ここは忍術学園の医務室。午前の授業を終えた数名の保健委員プラス会計委員長が話をし
ていた。
「ゴメンね、左近、伏木蔵。またお留守番お願いしちゃって。」
「いえ、どうせ今日は特にやることもなくて暇でしたから。」
「せっかくのお祭りなんですし、たくさん楽しんできて下さい。」
今から出かけようとしている伊作はいつもの制服でもなく、外出用の私服でもなく、桜色
に近い淡い色の浴衣を身に付けていた。隣で保健委員の話を聞いている文次郎も色は違え
ど、似たような格好をしている。今日は文次郎の実家のすぐ近くの村で夏祭りがあるのだ。
その祭りに行くことになり、伊作は医務室の留守番を左近と伏木蔵に任せることにした。
「そろそろ出ねぇと、時間なくなっちまうぜ、伊作。」
「うん、そうだね。じゃあ、いってきます。」
『いってらっしゃい、伊作先輩。』
二人の後輩に見送られ、伊作は医務室を後にする。その表情は実に嬉しそうであった。
「なんかあんなに楽しそうにしてる伊作先輩、久しぶりに見たよな。」
「そうですね。お祭りですし、やっぱり楽しくなっちゃいますよ。」
「だよなー。けど、ぼくとお前とで留守番するとさあ・・・・」
「そうなんですよね。何故か怪我人がいっぱい来ちゃうんですよね。」
以前二人で留守番した時は、日常では考えられないくらいたくさんの怪我人がやってきた。
このシチュエーションはその時とかなり似ていると、二人は苦笑しながら医務室の整頓を
始めた。
しばらく特に何もない時間が続き、二人は落ち着いた様子で作業をしていたが、突然がら
っと医務室の障子が開いた。
「伊作っ、長次が・・・」
慌てた様子で中に入って来たのは、六年生の仙蔵と長次であった。医務室に居るのは、基
本的に伊作なので、仙蔵はそこに入るとまず伊作の名前を呼んでしまう。
「ど、どうしたんですか?立花先輩。」
「伊作先輩は、潮江先輩と出かけてますけど。」
「何っ!?この緊急時に・・・・何やってんだあいつらは!」
「落ち着け、仙蔵・・・」
取り乱した様子の仙蔵に声をかける長次は左腕に白い布を巻き、そこを右手で押さえてい
る。それに気づいた左近は、長次が怪我をしているということに気がついた。
「伏木蔵、包帯と消毒薬用意しろ。」
「は、はい。」
「中在家先輩、今、手当てしますからここに座って、怪我の状況を教えて下さい。」
長次の腕に巻かれている白い布には、赤く血が滲んでいた。かなりきつく縛られているよ
うに見えるその布にこれだけの血が滲んでいるとなると、出血はだいぶ多いと思われる。
「私の所為だ。今日は私と長次は野外実習だったんだが、そこで流れ矢が飛んできてな。
不覚にも避けきれなく、私に当たりそうになってのを、長次がかばって・・・」
自分の不注意の所為で長次に怪我をさせてしまったのを悔んで、仙蔵は今にも泣きそうな
表情になっている。矢が刺さったということで、左近は毒矢であることを心配したが、傷
や長次の様子から、それはないということが分かった。
「確かに出血は多いですけど、毒矢ではないみたいなので大丈夫です。応急処置もしっか
りされてますし。」
テキパキと手当てをしながら、左近は長次と仙蔵にそんな説明をする。消毒をして、しっ
かりと包帯を巻くと、程なくして出血は止まった。二年生と一年生であってもさすがは保
健委員だと、長次は感心する。
「出血は止まったみたいですね。」
「これでもう安心です。でも、あんまり腕は動かさないで下さいね。」
「ああ・・・ありがとう。」
伏木蔵と左近の言葉を聞いて、長次はいつものもそもそとした口調でそう呟く。出血も止
まり、毒矢でもないことを知った仙蔵は、緊張の糸が切れたのか、ポロポロと涙を流し始
めた。
『た、立花先輩っ!?』
「よかった・・・」
クールで成績優秀と噂される仙蔵が、突然泣き出すのを見て、左近も伏木蔵もかなり驚く。
こんなことで涙を見せるなんてと心の中では思っていても、勝手に出てくる涙はなかなか
止まってはくれない。
「色は忍者の三禁だというのに、ダメだな私は。このまま血が止まらずに長次が倒れてし
まったらどうしよう、毒矢だったら・・・なんてことが、ここまで来るまでにずっと頭の
中を巡っていて、もう胸が張り裂けそうだった。心配で心配で、すごく不安で・・・。長
次を失うなんて・・・私には考えられない。」
『立花先輩・・・・』
