とある日曜日、跡部は休日出勤をしていた。近く学内で生徒総会があるため、その資料を
作らなければならないのだ。私立の学校であるため、生徒数は半端ない。全校生徒分の冊
子を作るのは容易ではなく、生徒会役員だけに作らせるのは可哀想だと思い、教頭の不二
がその半分くらいを跡部に回してきたのだ。
「ったく、どうして俺様がこんなことしなくちゃならねぇんだ。」
ぶつぶつと文句を言いながらも、跡部は次々にプリントのセットにホチキスを留めてゆく。
パチンパチンと、ホチキスを留める音だけが響いていた社会科準備室に、パタパタと誰か
が駆けてくるような足音が聞こえてきた。
「おっ、やっと来たか。」
ガラッ!!
勢いよくドアを開けて、社会科準備室に入ってきたのは、跡部のクラスの生徒である宍戸
であった。一人でこんな作業を続けるのもつまらないということで、跡部が呼び出してい
たのだ。
「悪ぃ、ちょっと遅くなっちまった。」
「本当だぜ。まあ、別に授業ってわけじゃねぇからいいけどな。あっ、ちゃんとそこのド
ア閉めておけよ?」
「おう。」
開け放ったドアをきちんと閉めると、宍戸は跡部のいる机の近くまでやってくる。机の上
に積み重ねられた大量のプリントの山を見て、宍戸は驚く。
「うっわ、何だこれ!?」
「生徒総会で使う資料だ。これでも、結構他の奴らに押し付けたんだぜ。今日たまたま来
てた黒羽とか滝とかに。」
「こりゃ確かに一人でやる量じゃねぇな。おっし、そんじゃ俺も手伝うぜ!」
「ああ。」
跡部からホチキスを受け取り、宍戸もパチンパチンとプリントを留め始める。ひたすら地
道な作業で、面白いくないことこの上ないが、宍戸の表情はどこか楽しそうだった。
「随分楽しそうだな。こんな地味な作業が好きなのか?テメェは。」
「まあ、嫌いではないけど、好きでもねぇな。」
「なら、何でそんな楽しそうにしてやがるんだ?」
そう聞かれて宍戸は何故か口をつぐんだ。そして、じっと跡部の顔を見た後で、ぷいっと
そっぽを向く。本当に何なんだと思いながら、跡部が首を傾げていると、宍戸はぼそっと
何かを言う。
「だってよ・・・」
「アーン?何だ?」
「学校がある日は跡部と一緒に居れるけど・・・日曜日は居れねぇだろ?」
「まあ、そうだな。」
「日曜日も跡部と一緒に居られるなんて・・・嬉しいなあと思って・・・・」
パチンパチンとプリントをホチキスで留めながら、宍戸はそんなことを言う。恥ずかしい
のか、そう言う宍戸の顔はほのかに赤く染まっていた。
(ヤベェ・・・可愛すぎだ。)
あまりにも可愛らしい宍戸の態度に、跡部はドキドキしてしまう。こんなつまらない作業
などさっさと終わらせて、宍戸といろいろなことがしたいと、ホチキス留めの速度を速め
る。
「跡部、留めるの激速ぇーな。しかも、超綺麗だし。」
「このくらい当然だ。ほら、テメェもどんどん留めて、さっさと終わらせちまおうぜ。」
「おう!!」
跡部のやる気に促され、宍戸も次々とホチキス留めを進めてゆく。二人で集中して行った
ために、冊子作りは予想よりかなり早く終わらせることが出来た。
「よし、最後の1セット。」
パチンッ!
「よっしゃー、終わったー!!」
「やっぱ、二人でやると早く終わるな。ありがとよ、宍戸。」
「別に礼には及ばないって。跡部、まだ他に仕事あんのか?」
「いや、もうないぜ。」
「じゃあ、あとは自由時間なんだな。」
「まあ、そんなとこだな。」
仕事が終わっているなら、十分に構ってもらえると宍戸は嬉しそうな顔になる。あからさ
まに自分と居ることが嬉しいということを全面に出され、跡部は宍戸をどうにかしてしま
いたい欲求に駆られる。
(今日は日曜日だっつっても、他の奴らも居るもんなあ。けど、こんな状況を逃すのも惜
しい。どうする、俺?)
