20years old ―10.4―

「悪ぃな。いきなり呼び出しちまって。」
跡部に誕生日を祝ってもらった日から二日後。宍戸は滝と鳳を呼び出して、街に来ていた。
「別に暇でしたからいいですよ。」
「俺も、まあ用はなかったから来てやったけど。」
何故呼び出されたかは言われてはいないのだが、二人はどうして宍戸が自分達を呼び出し
たのか分かっていた。三日後は跡部の誕生日である。誕生日プレゼントに何を買えばいい
のか分からないから一緒に選んでくれ、あながちそんなところであろう。
「で、お前らにちょっと頼みたいことがあるんだけど・・・・」
「跡部への誕生日プレゼントでしょ?どんなのがいいの?」
「えっ?」
「跡部さんへの誕生日プレゼントを一緒に考えて欲しくて、俺達を呼んだんですよね。」
まだ何も言っていないのに、どうしてそこまで完璧に自分の考えていたことが分かってし
まうのかと、宍戸はポカンと口を開けた。そんな宍戸の顔を見て、二人はくすくす笑う。
「何、そんなアホ面さらしてんの。この時期に宍戸が俺達を呼び出すなんて、その理由以
外に何があるのさ?」
「呼び出されることはあんまりないですけど、何だかんだ言って、毎年相談しに来ますも
んね。」
「うっ・・・だってよぉ、俺、そんなにセンスよくねぇから一人で選ぶのってちょっと心
配なんだよ。」
ゴニョゴニョとそんなことを言いながら、宍戸は恥ずかしそうにうつむく。こういうとこ
ろを見ると、跡部がいつも宍戸のことを可愛い可愛いと言っているのが少し分かるような
気がすると二人は顔を宍戸に聞こえないようにそんな話をした。
「それで、宍戸はどんなものをあげたいの?それが分からないと俺達アドバイス出来ない
よ。」
「えっと・・・そんなに金持ってねぇから、あんまし高くないもので、でも、跡部がすげ
ぇ喜んでくれるもの。かな?」
「宍戸さん、今年は跡部さんに何もらったんですか?」
「えっ・・・えっとぉ・・・・」
ただプレゼントを聞いただけにも関わらず、宍戸は頬を染めて目を泳がせた。さすがに口
に出すのは恥ずかしいので、もらった指輪をはめてある左手を二人の前に差し出した。
『・・・・・』
「な、何でそこで黙んだよ!?」
「いやあ、もう何ていうか、無言のノロケだよね。」
「左手の薬指ってことは、結婚指輪ですか?」
鳳の言葉に宍戸はボッと赤くなる。やはり言われるとかなり照れる。そんな宍戸の反応が
面白いと滝は思いきりからかい出した。
「ふーん、結婚指輪をプレゼントされたってことは、当然プロポーズもされたわけだよね。
プロポーズの言葉、どんな感じだったの?」
「そ、そんなこと言えるか!!アホっ!!」
「跡部さんのことですから、きっとすごくカッコイイ言葉だったんでしょうね。」
「長太郎まで何言い出すんだよ!?」
あまりにも宍戸が動揺しまくっているので、二人は声を立てて笑った。本当にからかい甲
斐があるなあと楽しくなってきてしまう。しかし、いつまでもそんなことをして遊んでい
ても埒があかないので、話題を宍戸が買おうとしているプレゼントの話に戻す。
「まあ、それは置いといて。で、どんな店行こうか?」
「そうですねぇ、雑貨屋さんとかはどうです?アクセサリー系は結構値がはりますからね。
花とかでもいいと思いますけど、やっぱり残るものの方がいいですよね?」
「うーん、確かにな。何にするかは見てから決めるか。」
やっと話がもとに戻ったことにホッとしながら、宍戸は二人の言葉に頷く。とにかくいろ
いろな店を回ってみようと、三人はショッピングモールに向かって歩き出した。

何軒か店を回ったがいまいちしっくりするプレゼントが見つからないと、宍戸は溜め息を
ついた。
「はあー、全然何買えばいいか分からねぇ。」
