翠緑鳥 ― Emerald bird ―

「マスター、お風呂の用意出来ましたよ。」
「うん、今行く。萩之介はどうするの?」
「俺はまだやらなければならないことがありますので。」
「そっか。じゃあ、また後でね。」
ここはとある屋敷の一室。マスターと呼ばれている少年は、この屋敷に住む鳳長太郎だ。
そんな鳳に執事であるかのように付き従っているのは、滝萩之介という名の少年。姿形は
どう見ても人間にしか見えないが、実は鳳が森で拾ってきた鳥なのだ。初めは何の変哲も
ない普通の鳥であったのだが、どういうわけか人間の姿になり、現在は鳳の身の回りの世
話をする重要な役割を任されている。
「あっ、そうだ!」
「どうなさいました?」
「明日はバイオリンのレッスンが先生の都合で休みになっちゃったから、明日は一日オフ
なんだ。だから・・・」
「分かりました。それじゃ、今日の夜は少しくらい夜更かしをしても大丈夫なんですね。」
「うん。じゃあ、俺、お風呂入って来ちゃうね。」
「はい、いってらっしゃい。」
照れたような笑顔を浮かべて、鳳は自分の部屋を出て行く。そんな鳳を見送りながら、滝
は、ふっと口元を緩ませた。

お風呂から戻ってくると、鳳は濡れた髪を拭きながら自分のベッドに腰掛ける。そんな鳳
の前に立ち、滝は鳳の頭に被さっているタオルに手を置いた。
「ちゃんと拭かないと、風邪引きますよ、マスター。」
「自分で拭けるから、大丈夫だよ。」
「そんなこと言って、どうせ適当に済ますんでしょう?」
「そんなことないよー。」
口では文句を言いつつも、鳳は髪を拭いてもらうのを完全に滝に任せている。しっかりと
髪を乾かし、綺麗に梳いてもらうと、鳳はポスンとベッドに横になった。
「ねぇ、萩之介。」
「はい、何ですか?マスター。」
「今日も・・・アレ、したいな。」
「いいんですか?」
「うん。俺、萩之介にいっぱい触れてもらうの好きだから。」
恥ずかしそうに笑いながら、鳳はそんなことを言う。そんな鳳のお誘いに、滝は喜んで乗
った。ベッドに仰向けになっている鳳の唇に軽く口づけると、滝は先程の穏やかな顔とは
全く違う表情で微笑う。
「マスター。」
「マスターじゃなくて、名前で呼んで。敬語も使っちゃダメ。」
「了解、長太郎。」
名前で呼ばれた瞬間、鳳の胸はトクンと高鳴る。滝にたくさん触れて欲しい。そんな想い
が胸いっぱいに広がる。自ら求めるように腕を伸ばすと、鳳は熱くて甘い、滝の深く激し
い接吻を、存分に味わうかのように受け入れた。

鳳の胸をはだけさせるように、パジャマの前を開くと、滝はぷっくりとその存在を主張し
ている胸の飾りをついばむ。見かけは普通の唇であるのだが、何故だか感覚的には鋭い鳥
の嘴でついばまれているような感じであった。
「ひっ・・あ・・・あっ・・あぁ・・・・」
「長太郎は、本当ココ弄られるの好きだねー。俺の口、そんなに気持ちイイ?」
「萩之・・介・・・の口、鳥みたいで・・・気持ちいっ・・・い・・・」
「でも、普通鳥の嘴でこんなことされたら痛いでしょ?」
「あっ・・・はあぁんっ!!」
ただ唇で挟んでいるだけなのだが、鳳は背中を仰け反らせ、ビクビクと体を震わせながら
喘ぐ。その反応がたまらないと、滝はニヤリと口元を緩ませながら、はむはむとその突起
を絶え間なく食んだ。歯を立てることなど一切していないが、嘴でついばまれているのと
同じ感覚なのだ。断続的に与えられる刺激に、鳳はすっかり夢中になっていた。
「んあっ・・あ・・・あぁ・・・あんっ・・・・!」
「胸弄ってるだけで、こっちの方もキツキツだね。」
「やっ・・・だ、だめ・・・」
ズボンに手をかけられ、鳳は下げられるのを制止しようとする。しかし、滝は何の躊躇い
もなく、下着ごと鳳のズボンを剥いでしまった。
「可愛い。もうすっかりトロトロだね。」
