夕食の後に食べたデザートの皿を宍戸はキッチンに持って行って片付けようとしていた。
夕食の食器はおおむねコックが片付けてくれたのだが、跡部と談笑をしながらゆっくりと
デザートを食べていたため、デザートの皿を持って行く前にコックを帰してしまったのだ。
「そんなもん、置いておいて明日片付けさせりゃいいじゃねぇか。」
「こんくらい自分で片付けた方が早いだろ。すぐ終わるからちょっと待ってろよ。」
跡部としては、早く宍戸とイチャイチャしたかったのだが、宍戸は片付ける気満々で、エ
プロンを身につける。
「よし、じゃあ、やるか。」
腕まくりをし、食器を洗い始める宍戸を跡部は後ろから眺める。
(エプロンの下に何も着てなかったら萌えなんだけどなあ・・・・)
エプロン姿の宍戸を見ながら、跡部はそんなことを考える。宍戸の様子をうかがいつつ、
跡部はゆっくりと宍戸に近づいてゆく。
「亮。」
「うっわ!!な、何だよ!?景吾!!」
「まだ終わんねぇのか?」
後ろから宍戸を抱きしめつつ、跡部は低い声で尋ねる。いきなり耳元で囁かれ、宍戸はド
キッとしてしまう。
「も、もう少しだからっ、ちょっと離れてろよ!」
「もう少しか。」
手元を覗いて見ると、泡だらけの皿が一枚残っている程度だった。この程度なら少しくら
いちょっかいを出しても平気だろうと、跡部はエプロンの下に両手を滑り込ませ、プチプ
チとシャツのボタンを外していく。
「ちょっ・・・何してんだよ!?景吾っ!!」
「気にすんな。テメェは洗いもの続けてろよ。」
「気にするなったって・・・うおぅっ!?」
「よし、上はオッケーだな。」
いつの間にか跡部は、宍戸の上着をエプロンを残したまま脱がせてしまった。何て器用な
ことをするんだと、半分感心し半分呆れながら、宍戸は最後の一枚の皿の泡を流す。下手
に抵抗するのも面倒だと、特に跡部をはがすことをしないでいると、今度はズボンのチャ
ックのあたりに手が回されていた。
カチャカチャ・・・
ベルトを外され、チャックを下げられ、今にもズボンが下げられるというところで、宍戸
は最後の一枚の皿を水切り桶に置く。濡れた手をエプロンで拭くと、宍戸はくるっと振り
返り、跡部を怒鳴った。
「だーもうっ、さっきからテメェは何なんだよ!!」
「テメェの裸エプロン姿が見てぇ。」
「・・・・は?」
「テメェが自分からそんなことしてくれるとは思えねぇからな。強制的にさせてみようか
と思って。」
「な、何、アホなこと言ってんだよっ!!」
無茶苦茶なことを言ってくる跡部に、宍戸は真っ赤になって反論する。しかし、跡部は本
気なようで、すぐにでも脱がせるズボンを下着もろとも一気に下ろした。何とか跡部の腕
から抜け出そうとした宍戸だったが、下げられたズボンが足に絡み、バランスを崩してそ
の場に転んでしまう。
「うわあっ!!」
転んで体勢が崩れているのをいいことに、跡部は足に絡んでいたズボンと下着を取り去り、
ポイっとどこかへ投げてしまう。ズボンも完全に脱がされてしまったことで、宍戸は完璧
に裸エプロン状態になってしまった。
「何すんだ、アホっ!!ズボン返せ!!」
「やっぱ、似合うじゃねぇか。その格好。すげぇ萌えだぜ。」
「萌えって何だよ!?変態!!」
「たまにはこういうのもいいじゃねぇか。せっかくこういうシチュなんだし、今日はここ
でするか。」
「ふ、ふざけんな!そんなこと・・・・」
ダンッ!!