「宍戸があげるもんだったら、跡部は何でも喜ぶと思うけどねぇ。」
「そうですよ。宍戸さんらしいものでいいと思いますよ。」
「俺らしいもんって何だよ?」
「それは自分で考えなきゃっしょ。」
だから、それが分からないんだと宍戸は不満そうな顔で滝の顔を見る。宍戸が再び店の中
の商品を見始めると、そろそろプレゼント選びに飽きてきた滝がふとすぐそばにあった本
を手に取った。パラパラっとページをめくっていくとこれがなかなか興味深い。
「へぇ、面白いじゃん。」
「何見てるんですか?」
「んー、365日、それぞれの日が何の日かが載ってる本。」
「へぇ、面白そうですね。」
それは面白そうだと鳳も一緒に見てしまう。ページをめくっていくうちにたまたま宍戸の
誕生日のページに行きあたる。そこに書かれた文字を見て、二人は思わず宍戸を見た。
「これ、宍戸に超ピッタリじゃない?」
「そうですね。これって、プレゼント選びのヒントになりませんか?」
「あー、なるかも。」
「なーに、関係ねぇ本見てんだよ?俺がすっげぇ困ってるっつーのに。」
プレゼント選びを放棄し、立ち読みをしている二人を見つけ、宍戸は怒ったような顔をし
て二人の前にやってくる。その様子を見ると、まだ、いい感じの誕生日プレゼントは見つ
かっていないらしい。
「別に関係ない本を見てたわけじゃないよ。ねぇ、長太郎。」
「はい。宍戸さんの誕生日ってこの本によると『招き猫の日』なんですって。それって、
プレゼント選びのヒントになりませんか?」
「へぇ、俺の誕生日って『招き猫の日』なんだ。って、それがどうしてプレゼントに繋が
るんだよ!?」
「だから、招き猫とか見てみるのもありじゃない?」
滝の言葉に宍戸はハッとする。確かに跡部は猫を飼っていて、その猫をかなり可愛がって
いる。猫好きであるのは確かだ。それならば、そんなプレゼントも悪くはないかもしれな
いと宍戸は招き猫を探し始めた。小さな雑貨屋さんだったので、すぐにそれは見つかった。
「おっ、発見!」
「結構いろんな種類がありますね。」
「確かに招き猫っていいかもしれねぇな。跡部は黒が好きだから・・・・」
買うとしたら黒い猫がいいだろうと、宍戸は黒い招き猫を探す。そこに置いてあるのは基
本的に白い猫ばかりだったが、棚の奥の方に一つだけ黒い猫があるのを見つけた。前にあ
る白猫達をかきわけ、宍戸はその黒猫を手に取る。
「なかなか可愛い顔してんじゃんコイツ。」
宍戸が手にした招き猫は普通の招き猫のように目がパッチリと開かれたものではなく、ニ
ッコリ笑っているようなそんな表情の招き猫であった。しかも、かなり綺麗な黒である。
宍戸は一目でこの黒招きを気に入った。
「これ、いいかもなあ。なあ、どう思う?」
「いいんじゃない?」
「すごくいいと思いますよ。」
いいと言っているが、二人はその招き猫を見てほとんど同じことを考えていた。
「あの招き猫、すごい宍戸にそっくりじゃない?」
「俺もそう思いました。宍戸さんって、もともと猫みたいな感じですもんね。」
「だよねー。あれ、跡部すごく気に入ると思うよ。」
「何、こそこそ話してんだ?」
「別に。その招き猫、跡部すごく喜ぶんじゃないかなあって。」
「マジで?うーん、じゃあ、これにしようかなあ・・・よし、決めた!!跡部への誕生日
プレゼント、これにしよう!!」
何度見ても、その招き猫には親近感がわく。何故そう感じるのかは分からないが、これな
ら跡部にも喜んでもらえそうだと、宍戸はその黒い招き猫を跡部の誕生日プレゼントにす
ることを決めた。会計を終えると宍戸は嬉しそうな顔をして滝と鳳のもとへ戻ってくる。
「へへ、よかった。いい感じのプレゼントが買えて。」
「よかったですね。」
「俺達に感謝しなよ?」
「おう。サンキューな、二人とも。」
