「ふー、今日の授業はこれで終わりだ。」
午後の授業を終え、仙蔵は長屋に向かって歩いていた。
「あっ、立花先輩だ!」
「本当だ。」
『立花せんぱーい!!』
「げっ!!」
聞いたことのある声が聞こえ、ふとそちらの方に目をやると、一年は組のしんべヱと喜三
太が満面の笑みで、走って向かって来ていた。一瞬逃げようかとも思ったが、さすがにそ
れをしてしまっては、冷たい先輩になってしまう。逃げたい気持ちをぐっと堪え、仙蔵は
その場に留まった。
「こんにちは、立花先輩。」
「さっき学園の側でとっても綺麗な花を見つけたんですよー。」
「へ、へぇ、そりゃよかったじゃないか。」
(また変なことに巻き込まれないうちにどっか行ってくれー!!)
仙蔵が心の中でそんなことを思っていると、喜三太がパッと仙蔵の前に摘んできたと思わ
れる花を差し出す。
「これ、立花先輩にあげます。」
「立花先輩、花とか似合いますもんね!」
「あ、ありがとう・・・」
喜三太からその花を受け取ると、仙蔵は素直に礼を言う。花を渡すと、二人はくるっと向
きを変え、振り返りつつ、手を振った。
「ぼくたちこれから用があるんで。」
「さよなら、立花先輩。」
「あ、ああ。」
思ったより早く二人が目の前から去ってくれたことに胸を撫で下ろし、仙蔵はふともらっ
た花に目を落とす。見たこともない花であったが、綺麗であるのは確かであった。
「確かに綺麗な花だな。せっかくだから、部屋にでも飾るか。」
意外に綺麗な花であることに気づき、仙蔵は上機嫌で長屋へと向かう。今回はあの二人に
会ったにも関わらず、妙なトラブルに巻き込まれることなく済んだことも気分がいい一つ
の理由になっていた。長屋に戻ると、小さなビンに水を入れ、仙蔵は喜三太からもらった
花をそれに生ける。
「とりあえず、このへんに置いておくか。」
自分のすぐ側に置いておきたいと、仙蔵は枕元にその花を置いた。その日の夜は、枕のす
ぐ上に花があるという状態で眠りについた。
次の日、仙蔵が目を覚ますと、顔の上に何枚かの花びらが落ちていた。その花びらを払い
のけると、仙蔵は大きなあくびをして起き上がる。
「さて、制服に着替えないと・・・・」
布団をたたむと、仙蔵は寝巻きから制服に着替えようとする。寝巻きを脱ぎかけて、仙蔵
は自分の体に起こっている異変に気づいた。
「〜〜〜〜っ!!!???」
小ぶりではあるが、確かに胸のふくらみがある。念のため、下帯の中を確かめてみたが、
あるべきはずのものがない。言葉にならない驚きに、仙蔵の頭は混乱する。
「と、とりあえず・・・こういうときは・・・・」
体に異変が起こったのなら、とりあえず医務室に相談に行こうと、仙蔵は寝巻きのまま、
医務室へと走った。パーンといい音を立て医務室の障子を開けると、伊作が驚いたために
トイぺに足を滑らせすっ転んでいた。
「伊作っ、大変だ!!って、何やってるんだ?」
「いたたた・・・仙蔵がいきなり障子開けるからビックリしちゃって、転んじゃったんだ
よー。」
「さすが不運委員長だな。って、そんなことはどうでもいいんだ!とにかく大変なことが
起こった。」
「何があったのさ?」
不運委員長と言われたり、どうでもいいと言われたりで、伊作は若干ヘコむ。しかし、そ
んなことを気にしていても仕方がない。とりあえず、何があったかを聞こうと伊作は仙蔵
に尋ねた。
「体が女になってしまっているんだ。伊作がこの前、六年全員に悪戯をした時みたいに。」
少し前にそんな悪戯をされたため、仙蔵はそう説明する。
「今回は僕、何もしてないよ!!」
あの時は相当みんなに怒られたので、伊作は慌てた様子でそう弁解する。そんなことは、
仙蔵も百も承知だった。
「それは分かってる。だから、困っているんだ。どうしてこうなってしまったのかが分か
らなくて・・・・」
「何か変わったことはなかった?昨日とか今日の朝とか。」
「変わったこと・・・・?うーん。」
何かあったか?と仙蔵はしばらく考える。少し考えると、ふと昨日喜三太としんべヱにも
らった花のことを思い出した。
「あっ、そういえば昨日、一年は組の喜三太としんべヱに花をもらったな。結構綺麗な花
だったから、枕元に飾っておいたんだが・・・」
「花か。確か伏木蔵の時もそうだったんだよな。その花、ちょっと持って来てくれる?」
「ああ。」
真剣な顔で伊作がそんなことを言うので、仙蔵は自分の部屋へその花を取りに行く。持っ
てきた花を見て、伊作はうーんと考える。
「確かに伏木蔵が持って来た花と似てるけど、ちょっと違うみたいだな。あの時は確かく