宍戸の可愛さに胸を高鳴らせながらそんなことを考える跡部だったが、まだ自制心が働い
ていた。ここから出てしまえば、変な気も起きないだろうと思い、これから出かけること
を宍戸に提案してみることにする。
「手伝ってくれた褒美だ。これから、飯でも食いに行かねぇか?何でも奢ってやるぜ。」
「飯かぁ。でも、まだ2時だぜ?昼飯食って来ちまったから、あんまり腹減ってねぇんだ
よなあ。」
「あー、確かにそうだな。」
そういえば、自分もしっかり昼食を取っていたと、跡部は今の誘いは間違いだったと気づ
く。他に何かいい場所はないかと考えていると、宍戸が何気なくすごいことを口にした。
「奢ってもらうのは夕飯にするぜ。それに、外に出かけちまうと、跡部と二人きりじゃな
くなっちまうだろ?俺的はもう少し跡部と二人だけで居てぇなあと思うんだけど・・・」
あまりに率直な宍戸の言葉に跡部の理性の糸はぶちっと切れる。そこまで言われてしまっ
たら、我慢する必要などないのではないかと、跡部は宍戸の体をぐいっと引き寄せ、しっ
かりと腕の中に捕らえた。
「えっ・・・な、何っ?跡部っ!?」
いきなり思いきり抱きしめられ、宍戸は混乱状態。あまりに突然のことだったので、抵抗
することも忘れてしまう。
「テメェはどれだけ俺様のことを煽りゃ気が済むんだ?アーン?」
「べ、別に、煽ってなんかっ・・・・」
「ご褒美は後回しだ。今はお仕置きが先だ。俺様を煽った罰だぜ。」
お仕置きという言葉を聞いて、宍戸の身体はドクンと疼く。きつく抱きしめられていると
いう状態で、そんなことを言われれば、何をされるかなど容易に想像がつく。ドキドキと
鼓動が速くなっていくのを感じながら、宍戸はぎゅうっと跡部の服を握った。
跡部は宍戸をソファに座らせると、膝をソファにつき、自身の熱の塊を宍戸の口に捻じ込
む。熱い楔を半強制的に咥えさせられ、宍戸は苦しそうにしながらも決して嫌がるような
素振りは見せなかった。
「んぐっ・・・んっ・・・ふぅ・・・」
「そんな美味そうに咥えて、やらしいなあ。」
「んんっ・・・うっ・・・んぅ・・・」
髪を掴まれ、口内を犯される。息苦しさと恍惚感が混じり合い、宍戸は目を潤ませて跡部
にされるがままになっていた。
(跡部の大きすぎ・・・息出来なくなりそう・・・・)
「ハァ・・・テメェの口、いい感じだぜ?ちゃんと歯立てねぇように気をつけてくれてる
みてぇだしな。」
「ふ・・ぅ・・・んんっ・・・ぐっ・・・」
「どこに出して欲しい?口ん中か?それとも顔か?」
「うっ・・・んぅ・・・」
今にも涙が溢れてしまいそうな顔で、宍戸は跡部の顔を見上げる。その表情に、跡部はぞ
くっと腰のあたりに痺れが走るのを感じた。
(すげぇクる・・・)
堪らず跡部は熱を放った。突然の放出に驚いた宍戸は思わず口を離してしまう。そのため、
跡部の放った蜜は、宍戸の口内だけに留まることなく、顔全体にかかってしまった。
「ふ・・ぁ・・・!!」
「あーあ、顔にかかっちまったな。」
白い蜜で汚れた顔を見ながら、跡部はニヤリと笑う。ポタポタと蜜を滴らせながら、宍戸
は顔を拭うこともせずに、呼吸を整えようと荒い息を吐いていた。
「ハァ・・・ハァ・・・」
「エロい顔。そんな顔されちゃ、全然お仕置きになんねぇな。」
「あんな無理矢理咥えさせやがってっ・・・十分、お仕置きじゃねぇか!」
「アーン?でも、テメェは無理矢理咥えさせられて、感じてたんだろ?」