「だ、だって・・・ココ弄られるの、気持ちいいから・・・・」
赤く染まった胸の突起に指を当てながら、鳳はそんなことを言う。その仕草が可愛すぎて
滝の理性はもうほとんど保たれていない状態であった。
「本当に可愛いね、長太郎は。でも、俺的にはもっと可愛いところが見たいなあ。」
滝がそう呟くと、鳳はくらりと甘い眩暈を感じる。
「長太郎。」
名前を呼ばれるだけで、全身がとろけるような甘い痺れが走る。滝は人間ではない故に不
思議な力を持っていた。それは俗に言う『言霊』という能力であった。
「今日は、ココとココは自分で弄って。でも、俺が触れるまでは絶対にイッちゃダメ。」
「あっ・・・や、やだっ・・・」
「トロトロになるまで弄って、たくさん気持ちよくなって。俺が名前を呼ぶたびに、どん
どんどんどん、気持ちよくなって。」
まるで催眠術をかけるかのように、滝は鳳の耳元で囁く。滝の放つ言葉は絶対であった。
どんなに頭で抵抗しようとも、体は勝手にそう動いてしまう。自分の下肢に腕を伸ばし、
鳳は熱い茎を自らの手で握り、ひくつく蕾に指を入れる。
「ひあっ・・・んっ・・・!!」
「指・・・手・・・たくさん動かして。」
くちゅ・・・ちゅ・・・・クチュ・・・・
「んっ・・はぁっ・・・・あっ・・・ああぁ・・・・!!」
滝の言葉通りに勝手に手が動いてしまう。自分でしているのに、自分でないものにされて
いる感覚。激しすぎる指の動きに鳳の熱は今にも弾けてしまいそうなほどに、昂ぶってい
った。
「あっ・・あぁんっ・・・は・・萩之介っ・・・」
「もっとよく見せて、長太郎。大きく足を開いて。」
「やっ・・・やあぁっ・・・あっ・・・」
口ではどんなに抵抗しても、足は勝手に大きく開かれてゆく。自らの指で、自分自身の熱
といやらしい蕾を弄っているのをまじまじと眺められ、鳳は羞恥の色に染まる。
「いや・・・み、見ないでっ・・・・恥ずかしいよぉ・・・・」
「そんなに恥ずかしい?」
「は、恥ずかしい・・・・」
「なら、恥ずかしがれば恥ずかしがるほど、長太郎は感じるようになる。」
そう滝が口にすると、鳳はビクンっとその身を震わせる。滝に見られているという羞恥心
が、鳳の身体をさらに感じやすくさせる。達することは出来ないが、先走りの蜜がじわじ
わと茎の先から溢れ出し、それを弄る手と蕾の入口をトロトロに濡らしていく。
「あっ・・ふあっ・・・・やっ・・ぁんっ!!」
「長太郎のココ、ピンク色で可愛いし、くちゅくちゅ濡れた音もやらしくていいね。」
「はあぁんっ・・・そんなこと言わないでぇ・・・・あっ・・・ひあぁ・・・」
「恥ずかしくて感じちゃうなんて、長太郎はエッチな子だねー。ほら、もう一本入っちゃ
う。」
滝がそう言うと、鳳は三本目の指を自分の蕾に差し込み、ぐりぐりと中で動かす。そんな
物理的な刺激と、そんなことを滝が見ている前でしてしまうという羞恥心があいまって、
鳳は今まで以上に感じてしまう。
「ひあっ・・・ああぁ――っ!!」
「ふふ、気持ちよくてもイケないんだよねぇ。」
「はっ・・・ふあぁ・・・萩之介ぇ・・・あっ・・・んんっ・・・」
「でも、まだイかせてあげない。」
「やあっ・・・あっ・・・ああ・・・」
「まずは、俺をコッチの口でイかせて?」
鳳の顔の横に移動し、滝はある程度の強度を持ち、すっかり昂ぶっている自身の熱を鳳の
口に押し当てた。その熱さにくらくらしながらも、鳳は大きく口を開き、その熱の塊を口
の中に含む。
「んっ・・・んむ・・・・んんぅ・・・」
「長太郎の口の中、気持ちいい。ねぇ、もっと奥まで咥えて?」
「んぐっ・・・んっ・・・ぅ・・ぐ・・・」
根元まで咥えさせると、滝はゆっくりとその熱の塊を動かし始める。口の中を犯されてい
るような感覚に、鳳は息苦しさを感じながらもひどく興奮してしまう。