ぐしぐしと涙を拭いながら、仙蔵はそんなことを口にする。なんとなく仙蔵の気持ちが分
かる左近と伏木蔵は、ぎゅうっと胸が締めつけられるような気分になる。そんな仙蔵の言
葉を聞いて、長次は優しく仙蔵の頭を撫でた。
「仙蔵・・・・」
「長次。」
「確かに色は忍者にとっては、命を落としかねないよくないものだ・・・けどな、仙蔵の
気持ちはそんな軽いものではないだろう・・・?少なくとも私がお前に抱いてる気持ちは
そんなに軽いものではない・・・・。人を想う気持ちというのは、時に自分の能力以上の
力を出せるものだ。それは悪いことではなかろう?私はそう思っているぞ・・・」
普段は無口で喋っても何を言っているか分からない長次が、ハッキリとした口調でそんな
ことを語っている。長次がそこまで喋っていることに驚く左近と伏木蔵であったが、それ
以上に長次が語っている内容に胸を打たれる。それは、仙蔵も同じであった。
「・・・・そうだな。お前の言う通りだ、長次。」
完全に涙を拭うと、仙蔵は微笑みながら言う。そんな二人のやりとりに左近と伏木蔵は感
動していた。
「みっともないところを見られてしまったな。だが、長次の手当てをしてくれたこと、本
当に感謝しているぞ、お前達。」
「い、いえ・・・」
仙蔵のその言葉を聞いて、当然のことをしたまでだと、左近は首を振る。そんな左近の横
で伏木蔵はいくつかの包帯を用意していた。
「あ、あの・・・これ、取り替える用の包帯です。持っていって下さい。」
「すまないな・・・」
「ありがとう。あまり長居しても迷惑だよな。長次、片腕が使えないと不便だろう?私が
身の回りの世話をしてやる。」
「いや、大丈夫だ・・・」
「遠慮するなって。むしろ私がしたいんだ。やらせろ。」
「・・・まあ、そこまで言うなら。」
「それじゃ、伊作によろしく言っといてくれ。私達は長屋へ戻るとするよ。」
『はい。』
本当に仙蔵は長次のことを想っているのだなあと思いつつ、左近と伏木蔵の二人は、六年
生二人を見送った。二人が医務室から出て行くと、残された二人は大きく息をつく。
「はあ〜、なんだかすごいもの見ちゃったって感じですね。」
「そうだな。でも、中在家先輩の言ってたことはすごくいい言葉だったよな。」
「はい。ぼくちょっと泣きそうになっちゃいました。」
と、伏木蔵がそんなことを口にした瞬間、廊下から何人かの泣き声が聞こえ、それと同時
にバタバタと誰かが走ってこちらへ向かって来る音が聞こえる。
バタバタバタ・・・・スパーンっ!!
『っ!!??』
物凄い勢いで医務室に飛び込んで来たのは、体育委員会の面々であった。三年生以下のメ
ンバーは何故か大泣きをし、委員長の小平太はぐったりとした滝夜叉丸を腕に抱えていた。
「大変だっ!!滝夜叉丸がっ・・・・」
『うわ――ん、滝夜叉丸先輩が死んじゃうー。』
「ちょ、ちょっと落ち着いて下さい!!何がどうしたって言うんです!?」
小平太自身も慌てており、後輩メンバーは状況を話せる状態ではない。とにかく小平太を
落ち着かせて、何があったかを聞こうと、左近はハッキリとそう言った。
「委員会で裏裏山を登ったり下りたり登ったり下りたりしながらマラソンをしてたんだけ
どな、忍術学園に着いた途端に滝夜叉丸が倒れて・・・他の奴らは何ともないのに・・・
滝夜叉丸は一体どうしてしまったんだ!?助かるのか!?」
ここまで大泣きしているのは、その地獄のようなマラソンで疲れているからなのだろうと、
二人は悟った。とにかく滝夜叉丸がどのような状態なのかを見ないと分からないと、二人
は小平太の腕に抱かれている滝夜叉丸の様子をうかがう。顔色が悪く、呼吸も荒い。異常
に汗をかいているところを見ると、熱中症らしいということがうかがえた。
「七松先輩、マラソンしている間、水分補給とかちゃんとしました?」
「一応、休憩時には川で水を飲ませたりしてたが・・・・滝夜叉丸はそんなに飲んでいな
かった気がするな。」
「この症状を見る限りでは、たぶん熱中症だと思います。脱水症状を起こしかけているの
で、とにかく水分を取らせないと・・・」
保健委員は怪我だけではなく、熱中症や日射病の応急処置もしっかりと把握していた。熱
中症時の水分補給はただの水ではなく、薄い食塩水が効果的だと理解している伏木蔵は、
医務室にある湯呑に水を入れ、一つまみの塩を入れた。
