誰もが寝静まった真夜中、仙蔵は気配を消しながらある場所へと向かった。普段なら誰も
いない場所。しかし、今日はそこにとある人物が居た。
スッ・・・
静かにドアを開けると、仙蔵はその部屋の奥に座っている人物に声をかける。
「長次。」
「・・・・。」
仙蔵に声をかけられ、窓際に居た長次は黙ったまま仙蔵の方を振り返る。窓からは、月の
光が差し込んでおり、その明かりで長次は本を読んでいた。そんな長次の側へ、仙蔵はゆ
っくりと歩いて行く。
「まるで、図書室の主だな。」
あまりにも様になるその姿に、仙蔵はふっと微笑みながら、長次の横に腰を下ろす。仙蔵
が隣に座ると、長次は読んでいた本を閉じ、ぐいっと仙蔵の腕を引き、後ろからその体を
抱きしめた。
「遅かったな・・・」
「そんなことはないと思うぞ。」
「お前が来るのを待っているのは・・・とても長い時間に感じる。」
「それは悪かったな。お詫びに、今日はお前の好きにしていいぞ。長次。」
そんなことを言いながら、仙蔵はすぐ側にある長次の頬にキスをする。それがこれからす
る二人だけの秘密の遊戯を始める合図になった。寝巻きの懐にすっと手を差し込むと、長
次は、その布で隠されている胸の飾りを探る。指先にその小さな突起が触れると、少し力
を入れて、それを抓んだ。
「ふあっ・・・!」
その瞬間、仙蔵の身体がピクリと震える。その反応が可愛くて、長次は更に強くそれを抓
む。
「ひっ・・ぁ・・・長次っ・・!」
「仙蔵・・・」
「い・・いたっ・・・長次・・・もうちょっと・・・優しくっ・・・」
「こうか?」
「んっ・・ぅんっ・・・・」
抓むのをやめ、指の腹で先程より少し硬くなったその突起をぐりっと押す。抓むよりは、
軽い刺激であるが、仙蔵は良い反応を見せた。このくらいがちょうどよいのかと悟ると、
長次はしつこいくらいにその突起を揉むように弄った。
「あっ・・・んっ・・・ふあっ・・・ぁ・・・・」
顔を紅潮させながら、甘い声を漏らす仙蔵に長次はすっかり魅せられていた。もっと可愛
い反応が見たいと、長次は赤く染まりつつある耳たぶを食む。
「んんっ・・・!!」
「仙蔵・・・耳、弱いんだな。」
「あっ・・・ダメっ・・・耳はぁ・・・」
「やめない。そんな可愛い声で鳴かれたら、やめられない。」
「やっ・・・あ・・・ちょ・・ぉ・・・じ・・・・」
胸を弄られ、耳を食まれ、仙蔵はすっかり気持ちよくなっていた。うずうずと身体の奥が
疼き、胸が熱くなる。一枚の布で覆われた下肢の中心も、長次に触れられている所為で、
すっかり熱を持ち、キツそうにその布を押し上げていた。
「ハァ・・・ハ・・・」
「仙蔵。」
「あっ・・・な、何・・・?」
「もうココ、キツいだろ?」
帯のすぐ下の部分を示され、仙蔵はカアっと顔を羞恥の色に染める。しかし、そこがキツ
くなってしまっているのは、事実であった。恥ずかしさにうつむきながら、仙蔵は小さく
頷く。仙蔵が頷くのを見ると、長次はひょいっと仙蔵の身体を持ち上げ、壁際に立たせる
ように寄りかからせた。
「えっ・・・!?な、何っ・・・!?」
「今、楽にしてやる・・・」
そう言って、仙蔵の寝巻きを捲くり上げると、長次は丁寧に仙蔵の身に付けている褌を外
す。そして、ふるふると震えている熱の中心をパクリと口に含んだ。
「あっ・・・ちょ、長次っ!!」
まさか咥えられるとは思っていなかったので、仙蔵は焦ったような声を上げる。しかし、
長次はそんなことは全く無視で、ちゅぷちゅぷとわざと音を立てるように、口を動かした。
「んっ・・・や・・・長次・・・だ、ダメぇ・・・・」
「何故だ?」
パッと口を離し、長次は尋ねる。自分を見上げるその視線に耐えきれず、仙蔵はふいっと
視線を逸らす。
「こ、こんなの・・・は、恥ずかしい・・・・」