そう言いながら跡部はするっと宍戸の下肢に手を滑らせる。宍戸の熱はズボン越しでも、
ひどく高まっているのが見てとれた。
「やっ・・・跡部っ!!」
「嫌じゃねぇだろ。俺のを咥えながら、ココをこんなにしておいて、何言ってやがる。」
ズボン越しに軽く擦ってやるだけで、宍戸の身体はビクンと跳ねる。これは面白いと、跡
部は容赦なくそこをぐりぐりと擦り上げた。
「あっ・・・ああっ・・・んあっ・・・!」
「布越しでそんなに感じるのかよ?さっきよりも硬くなってるぜ?」
「ひあっ・・・そんなに・・・擦んなぁ・・・あっ・・・はぁ・・・」
「このままイカせてやろうか?下着は汚れちまうかもしれねぇけどな。」
「いや・・・やだぁ・・・ひぅ・・・んあっ・・・!!」
これからのことを考えると、さすがにそのまま出させるのは可哀想だと、跡部は宍戸のズ
ボンと下着を脱がしてやる。露わになった宍戸の熱はトロトロと涙を流し、ふるふると小
さく震えていた。
「ふっ・・・ふ・・ぅ・・・」
跡部が弄るのをやめると、宍戸は赤く染まった顔で跡部を見る。中途半端に高められた熱
の所為で、身体が疼いてしょうがないのだ。宍戸がどうして欲しいかなど百も承知だった
が、跡部はわざと分からないふりをする。
「随分と熱い視線送ってきてくれてるじゃねぇの。どうした?」
「こんな中途半端なの・・・耐えらんねぇよ・・・」
「だったら、どうして欲しいかちゃんとお願いしないとダメだろ。ほら、言ってみな。」
跡部としていると、こういうことを言われるのは日常茶飯事なので、宍戸は何を言えばい
いかをしっかり理解していた。恥ずかしいと思いつつも、今は触って欲しいという思いの
方が上回っている。
「跡部先生・・・俺の・・触って下さい・・・お願いします・・・・」
切羽詰まったような声でそう言われ、跡部はぞくぞくと全身に激しい興奮が駆け抜けるの
を感じる。ニヤリと妖しい笑みを浮かべると、跡部は宍戸の熱そのものに触れるのではな
く、きゅうきゅうと収縮を繰り返している蕾に指を入れた。そして、内側から熱の根元を
刺激する。
「ひっ・・ああぁんっ!!」
まさかいきなり指を入れられるとは思っていなかったので、宍戸はその激しい刺激に耐え
られず達してしまう。こうなることは予測済みだが、やはり実際にイク瞬間の宍戸は可愛
い。ビクビクと身体を痙攣させる宍戸を見ながら、跡部はぐりぐりと内側に埋め込まれて
いる指を動かす。
「こんな早くイッちまって。テメェは本当に淫乱だな。」
「あっ・・・だ、だって・・・だって・・・」
「ほら、テメェの望み通り弄ってやってるぜ。こうして欲しかったんだろ。」
「ああっ・・・んあっ・・・そこ・・ばっか・・・ダメぇ・・・」
「チッ、本当テメェには振り回されまくりだぜ・・・」
あまりに宍戸に夢中になりすぎている自分に跡部は苦笑する。もう止めることなど出来な
いと思いながら、跡部はしばらく激しく宍戸の内側を掻き回していた。
「はあー、やっと終わったな。」
「うちの生徒ってこんなに多かったんだ。」
「後はこれを跡部に渡して、終了だな。もう他の仕事も終わってるし、飯でも食いに行く
か、ダビデ。」
「バネさんの奢り?」
「まあ、冊子作るの手伝ってくれたしな。今日は特別に奢ってやるよ。」
跡部に頼まれた冊子を作り終えた黒羽は、出来上がった冊子を跡部に渡そうと天根と社会
科準備室に向かっていた。黒羽とまだまだ一緒に居られるし、ご飯も奢ってもらえるしと