「これ、塩水です。飲ませてあげて下さい。」
伏木蔵から水を受け取り、コクンと頷く小平太であったが、滝夜叉丸は意識を失っている
ため、湯呑から水を飲ませるのは極めて難しかった。どうすれば上手く飲ませることが出
来るだろうと考えた結果、小平太は左近や伏木蔵が予想だにしなかった行動に出る。
ぐいっ
『えっ・・・?』
渡された水をがっと口に含むと、小平太はそのまま口の中の水を口移しで、滝夜叉丸に飲
ませた。反射的に口の中に入ってきた水を滝夜叉丸は嚥下する。湯呑の中の水が全てなく
なるまで、小平太はそのように滝夜叉丸に水を飲ませ、心配そうに様子をうかがった。
「ん・・・あ・・れ・・・?」
「滝夜叉丸っ!!」
『滝夜叉丸先輩っ!!』
水分補給が出来たことで、とりあえず滝夜叉丸は意識を取り戻した。しかし、顔色はいま
だに蒼白で、体も熱い。意識が戻ったからと言って油断は出来ないと、左近は注意を促し
た。
「意識が戻ったなら、これ以上ひどくなることはないですね。滝夜叉丸先輩、吐き気とか
頭痛はありますか?」
「・・・いや、少しめまいはするが、吐き気というほどではない。」
「そしたら、後は体温を下げるだけですね。」
「ああ。七松先輩、ここで滝夜叉丸先輩を寝かせてもいいですし、部屋に戻って寝かせて
もらってもいいんですけど、どうしますか?」
「もとはと言えば私の所為だからな。私の部屋で寝かせる。」
きっぱりとそう言い切る小平太に、左近はこれからどうすればいいかを教える。首や脇や
足の付け根など、大きな血管がある場所を冷やして、しっかりと水分を取らせること。ま
た、今日のような気温の高い日は無理な運動を他のメンバーにもさせないことと注意をし
た。
「確かに注意しないとだな。確か熱中症って、ひどくなると命に関わるんだろ?」
「そうですね。今回はそれほどひどくなかったからいいですけど、本当に注意して下さい
よ。」
「分かった。肝に命じておくよ。よーし、そしたらお前ら、氷と水を私の部屋に持って来
い!!急げよ!」
『はいっ!!』
滝夜叉丸が気がついたことに安心した後輩メンバーは、マラソンで疲れているのも忘れて、
小平太の指示に従う。金吾や四郎兵衛、三之助が医務室を出て行った後、小平太はしっか
りと滝夜叉丸を腕に抱き、立ち上がる。
「わっ・・・」
「悪かったな、滝夜叉丸。私の所為で。」
「いえ、私が体調管理をしっかりしていなかったのにも責任があります。・・・先輩の所
為じゃないです。」
「今からしっかり看病してやるからな。して欲しいことがあったら遠慮なく言うんだぞ。」
「・・・はい。」
いつもの高飛車でうぬぼれ屋な雰囲気とは少し違う滝夜叉丸を見て、左近と伏木蔵は唖然
としてしまう。小平太と滝夜叉丸が医務室から出て行くと、左近と伏木蔵は湯呑を片付け
つつ、大変だったと会話を交わす。
「体育委員会も大変だよな。」
「ですね。金吾も四郎兵衛先輩も次屋先輩も大泣きでしたし。」
「でも、あんなにみんなに嫌われてる滝夜叉丸先輩があそこまで心配されてるってのに、
ちょっと驚いたな。」
「何気に失礼ですよ、左近先輩。」
なかなか手厳しい左近の言葉に、伏木蔵は苦笑しながらつっこむ。しかし、その事実には
伏木蔵自身も少し驚いていた。
「それから、七松先輩、まさか水を口移しで飲ませるなんて思わなかった。」
「あー、確かに。あれにはぼくもビックリしちゃいました。」
「だよなあ。でも、ちゃんと飲ませるのにはあれが一番妥当だったのかな?」
ほんの少し顔を赤く染めながら、二人は小平太が滝夜叉丸に口移しで水を飲ませたことに
対しての感想を言い合う。緊急時とはいえ、何のためらいもなしにあんなことが出来る小
平太はさすがだなとどちらも思っていた。
「それにしても、何だか体育委員会って家族みたいですよね。」
「家族?何でだ?」
「七松先輩がお父さんで、滝夜叉丸先輩がお母さん。次屋先輩が長男で、四郎兵衛先輩が
次男、で、金吾が三男みたいな感じで。」
「あー、確かにそう言われてみればそうかもしれないな。じゃあ、さっきのは『お母さん
が死んじゃうー』みたいな感じか?」
「あはは、そうですね。滝夜叉丸先輩、委員会ではすごくお母さんしてるのかもしれない
ですね。」
「お母さんって・・・。うーん、でも確かに間違ってはないかも。」