キッチンでそんなことをするなど冗談じゃないと、抵抗しようとする宍戸だったが、肩を
掴まれ、床に叩きつけられるように押し倒され、その衝撃と驚きから何も言えなくなって
しまう。
「いい子にしてたら、いつも以上に気持ちよくしてやるからよ。無駄な抵抗はすんなよ?」
「う・・・」
この状態で、断るのはもう不可能だ。仕方ないと覚悟を決め、宍戸はおずおずと跡部の首
に腕を回した。
押し倒したままの状態で、跡部は宍戸の口を自らの口で塞ぎ、エプロンの下に手を入れ、
熱の中心を弄っていた。とろけるようなキスと、緩やかな愛撫に宍戸はすっかり酔わされ
る。
「ん・・・はっ・・・ぁん・・・」
「さっきよりは、少しはやる気になってるみてぇだな。」
「ハァ・・・んっ・・・景吾っ・・・」
唇を離せば、一筋の糸が二人の唇を繋ぐ。今日の跡部の愛撫は、いつもより数倍優しく、
本当に少しずつ快感を感じる度合が高まってゆく。先走りの蜜で手が濡れるくらいになる
と、跡部はそこに触れるのをやめてしまう。
「・・・景吾?」
もう少し触っていて欲しいというニュアンスを含ませながら、宍戸は跡部の名を呟く。し
かし、跡部はそれ以上は触れようとしなかった。その代わりに宍戸を抱き起こし、ひょい
っと持ち上げると、そのままテーブルの上へと座らせた。
「何で・・・テーブル?」
「こっちのがいろいろ都合がいいと思ってな。」
「よく分かんねぇけど・・・・なあ、景吾・・・」
テーブルの上に座らせるのはよいが、とりあえず中途半端に高められた熱を何とかして欲
しいと、宍戸はもぞもぞとしながら跡部を見た。その表情だけでも十分クるが、もう一押
し欲しいと、跡部はとある要求を宍戸にする。
「言いたいことがあるなら、もっとハッキリ言わなきゃだぜ、亮。」
「う・・・でもよ・・・」
「まあ、言葉に出さなくてもいいから、そのエプロン自分でめくって足開けよ。そうした
ら、テメェのして欲しいことしてやるぜ。」
ニヤリと笑いながら、跡部は言う。宍戸のして欲しいことなど、百も承知だ。しかし、だ
からこそ、宍戸にもっといろいろして欲しいと思ってしまうのだ。
「こ、これめくりゃ・・・いいんだな・・・・」
「ああ。」
羞恥心から跡部から目をそらし、頬を赤く染めながら、宍戸はゆっくりエプロンの裾を両
手で持ち上げる。エプロンの下には、トロトロと蜜を溢した熱の塊が、触れて欲しいと言
わんばかりに、存在を主張していた。
「すげぇ・・・恥ずかしい・・・・」
「さっき少し弄ってやったので、すげぇ食べごろって感じになってるぜ。」
「なっ・・・!?」
「今度は口でしてやんよ。」
そう言いながら、跡部は宍戸の熱をパクンと口に含んだ。いくら羞恥心を感じていても、
身体の感覚は正直だ。ずっと触れてもらいたかったところに、望んでいた以上の刺激が与
えられ、宍戸は思わず甘い声を漏らす。
「んあっ・・・・」
そんな宍戸の声を聞き、跡部は宍戸自身を咥えながら、ふっと笑う。もっとイイ声を上げ
させてやろうと、わざとらしく音を立て、跡部はちゅくちゅくと口を動かす。
「あっ・・・んぅ・・・ふあっ・・!」
「テメェは口でされんの好きだよなあ?」
「そ、そんなこと・・・ねぇもんっ・・・・」
「けど、手でしてたときより、ココの反応はイイみたいだぜ?」
つーっと指で茎の形をなぞった後、跡部はもう一度それを口に含み、少し強く吸い上げる。
その瞬間、宍戸の体は一際大きく震えた。
「ああぁんっ・・・!!」
トクンと熱いミルクが放たれ、跡部の口を一気に満たす。少し苦味のあるそのミルクは、
跡部にとっては、最高の蜜の味であった。
「ほーら、こんなにすぐにイッちまうんだ。嫌いなはずはねぇよなあ?」
「うう・・・・」
顔を上げ、舌舐めずりをしながら、そんなことを言う跡部に、宍戸は言い返す言葉が見つ