「それだけか?」
「えっ・・・?」
「嫌だとか、気持ち悪いとか・・・そうは思っていないのだな?」
「べ、別に・・・嫌ではないが・・・・」
「そうか。」
それなら問題ないと、長次は再び仙蔵のモノを咥える。あまりに不意打ちだったために、
仙蔵は先程よりも感じてしまう。
「んっ・・やっ・・・ああっ!!」
しかし、達するというところまではいかなった。嫌ではないのならと、長次は更に深くそ
れを咥え、仙蔵の感じやすい部分を余すとこなく舐めてゆく。
「あっ・・・長次っ・・・あっ・・・あぁっ!!」
(ああ、どうしよう・・・気持ちよすぎて、どうにかなってしまいそうだ・・・)
「長次っ・・・もぉ・・・だ、ダメ・・・イっちゃ・・・・」
ひどく呼吸を乱し、そんなことを口にする仙蔵の言葉を聞いて、長次はちらっと仙蔵の顔
を見る。その顔は想像以上に艶やかで、長次の心をがっちりと捉えた。
(こんな顔見せられたら、やめられないよなあ・・・・)
そんなことを思いつつ、長次は小さく歯を立て、仙蔵の熱の先をちゅうっと吸った。その
瞬間、仙蔵の下肢はビクビクと震える。
「んんっ!!あっ・・・ああぁ―――っ!!」
放たれた熱い蜜を喉を鳴らして飲み込むと、長次はその口を手の甲で拭う。達したことで
すっかり力の抜けてしまった仙蔵は、ずるずるとその場に崩れ落ちた。
「はっ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
足に力が入らず、仙蔵は足を広げたままの状態で座り込む。その格好は、まるでより先に
進むために必要なことをしてくれと言わんばかりの格好であった。そんな仙蔵の姿に息を
飲み、長次はすっと仙蔵の肩に手をかける。
「ちょ、長次・・・?」
「仙蔵・・・」
静かに名前を呟くと、長次は小さく開かれた仙蔵の唇に口づける。優しく甘い口づけにう
っとりとする仙蔵であったが、次の瞬間、ヒクンと身体を震わせた。
「んっ・・・んんっ!!」
深い口づけをしたまま、長次は利き手を仙蔵の蕾に持っていき、ゆっくりとその蕾を慣ら
し始める。達したばかりの身体に、また新たな刺激を加えられ、仙蔵はふるふるとその身
を震わせた。
「んっ・・・ん・・・んんぅ・・・っ」
指で蕾を弄られる刺激は、強すぎもせず弱すぎもせず、仙蔵の頭の中をゆっくりととろか
してゆく。
(ああ・・・身体全部が溶けてしまいそうだ・・・・)
長次の首に腕を回しながら、そんなことを考えていると、ふと長次が唇を離す。
「んっ・・・長次・・・?」
「仙蔵・・・」
「どうした?」
「そろそろ・・・入れても、大丈夫か・・・?」
本当はもう少し慣らした方がよいと思っているのだが、もう長次自身が限界であった。切
羽詰まったような顔の長次を見て、仙蔵はニッと笑ってみせる。
「構わないぞ。但し、ゆっくりな。」
「ああ。」
仙蔵の身体を反転させると、自分の足の上に座らせるようにして、長次は自分自身をゆっ
くりと仙蔵の中に入れる。熱く脈打つ塊で、蕾を開かれる感覚に、仙蔵はゾクゾクと背筋
に痺れが走るのを感じる。
「ふあっ・・・ああぁんっ!!」
「ハァ・・・仙蔵・・・」
「長次の・・・入って・・・・中・・・あっ・・・」
「力抜いて・・・仙蔵・・・・もう少しで、全部入るから・・・」
「んっ・・・んん・・・ハァ・・・・」
もっと奥まで長次を飲み込もうと、仙蔵は大きく息を吐き、無駄な力を抜こうとする。身
体から余計な力が抜け、蕾の締めつけが弱くなったのを見計らい、長次は一気に自分自身
を仙蔵の中に突き入れた。奥の奥まで長次が入った感覚に、仙蔵は思わず達してしまう。
「あっ・・・ああ―――っ!!」
パタパタと仙蔵の放つ白い雫が図書室の床を彩るのを見て、長次はえも言われぬ興奮を覚
える。