あのメンバーだとそうなるだろうなあと、二人は笑いながらそんな話をする。体育委員会
家族設定で盛り上がっていると、また、新たな怪我人が医務室にやってきた。医務室の障
子を開けて中に入って来たのは、まるでお化けのように顔が腫れ上がった人物であった。
『うわああああっ!!!!』
昼間とは言えども、いきなりそんな者に入って来られたら嫌でも驚いてしまう。あまりに
ビックリした伏木蔵は半泣きになりながら、思いきり左近に抱きついた。
「あははは、いいリアクションだな、お前達。」
『ほえ??』
「もー、三郎。下級生を驚かさないの。手当てしてもらえなくなっちゃうよ!」
けらけらと笑う鉢屋に対して、雷蔵はつっこむ。お化けのように腫れ上がった顔というの
は、変装名人鉢屋の変装だったのだ。
「雷蔵先輩・・・?」
「じゃあ、このお化けみたいなのは・・・鉢屋先輩ってコト?」
「ゴメンねー、後でちゃんと叱っておくから。」
軽く鉢屋を小突きながら、雷蔵は左近と伏木蔵にそんなことを言う。雷蔵の顔に戻った鉢
屋は、口に布を当てていた。
「怪我してるのは、鉢屋先輩の方ですか?」
「うん。図書室の本の整理を手伝ってもらってたら、本が落ちて来ちゃって。顔にモロ当
たっちゃったんだよ。それで、唇を切っちゃったみたいで・・・」
唇が切れているのだから、鉢屋自身に喋らせるのはあまりよくないと、代わりに雷蔵が怪
我の説明をする。
「少し見せてもらってもいいですか?」
「ああ。」
口を押さえていた布を取ってもらうと、唇の端の方が確かにざっくり切れていた。結構出
血しているようで、そこを押さえていた布は真っ赤に染まっている。
「結構深く切れてるみたいですね。伏木蔵、ガーゼと絆創膏取ってくれ。」
「はい。」
伏木蔵からガーゼを受け取ると、左近は口の周りについている血を拭う。そんなことをさ
れながら、鉢屋はぼそっと呟いた。
「あーあ、雷蔵が舐めてくれたらすぐ治るのにー。」
『っ!?』
「ちょっ、三郎っ!!何言ってるんだよ!?」
「だって、本当のことだもん。雷蔵がペロペロしてくれたらソッコーで治りそうな気がす
・・・・ぐはっ!!」
「後輩の前でそういうこと言わないっ!!本気で怒るよ、三郎!!」
「もう怒ってるじゃん・・・」
雷蔵に殴られた頭を押さえて、鉢屋は呟く。そんな二人のやりとりを左近と伏木蔵は苦笑
しながら眺めていた。
「あの・・・絆創膏貼りたいので、少し口を閉じていてもらえますか?」
「ああ、すまんすまん。」
口を切っている割にはよく喋る鉢屋に伏木蔵はそんなことを言う。なるべく喋りにくくな
らないように気をつけながら、伏木蔵は鉢屋の傷に絆創膏を貼った。
「これで大丈夫だと思います。」
「変装するのは構いませんけど、傷が開かないように注意して下さいね。」
「りょーかい。とりあえず、手当てしてくれてありがとな。もう血が止まらなくて、吐血
状態でビックリだったぜ。」
そう言いながら、がふっと手の平に血を吐いてみせる。もちろん変装技術を使った手品の
ようなものだ。しかし、それを見て左近と伏木蔵は心臓が止まるような思いをする。
『うわあああっ!!』
「あははは、お前ら本当面白いな。冗談だ冗談。」
「いい加減にしなよ、三郎。あんまりそんなことばっかりしてると、一週間おあずけだか
らね!!」
「何っ!?それは勘弁、雷蔵!!悪かった!!謝る謝るからぁ!!」
『おあずけ・・・??』
「ううん、何でもない。ほら、行くよ三郎。ありがとうね、二人とも。」
「雷蔵、ちゃんと言うこと聞くから、おあずけだけは〜・・・」
「うるさいよ、三郎!!それに、そんなにくっついたら歩けないだろ!」
べたべたと雷蔵にくっつきながら、鉢屋は雷蔵と共に医務室を後にする。鉢屋に驚かされ
て、いまだに心臓がドキドキしている左近と伏木蔵は、呆然としながらお互いの体にしっ
かりとしがみついていた。完全に二人が去ってしまうと、その事実にハッと気づく。
「あっ、すいません、左近先輩っ!!」
「い、いや、別に謝ることじゃないから。」
「それにしても、鉢屋先輩、本当驚かすの好きですよねー。しかも、すごくリアルなんで
すぐ騙されちゃいます。」
「心臓に悪いよな。はあ〜、何か驚き疲れたって感じだな。」
「はい。今日もやっぱり怪我人多いですし。」
「だな。」
やはり前回と同じような流れになってきていると、左近と伏木蔵は顔を見合せて苦笑する。
