Please remember me

部活のない放課後、跡部を除いた元氷帝テニス部レギュラーメンバーは、レギュラー専用
部室に集まっていた。特にテニスに関して話さなければいけないことはなかったのだが、
跡部に起こっているとあることに対して、何となく話し合いたくて、自然と集まってしま
っていた。
「跡部がああなってから、もう2週間か。」
「何か少し調子が狂っちゃいますよね。」
部室にかかっているカレンダーを見ながら、滝と鳳はそう話す。跡部の身に起こったある
こと。それは、一種の記憶喪失であった。2週間前の帰り道、跡部は用事があり、一人で
家路を辿っていた。人気の少ない道を歩いていると、交差点で一匹の小さな子犬が突然道
路に飛び出してきた。それと同時に、向こう側から車が走ってきた。そんな光景を見てい
た跡部は、車の前に飛び出し、その子犬を助けようとする。車にはねられることはなかっ
たが、勢い余って、そのまま塀にぶつかってしまった。その時に頭を打ってしまったのだ。
「でもよ、あんな記憶喪失あるんだな。自分のこととかテニスのこととかは全部覚えてん
のに、対人関係全般だけ忘れちまうなんて。」
「せやなあ。あんまり聞かないタイプの記憶喪失やもんな。自分と人との関係も分からん
から、あの超俺様な態度もなくなってるし。」
「樺地に荷物持たせたりとかもほっとんどしてねぇもんな。何か変な感じだけどよ、いつ
もより優しいって点では、まあ悪くはないよな。」
「確かに。能力的なこととか生活史的なことは忘れてないから、普通の生活は出来るしな。
このままで大丈夫言うたら大丈夫かもしれへんなあ。」
跡部の記憶喪失は、自分と身近な者との関係を忘れているというかなり特殊な記憶喪失で
あった。自分と人との関係が把握出来ていないため、他の者とどう接したらいいかが分か
らない。そのため、いつもの俺様で自信満々な態度が消えているのだ。しかし、能力的な
ことは以前と変わらないので、非常に頼りになり、いつもはない優しさがプラスされてい
る。こんな跡部も別に悪くはないのではないかと、岳人と忍足は今の状態の跡部を比較的
肯定的に捉えている。
「うーん、でも、俺的にはいつもの跡部がいいなあー。今の跡部は跡部っぽくなくて、ち
ょっと気持ち悪い。樺地もそう思うよな?」
「ウス。」
「優しい跡部も確かに悪くはないけどさー、やっぱ、自信満々で俺様してる跡部の方が跡
部らしくて、俺はいいと思うんだよー。だから、思い出せるものなら、ちゃんと記憶は戻
って欲しいよね。」
「ウス。」
「俺も芥川さんの意見と同じですね。あんな跡部さんは跡部さんじゃないですよ。」
ジロー、樺地、日吉の三人は、いつもの跡部の方がいいという意見であった。そのため、
岳人や忍足、滝や鳳よりは、今の跡部に対して強い違和感を感じている。しかし、元氷帝
レギュラーメンバーの中で、一番今の跡部に対して困惑した様子を見せているのは、宍戸
であった。
「・・・・・。」
先程からボーっとしていて、会話に加わらない宍戸を心配し、滝は声をかける。
「宍戸、大丈夫?」
「へっ?あ、ああ・・・・」
「まあ、一番困惑してるんは宍戸やからな。もやもやしててどうしようもなくなったら、
ちゃんと俺らに相談せぇよ?」
「おう。でも、大丈夫だから平気平気。心配すんなって!」
口ではそう言っているものの、跡部に対する違和感はもう耐えられないくらい宍戸の中で
は高まっていた。跡部自身、自分の対人関係を懸命に思い出そうとはしているのだが、宍
戸との関係はあまりに特殊であり、そこまで思い出すことは出来ない。