「仙蔵・・・可愛い。」
「やっ・・・長次っ、耳元でっ・・・喋るなぁ・・・」
達したばかりの身体は敏感で、ほんの少しの刺激にも仙蔵は過敏に反応する。あまりにも
感じやすくなっている仙蔵に心を奪われ、長次はわざと耳元で様々な言葉を囁いてみせた。
それは、普段他の人に話すようなもそもそと小さく囁くような声であるが、唇が触れそう
なほど、耳元で囁かれれば、聞き取れないということはない。
「あっ・・・そんなっ・・・やだっ・・・・」
「・・・・・・・・・・。」
「ひぅんっ・・・あっ・・・・違っ・・・・」
長次が耳元で何かを囁くたびに、仙蔵の身体はピクンと跳ね、内側にある長次の熱を締め
つける。それがたまらず、長次はしばらくそんな方法で、仙蔵のことを責め続けた。
「ハァ・・・もう・・・勘弁してくれっ・・・長次・・・・」
「駄目だと言ったら?」
「・・・・泣く。」
「泣かせてみたいものだな。」
「本当にっ・・・お願い・・・長次ぃ・・・・」
目に涙をいっぱい溜め、顔を真っ赤に染めながら仙蔵は長次の方を振り返る。さすがにそ
んな顔を見せられては、やめないわけにはいかない。耳元で囁くのはもうやめて、他の方
法で責めようと長次はいったん仙蔵の中から自分を抜いた。
「ふあっ・・・ちょ、長次っ・・・?」
「嫌なんだろ?」
「ち、違っ・・・そーじゃなくてっ・・・・」
「そうじゃないって、どういう意味だ?」
「その・・・・」
長次がイっていないのも分かっているし、自分もまだまだ物足りない。困ったような顔を
しながら、仙蔵は長次の方を向いて、ぎゅっと拳を握った。
「あ、あんまりにも・・・長次が恥ずかしいことばっかり言ってくるから・・・耐えられ
なくなって・・・・けど、抜いて欲しくはなくて・・・・だから・・・・」
「だから?」
「もう一度・・・長次のを私の中に入れて・・・・私の中を長次で、いっぱいにしてくれ。」
自分でも何を言っているのかよく分からなかったが、とにかく仙蔵は必死であった。そん
な仙蔵に、長次は自分を抑えられなくなる。どさっとその場に仙蔵を押し倒し、大きく足
を開かせた。
「あっ・・・・」
「仙蔵っ・・・」
再び長次は仙蔵の中へ自身を埋める。仙蔵もそれを望んでいたということもあり、いった
んは閉じた蕾もその花弁を開き、長次の熱をしっかりと咥え込んだ。
「んんっ・・・んあっ・・・!!」
「お前の望み通り・・・ちゃんと入れてやったぞ、仙蔵。」
「あっ・・・長次っ・・・」
「この後は、どうして欲しいんだ?」
先程とは打って変わって、長次は実にハッキリとした口調で仙蔵にそう尋ねる。あまりの
気持ちよさにビクビクと下肢を震わせながら、仙蔵は呼吸を乱し、言葉を紡ぐ。
「う・・動いて・・・」
「それで?」
「わ、私の中を・・・長次ので・・・か、掻き回して・・・欲しい・・・」
あまりに素直におねだりをしてくる仙蔵に、長次はきゅんとしてしまう。もう手加減なん
て出来ないと思いながら、長次は激しく動き始めた。
「んあっ・・・あっ・・・はぁっ・・・長次っ・・・!!」
「仙蔵っ・・・!!」
「長次・・・気持ち・・・いいっ・・・あっ・・・ああっ・・・」
「私も・・・仙蔵の中・・・熱くて・・・・」
「はっ・・・ハァ・・・ああ・・・もうっ・・・・」
長次を内側で存分に感じ、仙蔵は再びイキそうになる。しかし、今度は長次と一緒にイキ
たいと、必死でそれを堪えていた。
「ハァ・・・仙蔵っ・・・・」
「長次と・・・イキたい・・・も・・イキそうだけど・・・・長次と一緒がいいっ・・・」
「安心しろ。私も・・・もう限界だからっ・・・・」
ぎゅっとお互いの手を握り合うと、二人は同時に快感の高みに達する。熱い雫がお互いの
体に向けて放たれ、一つに交わる心地よさが二人を包んだ。