(苦しいけど・・・気持ちイイ・・・)
「長太郎。」
「んっ・・・ぅ・・・」
「もっと激しく、指、動かして。」
「っ!!・・・んぐっ・・・んっ・・・んっ・・!!」
自身の熱を咥えさせたまま、滝は下を弄っている鳳の指の動きを速めさせる。もうイク寸
前まで高まっている熱は、少しの刺激でも大きな快感を感じるようになっていた。そんな
快感に鳳の身体はびくびくと震える。口の中も不規則に震え、滝はその刺激に熱い息を吐
いた。
「ハァ・・・最高だよ、長太郎。口の中もビクビクしてて、すごく気持ちいい・・・」
「んんっ・・・ぅ・・・んっ・・・んんっ・・・!!」
「もう・・・出るっ・・・」
ずるりと鳳の口の中から熱の塊を引き出すと、滝は鳳の顔に向け、真っ白な熱い雫を放っ
た。滝の熱い雫を浴び、鳳はもう達してもおかしくないくらいの快感を感じる。しかし、
滝の言霊の所為で達することは出来なかった。
「ぷあっ・・・ああぁ――っ・・・・」
「顔にかかっちゃったね。でも、すっごい可愛い。」
「ハァ・・・萩・・・もっ・・・」
「何?」
顔を真っ赤にして、ぶるぶると身体を震わせながら、鳳は滝の服を掴む。この後、どんな
おねだりをしてくれるのか、楽しみだと言わんばかりに、滝はニヤリと口元を緩ませた。
「はぁ・・・萩・・之介・・ぇ・・・もう・・・イカせてぇ・・・・」
「具体的にはどうして欲しいの?」
「は・・早く・・・挿れて・・・萩之介の・・・早く挿れてぇ・・・・」
「はい、マスター。」
ここでは、こう言った方がしっくりくると、滝は鳳のおねだりにそう答えた。先走りの蜜
まみれになった手に自分の指を絡め、すっかりと熟れた蕾に、滝は自分自身をずぶりと挿
入させた。
「ふあっ・・・あああぁ―――っ!!」
滝が自分の中に入った瞬間、鳳は今まで出せなかった蜜を存分に放った。ずっとイキたく
てもイけない状態が続いていたので、なかなかその放出は止まらない。
「あっ・・・ああぁ・・・すごいっ・・・出ちゃうっ・・・!!」
「長太郎の中、すごいビクビクしてる。そんなに俺のコレ、美味しい?」
「う・・んんっ・・・熱くて・・・おっきくて・・・・気持ちイイっ・・・・」
「素直でいいね。ご褒美にたくさん動いてあげる。」
鳳の足を抱え、滝は大きく動き始める。大きな熱の棒で内側を激しく擦られ、鳳はひっき
りなしに甘い喘ぎ声を上げた。
「あっ・・はぁんっ・・・あっ・・ああぁっ!!」
「ねぇ、長太郎。手出して。両方とも。」
「んっ・・・何・・・?」
何故手を出さなければいけないのか分からなかったが、鳳は滝に向かって両手を差し出し
た。差し出された手を掴み、滝はペロペロとその手を舐め始めた。
「ひあっ・・・あぁんっ・・・」
「ずっと下を弄ってたから、どっちの手もすごい長太郎の味がする。」
「手・・・気持ちいい・・・ふあっ・・・ああ・・・」
「手、舐められるの気持ちいいんだ。だったら、綺麗になるまで舐めてあげる。」
手を舐めることで鳳がひどく感じているので、滝は指の間から指先まで、まんべんなくそ
の手を舐める。手を舐められる感覚と中で動かれる刺激に、鳳は全身が溶けてしまいそう
な快感を感じる。
「ハァ・・・んんっ・・・ぁ・・・」
「ねぇ、長太郎の中に出したい。出していい?」
「んっ・・・いいよっ・・・出して・・・」
「ありがとう。だったら・・・・」
せっかくなら、自分が中に出すことによって、鳳がより気持ちよくなれるようにと、耳元
で言霊を唱えた。
「俺ので長太郎の中がいっぱいになったら、長太郎は最高に気持ちよくなって、とっても
幸せな気分になる・・・」
「萩っ・・・」
「大好き、長太郎。」
ニッコリと笑って、滝は鳳の唇にキスをする。そして、一際大きく鳳の中を貫いた。その
