ゴールデンウィークに入ってすぐのこと。憲法記念日と呼ばれる日に滝が氷帝のレギュラ
ーメンバーを呼び出した。近くの公園に行き呼び出した理由の概要をみんなに話す。
「ゴメンね。急に呼び出したりしちゃって。」
「いえ。ちょうど暇してましたし、先輩達に久しぶりに会えてよかったです。」
「で、何の用だよ滝?」
「あっ、そうそう。明後日ジローの誕生日じゃん?だから、子供の日のお祝いも兼ねてド
ッキリパーティーでもやりたいなあと思ってさ。」
「へぇ。おもしろそうじゃん。」
「それで、ものは相談なんだけど、どっかパーティーが出来そうな場所ってないかな?」
「そうですね・・・」
ジローの誕生パーティーをやりたいとは思うのだが、なかなかいい場所が思い浮かばない。
なので、滝は他のメンバーにどこかいい場所はないかと尋ねた。誰かの家、カラオケボッ
クス、学校の部室などいろいろ案は出るがいまいちしっくりこない。
「うーん、ホントどっかないかなあ。」
「先輩。」
「ん、何?日吉。」
「今からじゃ取れるか分かんないですけど、この近くの公民館なんてどうですか?」
「公民館?」
「ええ。一つくらいなら空いてると思いますけど。」
「まあ、公民館のホールならそれなりに広いし、悪くはねぇよな。」
「じゃあ、行ってみようぜ。」
というわけで、面々は近くの公民館へと向かった。奇跡的に2階の小ホールが空いていて、
5月5日の午後に使用出来ることになった。
「よかったー。これでパーティー出来るね。」
「公民館でやるなんてジローも思わへんやろな。」
「そうだ!これからみんなでプレゼント買いに行こうぜ!!」
「そうだな。じゃ、行くか。」
『おう!』
岳人の提案でこのままデパートに行って、プレゼントを買いにいくことにした。デパート
に着くと、それぞれかぶらないように何を買うかをお互いに言い合って、好きなものを買
う。ジローの趣味からして、メンバーが向かう場所は寝具売り場、本屋、洋服売り場、お
もちゃ売り場に限定された。
「跡部、俺あんまり金持ってねーんだ。だから、プレゼント一緒に買ってくんねぇ?」
「別にいいけど。じゃあ、お前が選べよ。俺、あいつに何あげたらいいか分かんねーもん。」
「了解。じゃあ、やっぱ昼寝用品だろ。」
「何だよそれ?それを言うなら寝具だろ。」
跡部と宍戸は一緒にプレゼントを買うことになった。どうやら何か寝具を買うらしい。ね
ることが趣味のジローにとってはちょうどよいプレゼントだ。寝具売り場に行くと滝と鳳
が先にプレゼントを選んでいた。
「おっ、お前らもここでプレゼント買うのか?」
「ジロー先輩だったら、やっぱこういうものの方がいいかなあと思って。」
「跡部達は何買うの?ちなみに俺は安眠枕で長太郎は夏用のタオルケットだよ。」
「そっか。じゃあ、何買う跡部?」
「そうだな・・・・おっ!」
プレゼントを考えていた跡部の目にあるものが映った。
「宍戸、これなんかどうよ?」
跡部が手にしたのは、かなり大きな抱き枕だった。色は赤、青、黄色、緑と四種類。宍戸
はジローのイメージだと言って黄色の抱き枕を選んだ。
「じゃあ、コレにしようぜ。この中なら黄色があいつのイメージだよな。」
「ああ。これで決定だな。」
「俺達先にレジのほう行ってるから。」
「おう。俺達も行こうぜ跡部。」
「ああ。」
滝に鳳、そして、跡部と宍戸は自信を持って選んだプレゼントを持ってレジへと向かった。
「侑士ー、侑士はジローに何買う?」
「せやなあ、何がええんやろ?」
「俺はねー、コレにする!」
岳人が手に持っていたのは、40cmはありそうな羊のぬいぐるみだった。
「コレお腹押すと鳴くんだぜ。」