長次と一緒に達した瞬間、仙蔵は気を失ってしまった。そんな仙蔵をそっと寝かしておき
ながら、長次は周囲の後始末をする。全くそんなことをしたとは思えないほど、周りを綺
麗にすると、長次は仙蔵を自分の膝を枕にして寝かせ、自分は壁に寄りかかりそっと目を
閉じた。朝までは数刻しかないが、少しでも寝た方が次の日に響かないだろうと思い、長
次は心地よい気分の余韻に浸りながら、眠りについた。
次の日の朝、図書室に用のあった雷蔵は、朝早くから図書室に向かう。まだ誰も居ないと
思って行ったのだが、そこには寝巻きのままの図書委員長と何故か作法委員長の姿があっ
た。驚いて声を上げそうになった雷蔵だが、長次が人差し指を立て、静かにということを
表していたので、雷蔵は両手でパッと自分の口を押さえた。
(な、何でこんな朝っぱらから、中在家先輩が居るんだー!?しかも、何故か立花先輩は
爆睡してるし〜。)
「お、おはようございます、中在家先輩・・・・」
出来る限りの小声で、雷蔵は長次に挨拶をする。長次も返事を返したのだが、その声はい
つものもそもそ声で、やっと聞きとれるくらいであった。どうしてここに居るのかを尋ね
たかったのだが、直観的にそれを聞いてはいけない気がして、雷蔵はぐっとその欲求を抑
えた。
「不破・・・」
「は、はいっ!!」
「長屋に戻って着替えてくるから、授業が始まる時間まで当番をしていてくれないか?」
「わ、分かりました。」
「すまないな・・・・」
「い、いえ・・・ぼくも図書委員ですから。」
雷蔵に図書室の当番を任せると、長次は仙蔵を姫抱きして長屋へと戻って行った。何だっ
たんだろうと、疑問に思いながら、雷蔵は二人を見送る。長次が見えなくなると、雷蔵は
大きな溜め息をつく。
「あー、ビックリした。一体何だったんだろう?」
そんな独り言を漏らしていると、突然後ろから声をかけられる。その声は、先程長次に運
ばれて行った六年生の声であった。
「何がビックリしたなんだ?」
「うっわああっ!!」
そこまで大袈裟に驚いてくれるとは思わなかったので、仙蔵の変装をした鉢屋は声を上げ
て笑い、いつもの雷蔵の姿に戻る。
「雷蔵がわたしの変装で、そこまで驚くなんて珍しいな。」
「も、もうっ、驚かさないでよ、三郎!!」
「そういえば、さっき立花先輩を抱いた中在家先輩とすれ違ったんだけど、あれは完全に
昨日やったな。」
「え、えぇ――っ!?じょ、冗談だろぉ?」
「冗談じゃないさ。しかも、ここで。なかなかやるねぇ、図書委員長さんも。」
ニヤリと笑いながら、そんなことを言う鉢屋の言葉を聞いて、雷蔵はぷしゅーっとその顔
を真っ赤に染める。まさか長次が、図書室でそんなことをするなんてありえないというの
が、雷蔵の長次に対するイメージであった。
「何、そんなに真っ赤になってるんだよ?雷蔵。」
「い、いや、まさか中在家先輩に限ってそんなことはないなあと思って・・・」
「そんなことはないさ。中在家先輩はあー見えても結構・・・・」
「あー、もうやめてやめてっ!!あんまりそんな話聞かされたら、ぼく中在家先輩にどん
な顔して会えばいいか分からなくなっちゃう。」
「そうか。それより、そろそろ朝飯食いに行かないか?早く行かないと、なくなっちゃう
ぞ。」
「で、でも、中在家先輩に図書室の当番頼まれてて・・・・」
「少しくらい平気だろ。もし、怒られるようなことがあれば、わたしが代わりに怒られて
やるし。」
「そこまで言うなら・・・・」
それだったら、別に大丈夫かと雷蔵は鉢屋と一緒に図書室を出る。朝から何だかすごいも
のを見てしまったなあと思いながら、雷蔵は胸をドキドキさせ、鉢屋と一緒に食堂へと向
かった。そして、そこで長次と仙蔵と鉢合わせしてしまい、更にドキドキしてしまうので
あった。
END.