20years old ―10.4(U)―

鏡の前からベッドに移動し、完璧に押し倒されている宍戸は、跡部から熱さをたっぷり含
んだ接吻を受けていた。体を押さえてくる腕の強さ、息つく暇も与えられぬほどの激しい
口づけ、そして、獲物を捕らえた時の獣にも似た強い光を持った瞳。この格好だけでそこ
まで興奮しているのかと思うと微妙な気分であるが、跡部から与えられるこの感覚は嫌い
ではない。
「んぅ・・・ふぁ・・・お前、マジ分かりやすいよな。」
「ハァ・・・何がだ?」
「お前、俺のこの格好に興奮してるんだろ?」
「まあな。悪いか。」
「別に悪いなんて一言も言ってねぇじゃねぇか。」
「へぇ、じゃあ、特に問題はねぇってことだな。」
すっかりお互いにその気になり、二人はもう一度唇を重ねる。跡部はパーカーのジッパー
を下ろしながら、宍戸にふと尋ねた。
「なあ、誕生日特別サービスみてぇなのはねぇのか?」
「えー、そうだなぁ・・・やっぱあった方がいいか?」
「そりゃもちろん。何かねぇのか?」
確かに今日は跡部の誕生日である。宍戸的にも何かいつもはしないようなサービスをして
あげたい気がする。しかし、自分では何はすればいいかなど全く思い浮かばない。
「悪ぃ。何すればいいかとか、今の状況じゃ全然思い浮かばねぇ。」
「そうだなあ、じゃあ、今回は俺のして欲しいこと全部するってのはどうだ?」
「うーん、別に嫌じゃねぇけど、お前結構無理な要求してきそうじゃん。」
「たまには、いいじゃねぇか。な、それでいこうぜ。」
「まあ、今日は跡部の誕生日だしな。今回だけは特別だぜ。」
どんな要求をされるか、かなり不安ではあるが、今までしたことを思い起こせば、出来な
いことはないと宍戸は思いきって跡部の提案を呑んだ。こんな無茶苦茶な提案を呑んでも
らった跡部は、これは滅多にないチャンスだと様々なことを頭の中で巡らせる。あれもこ
れもさせたいと跡部の脳内はすっかり乱れた宍戸でいっぱいであった。
「で、まずは何すりゃいい?」
いきなりハードな要求をするのは、さすがに可愛そうだろうと思い、跡部は軽いものから
ハードなものへと段階的に要求していこうと決めた。まずはこっちがいろいろしてやるか
と宍戸をあぐらを組んだ自分の足の上へと乗せる。
「ここに乗れ、宍戸。」
「へっ?あー、おう。」
自分が何かしなければならないと思っていた宍戸は、予想外のことを言われ拍子抜けして
しまう。しかし、して欲しいことはすると言った。言われた通り、跡部の腰に足を回すよ
うに宍戸は座った。
「これでいいのか?」
「ああ。まずは二人で気持ちよくなろうぜ。」
そう言うと跡部は、宍戸のハーフパンツの中心に手を持っていく。少し触れただけでも宍
戸の体はヒクンと震えた。
「ふあっ・・・」
「ズボンの上からで、その反応か。かなり期待出来るな。」
思った以上に過敏に反応してしまった自分の体を恥ずかしく思いながら、宍戸は顔を紅色
に染めた。ズボンの上からでも明らかに昂っていると分かるようになると跡部はゆっくり
とズボンを下げ、直接触れだした。
「んっ・・・跡部・・・」
「だいぶいい感じになってきたな。それじゃあ・・・」
宍戸の反応がさらによくなってくると、跡部は自分のズボンにも手をかける。そして、既
に宍戸と同じほど昂った熱を宍戸のそれと一緒に掌で包み込んだ。
「っ!?」
「これ、結構興奮しねぇ?ほら、テメェのも今ので少し大きくなったぜ?」
「やっ・・・跡部っ・・・そんな・・・」
手で擦られる感覚と跡部のものと擦り合わされる感覚に宍戸はいつも以上に感じてしまう。
そんな快感に宍戸は思わず跡部の首にしがみつき、堪えきれない声を漏らす。
「ふっ・・ぅ・・・あっ・・・あ・・・」
「どうよ?宍戸。こんなのもいいと思わねぇ?」
「う・・ん・・・気持ち・・い・・・っ」
あまりの気持ちよさと自分のものと跡部のものが触れ合っているという興奮が、宍戸を素
直に頷かせる。自然と溢れてくる先走りの蜜が跡部の手を濡らしながら、くちゅくちゅと