いいプレゼントが買えて、宍戸はかなりご機嫌だ。プレゼントも買い終え、三人はその店
を出た。

せっかく街に出てきたということで、三人はプレゼントを買い終わった後も適当にいろい
ろな店を回る。とあるファッション系の店を見ていると滝はいい感じのパーカーを見つけ
た。宍戸はちょうど違うものを見ているので、側に居た鳳だけに声をかける。
「ねぇ、長太郎。」
「どうしたんですか?滝さん。」
「見て、これ。このデザイン、宍戸にピッタリじゃない?」
「本当ですね。へぇ、こんなのあるんだ。」
滝が見つけたパーカーとは、フードに猫耳のついた黒いパーカーであった。宍戸がこのパ
ーカーを着て、フードを被れば完璧に黒猫である。
「長太郎、宍戸に誕生日プレゼントあげた?」
「いえ、今年はまだあげてません。」
「じゃあ、このパーカー、二人からのプレゼントってことで宍戸にあげない?これを跡部
の誕生日に宍戸が着てれば、跡部へのプレゼントってことにもなるし。」
「いいですね。買いましょう。」
宍戸に気づかれないように二人はこのパーカーを買った。パーカーにあわせるために黒い
ハーフパンツも一緒に入れてやる。綺麗にラッピングしてもらうと、普通のTシャツ系の
服を見ている宍戸のもとへ二人は歩いて行った。
「宍戸。」
「おっ、お前ら、何かいいもんあったか?」
「宍戸さん、これ、ちょっと遅れましたけど、俺達からの誕生日プレゼントです。」
「えっ!?マジで!?」
まさかこんなところで誕生日プレゼントをもらえるとは思っていなかったので、宍戸は驚
いた様子でそのプレゼントを受け取る。予想外の展開に戸惑いながらも、その表情はとて
も嬉しそうであった。
「わー、マジサンキューなお前ら。中、何入ってんだ?」
「さっきいい感じのパーカー見つけてさ、宍戸にすごく似合いそうだったから、思わず買
っちゃった。」
「パーカーだけだとあれなんで、それにあったズボンもセットで入れておきました。」
「へぇ。そんなに俺に似合いそうだったのか?」
「そりゃもう。それさ、跡部の誕生日に着てみなよ。絶対、跡部も似合うって言ってくれ
るはずだよ。」
「そっか。じゃあ、着てみるかな。」
「あと、プレゼント渡すときはフード被るといいよ。その方が跡部が喜ぶから。」
「何でだ?フードに何か秘密でもあんのか?」
「それは開けてからのお楽しみですよ。とにかく誕生日おめでとうございます宍戸さん。」
「ありがとな!ありがたくもらっておくぜ!!」
二人からもらったプレゼントを嬉しそうに抱えながら、宍戸はお礼の言葉を述べる。これ
は跡部の誕生日が楽しみだと滝と鳳は顔を見合わせて笑った。
「跡部にあとでメール送ってやらなきゃ。」
「俺達からの誕生日プレゼントですってですか?」
「もちろん。誕生日でのこと、あとでちゃんと聞こうね。」
「はい!楽しみですね。」
宍戸があの服で誕生日を祝ったならば、ただごとでは済まなくなるのは目に見えている。
その日の話を跡部に聞くのは、面白くないわけがない。二人はそんな話を聞けるのを楽し
みに思いながら、喜んでいる宍戸に目をやった。

そして、跡部の誕生日当日。宍戸は滝や鳳に言われた通り、誕生日プレゼントとしてもら
ったパーカーとズボンを身につけた。まだそれほど寒いわけではないので、パーカーの下
に何かを着るということはせず、素肌にパーカーを羽織り、ジッパーを上までしめるとい
う形をとった。
「別に普通のパーカーだと思うけどなあ。どこが変わってるんだろ?」
鏡で自分の姿を見てみるが、特に変わったところはない。宍戸はまだ、フードに猫耳がつ
いているということに気がついていないのだ。
「早く跡部、帰って来ねぇかなあ。」
学校もあるので、跡部の誕生日は二人で住んでいるマンションで祝うことになっていた。