からなかった。あまりの恥ずかしさに宍戸は半泣き状態であった。そんな泣き顔も可愛ら
しいと、跡部の口元は自然と緩んでくる。
「本当、テメェはどんな顔してても可愛いよな。」
一筋頬を伝う涙を舐め取ると、跡部はそんなことを呟く。まだ、恥ずかしさは抜けないが
自分だけ攻めたてられているのが少し悔しいと、宍戸はくっと顔を上げて跡部を見た。そ
して、跡部の右手を取り、自分の口元まで持って行く。
「何だよ?亮。」
「別に何だっていいだろ・・・」
少し不機嫌気味な口調でそう言い放ちながら、宍戸は跡部の指を口に含む。人差し指と中
指、そして、薬指までを丁寧に舐め、唾液で濡らすと、ゆっくりと口から離した。
「慣らす準備ってか?」
「まあな。」
「テメェにしては、気が利くじゃねぇか。だったら、お望み通りじっくりテメェの可愛い
蕾を弄ってやるよ。」
開いたままの足の中心に、跡部は宍戸に濡らしてもらった指を持って行く。その指が蕾に
触れると、宍戸はその身をぶるりと震わせる。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だぜ。」
「べ、別に怖がってなんかねぇよっ・・・」
「だったら、今の震えは期待の震えと見るぜ。」
跡部が濡れた指をぐいっと中に埋め込むと、宍戸は甲高い声を上げる。
「んっ・・ああっ・・・!」
「おっ?何だ、結構ココもやる気満々じゃねぇか。自分から勝手に指飲み込んでくぜ?」
「やっ・・・んなこと・・・言うなあ・・・・」
「だって、本当のことだぜ。ほら、もう二本目も入っちまう。」
「うあっ・・・ああっ・・・!!」
二本の指を簡単に飲み込んでしまうことに自分自身驚きつつも、入口を開かれる感覚と内
側を探られる感覚に、宍戸の全身は粟立つ。少し指を動かすだけで、過敏に反応する宍戸
の様子を見ながら、跡部の興奮は次第に高まっていった。
「んっ・・・あ・・・け、景吾っ・・・・」
「アーン?どうした?」
「指・・・じゃ・・・もぉ・・・やだ・・・・」
「ほぅ。じゃあ、何がいいんだよ?」
「景吾の・・・景吾のが・・・欲し・・・ぃ・・・・」
蕾の内側がトロトロになるまで弄られて、宍戸は指ではもう物足りなくなる。荒い呼吸の
合間に紡がれる宍戸の言葉に、跡部のリミッターは完全に外れる。邪魔なので、横によけ
ておいた椅子を宍戸の前にガタンと置くと、跡部はそれに座り、ベルトを外して宍戸を見
た。
「欲しいなら、自分で入れろよ。俺はいつでも大歓迎だぜ。」
「でも・・・その椅子高いから・・・足がつかな・・・」
「つかない方がいいだろ。自分の重さで奥まで入るぜ?」
跡部にそう言われ、宍戸はずくんと身体の奥が疼く。まるで催眠術にかけられたかのよう
に、宍戸はテーブルから直接跡部の上に移動し、椅子の足と足を結んでいる木の棒にいっ
たん足をかける。
「入れたら、足、ちゃんと離せよ。」
「う、うん・・・」
ドキドキと胸を高鳴らせながら、宍戸は跡部の首に腕を回す。少しでも入れやすいように
してやろうと、跡部は両手で宍戸の双丘を掴み、蕾を広げるかののように外側へ引っ張る。
広げられた蕾を跡部の楔にぐっと押しつけると、宍戸はゆっくりと熱く大きなそれを自分
の中へ取り込んでいった。
「んんっ・・ああぁ・・・あっ・・・!」
「まだ先っぽしか入ってないぜ。」
「ハァ・・・んっ・・だって・・・景吾の・・・おっきいから・・そんな急には・・・」
「俺としては、早くもっとテメェの中に入りたいんだよな。」
「やっ・・・待っ・・・」
もっと早く宍戸の奥へ辿り着きたいと、跡部は宍戸の膝を掴み、その足を無理矢理外側へ
開かせる。跡部の力に抗えず、木の棒にかけられていた足はそのまま宙に浮かされた。自
らの体重を足で支えることが出来なくなり、その重さは接合部へと集中する。
ズッ・・・ズズッ・・・
「ひっ・・・ああぁんっ!!」