やらしい音を立ててゆく。それが、どちらの気分もさらに盛り上げていった。
「うあっ・・あぁ・・・やっ・・ぁ・・・」
「くっ・・・いいぜ、もっと鳴け宍戸。」
「あっ・・・あぅ・・ん・・・ふあぁ・・・っ」
濡れた吐息含んだ声で、命令口調で囁かれる。それだけで、宍戸の身体には快感電流が駆
け抜けた。羞恥心を感じる前に中途半端に開かれた口は、甘い喘ぎを跡部の耳元に落とし
ていた。そんな声を聞き、跡部の手の動きは更に動きを速めた。
「やっ・・何っ・・だよ・・・いきなり・・・」
「お前の声聞いてたら、こうせずにはいられねぇ。」
「で、でも・・・そんな速くされたら・・・あっ・・・」
突然テンポを速められ、宍戸の快感ゲージは一気に上がる。宍戸が感じれば、跡部も同じ
だけ感じる。もう意識的には刺激の与え方を調節出来なくなっていた。ひたすらその熱が
解放されるのを求め、跡部は手を動かす。ぐっと先端の部分を擦った瞬間、二人はほぼ同
時に高まっていた熱を放った。
「くっ・・あぁんっ!!」
「っ!!」
二人分の精でベタベタになった手を力なく布団の上に落としながら、跡部は宍戸の肩で荒
い息を吐く。宍戸も跡部にしがみついたまま、ゼーゼーと呼吸を乱した。しばらくして、
呼吸が整ってくると、宍戸はゆっくりと跡部の首から腕を離した。
「やっぱ、跡部上手いよな。すげぇ気持ちよかった。」
「当然だろ。それにしても、手すごいことになっちまったな。」
白濁の液ですっかり濡れてしまった掌を見ながら、跡部は苦笑する。そんな跡部の手を見
て、無性に宍戸はあることがしたくなった。
「なあ、ちょっとその手貸せよ。」
「あーん?」
跡部の手を取ると、宍戸はそこについている蜜をペロペロ舐め始める。少し苦味のある自
分と跡部の放ったミルク。まるで、子猫が飼い主の手についたミルクを舐めるかのように
宍戸は跡部の手が綺麗になるまでそれを舐め続けた。
「よし、綺麗になったぜ!」
「・・・・テメェ自らそんなことしてくれるとは思わなかったぜ。」
「だって、今、跡部に気持ちよくしてもらったからな。そのお返しだ。」
ニコッと笑いながらそう言う宍戸に跡部は完璧に落ちた。この笑顔を見続けるのもよいが
今とは一味違う宍戸も見てみたい。少し無理な要求であることは分かっているが、跡部は
ベッドの横にある棚の引き出しからあるものを出し、宍戸のズボンと下着をパッと取り去
った。
「うおっ?」
「なあ、今日は俺のして欲しいと思うことは何でもしてくれるんだよなぁ?」
「おう。一応約束したからな。一度約束したことは守らねぇと男じゃねぇだろ。」
「こういう場面で男主張されるってのも微妙だが、まあいい。テメェにどうしてもして欲
しことがあるんだ。」
「何だよ?」
不思議そうに首を傾げる宍戸の手を取り、跡部はさっき引き出しから出したものをその手
に垂らした。トロトロとした透明な液体。しかも、ほのかにバラの香りが漂う。滴るほど
その液体で手を濡らされ、宍戸は何だかドキドキしてしまう。
「すげぇ・・・何これ?」
「見りゃ分かるだろ。」
「いや、分からねぇし。」
「ここを慣らすためのローションだ。」
「ぅわっ・・・」
跡部自身も自分の手にそれを垂らし、まだ今日は一度も触れていない後ろの蕾へと触れる。
ヌルヌルとした感覚に閉じた入り口はすぐに開き始める。第一関節くらいまで指を入れ、
軽くそこを探ると跡部はすぐにその指を抜いてしまった。
「うっ・・ぁ・・・」
「いきなり何にもなしのところに入れるのは勇気がいるからな。でも、これなら特に問題
はなさそうだぜ。宍戸、自分でそこを慣らして見せろ。」
「へっ・・・?」
「俺のして欲しいこと、全部してくれるんだよな?俺は、テメェが自分で自分のそこを慣
らしてる様がたまらなく見てぇ。」
確かにして欲しいことを全部するという約束はしたが、まさか、こんなに恥ずかしいこと
をさせられるとは思っていなかった。しかし、先程ああ言ってしまった手前、出来ないと