(はあー、跡部の奴、どうしたら記憶が戻んだろう。そろそろいろんな意味で耐えられな
くなってきたぜ・・・)
普段跡部にされていることがされていることなので、欲求不満という意味でも宍戸はもや
もやしてきている。
「でもさ、本当どうやったら元の跡部に戻るんだろうね?」
「小説とかドラマとかだと、同じショックを与えれば戻るとか言いますよね。」
「けど、外傷的なのは実際にはひどくなる可能性があるからダメだよ。」
「じゃあ、精神的なことだったらいいんじゃないですか?」
「精神的ショックって、怖ぇーよ日吉。」
ジロー、鳳、滝、日吉、岳人がそんなことを話しているのを聞いて、宍戸はハッと何かに
気づく。しかし、それと同時に一抹の不安もよぎる。
(精神的ショックか・・・それだったら・・・・でも、失敗したら・・・)
「俺、ちょっと先に帰るな。」
「えっ、あ・・・うん。」
「気をつけてね。」
「おう。じゃあな。」
この後のことは一人で考えたいと、宍戸は他のメンバーより一足先に帰る。やっぱり跡部
のことをいろいろ気にしているんだなあと思いながら、他のメンバーは黙って宍戸を見送
った。

その週の休日の前日、宍戸は跡部のところへ向かい、ある頼み事をする。
「跡部。」
「ああ、宍戸か。何だ?」
「今日な、お前んちに泊まりに行きたいんだけど、行ってもいいか?」
関係が把握出来ていないだけで、誰が誰だか分からないわけではない。宍戸にそんなこと
を言われ、少し戸惑う跡部であったが、特に断る理由もない。しかも、他の者から聞いた
話では、自分と宍戸はケンカもよくするものの仲が良かったと言う。それならば、家に泊
まりに来させるくらい嫌がることもないだろうと、跡部は頷いた。
「別に構わねぇぜ。」
「じゃあ、一回家帰って準備したら、お前んちに行くからな。」
「ああ。」
何気ないふうに話をしている宍戸だが、内心は心臓が飛び出すのではないのかと思うくら
いドキドキしていた。今日、跡部の家に泊まりに行く理由。それは、一か八か跡部の記憶
を戻させるあることをするためだ。
「じゃ、じゃあ、また後でな。」
「おう。」
いつも通りの笑顔を作り、宍戸は跡部に手を振って、そそくさと教室を出る。宍戸が教室
を出るのを見送ると、跡部はふと胸が奥の奥がキュンとするのを感じる。
(・・・何だ?この感覚。)
記憶はないが、感覚はどこかで残っているらしく、宍戸が自分の家に泊まりに来るという
ことに対して、ほのかな嬉しさを感じる。記憶と感覚がマッチしない感じに少しの違和感
を覚えながら、跡部は宍戸の出て行ったドアの方をしばらく眺めていた。

跡部の家に泊まりに来た宍戸は、跡部と共に跡部の自室でくつろいでいた。夕食も御馳走
になり、既にシャワーを浴び終えている。くつろいでいると言えども、いつもとは少し違
う関係なので、あまり会話は弾まず、お互いに好き勝手なことをしていた。
(何か無駄に緊張するな。やっぱ、やめようかな・・・。でも、これ以上我慢するのは無
理だし・・・。あー、どうしようっ。)
ベッドの上で本を読んでいる跡部をチラっと見ながら、宍戸はドキドキと胸を高鳴らせる。
そんな宍戸の視線に気づくことなく、跡部は今読んでいる本に没頭していた。
(いつもだったら、跡部の方からちょっかい出してくるのに・・・。)
そう思うと、何となく胸を締めつけられるような気分になる。これはやはり、少し無理し
てでも跡部の記憶を取り戻させるため、今日まで考えてきた計画を実行しなければと、宍