宍戸はしっかりとこの間買ったプレゼントを用意し、跡部が帰ってくるのを待つ。今の時
間、跡部は、誕生日ということで少しの間実家の方へ戻っているのだ。その間、宍戸はケ
ーキや何かをテーブルに並べ、パーティーの用意をすることにした。跡部の喜ぶ顔が早く
見たいと宍戸の心はウキウキと弾んでいる。
「ただいまー。」
と、思ったより早く跡部が実家から帰ってくる。宍戸はパタパタと玄関まで跡部を出迎え
た。
「お帰り、跡部。早かったな。」
「ああ。何かいろいろプレゼントもらったぜ。こんなにいらねぇのによ。」
たくさんの荷物を抱えながら、跡部は少々疲れたような顔をしている。誕生日だというこ
とで実家から多くのプレゼントをもらったらしい。そんな大荷物を一緒に部屋に運んでや
りながら、宍戸はにこにこしていた。
「お前、黒一色なんて珍しい格好してるな。てか、そんな服持ってたか?」
「これな、長太郎と滝が誕生日プレゼントだってくれたんだ。どうよ?」
「似合うんじゃんねぇ?下がハーフパンツってのがなかなかいいと思うぜ。」
「観点そこかよ!!まあ、いいや。ケーキとかもう用意してあるからさ、早くパーティー
始めようぜ!」
跡部もまだフードに猫耳がついているということに気づいていない。なので、その格好を
見た反応もこの程度なのだ。
「うーん、俺の誕生日のときほど、食べ物豪華じゃねぇけどいいか?」
「ああ。別に食いものは気にしねぇよ。俺が今日気になってんのは一つだけだ。」
「何だよ?」
「今日はテメェが返事を聞かせてくれる日だろ?」
忘れてねぇよなという顔で笑いながら、跡部は言う。もちろん宍戸も忘れているわけがな
かった。しかし、ここですぐに言ってしまうのもつまらない。やはりここはプレゼントタ
イムの時に言うべきであろう。
「それは、あとでな。プレゼントと一緒に言ってやるぜ。」
「へぇ、それ以外にもプレゼントがあるのか?」
「あるに決まってんだろ?楽しみにしてろよ。」
だから今は飯を食おうと宍戸は、真っ白な皿を跡部に渡す。そりゃ楽しみだと跡部は渡さ
れた皿を受け取った。テーブルの上に用意された御馳走を食べつつ、二人は他愛もない会
話をする。ご飯系のものが食べ終わると宍戸は、真ん中においてあるホールケーキにロウ
ソクをさし、マッチで火をつける。
「一回で吹き消せよ。」
「何だよそれ?でも、やってやるか。」
子供のようなことを言う宍戸にちょっと呆れながらも、跡部は頷いてみせた。ハッピー・
バースデー・トゥ・ユーの歌の代わりに宍戸は『October』を歌う。まさか宍戸に
この歌を歌ってもらえるとは思っていなかったので、跡部は単純に嬉しかった。宍戸が歌
い終わると、跡部はロウソクの火を一吹きで消した。
「誕生日おめでとう、跡部!!」
「ありがとよ。それじゃあ、ケーキ食うか。」
「あっ、何だったら俺が食わせてやろうか?」
「ああ。食わせろよ。」
冗談っぽく言う宍戸の提案に、跡部は即行で頷く。まさか本当に頷くとは思っていなかっ
たので、宍戸はちょっと驚くが、それなら食わせてやるよとフォークを手に取った。そし
て、一切れ大に切ることもなく丸いケーキにフォークをさし、そこから取ったケーキを跡
部の口に運ぶ。
「あーん。」
「それ、言うか?てか、ケーキ切れよ。」
「いいじゃねぇか。どうせ二人で食べるんだし、ケーキくらい贅沢に食べようぜ。ほら、
あーん。」
二回もあーんと言われたら、口を開けないわけにはいかない。口を開けるとビターチョコ
がきいたほろ苦いケーキが入ってくる。これは美味しいと跡部は舌鼓を打った。
「これ、うめぇな。お前も食ってみろよ。」
「おう。」
「ちょっと待った。お前には俺が食わせてやるよ。」
今度は跡部がフォークを持ち、宍戸の口に運ぶ。あーんと言う前から口を開けて、待ち構
