも帰るか?」
「そうだな。何か男二人でこのコーナーにいるのもちょっと微妙だし。」
「確かに。この後、うちに来てくれへん?最近あんまり喋ってへんかったから、話したい
こといろいろあるねん。」
「いいぜ。俺も侑士とたくさん話したいしな!」
岳人にいつもの笑顔が戻り、忍足はホッと胸を撫で下ろす。久しぶりの岳人と二人きりの
時間。どうやって過ごそうか胸を躍らせつつ、忍足は岳人を連れて店を出た。
「いやー、ホンマにゴメンな岳人。騙す気なんて全然なかったんやけど・・・」
「あー、もういいって。それより、バレンタインデー何くれんの?」
「それはバレンタイン当日のお楽しみやで。今言ったら楽しみなくなってまうやろ?」
「ま、侑士の手作りっつーんなら、どんなものでも嬉しいけどな!!」
忍足の部屋でそんな会話をしながら、二人はおやつをつまむ。
「そういえばさ、今日は侑士んち誰もいねぇの?さっきから人の気配がないんだけど。」
「あー、せやな。姉貴は友達とカラオケ行くみたいなこと言ってたし、オカンも買い物に
でも出かけてるんちゃうか?」
「そっか。じゃあさ、じゃあさ・・・」
持っていたお菓子を皿の上に戻し、岳人は忍足ににじり寄る。キラキラと目を輝かせてい
る岳人の顔を見て、忍足は岳人が何を言いたいか理解した。
「・・・まだ夕方やで?」
「だって、したいんだもん。しょうがねーじゃん!」
「どんな理由やねん。オカンもいつ帰ってくるか分からへんし・・・」
「大丈夫だって。一回だけ。な、いいだろ侑士。」
「ったく、しょうがあらへんなあ・・・」
部屋の鍵をかけに行きつつ、忍足はネクタイを解いた。そして、そのままベッドに向かう。
「ホンマに一回だけやで?」
「やった!!ならお言葉に甘えて・・・」
忍足の後を追うようにベッドに乗り上げると、岳人は座ったままで忍足に口づけた。いつ
もと同じようなキスなのだが、数日間何もしていなかった所為か、忍足はいつも以上に感
じてしまう。
(何や・・・ただキスされてるだけやのに・・・・)
「んんっ・・・ふっ・・・んぁ・・・」
(アカン・・・すごいぞくぞくする・・・)
ただキスをしているだけなのに、ひどく敏感な反応を見せる忍足に岳人もドキドキしてき
てしまう。唇を離せば、忍足は潤んだ目で顔を真っ赤に染め、いつもとは比べ物にならな
い程息を乱している。
「ハァ・・ハァ・・・ハァ・・・・」
「うわあ、何か今日の侑士、エロい・・・」
「う、うるさいっ!久しぶりだったから、ちょっと気が緩んでまっただけや。」
「でも、すっげぇ可愛いvv」
そう言いながら、岳人は忍足のワイシャツのボタンを外し、ズボンのベルトも外してしま
う。
「どっちもいい感じで勃ってきてんじゃん。どっちから弄ろっかなあ。」
岳人の言葉に忍足は顔を真っ赤にして、唇を軽く噛みながら恥ずかしさに堪える。しかし、
岳人はそんな忍足の気持ちを知ってか知らずか、いきなり両方ともを弄り始めた。
「やっぱ同時にしようっと。」
「あっ・・・!あはぁっ・・・!!」
胸の突起をちゅうっと吸われ、熱の塊を手で擦られる。あまりの刺激に忍足はビクンと身
体を震わせ、岳人の腕を力いっぱい掴んだ。
「侑士、腕痛いよ。ちょっと力入れすぎ。」
「だ、だって・・・」
「ちゃーんと気持ちよくしてやるから、もっと身体の力抜いて。」
岳人の言葉に従い、忍足はなるべく力を入れないように努める。しかし、岳人が敏感なと
ころに触れてくるたびに、自分の意思に反して身体に力が入ってしまう。