「フッ、最高だぜ。根本までテメェの中に入っちまった。」
「うっ・・・あぁ・・・あっ・・・はっ・・・」
一気に内側が大きな熱で満たされ、宍戸はほんの少しの苦しさと息が止まってしまいそう
なほどの快感に、がくがくと身を震わせ、ポロポロと涙を流す。動かなくとも宍戸のそこ
はきゅうきゅうと激しく跡部のものを締め付け、跡部に言いようもない快感と興奮を与え
ていた。
「ハァ・・・あっ・・・景吾ぉ・・・・」
「すっげぇきゅうきゅう締め付けてきやがるぜ。そんなにイイのかよ?」
「景吾の・・・が・・・俺ん中・・・拡げて・・・それが・・・たまんなくて・・・・」
「随分エロいこと言ってくれるじゃねぇか。けど、この状態だとあんまり動けねぇのが難
点だな。」
「このままでも・・・充分・・・イイぜ・・・」
うっとりとした表情で、宍戸はそう呟く。そんな宍戸の表情に跡部はぞくっとする。何と
かして、もっと宍戸を乱してやりたいと考えていると、跡部は自分のポケットの中にいい
ものが入っていることを思い出す。繋がったままの状態でごそごそとズボンのポケットの
中を探ると、跡部はそれを取り出した。
「いいもん見つけたぜ、亮。」
「んっ・・・何・・・?」
「超小型ローターだ。何かに使えるかと思って、ポケットの中に入れておいたんだよな。」
「マジかよ・・・」
何てものをポケットに入れてるんだと思いつつも、今の状態ではそれほど頭が回らない。
それをどう使うかなど、分からないままぼーっとしていると、ふと拡げられている蕾のあ
たりに何かが当たるのを感じた。
「えっ・・・ちょ、ちょっと待て・・・まさかそれ・・・」
「アーン?せっかくあるんだから使わなきゃもったいねぇだろ。」
「いや・・・そんなの無理っ・・・もう入んねぇよ・・・・」
「テメェのココならいけるって。ほら、ちゃんと入るぜ。」
「ひ・・ぅあっ・・・やあぁ・・・・」
自分の熱に添わせるようにして、跡部は持っていた小型のローターを宍戸の中に埋め込む。
ちょうど前立腺のある部分まで埋め込むと、跡部は指を抜いた。
「あっ・・・ハァ・・・あ・・あっ・・・」
「ちゃんと入っただろ?」
「入ったけど・・・こんなの・・・うあっ・・・」
入ったは入ったが、跡部のものだけでもいっぱいなのに、小型とは言えども一つのロータ
ーがプラスされれば、その圧迫感は相当なものだ。苦しそうに息を吐いている宍戸を見て、
早く楽にしてやろうと、跡部はローターのスイッチに指を置いた。
「これで動かなくても、イイ感じに気持ちよくなれるぜ?」
カチカチ・・・
小さな振動音と共に中のローターが動き始めると、宍戸はビクンと身体を震わせる。内側
の中でも一番敏感な部分を集中的に刺激され、宍戸は悲鳴にも似た喘ぎ声を上げた。
「ひああぁっ・・・やっ・・ああぁんっ!!」
「くっ・・・こりゃかなりクるな・・・・」
跡部のモノにもローターはバッチリ触れているわけで、その振動は跡部の熱にも大きな刺
激を与える。断続的に与えられる刺激に耐えきれず、宍戸はそのまま達してしまった。
「ああっ・・・もう・・・ダメ・・・イクっ・・あっ・・・ああぁ・・・っ!!」
パタパタと白濁の蜜を放ち、身につけているエプロンを汚すが、跡部はローターのスイッ
チを止めようとしない。一番快感の強い状態を超えても、刺激を与えられ続け、宍戸の体
はビクビクと痙攣し続ける。
「やっ・・・景吾・・・も・・・止めて・・・あっ・・・ひああ・・・」
「まだ俺様はイってないぜ。それに、コレ、思った以上に気持ちイイもんだしな。」
「け、けど・・・もう・・・おかしくなっちまう・・・んっ・・・ああ・・・」
「ったく、しょうがねぇなあ・・・」
その言葉を聞いて、宍戸はローターのスイッチを止めてもらえるものだと思っていた。し
かし、そんな宍戸の期待とは裏腹に、跡部はそのスイッチを最大レベルまでに動かす。そ