は言えない。しばらく羞恥心と格闘した後、宍戸は思いきってローションで濡れた指を自
分ではそう滅多に触れない部位へと持っていった。
「ハァ・・・」
ゆっくりと息を吐き、気持ちを落ち着かせようとする。しかし、跡部が手元を凝視してい
るため、落ち着くということなど出来ない。むしろ、余計にドキドキし、興奮してしまい
触る前から呼吸は次第に乱れていった。
「そ、そんなに・・・見んなよ・・・・」
「あーん?見なくてどうすんだよ。ほら、さっさとやれ。」
跡部に促され、宍戸は覚悟を決めて自分の指をゆっくりと内側へと埋め込んだ。指もそこ
もローションで濡らされているおかげか、思っていた程違和感は感じない。意外とすんな
り入ってくれたことに安心しながら、宍戸はぎこちなく内側に埋め込まれた指を動かし始
めた。
「ふっ・・ぅ・・・んっ・・・」
「もう少し奥まで入れた方が気持ちいいはずだぜ。やってみろよ。」
言われるままに宍戸は中指の第二関節のあたりまでを中に入れる。その指をほんの少し動
かした瞬間、宍戸の身体はビクンと跳ねた。
「ひあっ!」
「ほら、俺様の言った通りだろ?その様子だと、もう一本くらいは軽々入るはずだぜ。」
「う・・・んぅ・・・・」
自分でもそれが分かるのか、宍戸は何の躊躇いもなしにもう一本自分の指を挿入する。確
かに宍戸の蕾は軽々と二本目の指も飲み込んでしまった。
「ハァ・・・ハ・・・・」
その何とも言えない感覚に宍戸の頭はぼーっとしてくる。しかし、ふと顔を上げてみると
跡部の顔が目に映る。その瞬間、今まで感じていなかった羞恥心が一気に押し寄せ、その
羞恥に反応するかのように、二本の指を飲み込んでいる蕾がぎゅっと締まった。
「あっ・・・やぁ・・・っ!!」
「自分自身では気づかねぇかもしれねぇが、お前は羞恥心を感じれば感じるほど、身体が
敏感になるんだぜ。指、動かしてみろよ。俺がちゃーんと見ててやるから。」
恥ずかしいと思いながらも、内側に埋め込まれている指は勝手に動いてしまう。それがま
た羞恥心を煽り、宍戸の身体を感じやすくしてゆく。猫耳つきのフードを被ったまま、胸
の飾りや下半身をは晒し、さらに自分で秘部を弄るという宍戸の姿を見て、跡部は言いよ
うもない興奮を覚える。その興奮からか、跡部の要求はさらにエスカレートしていった。
「どうせだったら、前の方も触ってみろよ。もう片方の手、空いてるだろ?」
羞恥から溢れんばかりの涙を目に溜めながらも、宍戸は跡部の言われた通りのことをして
しまう。前に触れれば、さらに快感は高まってゆく。
「あっ・・・あ・・あっ・・・はぁ・・・」
「そんな格好してるんだからよ、その喘ぎ声、猫っぽくしてみろよ。お前がそんな声で喘
いでるのすげぇ聞いてみたいぜ。」
「なっ・・・んなこと・・・・」
「出来ねぇとは言わせないぜ。さっきの約束、破る気か?」
「うっ・・・・」
そう言われてしまうと、嫌だとは言えなくなる。いっそ恥ずかしいとか感じなくなるほど、
もっと激しく自分を乱してみようかとも思ったが、宍戸にそこまでの勇気はなかった。少
し中を弄る指をさっきよりも速く動かすのが限界だ。
「ひっ・・ぅ・・・」
「にゃあって言えよ。言葉を変えればいいだけだぜ?」
それが恥ずかしいんだと、宍戸は跡部を涙に濡れた瞳で睨んだ。しかし、それはただ跡部
の嗜虐心を煽るに過ぎない。
「にゃっ・・ぁ・・・・」
思いきって出してみるが、自分でも信じられないほど高いその声がまたさらなる羞恥心を
生み出す。それが、さきほどから熱を帯びている下半身をさらに刺激した。
「にゃあ・・・にゃぁん・・・・あっ・・・」
「出来るじゃねぇか。いいな、マジで猫みたいだぜ。もう自分で弄ってんのも物足りなく
なってきただろ?こっからは俺も手伝ってやるよ。」
物足りなくなったのは、宍戸ではなく跡部の方であった。もちろん見ているだけというの
も悪くないのだが、ここまでくると自分が手を加えることで、もっと乱したいと思ってし