すると、また廊下からこの部屋に向かって誰かがやってくる音が聞こえてきた。
「ごめんくださーい。」
「って、人んちかここは!!」
「あっ、久々知先輩にタカ丸さん。」
「こんにちは。」
あまり緊迫感のないタカ丸と久々知の訪問に、保健委員の二人は普通に挨拶を返す。外か
ら見た感じではどちらも怪我をしているようには見えなかった。
「今日はどうしたんですか?」
「んー、ちょっと傷の消毒をしてもらいたくて・・・」
「傷?どこか怪我してるんですか?」
傍目から見たら、どこかに傷があるようには見えない。伏木蔵にそう尋ねられると、タカ
丸はおもむろに上着を脱ぎ、下に来ている黒い前掛けも脱いで背中を晒した。そこには、
くっきりと引っかき傷が何本も出来ていた。
「うわあ、痛そうです。」
「どうしたんですか?」
そう聞かれて、タカ丸はチラっと久々知を見た。その視線は本当のことを言ったらぶっ飛
ばすぞと言っているように感じられた。
「あ、あはは、ちょっと猫に引っかかれちゃって・・・。僕は大丈夫だよって言ったんだ
けど、兵助くんにちゃんと消毒した方がいいって言われてさ。」
「確かにそういう傷はちゃんと消毒した方がいいですね。それじゃ、今から薬つけるんで
ちょっとしみるかもしれないですけど、我慢してください。」
「はーい。」
平静を装っている久々知であったが、内心本当のことがバレやしないかとドキドキしてい
た。タカ丸の背中についている傷はもちろん久々知がつけたものであった。治療をするの
が伊作であれば、すぐにバレてしまったかもしれないが、幸い今治療をしてくれているの
は、二年生と一年生の後輩である。大丈夫大丈夫と心の中で自分に言い聞かせながら、久
々知はタカ丸の傷の手当てが終わるのを待った。
「終わりました。」
「ありがとー。全然しみなかったよ。手当て上手だね。」
「そんなことないですよ。」
タカ丸と左近がそんな会話をしている横で、伏木蔵はふと久々知に目を移した。
「あの、久々知先輩。」
「ん?な、何だ?」
急に声をかけられ、久々知はドキっとする。しかし、ここで動揺してしまっては、今まで
隠していた意味がなくなってしまうと、冷静さを保とうとする。
「久々知先輩、首のところ赤くなってます。蚊に刺されたんですか?」
「っ!!??」
これはヤバイと久々知は本気で慌てる。しかし、相手は一年生。しかも、今は夏と来た。
これはもう虫刺されということで誤魔化すしかないと、久々知は赤面しながらも伏木蔵の
言葉に頷いた。
「そ、そうかもしれないな!!昨日、何か顔の周りで蚊が飛んでたみたいだったしっ。」
「それなら、薬、塗りましょうか?」
「い、いや、別に痒くもないし、大したことないから大丈夫だ!!ほら、タカ丸、さっさ
と服着て行くぞ。」
これ以上ここにいると、ボロが出てしまうと久々知はタカ丸を急かす。上着を着ているタ
カ丸の耳元で、久々知は保健委員の二人には聞こえないような声で文句を言う。
(あれほど見えるところには跡つけるなって言っただろうが!!このバカ!!)
(ゴメーン、つい夢中になっちゃって・・・でも、この二人なら大丈夫だよ。バレない、
バレない。)
タカ丸が服を着終えると、久々知はタカ丸の手を引き、逃げるように医務室を出て行った。
「なんか、今日の久々知先輩変でしたよね?」
「顔真っ赤だったしな。どうしたんだろう?」
と、そう言ったところで、左近はタカ丸の背中の傷と久々知の首の赤い跡が頭の中で繋が
ってしまう。それに気がついた瞬間、左近の顔はボッと赤くなった。
(そ、そういうことだったのか・・・。そしたら、タカ丸さんのあの傷も、久々知先輩が
虫刺されを指摘されてあんなに慌ててたのも、納得がいく・・・。うわあうわあ・・・)
一人頭の中でそんなことを考えていると、伏木蔵に顔が赤くなっていることを指摘される。
「どうしたんですか?左近先輩。顔、真っ赤ですよ。熱でもあるんですか?」
「べ、別に何でもないっ!!」
「じゃあ、何でそんなに真っ赤になって・・・」
「何でもないって言ってるだろ!!」
「何ですかあ?すごい気になりますよぉ。」
左近が急に赤面し出したのが気になると、伏木蔵はその理由を問いつめる。しかし、左近
は断固としてその理由を話そうとはしなかった。
伏木蔵がしつこいくらいに左近から赤面している理由を聞き出そうとしていると、また、