そう言って、ぬいぐるみのお腹を押す。するとそれは一鳴きした。
「おもしろいなあ。てかそれ、ジローに似てへん?」
「あっ、やっぱ侑士もそう思う?だから、選んだんだけどねー。」
「ホンマそっくりや。」
二人はぬいぐるみがジローにそっくりだとくすくす笑った。岳人はそれを持ってレジに向
かう。忍足はまだ何を買うか決められずに悩んでいた。
「うーん、ホンマに何にしよ・・・」
「侑士、まだ決まんないの?」
「なかなかいいのが思いつかへんのや。」
「えっと、この前話した時に何か漫画の単行本が欲しいけどどうしようかって悩んでたよ。」
「ならそれでええやん。じゃあ、岳人。一緒に本屋行ってくれへんか?」
「おう。いいぜ。」
岳人と忍足は漫画を買おうと本屋へ向かった。その頃、樺地と日吉の2年生コンビは洋服
売り場にいた。
「樺地、お前何買う?」
「・・・・・。」
「決まってないのか?」
樺地は何も答えずにとある種類の洋服が売っている場所に迷わず歩いて行った。日吉はそ
れについて行く。
「?」
「ウス。」
樺地が買おうとしたもの。それはパジャマだった。淡いオレンジ色の半そでのパジャマを
取ってかごに入れる。
「樺地はパジャマか。俺、どうしようかな・・・。」
日吉もしばらく悩んでいた。少しその階を歩き回っていると、ちょっとイイ感じのスリッ
パを見つけた。
「このスリッパ、色もキレイだしこれからの季節涼しそうだな。よし、これにしよう。」
日吉は結局スリッパを買った。ライトブルーの涼しげなデザインのものだ。それを買うと
買い終わったら集まろうと約束していたデパートの入り口へと戻る。そこへ行くともう既
にほとんどのメンバーが戻って来ていた。
「遅いぞ日吉!」
「すいません。」
「じゃあ、帰るか。」
「そうだな。」
というわけで、メンバーはそろってデパートをあとにする。そんな光景を遠くの方から見
ているものが一人・・・・
あっれぇ?あれって跡部達だよな。てゆーか、みんないるよね?宍戸に鳳に岳人に忍足に
滝に樺地・・・日吉もいるよ。何だよみんなして。もしかして俺だけハブられてる?えー、
そんなのかなC〜。まあ、いいや。さっさと買い物終わらせて帰らないと怒られちゃう。
あとで誰かにメールしてみよーっと。
ジローは跡部達を発見して、自分だけハブられてるのかと思いちょっとショックを受ける。
だが、楽観的なジローのこと。そんなに真剣には悩まない。でも、少しは気になるので家
に帰ってから、誰かにメールをしてみることにした。
「ただいま〜。」
「おかえり。」
「荷物ここに置いとくから。」
親に買い物を頼まれていたジローは買ってきたものを玄関に置き、さっさと自分の部屋へ
戻った。そして、さっきのことを尋ねようとみんなにメールを送る。
「一人に送っても返事来なさそうだからみんなに送っちゃおう。」
メールを送ってからしばらくするとそれぞれから返事が返ってくる。もう家に帰ってそれ
どころじゃなくなり、返事を返さないメンバーも何人かいた。
『別に何でもないよ。気にしないで。』
「何でもないってみんないたじゃん。何で、俺だけ呼ばれなかったんだよー。」
滝からの返事を見てジローは不満そうな声をあげる。
『たまたま会っただけですよ。それにジロー先輩寝てるかなあっと思って。』
「たまたまで全員揃うわけないじゃんか。何だよ長太郎の奴。」
鳳の返事にも納得いかないらしい。
『・・・秘密です。』
「秘密って何が!?樺地のメール意味深だなあ。」
何を思って樺地はこんな文を送ったのであろうか?ジローはメチャクチャそのことに対し
て興味津々だった。だが、ジローはこのあたりで急に睡魔に襲われ眠ってしまう。この後、