しゃみをしたら元に戻ったよね。」
「確かそうだったな。」
「一応、試してみる?」
「そうだな。」
紙縒りで鼻をくすぐり、伊作は仙蔵にくしゃみをさせる。しかし、期待とは裏腹に、仙蔵
の体は元には戻ってくれなかった。
「ダメみたいだね。」
「困ったな・・・。どうしよう・・・」
「とにかく僕はこの花を調べてみるよ。たぶんこの前の花の亜種だと思うんだよね。」
「分かった。とりあえず、今日の授業は休むことにする。このままじゃさすがに出れない
からな。」
「女装の授業とかだったら好都合なのにね。」
「それを言うな。それに女装の授業だったら、別にこんなことになってなくても十分いい
評価をもらえる。」
「あはは、確かに。それじゃあ、何か分かったら連絡するから。」
「ああ。頼んだぞ。」
すぐには元に戻れないことが分かると、仙蔵は少々ヘコんだ様子で医務室を出る。とにか
く自分の部屋へ戻ろうと、廊下を歩いていると、バッタリと長次に出会う。
「あっ、長次・・・」
「・・・・・」
じっと仙蔵を見て、長次はすぐに仙蔵の変化に気がつく。しばらく何も言わずに、長次は
仙蔵の体をじっと見る。そんな長次に何も声をかけられず、仙蔵はおどおどしながら、長
次の顔を見つめる。
ガシっ!!
と、突然長次は仙蔵の肩を掴む。いきなり肩を掴まれ、仙蔵はビクッとしてしまう。
「仙蔵・・・」
「な、何だ?長次・・・」
「出かけよう・・・」
「あ、ああ。」
静かであるが、長次的には勢いのある言葉を聞いて、仙蔵は頷くことしか出来なかった。
女になっている仙蔵を見て、長次としてはいてもたってもいられなくなったのだ。これは
もう女の子らしい格好をさせて、デートをするしかないとそんなことを考えていた。普段
より一回りくらい小さくなっている仙蔵の手を取ると、長次は外出する準備をさせるため
に仙蔵の部屋へと向かって歩き出した。
外出許可をもらい、二人は町へ繰り出す。私服の長次に女用の着物を着た仙蔵。あまりに
仙蔵の女の格好が様になっているので、他の学年の者は六年生の女装はレベルが高いなあ
と思う。もともと女装の課題というものがあるので、仙蔵のその格好を怪しむ者など一人
もいなかった。
「もともと女装が得意でよかった。他の学年の奴らは、私が女になっているなど気づいて
いないみたいだな。」
「・・・・そうだな。」
「こんな姿で町に出るなんて何だか変な感じだが、長次とのデートだと思えば、なかなか
嬉しいものだな。」
ニッコリと目を細めながら微笑む仙蔵を見て、長次の胸はひどく高鳴る。女になっていよ
うがいまいが、仙蔵は本当に可愛い。そんなことを考えつつ、長次は仙蔵のことをずっと
見つめていた。
「せっかく女になっているのだから、普段は入らない店に入るのもいいな。」
「ああ・・・」
「手始めにあの店なんてどうだ?」
仙蔵が指差していたのは、かんざしや紅などいかにも女性が好みそうな物がところせまし
と並んでいる店であった。確かに男のままであったら少し入りにくい店だなあと、長次は
仙蔵のその誘いに頷く。
「それじゃあ、行くぞ。長次。今日はお前の奢りだからな!」
そんなことを言った覚えはないが、仙蔵がこんなに楽しそうにしているなら、それも別に
構わないと長次は思う。仙蔵に手を引かれ、その店に入ると、心地よい香の匂いが店いっ
ぱいに広がっていた。
「いい匂いだな。」
「ああ。」
「せっかくだから、変化の術に使えるような物を買っておこう。こんな機会滅多にないか
らな。」
「仙蔵は・・・こういうのが似合う。」
そう言いながら、長次は艶やかな紅色のかんざしを仙蔵の頭にかざした。
「似合うか?」
「ああ。すごく・・・似合う。」
「なら、これは買うことにするよ。」
長次に似合うと言われたならば、買うしかないだろうと仙蔵はそのかんざしを受け取る。
かんざし以外にも紅や香、白粉やリボンをその店で買った。女になっていることもこうい
うことが出来ると考えるとそう悪いことばかりではない。そう思いつつ、仙蔵は長次との
デートを心行くまで楽しんだ。
「はあ、結構色々な物を買ったな。」
「そうだな。」
「やはりお前と一緒だと、どんな状況でも楽しいものだな。」
「仙蔵・・・」
仙蔵の言葉にきゅんとしていると、長次の耳に聞いたことのある声が入ってくる。
『あー、中在家長次先輩っ!!』
「・・・・?」
声のする方に顔を向けると、そこにはしんべヱと喜三太がニコニコしながら立っていた。
「一年は組の・・・・」
二人の姿を見て、仙蔵の顔は一気に引きつる。
(もとはと言えばこいつらの所為で〜!!)