瞬間、鳳の内側は今までになく激しく滝の楔を締めつける。
「んっ・・・長太郎・・・っ!!」
そんな締めつけがたまらず、滝は熱い雫を鳳の中へ注ぐ。大量に注がれる雫が奥の奥まで
濡らしてゆく。全てを滝で埋め尽くされるような感覚に、鳳は甘い快感の波が押し寄せて
くるのを感じた。
「ああぁ――っ・・・萩之介――っ!!」
身も心も滝でいっぱいになった鳳は、滝の名を口にしながら絶頂を迎える。全てが満たさ
れる幸せな感覚。そんな感覚に包まれながら、鳳は真っ白な光の中へ堕ちていった。

「ん・・・んん〜・・・・」
次の日の朝、鳳は目を開けてぎょっとする。自分の体が布団の中ではなく、鮮やかなエメ
ラルドグリーンの翼で包まれているのだ。
「は、羽っ・・・!?」
「ん・・・あっ、おはようございます。マスター。」
「萩之介、この羽・・・」
「あ、ああ。すいません。昨日結構体力使っちゃったみたいで、羽だけ鳥に戻っちゃった
みたいです。」
鳳の体を包んでいた翼を慌てて閉じると、滝は布団から起き上がる。バサッと翼を動かし
た瞬間、鳳の間の前に一本の羽根がひらりと落ちた。
「萩之介の羽根、すごく綺麗な色してるんだね。」
「そうですか?」
「うん。キラキラしてるし、エメラルドグリーンで、すっごく綺麗。」
「ありがとうございます。マスターにそう言ってもらえると、すごく嬉しいです。」
自分の羽が綺麗だと褒められ、滝は照れたように笑う。ベッドに落ちた羽根を手に取り、
鳳はぎゅっと胸のところで握る。
「この羽根、もらってもいい?」
「別に構いませんけど、そんな羽根、どうするんです?」
「どうするってわけじゃないけど、萩之介の羽根だし。やっぱり、綺麗だから。」
笑いながらそんなことを言ってくる鳳に、滝はきゅんとしてしまう。せっかく羽があるの
だから、これを使って鳳に何かをしてあげたいと考える。
「そうだ、マスター。」
「どうしたの?」
「せっかくなので、空の散歩でもしませんか?」
「えっ?出来るの!?そんなこと。」
「こう見えても俺、結構力あるんですよ。マスターを抱いて飛ぶなんてこと、朝飯前です
よ。」
「すごいねー。空のお散歩かぁ。行きたい!」
「それなら、着替えてから朝食を食べて行きましょうか。」
「うん!」
朝から空の散歩とはなかなか爽やかでよいと、鳳は滝の誘いに喜んで乗る。軽くシャワー
を浴びた後、いつもの私服に着替え、朝食を食べると、二人は屋敷の屋上へ向かった。朝
の爽やかな涼風が二人の横を吹き抜け、心地よさを運ぶ。
「それじゃ、マスター。しっかり掴まってて下さいね。」
「うん。」
「行きますよ。」
しっかりと鳳の体を抱えると、滝は大きく翼を羽ばたかせる。ふわっとその身が宙に浮き、
鳳は空から見える景色に感嘆の声を上げる。
「うわあ・・・」
「どうですか?マスター。」
「すごいよ、萩之介!!空から見ると、こんなふうに景色が見えるんだ。」
「マスターが喜んでくれるなら、いつでもしてあげますよ。」
「でも、疲れちゃわない?」
「大丈夫です。マスターの笑顔を見れば、疲れなんて全然感じませんから。」
「萩之介・・・」
本当に嬉しいことばかり言ってくれる滝に、鳳は胸をときめかせ、ぎゅっと首に抱きつく。
そして、満面の笑みを浮かべながら滝が一番喜ぶような言葉を口にした。
「大好きだよ、萩之介!!」
あまりの可愛さに動揺しそうになりながらも、落としてしまっては大変なので、滝はドキ
ドキする胸を必死で抑えながら、鳳の体をより強く抱きしめる。朝露に濡れる景色の上を
飛びながら、二人は朝から誰もが羨むほどの仲の良さを見せつけるのであった。

                                END.

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