岳人や忍足からも返事が来たのだが、そんなのは全く無視であった。
それから、2日後。氷帝レギュラーメンバーは3日と同じようにあの公園に集まった。
「誰がジローに連絡する?」
「つーか、あいつまだ寝てんじゃねーの?」
「もし電話にでなかったら、樺地、お前直接ジローを連れて来い。」
「ウス。」
結局、ジローに電話をするのは跡部と決まりさっそく電話をかけた。
トゥルルル・・・トゥルルル・・・
「出ねーな。」
トゥルルル・・・トゥルルル・・・トゥルルル・・・・カチャ
「ちっ、留守番電話になっちまった。」
何度かかけてみるがやはり結果は同じ。こんなところで時間をくっていてもしょうがない
ので、樺地だけがジローの家に向かうことになり、他のメンバーは先に公民館に行って、
準備をすることにした。
ピンポーン・・・
「ふぁ〜、は〜い。」
電話には一度も出なかったジローだったが、呼び鈴には反応し玄関の所まで出てきた。
「あれ?樺地じゃん。どうしたの?」
「ウス。」
樺地はぺこりと頭を軽く下げた後、ひょいっとジローを持ち上げ肩に担いだ。
「うわあっ、ちょっと・・・樺地、何!?」
何が起こったか分からないジローを初めは慌てる素振りを見せたが、そのうちその状態で
普通に樺地と会話をし始めた。
「ねぇ、樺地。どこに行くの?」
「・・・・。」
「それにこの前のメール、秘密ですって何のこと?」
「・・・・秘密です。」
「だから、それが何なのか教えてよ〜!!」
何も教えてもらえないので、ジローは少し手足をバタバタとさせるが樺地は全く動じない。
そのうち公民館に到着してしまった。跡部達はその様子を2階の窓から見ていて、パーテ
ィーがすぐにでも始められるようにスタンバイをしていた。
「公民館??」
何故公民館なんかにつれてこられたのか分からないジローは首を傾げて、不思議そうに呟
く。樺地はそのままパーティーの用意がされている2階のホールへと向かう。そして、扉
の前まで来るとジローを下ろした。
「ドアを・・・・開けて下さい・・・。」
「えっ?うん・・・。」
ジローは樺地の言う通り目の前にあるドアを開けた。
パンッパーンッ!!
「!!」
『ハッピー・バースデー!!ジロー!!』
クラッカーの音が鳴り響いたと思うと、目の前に大きなケーキとたくさんのごちそう、そ
して、跡部達みんなの顔が目に入った。
「えっ!?な、何!?何なのこれ!?」
突然の出来事にジローは動揺しまくり。わけも分からず棒立ちのままだ。
「どう?ジロー。ビックリした?」
「うん!超ビックリ。もしかしてこれ、ドッキリパーティーって奴?」
「まあ、そんなもんだな。」
それを聞いた瞬間、ジローの顔がパアッと明るくなり、一気に笑顔になった。
「うっわー、マジマジすっげー!!俺、超感激ー!!うれC〜!!」
ジローが素直に喜ぶので、まわりのメンバーもうれしくなり笑顔になった。ジローを中心
に椅子に座り、パーティーを始める。
『ハッピー・バースデー トゥーユー♪ハッピー・バースデー トゥーユー♪ハッピー・
バースデー ディア ジロー♪ハッピー・バースデー トゥーユー♪』
「ふぅ〜〜」
歌が歌い終わるとジローは16本のロウソクを一気に吹き消す。大きな拍手があった後、
メンバーをそれぞれ自分が用意したプレゼントをジローに渡し始めた。
「誕生日おめでとうジロー。はい、プレゼント。」
「ありがとー、滝。何だろう?うわあ、枕だあ!!」
滝からもらったプレゼントを開けて、ジローはうれしそうな声を上げる。
「これ、俺と跡部から。ちょっと、滝とかぶってるかもしんねーけど、まあ、それなりに
使ってくれ。」
「おっきー!!すごーい、抱き枕ー!!」
跡部と宍戸のプレゼントもかなり気にいったらしい。