の瞬間、先程よりも数倍強い振動が二人の敏感な部分を擦り上げる。
「ひっ・・・ああぁ―――っ!!」
「く・・あっ・・・これは、さすがに・・・・」
「ああっ・・・あっ・・・ああぁんっ!!」
その強い刺激に宍戸は絶頂の上に絶頂を迎えるような形で果てる。しかし、どんなに蜜を
放とうとも、その絶頂感はいつまで経っても消えず、宍戸は跡部にしがみつきながら、治
まることのない快感の波に身体を全て支配されていた。
「ふあっ・・・あっ・・け、けい・・ご・・・もう・・・死んじゃう・・・」
「確かにこれはヤバいな・・・俺も・・・もう限界だ・・・・」
「あんっ・・・またっ・・・んあっ・・・ひあぁんっ!!」
「くっ・・ああっ・・・!」
お互いの身体を強く抱きしめ、二人は同時に果てる。達した瞬間、跡部の指は無意識にロ
ーターのスイッチを切っていた。そのため、果てた後に感じられるのは、お互いの身体の
熱と心地よい脱力感だけであった。
汚れてしまった身体とエプロンや服を洗うと、二人は寝巻きに着替えて、ゆっくりと部屋
でくつろいでいた。宍戸の濡れた髪をドライヤーで乾かし、櫛を使って跡部はその綺麗な
髪を丁寧に梳く。
「景吾って、本当俺の話聞かねぇで、無理矢理するよな。」
髪の毛を梳いてもらいながら、宍戸はそんなことを漏らす。しかし、跡部は悪びれること
もなく、その言葉に答えた。
「自分の好きな奴とイチャつきたいと思うのは当然のことだろ。」
「まあ、それはそうなんだけどよ、テメェのはちょっと強引すぎ。」
「けど、テメェだって最終的にはノってくるじゃねぇか。」
確かにそれは否定出来ないと、宍戸は返す言葉がなくなる。宍戸が急に黙り込んでしまっ
たので、今度は跡部の方が宍戸に質問するように話しかける。
「じゃあ聞くが、テメェは俺に無理矢理あーいうことされて、本気で嫌だとか思ってんの
か?」
「・・・・本気で嫌とは、思わねぇけどよ。」
「じゃあ、別に問題ねぇじゃねぇか。」
「そうなんだけどよぉ・・・・」
宍戸が言いたいのはそういうことではなかった。もう少し、甘い雰囲気があった後にそう
いうことが出来たらなあと、実に乙女チックなことを考えていたのだ。やっぱり跡部には、
伝わらないかと、少々ヘコみながら小さく溜め息をつくと、跡部が何かを察したように、
宍戸の髪にキスをする。
「・・・何だよ?」
「髪、梳き終わったし、ちょっと立て。」
「お、おう。」
何がしたいのだろうと不思議に思いながらも、宍戸は素直に椅子から立ち上がる。宍戸が
立ち上がると、跡部はその目の前に移動し、ゆっくりと両手で宍戸の体を包んだ。その抱
擁に先程のような強引さはなく、宍戸の体を気遣うような優しさが感じられた。
「えっ・・・け、景吾・・・?」
「愛してるぜ、亮。」
「えっ!?い、いきなり何っ・・・」
「して欲しいことがあるなら遠慮せずに言えよな。俺様は、テメェが喜ぶことは何でもし
てやりたいと思ってんだからよ。」
「・・・・う、うん。」
ほど良い力で抱きしめられながら、優しい口調でそんなことを言われ、宍戸はきゅんきゅ
んと胸がときめく。何も言わなくても、して欲しいことが伝わっている。以心伝心という
言葉がピッタリなこの状況に、宍戸の心の中は何とも言えない幸福感でいっぱいになった。
「・・・景吾。」
「ん?何だ?」
「裸エプロン・・・今度は無理矢理じゃなくて、俺が自発的にしてやるよ。」
「っ!!」
「俺だって、景吾の喜ぶことはしてやりたいと思ってるんだからな!!」
「あ、ああ。」
真っ赤になりながら、宍戸はそんなことを言い放つ。そんな宍戸に、跡部はもうメロメロ
だった。お互いのことを一番に考えながら、お互いのして欲しいことをする。新婚ホヤホ
ヤの二人にとっては、相手の喜ぶことを出来た時が、一番幸せな時間なのだ。
END.