戸は心の中で覚悟を決めた。それからしばらく一人遊びをしていた宍戸だが、ほどよく夜
が更けてきたあたりで、これからすることの用意をし始める。跡部の部屋にある棚のある
ところをごそごそとあさり、必要な物を探す。
(何やってるんだ?宍戸の奴・・・)
宍戸の行動を不思議に思いながらも、跡部は特にそれにつっこむようなことはしない。し
ばらくすると、宍戸はこれから必要な物が入った箱を見つけ出し、それを持って、ベッド
の上で本を読んでいる跡部のところへ向かった。
「跡部・・・」
持っていた箱をベッドの上に置くと、宍戸自身もそのままベッドに乗り上げる。そして、
跡部の手から本を取り上げると、じっと跡部の顔を見つめた。
「どうした?」
跡部の質問に言葉で答えることをせず、宍戸はゆっくりと跡部をベッドに押し倒し、跡部
の唇に自分の唇を重ねる。宍戸との関係を完全に忘れている跡部は、突然宍戸にそんなこ
とをされ、ひどく驚き固まってしまう。そんな隙を見て、何度か唇を重ね合わせながら、
宍戸は箱の中から手枷を取り出し、跡部の手首にはめ、ベッドの頭のところに固定する。
普段の跡部なら、こんなことはさせないのだが、今回はいつもの跡部とは違う上に、宍戸
の行動にひどく驚いているため、そこまでの行動を許してしまった。
(意外と抵抗されないもんだな。もっと大変かと思ってた。)
自分がされるとなると、思いきり抵抗するので、宍戸はそんなことを思う。完全に跡部が
動けないように拘束すると、宍戸は跡部の唇から自分の唇を離した。
「・・・ハァ、・・・っ!?」
いつの間にか手枷をつけられ、ベッドに拘束されていることに気づき、跡部はさらに驚い
たような顔を見せる。
「宍戸、どういうことだ!?」
「これ、普段のお前が俺にしてることだぜ。」
「嘘だ!!」
「嘘じゃねぇよ。嘘だったら、こんな道具がこの部屋にあるはずねぇだろ?」
確かにそう言われればそうだ。あきらかに宍戸はこの部屋にある自分の使っている棚から
これを出してきた。しかし、今の跡部にはどうしてそんなものがこの部屋にあるのか理解
出来なかった。
「ちょっと荒療治かもしれねぇけど、俺はどうしてもお前に記憶を取り戻して欲しいんだ
よ。」
「意味分かんねぇよ!!記憶を取り戻すことと、これとどういう関係が・・・っ!?」
「俺、お前と違ってあんまり嫌がられると、これ以上何も出来なくなっちまいそうだから
な・・・少し黙ってろよ。」
少しの罪悪感を感じながら、宍戸はボール型の口枷を跡部にはめてしまう。腕を固定され、
口も塞がれ、跡部は抵抗らしい抵抗が出来なくなってしまった。どうして自分がこんなこ
とをされなければならないのか。むしろ、自分と宍戸の関係はどんなものなのか。それが
全く分からない。頭の中では言いたいことはたくさんあったが、それを言葉にすることは
出来なかった。
「んん、んん―っ!!」
「もう一回言うけど、これは、いつもはお前が俺にしていることだからな!!」
自分にもそう言い聞かせなければ、宍戸はこれ以上進められない気がした。跡部の記憶を
取り戻すため、何度もそう頭で繰り返しながら、宍戸は跡部のシャツのボタンに手をかけ
た。

跡部の服のボタンを完全に外してしまうと、宍戸は首筋から腹のラインにかけて、ちゅっ
ちゅっとキスを落としていった。声を上げることはないが、唇がその肌に触れるたびに、
跡部はあきらかに反応していた。
(何か・・・俺の方が攻めてるみてぇ。)
いつもとは立場が逆転している状況に、宍戸はいつも以上にドキドキしてしまう。しかし、
別に跡部を攻めたいという気持ちでこういうことをしているわけではなかった。自分と跡