ご機嫌な天根は、黒羽の前を歩き、社会科準備室のドアを開けようとする。
「ちょ、ちょっと待ったダビデ!!」
「何?バネさん。」
社会科準備室の前まで来て、何かおかしな雰囲気を感じ取った黒羽は天根がドアを開けよ
うとするのを止める。
「今、そこを開けちゃダメだ。」
「何で?」
「大人の勘ってヤツだ。」
「大人の勘・・・??」
「とにかく今は・・・あっ!!」
黒羽の言っていることの意味が分からないと、天根はほんの少しだけそのドアを開けてし
まう。ほんの少し開いた隙間から聞こえてきたのは思ってもみない声であった。
「んああぁっ!!あっ・・・あぁんっ!!」
「〜〜〜〜っ!!??」
「あー、ほら、言わんこっちゃねぇ・・・」
「バ、バネさん、どういうこと?全然状況が理解出来ない・・・」
中から聞こえてくる喘ぎ声に天根はドギマギして、開けたドアを閉められないまま、黒羽
の顔を見る。黒羽は空気でこのことをバッチリ感じとっていたのだ。
「理解出来ないって、そのまんまだろ。全く跡部のヤツも困ったもんだな・・・って、ダ
ビデっ!!」
「しー、バネさん。そんな大声出したらバレちゃうぜ。」
小さなドアの隙間から天根は中の様子を窺う。そういうことに興味のある年頃なので、仕
方ないと言えば、仕方ない。いったんは引き剥がそうと思った黒羽だったが、中の様子が
気になるのは黒羽も同じだった。
「ったく、お前もしょうがないヤツだな。」
そんなことをぼやきながらも、黒羽も天根と一緒に社会科準備室の中を覗いてしまうのだ
った。
黒羽と天根が社会科準備室に前に居ることに気づいていながらも、そんなことはお構いな
しに跡部は自分のペースでしたいことを進める。
「そんなに腰振って、そんなに俺様のが美味いのか?」
「はあぁっ・・・あんっ・・・んああぁっ!!」
「すげぇぎゅうぎゅう締めつけてくるぜ。ふっ、たまんねぇな。」
「中・・・ぁ・・・気持ちイイ・・・んっ・・・もっとぉ・・・」
ソファに上半身を押しつけ、跡部は後ろから宍戸を責める。熱い楔で何度も中を抉られ、
宍戸はそこから駆け抜ける快感に溺れていた。
「ふあっ・・・あぁんっ・・・跡部っ・・・イクっ・・・も・・イッちゃう・・・!!」
「アーン?まだ、ダメだぜ。勝手にイクなんて許さねぇ。」
「ひっ・・あっ・・・!?」
後ろの穴を犯されることで、限界まで高まった熱を跡部はぎゅっと握り、イケなくさせて
しまう。達する直前のところで、放出を止めながら、跡部は宍戸の一番感じる場所を己の
楔で何度も突いた。
「ひああぁぁっ!!あはっ・・・ああぁっ!!」
「すっげぇ声。ココ突かれんの、そんなにイイのかよ?」
「跡部っ・・・やあっ・・・ああぁっ!!」
「さっきよりも、中、イイ感じになってるぜ。全部が俺を飲み込もうとしてるみてぇに動
いてやがる。」
「くあぁっ・・・跡部っ・・・手・・離して・・・イカせてっ・・・ああぁ―っ!!」
どんなに宍戸が泣き叫ぼうが、跡部はなかなかその手を離そうとしない。極限の状態を長
い間味わわされ、宍戸はもう失神寸前だった。
「ひっ・・ああっ・・・も・・・死んじゃうっ・・・跡部っ・・・跡部ぇっ!!」
「死にそうだと思うくらいイイのか?」
「気持ちよすぎて・・・死んじゃいそ・・・跡部っ・・・お願っ・・・早く・・・イカせ
てぇ・・・」
息も絶え絶えになっている宍戸を見て、さすがに可哀想かと思うと同時に跡部はどうしよ