えている宍戸は実に可愛らしい。そんな表情を楽しみつつ跡部は口にケーキを入れてやっ
た。
「おっ、本当だ!初めて買ったけど、このケーキうめぇな!」
「だろ?そんなに大きくねぇし、二人で食べきれちまいそうだな。」
「そうだな。」
そんなわけで、二人はパクパクとケーキを食べていく。もちろんお互いに食べさせ合いな
がらだ。
「はあー、腹いっぱい。ケーキも食い終わったし、ここからが本番だな。」
「ああ。期待してるぜ宍戸。」
跡部にそう言われると宍戸はプレゼントを取りに自分の部屋へ行く。部屋に着いて、滝の
言葉を思い出した。
「そういや、プレゼント渡す時はフード被れって言ってたな。」
フードを被るとなると、頭の後ろで束ねている髪は邪魔になってしまう。綺麗に被るため、
宍戸は束ねていた髪を下ろし、そのあとでフードを被った。
「よし、オッケーだろ。さーてと、こっからは気合入れなきゃな!」
プレゼントを持ち、宍戸はパタパタと跡部のもとへ戻っていった。
「跡部、プレゼント持ってきたぜ!」
そんなふうに言いながら、自分のもとへと戻ってきた宍戸に跡部は驚く。猫耳つきのフー
ドを髪を下ろして被った宍戸は、黒猫の擬人化と言ってもよい。これがプレゼントではな
いのかと思うほど、その姿はひどく魅力的であった。
「気に入ってもらえるといいんだけどよ、これ、受け取ってくれ。」
その姿に何の感想も述べられないまま、跡部はプレゼントを渡された。宍戸の格好の方が
よっぽど気になるが、受け取ったプレゼントをゆっくりと開けてゆく。中に入っているプ
レゼントを見て、跡部はさらに絶句した。
「跡部、猫好きだろ?俺的には結構いいと思ったんだけど、どうよ?」
そう言いながらニッコリ笑う宍戸に、この黒い招き猫はそっくりであった。こんなものを
渡されたらまともな思考は出来なくなってしまう。唖然としていると宍戸は跡部の目の前
に座り、かなりの近距離で顔を眺めてくる。
「跡部?どうした?気に入らなかったか?」
「あ・・・いや。」
「じゃあ、どうしたんだよ?そんな顔して。」
「お前、それ反則だろ。」
「へっ?」
宍戸はいまだに自分がどういう状態になっているか気づいていない。跡部はもうその場に
押し倒してしまいたいという衝動を必死で堪えながら、宍戸の頭にある猫耳に触った。
「こんな格好しやがって、いきなり誘ってんのか?あーん?しかも、プレゼントは今のお
前にそっくりだしよ。」
「さっきから何言ってんだよ?」
「お前の今の格好、まんま黒猫だぜ?自分で気づいてねぇのか?」
「はあ?」
跡部の言っていることが理解出来ないと宍戸は首を傾げる。どういうことだろうといった
ん鏡のあるところまで、自分の姿を確かめに行った。
「うおっ!?何だこれ!?」
「確かこの服、滝と鳳にもらったって言ってたよなぁ?なかなかいいことしてくれるじゃ
ねぇか、あいつらも。」
寝室にある鏡の前にいる宍戸の後ろに跡部は立つ。どう考えても盛っている跡部のオーラ
に宍戸はドキっとした。
「すげぇ可愛いぜ宍戸。さっきのプレゼントも最高だ。気に入った。」
「あ、跡部・・・?」
「お前の誕生日に言った言葉の返事はあとででいい。今はこのままやろうぜ?」
「あ・・・えっ、マジ?」
「ああ。そんな格好されたら我慢出来なくなっちまうに決まってるじゃねぇか。」
自分で見ても確かにその格好はまんま黒猫だ。これなら跡部が盛っても仕方ないと宍戸は
納得してしまう。初めから今日はこういうことをするつもりだったし、まあいいかと、宍
戸は素直に跡部の誘いに乗ることにした。

                     to be continued

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