新たな訪問者がやってくる。やってきたのは、生物委員会の竹谷と孫兵の二人であった。
「今、大丈夫か?」
『あっ、はい。』
左近と伏木蔵がわーわーと騒いでいたので、とりあえず竹谷はそんなことを尋ねる。二人
の前に座ると、竹谷は孫兵の手を取って、保健委員の二人に手当てを頼んだ。
「こいつの手、結構細かい傷がたくさんあるんだよ。ちょっと、手当てしてやってくれね
ぇか?」
「はい。」
「別にこの程度の傷、何でもないです!!」
わざわざ手当てする程の傷ではないと主張する孫兵であったが、竹谷はきっぱりとした口
調で反論した。
「ダメだ。毒のある生物を扱ってるんだから、少しの傷でも大変なことになるんだぞ。そ
れくらい分かるだろ?」
「でも・・・」
「竹谷先輩の言う通りですよ、伊賀崎先輩。少し消毒するだけですから、嫌がらないでく
ださい。」
後輩にまでそんなことを言われてしまっては、手当てを受けないわけにはいかない。両手
を左近と伏木蔵に差し出したまま、孫兵はムスっとした表情で黙っていた。そんな孫兵の
頭を優しく撫で、竹谷は困ったように笑う。
「そんな顔するな、孫兵。」
「・・・・・・。」
「俺がこういうことさせるのは、ただのお節介じゃないぞ。お前がお前のペットをすごく
すごく大事に思っているのと同じくらい、俺はお前のことを大事に思っている。だから、
無理にでもこういうことをするんだ。」
自分がどれだけペットを大事に思っているかは、孫兵自身が一番よく分かっていた。そし
て、そのことを竹谷が誰よりも理解していることも知っていた。そんな竹谷にそう言われ
れ、孫兵は胸がきゅんとしてしまう。
「・・・・ずるいです。」
真っ赤になって孫兵は呟く。孫兵の手の手当てをしながら、そんなやりとりを聞いていて、
左近と伏木蔵もなんだか恥ずかしくなってきてしまう。
「手当て、終わりました。一応、大きめの傷には絆創膏貼っておきました。」
「おー、ありがとな。」
「伊賀崎先輩。」
「な、何だよ?」
「竹谷先輩は、すっごく伊賀崎先輩のことが好きなんです。だから、ちゃんと応えてあげ
てくださいね。」
ニッコリと笑いながらそんなことを言う伏木蔵の言葉を聞いて、孫兵はさらに真っ赤にな
り、予想外のことに左近も赤くなってしまった。なかなかすごいことを言ってくれると、
竹谷も照れながら苦笑していた。
「さーて、それじゃあ委員会に戻るか。今日の餌やり当番は、俺と孫兵だもんな。」
「・・・はい。」
「それじゃあ、またな。伏木蔵、お前、何気にすごいやつだな。感心したぜ。」
「えへへ。」
竹谷に褒められ、伏木蔵は照れ笑いを浮かべる。医務室を出て行く時、孫兵の方から竹谷
の手を握るのが見えた。
「やっぱ、あの二人ラブラブなんですね。」
「伏木蔵・・・お前、時々ビックリするようなこと言うよな。」
「そうですか?思ってることを言っただけですけど。」
「思ってることか。やっぱ、すごい・・・」
伏木蔵の発言にドキドキさせられながら、消毒薬や絆創膏を救急箱の中に片付ける。自分
には絶対あんなことは言えないなあと思いつつ、隣で片付けをしている伏木蔵を左近はチ
ラッと見た。
「何ですか?左近先輩。」
バチッと目が合って、伏木蔵はそう尋ねる。まさかそんな返しが来るとは思わなかったの
で、左近はドギマギとしてしまった。
「べ、別に何でもないよ。」
「そうですか。」
ガラっ
と、誰かが来るという気配は全くなかったにも関わらず、突然障子が開く。ちょっとビッ
クリしつつ、後ろを振り返ってみると、そこには四年生の綾部が、同じ四年生の三木ヱ門
に肩を貸しながら立っていた。
「綾部先輩と田村先輩。」
「三木ヱ門の様子がちょっと変なんだよね。診てくれる?」
「あ、はい。」
その場に腰を下ろすと、自分では座っていられないのか、三木ヱ門はぐったりと綾部に寄
りかかっている。顔が赤く息も苦しそうだったので、三木ヱ門のおでこに手を当てる。そ
の額は明らかに熱く、熱があるのは確かだった。
「熱がありますね。夏風邪だと思います。」
「夏風邪かぁ。今日は伊作先輩や新野先生は居ないの?」
「はい、新野先生は出張で、伊作先輩は外出してます。」
「ふーん。じゃあ、ここに寝かせるよりは、部屋で寝かせた方がいいよね。」
「ぼく達はどちらでも構わないですけど。」
左近がそう言うと綾部はしばらく考えて答えを出す。