「あっ・・ひぁ・・・あんっ・・・」
「今日の侑士、何かいつもより感じやすくない?」
「そんなこと・・・あらへん・・・」
「でもさぁ・・・」
試しに岳人は、熱の先端にほんの少しだけ爪を立てて刺激を与えてやる。すると忍足は喉
を仰け反らせ、一際大きな声をあげる。
「あぁんっ!!」
「ほら、こんなことされてもメチャクチャ感じてんじゃん。今、ちょっとイキそうになっ
ただろ?」
ニヤニヤと笑いながらそんなことを聞いてくる岳人に多少の不満を覚えながらも、いつも
より気持ちよく感じるのは確かだ。少し触れられていなかっただけで、こんなにも身体は
素直に岳人を求めてしまうのかと思うと、自分がどれだけ岳人のことを好きかを思い知ら
される。
「まだイカせたくないから、しばらくはココだけ弄ってやるよ。」
口と指を使い、岳人は忍足の赤い突起に刺激を与え続けた。絶え間ないその刺激に、そこ
に触れられていなくとも、忍足の熱はだんだんと高まってゆく。
「あぅっ・・・岳人、そこ・・・やあっ・・・」
「何で?気持ちイイでしょ?」
「ええけど・・・ええから・・・・嫌やぁ・・・」
「意味分かんないぜ。どっちなんだよ?」
「あっ・・・だっ・・て・・・このままじゃ・・・」
息を乱し、途切れ途切れで言葉を発する忍足の声を聞き、岳人の興奮もだいぶ高まってい
た。もちろん忍足が感じてくれているのは分かっていたが、自分が考えている以上に忍足
が感じているということに、岳人は気づいていなかった。
「本当、侑士のココ、いくら弄ってても飽きないし。」
カリっ・・・
そんなことを呟きながら、岳人は軽く歯を立てて忍足のすっかり充血したそれを噛んだ。
その瞬間、忍足の身体が今までになく大きく跳ねる。
「んんっ・・・んん――っ!!」
痛さが快感に変わるような刺激に耐えきれず、忍足は熱いミルクを今は触られていない茎
の先からたっぷり放つ。まさか胸の突起を弄っているだけで、イクとは思っていなかった
ので、岳人も驚いてしまった。
「侑士・・・もうイッちゃったの?」
「だから・・・嫌やって・・・言ったのにぃ・・・」
あまりの羞恥心からか、忍足はボロボロと涙を流している。そんな忍足の顔を見て、岳人
は俄然やる気になってしまう。荒々しく忍足が下半身に穿いているものを全て脱がしてし
まい、大きく脚を開かせる。
「今日の侑士、本当ツボなんだけど。可愛すぎっ!!」
「えっ、ちょっと待っ・・・そこはまだ嫌や・・・ひっ・・ぃん・・・っ!!」
早く忍足の中へ入りたいと、岳人は忍足の出した蜜でたっぷりと指を濡らし、まだ閉じた
ままの蕾を慣らし始める。性急さがありながらも、岳人の指は的確に忍足の弱いとこばか
りを攻める。そのおかげで、忍足のそこはそれほど時間をかけず花びらが開くように解れ
てゆく。
「んっ・・・あっ・・・岳・・人っ・・・」
「もう少し・・・ちゃんと慣らした方がいいよな?」
「岳人のが・・・ちゃんと濡れてれば・・・平気・・・」
「えっ・・・?」
岳人の指を自分の中から抜くと、忍足は岳人のズボンのベルトに手をかけ、既にある程度
の質量を持った熱を取り出す。そして、何の躊躇いもなしにそれを口に含んだ。
「うわっ!侑士!?」
「ちゃんと・・・濡らさへんと・・・痛いやろ?」
「そ、そうだけど・・・」
(いきなりこれは反則だろ〜。ヤバっ、あんまりされるとこれだけで、イッちゃいそう〜。)
突然のことに戸惑いまくりの岳人だが、口でされるというのは素直に気持ちがよい。しば