まう。既に二本の指を咥え込んでいるそこは、もう十分に慣らされ、少し余裕が出来てい
た。そんな蕾に跡部は自分の指をぐっと差し込んだ。そして、そのままぐちゅぐちゅとわ
ざと音を立てるかのように掻き回す。
「ひにゃっ・・・にゃあぁ・・・!!」
「いい声上げるじゃねぇか。自分の指と俺の指、どっちも飲み込みやがってやらしいヤツ
だな。」
そんなセリフも今の宍戸にとっては、快感を煽る言葉以外の何ものでもない。跡部の顔を
ポロポロと涙を零しながら見上げる。口から出るのは、さっき跡部に言われた通り、猫の
鳴き声のような喘ぎだけだ。もう恥ずかしいのかどうかも分からなくなるくらいになると
宍戸は一際大きな声で鳴き、自分の手に身体の内側に溜めきれなくなった熱を放った。
「あっ・・・にゃあんっ!!」
その瞬間、指が痛いほど後ろの蕾が締まるのが分かった。しばらくビクビクと身体を痙攣
させた後、跡部の指に導かれるように内側に埋め込んでいた指を抜いた。
「ふ・・・ハァ・・ハァ・・・」
「今の宍戸、すげぇエロくて、でも可愛くて、最高だったぜ。こっからは、全部俺に任せ
ろ。」
あまりにも跡部が満足そうに笑うので、宍戸は恥ずかしいやら嬉しいやらで、自分がどう
感じているのかよく分からなくなっていた。ただ間違いなく言えるのは、今の行為がより
そういう気分を高めたということ。さっきまで指でいっぱいにされていたそこは、ひくひ
くと次の刺激を待ちわびている。
「俺、ちゃんとお前のして欲しいことしたからな!約束は守ったぜ。」
「ああ。上等だ。期待以上だったぜ。」
「だから・・・」
「あーん?」
「今度は俺が跡部にしてもらう番だ。早く・・・進めろ。」
さっきあんなことをしたにも関わらず、まだ恥じらいを見せながら宍戸は跡部に向かって
こんなことを言う。こんな誘い文句を言われたら、そのリクエストに答えないわけにはい
かないだろう。跡部はふっと笑うと、宍戸の身体をベッドに押し倒し、さっきの宍戸を見
てすっかり高まった熱の塊を埋め込んでいった。
「うあっ・・・ああ・・・」
「しっかり慣らされてるな。かなりイイ感じだぜ。」
「あ・・ふ・・・・跡部っ・・・・」
少し大きめのパーカーの袖口をぎゅっと握りながら、宍戸は跡部に与えられる快感を存分
に受け取る。その何とも言えない可愛さと色っぽさに、跡部の気分はさらに盛り上がる。
「どうして、お前とこういうことしてるとこんなにいい気分なんだろうな?こんな興奮、
テニス以外だとこれでしか味わえねぇぜ。」
「んなの・・・決まってるじゃねぇか・・・・」
「あーん?何だよ?」
「こういうことしてる相手が・・・他の誰でもねぇ俺だからだよ・・・・」
乱れる呼吸の合間に宍戸はそんなことを言う。その表情は、絶対に間違ってないという自
信に満ちた笑顔である。
「お前は・・・俺以外だったら、こんないい気分には絶対になれねぇ・・・・」
「随分、自信ありげに言ってくれるじゃねぇか。その根拠は何だ?」
こんなことを言い合いながらも、してることはしているので、宍戸はいったん息をついて
からハッキリと言い放つ。
「俺が誰よりもテメェのことが好きで、テメェが俺のことを他の誰よりも好きだと思って
るから。十分な理由だろ?」
「・・・・・・」
ニッと笑いながら、宍戸は跡部に言ってやった。それを聞いて、跡部は言葉を失う。どう
してこういう場面で、宍戸はこんなに嬉しいことを言ってくれるのか。ドクンと高鳴る鼓
動は宍戸の中にある熱にもバッチリ伝わった。
「うっ・・・あ・・・何、サイズアップしてんだよっ・・・!?」
「んなこと言われたらこうなるに決まってるだろうが。」
「でも、正しいことじゃねぇ?」
「ああ。一つも間違いはねぇな。」
そんなことを言い、笑い合いながら二人は唇を重ねる。それを合図に跡部はもっと深く宍
戸と繋がろうと何度も腰を打ちつけた。その度に宍戸は、熱い吐息に濡れた声を上げる。
それはもちろん跡部と繋がっているという嬉しさを含んだ声であった。
「ふぅ・・んっ・・・あっ・・あぁ・・・・」