部がこういうことをする関係だということを思い出して欲しい。そんな気持ちから、宍戸
は心を込めて、跡部の体にキスをする。
「ハァ・・・跡部。」
「んんっ・・・」
「俺がお前にこういうことするのは、お前が嫌いだからじゃないからな。」
そう口にしながら、宍戸は跡部のズボンに手をかけ、上半身へのキスで半勃ちになってい
る熱を取り出す。そして、それをパクっと口に含んだ。
「んっ・・・んんっ!?」
「ハァ・・・あむ・・・んっ・・・んん・・・・」
(ああ、久々だから・・・これだけでもかなりクるかも・・・)
跡部の熱を咥えながら、宍戸自身体が熱くなり、ぞくぞくとした甘い痺れが全身を駆け抜
ける。根本まで咥え込み、自ら口の中を犯すかのように上下に頭を動かす。そんな刺激に
跡部は混乱しながらも、ひどく感じてしまっていた。
(何でこいつはこんなことっ・・・ああ、でも、この感じは悪くねぇかも・・・)
「んんっ・・・・ふはぁ・・・あ、跡部ぇ・・・」
「ん・・ぅ・・・」
「は・・む・・・んん・・・んっ・・・・」
自分と宍戸の関係は、まだ理解出来ていないが、今与えられている刺激が半端なく気持ち
のよいものであるのは確かであった。宍戸の唇と舌が敏感な熱を擦り上げるたび、何かが
内側からせり上がってくる感覚にとらわれる。
(気持ち・・・いい・・・)
「ふっ・・・んっ・・・んんっ・・・」
「んぅ・・んっ・・・んっ・・・」
一際強く宍戸が熱を吸い上げると、跡部は頭の中が真っ白になるような絶頂感を感じる。
自分でも気づかぬうちに、跡部は宍戸の口の中に熱い雫を放っていた。
「んっ・・・んぐっ・・・んんんっ・・・」
口の中に放たれた雫を宍戸はゴクゴクと喉を鳴らして飲み込む。全てを飲み込むと、ハァ
ハァと息を乱しながら、宍戸は跡部のそれから口を離した。
(あー、すげぇドキドキしてる。久しぶりの跡部の味、たまんねぇ・・・)
宍戸がそんなことを考えている間、跡部は他人に与えられた絶頂感の余韻に浸りながら、
何とも言えない気分に困惑していた。宍戸は自分の何なのかという疑問とこの感覚は何度
も味わったことがあるという既視感。そんな感覚が混ざり合い、跡部の頭を混乱させてい
た。
「ん・・ふぅ・・・ふっ・・・」
いまだに困惑しているような跡部の表情を見て、宍戸の胸はズキンと痛む。まだ、跡部は
自分のことを完全には思い出してくれていない。しかし、ここまでやってしまったら、途
中でやめることは出来ない。どうか跡部が自分のことを思い出してくれますようにと必死
で願いながら、宍戸は次の行動に移った。
「まだ・・・思い出せてはないよな・・・?」
「・・・・・。」
宍戸の問いに跡部は頷くことも首を振ることも出来なかった。その反応から、宍戸は記憶
がまだ戻っていないと理解し、くっと唇を噛む。そして、例の箱の中からトロリとした液
体の入った瓶を取り出すと、下に穿いていた物を全て脱ぎ去り、宍戸は跡部の体を跨いだ。
「ちゃんと見てて、跡部・・・」
「・・・?」
瓶の蓋を開け、その中身を宍戸は自分の指に絡める。存分に指がその液体で濡れると、宍
戸はその濡れた指を自分の蕾へと持っていった。
「んっ・・・あっ・・・・」
「・・・・っ!!」
跡部に見せつけるかのように、宍戸はまだ閉じたままの蕾を慣らし始める。指に絡めたロ
ーションのおかげで、それほど苦労せずに数本の指が内側に入っていった。そんな様子を
見せつけられ、跡部の鼓動はひどく速いリズムを刻み始める。
(目が離せねぇ・・・)
ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てながら、次第に柔らかくほぐれていく蕾に跡部は目を奪わ
れる。どうしようもなく体が熱くなり、ボールを介して吐かれる息も次第に荒くなってゆ
く。
「あっ・・ひあっ・・ん・・・・あっ・・・ああっ!!」
(この声も・・・この表情もたまんねぇ・・・・こんなもん見せつけられたら、頭がどう
にかなっちまいそうだ。)
自分の上で喘ぐ宍戸を眺めつつ、跡部はそんなことを思う。もう自分と宍戸がどんな関係
であるかなんてどうでもいい。今、目の前で開いたり閉じたりしている蕾に、張りつめた
自分の熱を突き入れてやりたいという欲求が、跡部の中でだんだんと高まっていった。
「あぁっ・・・あんっ・・・あとべぇ・・・はっ・・・跡部ぇ・・・・」
「ん・・んんんっ・・・・」
(ああ、ヤバッ・・・久々だから、指が止まんねぇ・・・跡部に見られてるのも・・・・
恥ずかしいけど・・・たまんなくて・・・・)
「あっ・・・うあっ・・・もう・・・あっ・・・あっ・・・・」
自分の指ではあるが、久しぶりに後ろを弄られ、宍戸はその快感に夢中になってしまう。
激しく指を出し入れしているうちに、前の方もいつの間にか限界ギリギリまで高まってい
た。
「んくぅ・・・あっ・・・ああぁ――っ!!」
「んっ・・・ぅ・・・っ!!」
ずぶっと一際奥まで指を入れると、宍戸は弓なりに体を反らせて達してしまう。そんな宍
戸を見ていた跡部も、視覚的な刺激を受け、同時に達してしまった。しかし、その熱はま
だまだ硬さを失わず、ある程度の強度を保っている。
「ハァ・・・ハァ・・・・んっ・・・んぅ・・・・」
「ふっ・・・ふぅ・・・ふぅ・・・」
激しく呼吸乱しながら、宍戸は自分の中から指を抜く。内側に埋められていたものがなく
なったそこは、何かを求め、ひくひくと蠢いている。
「跡部・・・俺のココに、お前の入れたい・・・・」
「・・・・う・・・ぅ・・・・」
「いいよな?」
「ん・・・」
切なげな表情でそんなことを言われ、跡部は思わず頷いてしまう。むしろ、跡部自身、そ
の柔らかにほぐされた蕾に自分自身を入れたくて仕方がなくなっていた。ほんの少し腰を
浮かせると、宍戸は跡部の熱をトロトロになった入口にひたりと当て、ゆっくりと息を吸
った。
ズ・・・ズズズ・・・ズプ・・・
「あっ・・・ああぁ・・・・」
「んっ・・・んん・・・・」
ローションを使ってしっかりと慣らされた宍戸のそこは、跡部の熱をしっかりと飲み込ん
でゆく。熱い宍戸の内側にその全てを締めつけられ、跡部は今までになく激しい快感を感
じる。
「跡部っ・・・はっ・・・んあっ・・・跡部ぇ・・・・」
「んっ・・ぅう・・・んんんっ・・・」
「あっ・・・あはっ・・・ああぁっ・・・」
跡部を何とか気持ちよくさせようと、宍戸は一生懸命に腰を上下に動かす。体では、跡部
と繋がっている快感を感じているが、心は不安でいっぱいであった。ここまでして、跡部
が記憶を取り戻してくれなければ、今していることはただの強姦になってしまう。それが
怖くて、とても不安で、宍戸は激しく腰を動かしながらもボロボロと涙を溢れさせた。
「ひっくっ・・・ふあっ・・・跡部っ・・・んっ・・・・ちゃんと・・・思い出してくれ
よぉ・・・」
「んっ・・・」
「俺、跡部のことすげぇ好きなのに・・・跡部とこういうことすんのもっ・・・すげぇ好
きなのに・・・・」
「・・・ぅ・・・んんっ・・・」
「跡部っ・・・あっ・・・ひぅっ・・・ああっ・・・」