「誕生日おめでとうございます。これ、これからの季節使えると思うんで是非使って下さ
い。」
鳳は袋に入ったタオルケットを渡す。ジローはそれを袋から出して、頬にくっつけてその
肌触りを確かめる。
「これすっげー柔らかい。気持ちE〜。ありがと、鳳。」
「どういたしまして。」
「ジロー、これかなり可愛いと思うんだけどどう?」
「羊のぬいぐるみだ!かわE〜!!」
「ただのぬいぐるみじゃないんだぜ。」
岳人は自信満々にぬいぐるみのお腹を押した。
メェー、メェー
「わあっ!!マジマジすっげー!!今鳴いたぜ。」
「だろ?」
メェーメェー鳴くぬいぐるみにジローは感動している。忍足も用意しているプレゼントを
ジローに手渡した。
「誕生日おめでとさん。ジロー。」
「ありがと。何だろ?あー!!これ欲しいけど買おうかどうか迷ってた漫画だー!!うれ
C〜Vvサンキュー、忍足!」
岳人の言っていたことは本当だったらしく、ジローは漫画をプレゼントされ大喜びだ。
「芥川先輩。これどうぞ。」
「何々?スリッパだー。何か色がすっげーかっこEー!!ありがと日吉!!」
「喜んでもらえてよかったです。」
たくさんのプレゼントをもらって大はしゃぎのジローに、樺地は無言でキレイに包装され
たプレゼントを差し出す。
「樺地は何?」
「・・・ウス。」
キレイに包装紙をはがし、ジローは樺地からのプレゼントを出す。中からは自分の好きな
色のパジャマが出てきた。
「パジャマだ!それも俺の好きな色のオレンジー。うれC〜Vv樺地ありがとぉー。」
ジローは思わず樺地に抱きつく。他のメンバーはその光景を見て大笑いだ。
「じゃあ、みんなでケーキとかごちそう食べようぜ。ジロー、お前の好きなジンギスカン
とかムースポッキーもいっぱいあるぜ。好きなの食べろよ。」
「うん!!」
「あっ、あと柏餅とかもあるからな。」
「やったー!!今日は本当みんなありがとう!!」
ジローは本当にうれしそうにみんなにお礼を言った。これから数時間笑顔が絶えることは
一度もなかった。ジローにとっては最高に楽しい誕生日になったのであろう。
「ジロー、やっぱ寝ちまったな。」
「ああ。まあ、予想通りだけどな。」
「でも、うちらの中でジローが一番誕生日早いんだよね。」
「そういやそうだな。」
「でも、5月5日生まれなんてピッタリすぎじゃねぇ?」
「せやなあ。子供の日やもん。」
「ジロー、本当子供っぽくて可愛いよな。」
「まあな。」
樺地がジローをおんぶしているという状態でみんな家に帰ろうとしている。樺地、跡部、
宍戸だけがジローの家に向かうことになった。
「それじゃあ、またな。」
「ああ。じゃあな。」
「また、みんなで集まりましょうね。」
「そうだな。」
岳人、忍足、滝、鳳、日吉はここで4人と別れ、自分の家と帰る。ジローは気持ちよさそ
うに眠ったまま、樺地や跡部につれられ家へと送ってもらった。宍戸と跡部はプレゼント
を抱え、樺地の前を歩いている。
「今日は本当楽しかったな。」
「ああ。お前も楽しかっただろ?樺地。」
「ウス。」
「またこういうの出来るといいな。」
「ああ。そうだな。次は岳人か?」
「でも、9月かあ。ま、それまで楽しみをとっておくってのもいいよな。」
3人とも今日のパーティーに大満足している。やはりこういうことは楽しいらしい。ジロ
ーを家まで送り、プレゼントも置いていくと、3人はそれぞれ自宅へと帰って行った。
5月5日
今日はとっても楽しい一日だった。こんな楽しい誕生日は初めてだ。今日はみんなにもら
ったプレゼントを身に付けて寝たいと思う。きっと、最高にいい夢が見られるだろうな。
みんなホントにありがとう!
END.