「やっぱり、私の部屋で寝かせる。看病したいし。」
「そうですか。なら、風邪薬渡しておきますね、」
「うん。ありがとう。」
左近から風邪薬を受け取ると、綾部はぴったりと三木ヱ門の額に自分の額をくっつけて、
三木ヱ門に話しかける。
「本当だ。すごく熱いや。三木ヱ門、風邪だって。」
「風・・邪・・・?」
「うん。私の部屋で寝かせてやるから、もう少し我慢な。」
「でも・・・滝夜叉丸が居る・・・だろ?」
「滝夜叉丸先輩なら今、七松先輩の部屋ですよ。熱中症で倒れて。」
「へぇ、そうなんだ。なら、全然問題ないね。」
「あー・・・ぐらぐらする・・・きはちろー・・・・」
早くこのぐらぐらする感じを何とかして欲しいと、三木ヱ門は無意識に綾部に縋る。そん
な三木ヱ門をいつもの飄々とした表情でひょいっと姫抱きすると、綾部は立ち上がった。
「それじゃ。あっ、一応、新野先生にも診て欲しいから帰ってきたら教えてね。」
『はい。』
医務室を出て行く綾部と三木ヱ門を見送ると、左近と伏木蔵は顔を見合わせる。まさか、
綾部が三木ヱ門を姫抱きするなんて思っていなかったので、少し驚いたのだ。
「綾部先輩、何気に力持ちですね。」
「まあ、あれだけ毎日穴掘りしてればなー。」
「なんか今日は怪我人だけじゃなくて、病人も多い気がしません?」
「確かに。滝夜叉丸先輩といい田村先輩といい、今日はみんな不運だよな。」
「あはは、そうですね。はあー、でも、本当疲れちゃいました。ちょっと休みたいですね。」
「ああ。もうしばらくは来ないで欲しいよな。」
さすがにあまりの怪我人、病人の多さに二人とも疲れてきてしまう。少し休む時間が欲し
いと思っていると、本当に数刻は来訪者がなかった。
しばらく誰も来ない時間が続いたが、夕方頃になって、三年生の藤内と左門がやってくる。
藤内は特にいつもと変わりないが、左門は何故だか傷だらけであった。
「今日は、お前達が当番なのか?」
「はい。伊作先輩から留守番頼まれてて。新野先生も出張なんです。」
「こいつの手当てしてやってくれるか?どこ走ってきたのか分からないけど、そこらじゅ
う傷だらけでさ。本当探すの苦労したぜ。」
「俺は普通に忍術学園の周りを一周してきただけだぞ!」
「いや、絶対それ違うから。お前、それにどこかでコケただろ。膝も肘も擦り剥けてるじ
ゃん。」
「おお、本当だ!!気づかなかった。」
「気づけよ!!」
「あ、あはは、とりあえず、傷の手当てしましょうか。」
このまま言い争いをさせていても埒があかないので、左近は苦笑しながら声をかける。テ
キパキと傷の手当てをすると、左近はぱたむと救急箱を閉じる。
「手当て、終わりましたよ。」
「ありがとう。よーし、傷の手当ても終わったし・・・・」
すくっと立ち上がると、左門はまたどこかに駆けて行こうとする。廊下に出る直前に、藤
内は左門の服を捉え、どこかへ走って行こうとするのを制止した。
「何だよ〜、藤内?」
「せっかく見つけ出してやったのに、またどこに行く気だ!?」
「腹減ったから、飯食いに行くんだよー。」
「どこへ?」
「だから、食堂へ。」
そう言いながら、左門が指差している方向は、食堂がある場所とは全く逆方向であった。
全くもうと呆れながら、藤内は左門の手を握る。
「な、何だよ!?」
「俺も一緒に行ってやるから、これ以上迷惑かけるな!!」
「お、おう。それなら、別に・・・」
「ったく、本当世話が焼けるんだから。」
ぶつぶつと文句を言いながら、藤内は左門の手を引いて食堂へ向かって歩き出した。そん
なやりとりと廊下に顔を出しながら、保健委員の二人は覗いていた。
「あの二人、仲良いんですね。」
「保護者と子供みたいだけどな。」
「いいなあ、手繋ぐの。他の人の時も思ってたけど・・・」
ぽつりと伏木蔵がそんなことを漏らすのを左近は聞き逃さなかった。
「手くらい、いつでも繋いでやる・・・」
「えっ?」
「べ、別にぼくがしたいって言ってるわけじゃないからな!お前が繋ぎたいとかそんなこ
と言ってるから・・・・」
「ありがとうございます!!左近先輩っ!すっごく嬉しいです!!」
左近の一言に、伏木蔵は本当に嬉しそうな顔で笑う。そんな伏木蔵に左近はきゅーんとし
てしまう。
(可愛い・・・)
しかし、それは口には出さず、心の中だけで思っているだけで済ませておいた。