仙蔵が若干イライラし始めているのに気づき、長次は少し困ったような顔をする。
「中在家先輩、隣の綺麗なお姉さんは、中在家先輩の彼女ですか?」
「まあ・・・」
喜三太の質問に長次は仙蔵に目をやりながら答える。しかし、仙蔵の顔は不満いっぱいの
表情であった。
「へえー、さすが六年生になると違いますね!」
(そんなことはどうでもいいから、早くどこかへ行ってくれ!!)
「すっごくお似合いですよ!!」
「うん!!すごくお似合いです。中在家先輩と綺麗なお姉さん。」
二人のその言葉を聞いて、仙蔵の顔からイライラした感じが消える。大好きな長次とお似
合いのカップルだというようなことを言われ、何となくよい気分になったのだ。
「ちょっとうらやましいね、しんべヱ。」
「うん。あ、そうだ!喜三太。早く学園長にお団子買ってかないと怒られちゃうよ。」
「そうだった!!今、おつかいの途中だったんだっけ。」
『それじゃあ、中在家先輩、綺麗なお姉さん、さようなら。』
「ああ。」
「・・・・・。」
学園長に頼まれたおつかいの途中だったということで、しんべヱと喜三太は二人の前から
あっという間にどこかへ去って行ってしまった。
「やっと行ってくれた。」
ボソっと仙蔵はそう呟いた。いつもはあの二人に会うと、ひどい状態になって帰って来て
すこぶる機嫌の悪い仙蔵だが、今日はそんなことはない。
「でも、今日はそこまで機嫌悪そうじゃないな。」
「まあ・・・お前とお似合いだと言われたのが、ちょっと嬉しいなあと思ってな。」
「あれは私も・・・嬉しかった。」
「だろー?別に今日は変なトラブルを起こしていったわけじゃないしな。」
不機嫌顔ではなく、嬉しそうな笑顔を見せる仙蔵を見て、長次はふと思っていることを口
にする。
「・・・不機嫌な顔も可愛いと思うが、やはり私としては、笑ってる顔の方が好きだな。」
「ちょ、長次っ・・・」
いきなり何を言い出すのかと、仙蔵の顔は真っ赤になる。何だかいつもより反応も女の子
らしくなって可愛いなあと、長次は頬が緩むのを抑えられないでいた。
存分に町でのデートを楽しむと、二人は学園に帰るのではなく、町の外れにある一つの宿
に泊まることにした。いまだに男に戻れていないので、風呂など困ることがいくつかあっ
てのことだ。そこまで高価な宿ではないが、雰囲気はなかなか良い感じの宿であった。そ
んな宿で別々に風呂に入った後、二人は部屋でくつろぐ。
「うーん、なかなか戻らないものだな。どうやったら戻るのだろう?」
「きっと伊作が戻る方法を見つけてくれる・・・」
「そうかもしれないけどさ。早く戻りたいなあ・・・」
「仙蔵・・・」
「ん?何だ?長次。」
仙蔵の問いに、長次は態度で示す。浴衣姿の仙蔵をぎゅっと後ろから抱きしめると、耳元
でボソボソと囁いた。
「したい。仙蔵。」
「なっ・・・い、今、私は女になっているのだぞ!?」
「だから、してみたい。・・・ダメか?」
「うっ・・・」
いつもとは違う身体でそういうことをするのにはかなり抵抗があるが、長次の言葉に仙蔵
は首を横に振ることは出来なかった。
「ちょ、長次がそんなにしたいのなら・・・別に構わないぞ。」
「ありがとう、仙蔵。」
仙蔵の肯定の言葉に、長次は礼を言いながら、軽く耳を食む。それと同時に浴衣の懐に手
を入れ、普段は存在しないふっくらとした胸に手を触れる。
「ふあっ・・・・」
「・・・・柔らかい。」
「あ、当たり前だろう!お、女になっているのだから・・・」
恥ずかしそうに顔を赤らめながら、仙蔵はそう口にする。想像以上に胸の触り心地がよい
と、長次はゆっくりと胸を揉み始める。
「あっ・・・長次っ・・・・」
「女になってても・・・ここはやっぱり感じるのか?」