うもなく興奮する。気持ちよすぎて死んでしまいそうだという言葉を聞いたのは初めてで
あった。
「そこまで言われたら、天国見せないわけにはいかねぇな。」
そう言いながらも、跡部の笑みはまるで悪魔のようであった。ギリギリまで自分自身を引
き抜くと、今までになく激しく宍戸の奥を穿つ。それと同時に宍戸の熱を握っていた手を
離した。
「ああっ・・・ああぁぁんっ!!」
「くっ・・・ぅ・・・っ!!」
ドクンドクンとどちらもありったけの蜜を放って、快感の頂点に達した。あまりに強い快
感に宍戸はそのまま気を失ってしまう。宍戸の中の熱さとその可愛さに満足感を覚えつつ、
跡部はしばらく快感の余韻に浸った。
気を失っている宍戸の後始末をしてやると、しっかりと服を整え、跡部は社会科準備室の
前に居る黒羽と天根のもとへ歩いてゆく。
「待たせちまって悪かったな。」
『うわっ!!』
まさか、バレているとは思わなかったので、黒羽と天根はあからさまに驚いたような声を
上げる。
「あ、あはは、冊子が出来たから持ってきたんだけどよ・・・」
「天根も手伝ったのか?」
「は、はい。一応は・・・」
さっきの今で普通に話している跡部がすごいと二人はドギマギしてしまう。特に天根にと
っては、さっきの光景は刺激がすごすぎて、まともに跡部の顔を見ることが出来なかった。
「もしよかったら、茶でも飲んでいくか?冊子作りの礼だ。」
「えっ、でも・・・」
「ちゃんと後始末はしたから大丈夫だぜ。宍戸もまだ眠ってるしな。」
「どうする?ダビデ。」
「俺はどっちでも・・・バネさんが決めて。」
「じゃあ、茶だけご馳走になるぜ。」
「ああ。入れよ。」
何事もなかったかのように振舞う跡部に流され、黒羽と天根は作った冊子を持って、社会
科準備室の中に入る。ソファの上では、先程まで跡部と激しい行為をしていた宍戸が眠っ
ていて、二人は意味もなくドキドキしていた。
「宍戸さんって、結構男らしいと思ってたけど、こういうふうに見てみると、意外と可愛
い感じっすね。」
「まあ、あんなの見ちまったらなあ。そう思っちまうのも仕方ねぇだろ。」
「んっ・・・んんー・・・」
『っ!!』
宍戸が目を覚ましそうになるのを見て、二人はドキっとする。跡部がお茶を入れて二人の
居るところまで戻ってくると、宍戸は完全に目を覚ます。
「んー・・・跡部?」
「目、覚ましたか。お茶入ってるぜ。」
「おー・・・って、おわっ!?」
目の前に跡部だけでなく、黒羽や天根がいることに気づいて宍戸はかなり驚く。
「お邪魔してるぜ。」
「えっ・・・なっ!?」
「ほら、黒羽にも冊子作んの頼んだって言っただろ。それが出来上がったから持ってきた
んだ。」
「あ、ああ、なるほどな。」
さっきまであんなことをしていたこともあり、宍戸は何だか恥ずかしくて仕方なかった。
跡部は二人が覗いていたことに気づいていたが、宍戸は全く気づいていないのだ。
「ほら、喉渇いてんだろ?これ、テメェの分だ。」
「あっ、サンキュー。」
いつもより少し優しい跡部に宍戸は、ときめいてしまう。しかし、目の前に黒羽と天根が
いるため、そんな態度は外に出さなかった。
「天根も学校に来てたんだな。」
「えっ、あ・・・はい。バネさんが学校に行くって言ってたんで。」
「へぇ。で、来たら来たで冊子作りを手伝わされたと。」
「そ、そうですね・・・」
普通の話をしているだけなのだが、天根はドキドキしまくっていた。あまり動揺している