らく、忍足の口での愛撫を堪能した後、ゆっくりと忍足の口からギリギリまで昂ぶったそ
れを抜く。
「もういいぜ、侑士。十分濡れただろ?」
「せやな。じゃあ・・・」
少し低い位置から上目遣いで忍足は岳人の顔を見上げる。誘うようなその表情に岳人は我
慢出来なくなる。痛くないようにゆっくり忍足の身体を押し倒し、開かれた脚の中心にあ
る真っ赤な蕾に、岳人は自分自身を押し当てた。
「ゆ、ゆっくりな・・・」
「うん。」
忍足の言葉を聞き入れ、岳人はなるべくゆっくり身を進めてゆく。じわじわとゆっくり自
分の中へ岳人が入ってくる感覚に、忍足はがくがくと身体を震わせる。
「あっ・・はっ・・・あぅっ・・・」
「痛くね?侑士。」
「へーき・・・けど・・・」
「けど?」
「岳人の熱いのが・・・中にあるんが・・・ハッキリ分かって・・・」
「うん・・・」
「気持ち・・・エエ・・・・」
「じゃ、じゃあ、動かしても平気だよな?」
「う・・んっ・・・」
岳人の言葉に忍足は頷く。岳人ももうかなり限界なので、動かないでいるのは辛かった。
忍足が頷くのを確認すると、岳人はゆっくりと動き始める。
「うあっ・・・はぁんっ!!」
「すごっ・・・侑士ん中、熱くて絡み付いてくるみてぇ。」
「も、もっと、ちゃんと・・・動い・・て・・・岳人・・・」
「おう。」
忍足のリクエストに応え、岳人は先程よりも激しく動き出す。
(岳人のが中で動くんが・・・ハッキリ分かる・・・ヤバイっ・・・こんなふうに感じる
ん久しぶりやから・・・・)
「はあっ・・・岳人っ・・・あっ・・あぁんっ・・・!!」
「侑士っ、すげイイっ。侑士はどこが一番いい?」
「お、奥・・・奥に岳人のが・・・当たると・・・」
「じゃあ、もっと奥の俺のあげる。」
次の瞬間、一際奥まで忍足の中に岳人が入り、その先端から熱い蜜が放たれる。奥の奥に
熱い飛沫を浴び、忍足は今までにない絶頂感を感じる。
「あっ・・ん・・・ああぁ―――っ!!」
「侑士っ・・・!!」
どちらも存分に熱を放つと、抱き合いながらぐったりと脱力する。少し呼吸が落ち着き、
興奮も少し治まると岳人は忍足の中から自身を抜こうとする。すると、忍足ががしっと肩
を掴んだ。
「何、侑士?」
「・・・もう一回だけなら、してもええで。」
「本当!?」
「何度も言わせんなっ!ええって言ってるやろ!」
(あんまりにも気持ちよかったから、俺の方がやる気になってしもうたやん・・・)
「侑士、大好きーvv」
そんなことを言われれば、岳人の熱もすっかり元気を取り戻す。ぎゅうっと抱きしめ、愛
情いっぱいのキスをした後、岳人再び忍足を気持ちよくさせてやろうと動き始めた。
結局、ノリにノッてしまった二人は三回もやってしまった。まさかそんなにたくさんする
とは思っていなかった忍足は、ベッドから起き上がれず枕に突っ伏している。
「大丈夫か?侑士。」
「あー、まあ、何とかな・・・」
「一回だけっつったのに、ゴメンな。」
「いや、二回目は俺の方が誘ったわけやし・・・それに気持ちよかったから別に気にせん
でええよ。」
「本当か!?」
「そりゃ、岳人にあーいうことされれば、気持ちええに決まっとるやろ?」
「やっぱ、俺侑士のこと超好きー!!俺も俺も、すっげぇ気持ちよかったぜ!!」
バカップル的な感想を述べ合っていると、玄関のドアが開く音がする。どうやら誰かが帰
って来たようだ。
「ただいまー。侑士ー、帰ってるん?」
「ああ、姉貴や。あー、ちゃんと服着とかんと怪しまれるな。」