「ハァ・・・宍戸、目閉じるな。ちゃんと俺のことを見ろ。」
「閉じ・・・て・・ねぇ・・・よ・・・・」
「お前は俺のもんだ。今までも、これからもずっと・・・」
「んなの、言われなくても分かってんよっ・・・」
興奮が最高潮に高まり、二人は息を激しく乱しながら自分の胸の内を言葉にする。分かっ
てはいるが、言葉に出して確認したい言葉。殊に跡部は自分の誕生日ということもあり、
それが大きく表に出ていた。
「宍戸、俺のことどう思ってるか答えろ・・・」
「好きだ・・・他の誰よりも・・・・」
「俺とこれからも一緒に居るか?」
「居る・・・ずっと、ずっと・・・あっ・・跡部っ・・・もうっ・・・ぁ・・・」
「宍戸っ・・・・」
宍戸というただ三文字の言葉に自分の思いの全てを込め、跡部はその思いを宍戸の中に放
った。その思いをしっかりと受け取り、宍戸も言葉には出来ないような満足感を感じなが
ら、跡部を抱き締め、果てた。乱れる呼吸の音だけを聞きながら、二人はしばらく抱き合
い続けた。

汚れた身体を洗いにシャワーを浴びて、二人が戻ってくると跡部の携帯に一通のメールが
受信されていた。
「メールだ。」
「誰から?ハッピー・バースデーメールか何かか?」
メールの内容を読み、跡部はふっと吹き出した。メールの送信者は滝。内容はこんなもの
であった。
『ハッピー・バースデー、跡部。俺と長太郎からのプレゼントよろこんでもらえた?宍戸
可愛かったでしょ?さぞかし、そういうことも盛り上がったんだろうねぇ。後で、どうだ
ったか感想聞かせてね。』
「あいつ〜、これが狙いだったんだな!」
「でも、俺は嬉しかったぜ。滅多に見られねぇ宍戸が見られたしな。」
「あ、あれは・・・その、今日は誕生日だから特別だって初めに言っただろ!」
「いや、最高だったぜ、マジで。こんなに嬉しい誕生日はそうそうねぇな。」
あまりにも跡部が最高だ、嬉しかったを連発してくるので、宍戸は恥ずかしくなってしま
う。しかし、そう言われて嫌な気はしない。
「まあ、跡部がそう思ってくれたんならいいや。」
「また今度してくれよ。」
「はあ!?調子に乗んな!!今日は特別だっつったろ!」
「じゃあ、次はクリスマスあたりにどうだ?それも特別な日に入ると思うぜ。」
「そんなにしょっちゅうやってたら、面白くねぇだろ。こういうのは年に一回くらいのス
パンでいいんだよ。」
恥ずかしさからこんなことを言う宍戸だが、そこまで否定するほど嫌だとは思っていなか
った。跡部もそれが分かっているので、冗談半分でそういうことを言っている。
「ところで、宍戸。お前の誕生日の時の返事はどうした?」
「あー、そんなんもあったな。さっきのアレですっかり忘れてたぜ。」
「忘れんなよ。で、どうなんだ?」
きっと分かっているだろうなあと思いながらも、宍戸はまずはキッパリと返事をしてやっ
た。
「そんなのYESに決まってるじゃねーか。さっき、あんだけいろんなこと言ったんだ。
どこにも断る理由なんてねぇだろ。」
しかし、これだけだと何の面白みもないので、宍戸はテクテクと跡部の前まで歩いていっ
て、目の前に立つと悪戯っ子のような笑顔で笑う。そして、跡部の首に腕を回し、ちゅっ
と唇にキスをした。
「俺の全部、お前にくれてやるよ。その代わり、返品は一生不可だからな!」
「返品なんてするわけねぇだろ、バーカ。・・・マジで今年は最高の誕生日だぜ。たくさん
のプレゼント、ありがとよ。」
そう言いながら、今度は跡部から宍戸にキスをした。薄暗い部屋の枕元にあるランプが二
人の左手の薬指についたリングを照らし出す。もう子供とは呼ばれなくなった二人。指輪
で繋がれたその絆は、これからいろいろな階段を上った後で、その指輪に負けないくらい
強い輝きを帯びていくのであろう。

                                END.

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