と、自分達が覗いていたことがバレるだろうと、黒羽はアイコンタクトで天根に伝える。
「宍戸さんは、どうして学校に来てたんですか?」
「えっ?あ、ああ、俺は跡部に呼び出されて・・・冊子作り手伝わされたって感じだな。」
「そうなんですか。で、疲れて眠っちゃったんですね。」
「お、おう!!そうなんだよ。あーいう作業って地味に疲れるからな!」
宍戸が必死に誤魔化そうとしている様がおかしくて、跡部は笑いを堪えていた。そんな宍
戸に悪戯をしかけてやろうと、一つの飴玉を口に含み、宍戸に近づいてゆく。
「疲れたときは甘いもんを食べるといいんだぜ。」
そう言いながら跡部は口の中にある飴玉を、口移しで宍戸の口の中に移した。黒羽と天根
も驚いたが、一番驚いたのは宍戸本人であった。
「な、な、何しやがるっ!!」
「テメェの好きなハッカ飴だぜ。」
「そういうことじゃなくて、何で天根とかがいんのにそういうことすんだよ!!」
「そんなの決まってんだろ。テメェのそういう反応が可愛いからだよ。」
「ふざけんな、アホっ!!」
二人の前でキスされ、宍戸は真っ赤になって跡部を怒鳴りつける。しかし、さっきもっと
すごいものを見たので、黒羽と天根は大して大きな衝撃は受けなかった。
「何か本当俺らお邪魔みたいだから、早めに退散させてもらうぜ。」
「安心してください、宍戸さん。俺、今見たこと誰にも言いませんから。」
「う〜、激恥ずかしいし・・・」
キスをしているところを見られただけで、ここまで恥ずかしがっているのだから、さっき
していたことを覗いていたことがバレたら大変だろうなあと思いつつ、二人は社会科準備
室を後にする。廊下に出て、ドアを閉めると二人は大きな溜め息をついた。
『はあ・・・』
「何かもう跡部の行動にはついていけねぇわ。」
「もうドキドキしすぎて、お茶の味とか全然分からなかった。」
「でも、あーいうの見ちまうと結構影響されるよな。」
「・・・・まあ、確かに。」
「これからうち来るか?ダビデ。飯は俺が作ってやるってことで。」
「下心ありあり?」
「そういう言い方すんなよ!・・・まあ、ねぇっつったら嘘になるけどよ。」
「行く。」
「そうこなくちゃな。じゃあ、帰るか。」
「うぃ。」
跡部と宍戸に感化されまくりの二人は、外食をすることをやめ、黒羽の家に帰ることにす
る。二人が帰ったのを確認すると跡部は、宍戸をなだめにかかった。
「ほら、いつまでもそんなにむくれてんじゃねぇよ。」
「だって、跡部が・・・」
「約束通り、これから飯に連れてってやるから。何でもテメェの好きなもん奢ってやんよ。」
「むー。」
しばらくふくれていた宍戸だったが、運動したことによってお腹が減ってきていたのは確
かだった。せっかく奢ってくれるなら、行かなきゃ損だろうと思い、ソファに体育座りし
ながら、跡部の服の裾をきゅっと掴む。
「デザート、2割増しだからな。」
「何割増しでも構わねぇよ。テメェが食べたいものを食べれるだけ食べりゃいい。」
「じゃあ、許す。」
こういうところはガキだなあと思いつつ、跡部はそんな宍戸が可愛くて仕方がなかった。
ふっと顔を緩ませていると、宍戸がソファから立ち上がり、そっぽを向いたまま、跡部に
声をかける。
「あと、このハッカ飴、すげぇ美味い。あんがと。」
そんな宍戸の一言一言が可愛く思えて、跡部の顔はもう緩みっぱなしだった。まだ数時間、
宍戸と一緒に居られることを嬉しく思いながら、跡部は帰る準備を始めるのであった。
END.