何度も自分の名前を呼ぶ切なげな声と甘い喘ぎ。それと同時に感じる宍戸の中の熱さ。次
第に高まってゆく絶頂感を感じながら、跡部の中でふと何かが弾けた。
(ああ、思い出した・・・・)
そう思った瞬間、跡部は宍戸の中に熱い蜜を放つ。この声も顔も中の熱さも、自分だけの
ものだという感覚に包まれ、今まで以上に強い快感を感じつつ、跡部はドクドクと宍戸の
内側に自らの想いを注いだ。
「ひあっ・・・あっ・・・ああぁんっ!!」
中に注がれる蜜の熱さに宍戸も大きな絶頂感に包まれる。ビクビクとその身を震わせ、跡
部の腹の上に真っ白な雫を放つ。
(腹ん中、跡部のでいっぱい・・・・激・・気持ちイイ・・・・)
存分にその気持ちよさを堪能すると、宍戸はその余韻に浸りながら、跡部の口を塞いでい
た口枷をカチャリと外し、その唇にキスをする。そして、唇を離し、濡れた瞳で跡部の顔
を見つめながら、跡部の名前を口にした。
「・・・・跡部。」
「やってくれるじゃねぇか。」
「えっ・・・?」
「俺様に手枷と口枷つけて、こんなことするなんて、随分と大胆なことしてくれるよなぁ、
宍戸。とりあえず、この手枷は外してもらおうか?」
その口調と不敵な笑みは、いつもの跡部のものであった。そんな跡部の言葉を聞いて、宍
戸の胸は大きく跳ねる。
「跡部、記憶・・・戻ったのか?」
「ああ、そうみてぇだな。とにかくさっさとこの手枷外せよ。」
「お、おう。」
記憶が戻っているなら、この手枷はもう必要ないと、跡部に言われるまま宍戸はそれを外
す。体が自由に動かせるようになると、跡部は自身を宍戸の中から抜き、宍戸の体を自分
の下に組み敷いた。
「こいつをつけられるのは、テメェの方がお似合いだぜ。」
ニッと笑いながらそう言うと、跡部は今まで自分がつけられていた手枷を宍戸の手首につ
け、ベッドに拘束してしまう。そして、自分の唾液ですっかり濡れているボール型の口枷
も宍戸のその口にしっかりとつけてやった。
「うっ・・・んんっ・・・!?」
「さっきまでテメェのこと忘れてたみてぇだけど、テメェの大胆な行動で全部思い出した
ぜ。あんなことされたら思い出さないわけにはいかねぇよなあ。」
「んんっ・・・・」
完全に記憶の戻った跡部にそんなことを言われ、宍戸は胸をときめかせる。
「今度は俺がお前を存分に可愛がってやるぜ。」
そう言いながら、跡部は箱の中から一般的な物よりふたまわり程大きなローターを取り出
す。そして、それを自分が中に放った蜜でトロトロになっている蕾に押しつけた。
「んっ・・・んんっ・・・・!」
「中もぐちゃぐちゃだから、簡単に入っちまうぜ。ほら。」
ぐぷっ・・・
「んんっ・・・んんん――っ!!」
中に異物を入れられ、宍戸は声にならない声を上げる。内側を広げられるような感覚に、
ふぅふぅと息を乱し、宍戸は跡部の顔を見た。
「もっと奥に入れた方がいいよな。ちゃーんと、スイッチも入れてやるぜ。」
「んんっ・・・んっ・・・んんっ・・・・」
カチカチカチ・・・
「んんっ・・・んんん―――っ!!」
「入れるぜ、宍戸。」
「んうぅっ・・・んんっ・・・うぅっ!!」
ローターのスイッチを入れ、再び自身を宍戸の中へ入れる。跡部の熱に押され、中に入れ
られたローターはより奥の奥まで入ってしまう。
(中に出されたのが、ぐちゃぐちゃに掻き回されて・・・奥までビリビリして・・・跡部
のが、熱くて・・・こんなのこんなのっ・・・・)
「んんん――っ・・・んぅ・・・んんぅ――っ!!」
「ハァ・・・中のローターの振動がたまんねぇぜ。テメェの中もぎゅうぎゅう締めつけて
くれるしな。」