日が暮れてしばらくすると、夏祭りに出かけていた伊作と文次郎が帰ってくる。
「ただいまー。遅くなってゴメンね。」
『おかえりなさい、伊作先輩。』
「・・・って、どうしたんですか!?そんなボロボロになって。」
「お、お祭りに行ってきたんですよね?」
夏祭りに行ってきたはずなのだが、何故か伊作はボロボロになっていた。しかし、そんな
ことは全く気にしないと言わんばかりに、伊作は満面の笑みを浮かべている。
「いやー、いろいろあってね。でも、すっごく楽しかったよ。」
「そのいろいろがすごいんだ。話してやろうか?」
ニヤニヤと笑って文次郎は左近と伏木蔵にそんなことを言う。不運な香りがプンプンする
が、どんなことがあったかは少し聞いてみたいと、左近も伏木蔵もコクンと頷く。
「とりあえず、あっちに着いてすぐ下駄の鼻緒が切れるだろ?それから、財布は落とすわ、
子供に水はひっかけられるわ、犬に追いかけられるわで大変だったんだぜ。」
『うわあ・・・』
さすが不運委員長だと、左近と伏木蔵はある意味感心してしまう。しかし、ここまで不運
なことがあったのに、どうしてあそこまで伊作が楽しかったと言えるのか分からなかった。
「でも、伊作先輩、すごい楽しんだんですよね?そんなに不運なことがいっぱいあったの
に。」
「うん、確かにいつも通り不運だったんだけど、切れた鼻緒は文次郎が直してくれたし、
食べ物やお祭りに使うお金は全部文次郎が奢ってくれたし、水かけられた時もすぐに文次
郎が拭いてくれたし、犬も文次郎が追っ払ってくれたんだ。だから、今日のお祭りはすご
く楽しめたの。」
『へぇー。』
鬼の会計委員長が、そこまで伊作に尽くしていることを聞いて、左近と伏木蔵は意外だと
いうような目で、文次郎を見た。そんな二人に伊作はある物を差し出す。
「今日も二人とも頑張ってくれたみたいだから、はい、お土産。これも文次郎が買ってく
れたんだよ。」
左近と伏木蔵が頑張っていたということは、ここに来るまでに会った六年生メンバーや五
年生に聞いていた。伊作がそんな二人に渡したのは、可愛らしい桜色の鈴であった。
「その鈴はね、幸運のお守りなんだって。お祭りがやってた神社に売っててさ。いいなあ
と思って見てたら、文次郎が買ってくれたんだ。左近と伏木蔵のはおそろいだよ。」
「お前らがあんまりにも不運すぎるからな。これで少しはマシになるんじゃねぇかと思っ
てよ。」
綺麗な上に、幸運のお守りときた。そんな鈴を手にし、左近も伏木蔵もキラキラと目を輝
かせる。
『ありがとうございます!!潮江先輩!!』
「お、おう。」
素直にお礼を言ってくる左近と伏木蔵の言葉に、文次郎は照れてしまう。照れてる文次郎
を見て、伊作はからかいたくなってしまう。
「文次郎照れてるー。可愛いー。」
「べ、別に照れてなんかねぇ!!」
「うっそだー。顔真っ赤じゃん。」
「伊作、テメェ、そんなこと言ってると、また食っちまうぞ。」
「えー、さっきもあんなにしたじゃん。今日はもうキツイって。」
「問答無用。俺をからかった罰だ!」
「ひどーい。文次郎の野獣ー。」
「どうとでも言え。」
どうやら伊作がボロボロなのは、不運なことが続いたからだけではないらしい。そんな無
茶苦茶なやりとりを六年生二人がしているのを尻目に、伏木蔵はお土産の鈴をじいっと眺
め、目を輝かせていた。そして、満面の笑みを浮かべて、左近に話しかける。
「左近先輩、おそろいの鈴ですって!!嬉しいですね!!」
「あ、ああ。」
「えへへー、どこにつけようかな。左近先輩もちゃんとつけてくださいね。」
「おう。」
幸運の鈴と言うよりは、左近とおそろいということの方が嬉しいらしく、伏木蔵はニコニ
コしながら、桜色の鈴を握りしめる。自分の手の中にある同じ鈴を見て、左近はふっと口
元を緩ませた。
「この鈴、結構効果あるかもしれないな。」
「えっ?」
「いや、何でもない。」
「変な左近先輩。」
不思議そうに首を傾げながら、伏木蔵は左近を見た。そんな仕草も可愛いと、左近は思わ
ず伏木蔵の頭をぐりぐり撫でる。くすぐったいが、何となくそれが嬉しくて、伏木蔵は嫌
がりもせず、頭を撫でられながらクスクス笑った。
伊作と文次郎にとっても、伏木蔵と左近にとっても、大変でありながも楽しいある日の午
後。四人の楽しそうな笑い声が医務室に響き、夜はゆっくりと更けていくのであった。
END.