胸を揉まれることでぷっくりと立ち上がっている突起を指先で抓む。その瞬間、仙蔵の体
はビクンと跳ねる。
「あっ・・・やぁんっ!!」
「やっぱり敏感なんだな。仙蔵のここは。」
「やっ・・・長次ぃ・・・・」
「可愛い・・・」
良い香りのする絹のような髪に口づけながら、長次は仙蔵の両方の胸を弄る。いつもはな
いふくらみを揉みしだかれ、敏感な突起を弄られる。切ないような腰のあたりが疼くよう
な何とも言えない快感に、仙蔵はふるふるとその身を震わせていた。
「あっ・・・あぁ・・・んんっ・・・・」
「仙蔵・・・・」
「はっ・・・んっ・・・何・・・?」
「下も・・・弄っていいか?」
そんな長次の問いかけに、仙蔵の心臓はドキっと跳ねる。明らかにいつもとは違う下半身
を弄られるのは、多少の恐怖を伴うが、逆にどんな感じになるのかという好奇心もあった。
「自分でもどうなってるかよく分かってないんだから・・・優しくしろよ。」
「ああ、分かってる。」
浴衣の下の下帯を外すと、長次は控えめに開かれた足の中心に手を滑り込ませる。普段は
あるべきものがないのは不思議な感じであるが、それ以上にその中心がひどく濡れている
ことに長次は驚いた。
「すごい・・・濡れているな。」
「・・・・・っ」
長次の言葉に、仙蔵の顔はかあっと赤く染まる。男の時とは全く違う濡れ方に、仙蔵は戸
惑いつつも、今までに感じたことのない興奮を覚えていた。しばらくどんな感じになって
いるかをそこに触れて確かめた後、長次は蜜の溢れてきている中心に指を入れる。普段は
存在しない場所にも関わらず、そこに触れられ、仙蔵はどうしようもないほどの快感を感
じる。
「んっ・・・ああっ・・・!!」
「熱いな・・・」
「んっ・・・長次っ・・・ふあっ・・・ああぁっ!!」
「ぐちゃぐちゃだぞ。今日は・・・こっちに入れたい・・・・」
耳元でそんなことを囁かれ、仙蔵はゾクゾクと全身が粟立つような痺れが全身を駆け抜け
ていくのを感じる。
「あっ・・・長次っ・・・そ・・んな・・・」
「仙蔵・・・」
熱い内側で指を動かすと、仙蔵の身体はビクンと震える。こんなところに長次のモノを入
れられたら、自分はどうなってしまうのだろうと、仙蔵は胸がひどく高鳴るのを抑えられ
ず、熱い息を吐いた。
「ダメか・・・?仙蔵。仙蔵が本当に嫌なら・・・」
「・・・構わないぞ。」
「えっ・・・?」
「長次だって・・・余裕がないのだろう?」
「でも・・・」
無理矢理はしたくないという言葉を続けようとする長次の言葉を遮り、仙蔵はふっと笑っ
て、言葉を紡ぐ。
「大丈夫。長次のものであるなら、どんな場所でも受け入れられるさ。」
「仙・・・」
そんな仙蔵の言葉に余裕を失い、長次は仙蔵の体を反転させ、布団の上に押し倒す。そし
て、そのままもう十分に熱くなっている楔を柔らかい襞の中心に埋め込んだ。いつもとは
違う仙蔵の内側に、長次は小さく声を漏らす。
「・・・・っ!」
「あっ・・・ふあぁっ・・・長次っ・・・・!!」
「気持ちイイ・・・仙蔵。」
「あっ・・・あ・・・私もっ・・・・私も・・・気持ち・・・いっ・・・・」
いつもと同じようで少し違う感覚。しかし、長次の熱が中で動くたびに感じられるのは、
その身が溶けてしまいそうな程の快感であった。
「んっ・・・長次っ・・・長次ぃ・・・・」
「仙蔵・・・・」
「あっ・・・長次・・・もっと・・・・」
「もっと・・・何だ?」
「もっと・・・動いてぇ・・・・」
艶やかさに染まった顔でそんなことを言われ、長次の自制心はどこかに消え去ってしまう。
仙蔵の望み通り先程よりも大きく動いてやると、仙蔵はより艶めいた反応を長次に見せた。
男だろうが女だろうが、仙蔵の中はどうしようもなく心地が良い。そんなことを考えなが
ら、長次は蜜の滴る仙蔵のそこへ熱い雫を迸らせた。