「んんんっ・・・んんっ・・・!!」
「動くぜ。その方がテメェもいいんだろ?」
跡部が動くと、コードがその熱に絡み、内側で激しく振動しているローターが前後に動か
される。敏感な内壁をローターと熱で激しく擦られ、宍戸の体は絶え間なく痙攣し、強す
ぎる快感に何度も絶頂という名の高みへ押し上げられる。
「んんっ・・・んっ・・・んんぅ――っ!!」
「ハァ・・・もうイキまくりじゃねぇか。でも、可愛くて最高だぜ?」
「んんんっ・・・んっ・・・・」
どんなに激しく責められても、いつもの跡部だと思うとそれが嬉しくてたまらない。気を
失ってしまいそうな程、何度も何度も達し、熱い精を何度も内側に放たれる。
(ああ、気持ちよすぎて・・・・幸せすぎて・・・マジ死んじゃいそう・・・・)
そんなことを考えながら、宍戸は何度目か分からない絶頂を迎え、ローターの埋められた
腹の奥で跡部の想いを存分に受け止めた。

休み明けの昼休み、宍戸、滝、鳳は屋上で昼食を食べていた。跡部の記憶が戻ったのが嬉
しくて、今まで溜まっていたこともあり、休日を通して宍戸は跡部とやりまくってしまっ
た。
「あー、腰痛ぇ〜。だるいー。」
「大丈夫ですか?宍戸さん。」
「この休みに何があったのさ?」
何となく分かっているが、滝は冗談めいた口調でそんなことを問う。すると、宍戸はほん
の少し顔を赤らめながら、素直にその理由を口にする。
「・・・・この休み中にさー、跡部の記憶が戻ってな・・・思わずやりすぎちまって。」
「思いきりぶっちゃけましたね。」
「さっすが宍戸。」
「だ、だってよー、ずっと俺のこと忘れてたのに、ちゃんと思い出してくれたんだぜ。や
っぱ、嬉しくなっちまうじゃん?」
ここまで宍戸が素直に惚気ることは珍しいので、滝も鳳も驚いたような顔を見せる。
「うわー、俺ら超惚気られてるよ。どうする?長太郎。」
「いいんじゃないですか?たまには。」
「宍戸は本当、跡部のこと大好きなんだねー。」
「べ、別にいいだろっ。好きなのは、本当なんだから・・・」
真っ赤になりつつも、宍戸は滝の言葉を肯定するような言葉を放つ。今日の宍戸は何だか
可愛いなあと滝と鳳は顔を見合せてクスクスと笑った。と、突然、校舎から屋上に通じる
ドアが開く。
ガチャ
『あっ。』
屋上にやってきたのは、跡部と樺地であった。もう完全に記憶の戻っている跡部は、自分
の荷物を全て樺地に持たせている。
「宍戸じゃねぇか。」
「跡部、テメェの所為で腰は痛ぇし、体はだるいし、どうしてくれるんだよ!!」
「アーン?もとはと言えば、テメェが始めたことだろ?」
「うっ・・・確かにそうだけど、でも、あんなにたくさんする必要はねぇだろうが!!」
「テメェだってノリノリだったじゃねぇか。本当可愛かったぜ。」
「う、うるせー!!俺だって、溜まってたんだから仕方ねぇだろ!!」
いつものように言い争いを始める二人だが、その内容は聞いてるこっちが恥ずかしくなる
ような内容であった。
「何かもう見せつけられてるって感じだよね。」
「まあ、宍戸さんがあんなに嬉しそうにしてるんだからいいんじゃないですか?」
「ウス。」
ケンカをしているのかイチャイチャしているのか分からない跡部と宍戸を見ながら、傍観
者の三人は、とりあえずいつも通りに戻ったことにホッとして、笑いながら二人のやりと
りを見守るのであった。

                                END.

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