「そうだな。」
中途半端にはだけた姿のままいるわけにはいかないので、二人はきっちりと制服を着直し
た。
コンコン
「侑士、いるん?頼まれてたもの、買ってきたで。」
「あー、いるいる。ちょっと待っとって。」
ワイシャツのボタンをしっかり留めると、忍足は部屋の鍵を開け、ドアを開ける。
「おかえり、おおきにな。買ってきてもろて。」
「ええよ。私も買い物行かなきゃアカンかったし。あれ?誰か来てるん?」
「こんにちは。」
「ああ。岳人くん。いらっしゃい。」
「お邪魔してます。」
「岳人くん、聞いて。侑士ったらな・・・」
「あー、もう、余計なこと言わんでええから、早よ自分の部屋戻って。」
「何やねん。せっかく岳人くんにイイコト教えてあげようと思ったのに。」
「もうええって!!」
「じゃあ、またお話ししよな、岳人くん♪」
「はい。」
忍足の姉が出て行ってしまうと、岳人はくすくすと笑う。忍足に比べるとかなり社交的で、
おしゃべり好き。しかし、顔は忍足によく似ている。そんな忍足の姉のキャラが岳人は結
構気に入っていた。
「イイコトって何だろう?超気になるし。」
「姉貴の言うことなんて気にせんでええって。」
「それより、何買ってきてもらったの?だいぶおっきい袋みたいだけど。」
「別に何でもあらへんよ。」
「嘘だぁ。見せろー!」
飛びつくように岳人は忍足の手から袋を奪う。若干忍足も抵抗しようとしたので、そのは
ずみに袋の中身が散らばってしまった。
「あっ!!」
「ピンクの袋に・・・赤いリボン、それにハートのシール・・・もしかして、これ、バレ
ンタイン用のラッピング?」
「・・・せや、自分で買うんは恥ずかしいから、姉貴に頼んで買うてきてもろた。」
「へぇ。なかなか可愛い感じだな。」
「はあー、ラッピングまでバレてしもた。」
「でも、組み合わせるとどんな感じになるか分かんないし、何もらうかも分かってないか
ら俺はかなり楽しみだと思ってるけど?」
「ホンマに?」
「ホント、ホント。今年のバレンタイン、超期待してるぜ!」
「そこまで期待されとったら、超心を込めて作らなアカンな。頑張るから楽しみにしとっ
てな。」
かなりのネタバレをしているにも関わらず、岳人は自分の作るバレンタインのプレゼント
を心から楽しみにしてくれている。それが嬉しくて、忍足は満面の笑みを顔に浮かべる。
「なあ、じゃあ約束ってことで侑士からちゅうして。」
「何やそれ?ただキスして欲しいだけやろ?」
「あはは、バレた?」
「バレバレや。でも、まあ、それくらいなら・・・・」
今はかなり機嫌がよいのでそれくらいはしてやると、忍足は自ら岳人にキスをする。その
瞬間、どこからか眩い光が入ってくるように感じる。しかし、二人とも目を閉じていたの
でそれが何かはよく分からなかった。
「ん?今、何か光らんかった?」
「そうか?よく分かんなかったけど・・・」
「そっか。なら、気のせいかな?」
その光は気のせいなどではなかった。忍足の姉がドアの隙間から二人のキスシーンの写真
をバッチリ収めていたのだ。
「侑士にお菓子作り教えてくれてるお礼に、この写真あげへんとな。」
どうやらその写真は忍足にお菓子作りを教えてくれている友人へのお礼らしい。その友人
はこういうことが大好きなのだ。だからこそ、忍足の手伝いを喜んでしていると言っても
過言ではない。そんなこととは露知らず、忍足と岳人は部屋で仲良くイチャついているの
であった。
END.