「・・・・っ!!」
「ふあっ・・・あああぁ――っ!!」
いつもとは違う場所へ熱いものが放たれるのを感じ、仙蔵は驚きとともに気絶しそうな程
の絶頂感に包まれる。長次の体にしがみつき、いつもより少し長く続くその感覚に身を震
わせながら、仙蔵はゆっくりと目を閉じた。
一瞬意識を失ってしまった仙蔵だが、すぐに意識を取り戻す。長次の体をもう自分の上に
はなかったが、先程の大きな快感の波の余韻はいまだに残っていた。
「ハァ・・・・」
「大丈夫か?仙蔵。」
仙蔵の隣に座り、仙蔵の頭を撫でながら長次をそう尋ねる。髪に触れている手を取り、仙
蔵は穏やかに微笑みながら答えた。
「大丈夫だ。そんなに心配そうな顔をするな。」
「そうか、それならよかった・・・・あと、もう一つ言いたいことがあるんだが・・・い
いか?」
「ああ、何だ?」
「仙蔵の体、男に戻っているぞ。」
長次のその言葉を聞き、仙蔵はガバッと起き上がる。そして、自分の体を見てみると、確
かに先程まであった胸のふくらみは消え、下半身もあるべきものがついていた。
「本当だっ!!元に戻ってる!!」
「ああいうことをすると・・・戻るとか、そういう感じだったのか?」
「分からないが、とりあえず戻れてよかった。これで何の心配もなく学園に戻れるな!!」
本当に嬉しそうにしている仙蔵の顔を見て、長次もよかったとホッとする。長次も嬉しそ
うにしてくれていることが嬉しくて、仙蔵は長次の首に抱きつきながら、ちゅっと軽く長
次の唇にキスをする。
「っ!!」
「ありがとう、長次。元に戻れたのもお前のおかげだぞ!」
「そんなことは・・・・」
「そんなことあるんだ!!はあー、本当によかった。これで安心して眠れる。」
「そうだな。」
一通りはしゃいだ後、仙蔵は長次にピッタリとくっつきながら眠ってしまう。そんな仙蔵
の寝顔を見て、長次はふっと優しく微笑むのであった。
次の日になり、長次と仙蔵の二人が学園に戻ると、伊作が半べそになって二人のところへ
やってきた。
「仙蔵っ、どうしよう!!」
「朝から元気だな、伊作。どうした?男に戻る方法が分かったのか?」
「違うよ!!その逆!!あの花調べてたら、僕も女の子になっちゃった。でも、全然戻り
方が分からなくて・・・・」
「ああ、それなら大丈夫だ。男に戻る方法分かったぞ。な?長次。」
「ああ・・・」
「えっ、じゃあ仙蔵はもう男に戻ってるってこと!?」
「ああ。戻った。」
それならその方法を教えて欲しいと伊作は藁にもすがる思いで、仙蔵にその方法を尋ねる。
戻り方を尋ねられ、仙蔵はニヤリと笑いながら、伊作の耳元でその方法を囁き、教えてや
った。
「えっ、えっ!?嘘、それ本当!?」
「本当だぞ。私はそうやって元に戻った。」
「本当?長次。」
顔を真っ赤にしながら、伊作は長次にも尋ねる。その問いかけに長次は黙って頷いた。元
に戻る方法は分かったが、それをどう実行すればよいか分からない。
「・・・どうしよう。」
困ったなあとうつむく伊作に、長次はボソッと何かを呟く。その言葉が聞き取れず、伊作
は長次に聞き返した。
「えっ?何?長次?」
「・・・文次郎にでも頼めばいい。」
「っ!!」
「ああ、伊作だったらそれが一番手っ取り早いな。」
「で、でもっ・・・・」
「よかったな、伊作。男に戻る方法が分かって。それじゃ私達は、部屋に戻って着替えて
来るよ。」
「頑張れ、伊作・・・・」
「そんなあ・・・・」
ひらひらと手を振りながら、仙蔵は自分の部屋へ向かって歩き出す。伊作の肩にポンと手
を置き、長次もそう言い残すと仙蔵の後を追って歩き始めた。戻り方が分かってもそれは
なかなか実行しにくいと頭を抱えながら、女の子になってしまった不運委員長はその場に
立ち尽くすのであった。
END.