20years old ―9.29(U)―

ベッドに寝転がった宍戸は、仰向けになり、自分の顔のすぐ上にある跡部の顔をじっと見
つめる。悪戯に微笑む跡部の顔は、いつも以上に魅力的に見える。しばらく見つめ合った
後、二人の顔は自然と近づき、赤みを帯びている唇はゆっくりと重なり合った。
「ぅ・・・んん・・・」
重なる唇は更なる接触を求めて、その扉を開く。初めは優しく歯をなぞる程度だった跡部
の舌は、そのうち宍戸の口内の全てを味わうかのように内側へと入っていった。敏感な粘
膜と次第に熱くなってゆく舌を舐められる感覚に宍戸の表情はだんだんとうっとりとして
くる。小さく舌を吸われれば、ピクンと身体を跳ねさせ、跡部の服をぎゅっと握りしめた。
「んっ・・・んぅ・・・」
「ハァ・・・何か今日はかなり盛り上がりそうだぜ。」
まだキスしかしていないにも関わらず、じわじわと熱くなってくる身体に跡部は言いよう
もない期待感を感じる。宍戸も軽く呼吸を乱しながら、跡部と同じようなことを感じてい
た。
「さてと、まずは邪魔な服を脱がさなきゃなあ。」
「全部脱がしちまうのか?」
「俺の匂いのするパジャマに包まれているより、俺自身の腕に包まれる方が何倍もいいだ
ろ?」
「そりゃそうだ。」
もっともなことを言われ、宍戸はふっと笑う。丁寧に包装を剥がすかのように、跡部は宍
戸のパジャマをゆっくりと脱がせた。宍戸を一糸纏わぬ姿にすると、自分も着ていた服を
全て脱いでしまう。恥ずかしげもなく鮮やかに脱いでゆく跡部の姿に、宍戸は目を奪われ
た。
「何そんなに真剣に見てんだよ?」
「いや、跡部って本当何しててもカッコイイなあって・・・」
「俺が脱ぐ姿に見惚れてたって?テメェも結構やらしいよな。」
「別にそういうふうに見てたわけじゃねぇ!!」
恥ずかしさを全面に出し、怒鳴る宍戸の口を跡部はパッと塞いだ。その塞がれた口から何
かが入ってくる。初めは驚いた宍戸だったが、それがさっき飲んでいたワインの残りだと
分かると、素直にその味を楽しむ。
「ん・・・」
「結構残っちまってるからな。少しくらいこういうことに使ってもいいだろ。」
ワインのビンを持ち上げながら跡部はそんなことを言う。口移しで飲まされたワインの味
に酔いかけ、ぼーっとしていると、宍戸は突然身体に降り注いだひやっとした感覚に身を
震わせる。
「ひゃっ!!な、何だよ!?」
「綺麗にかけれられねぇだろ。しっかり寝てろ。」
身体を起こそうとする宍戸の肩を押さえ、跡部は宍戸の身体になみなみとワインを注いで
ゆく。ワインをかけられた宍戸の身体はまるで血が流れているかのようになり、ワイン独
特のあの香りが全身から香っていた。
「な、何なんだよ?跡部。」
「たまにはこんなことするのも悪くねぇだろ?」
「メチャクチャ冷たてぇんだけど。」
「大丈夫だ。すぐに熱くなる。」
そう言いながら、跡部は宍戸の身体に撒いたワインを舐め始めた。いつもよりじっくりと
味わうように舐められる感覚に、少々戸惑いながらも宍戸は言いようもない快感を感じる。
「あ・・ぅん・・・」
「何か血舐めてるみてぇ。味は葡萄酒だけどな。」
「テメェは吸血鬼かよ?」
「あー、確かに吸血鬼はそう感じるのかもしれねぇな。血を吸ってるのに味は最高級の葡
萄酒ってか?」
それはなかなかいい話だと跡部はくっと笑う。そう考えるともっと吸血鬼と似たようなこ
とをしてみたい。そう跡部は考えた。しかし、単に首もとに噛みつくだけでは、宍戸はひ
たすら痛いとしか感じない。自分がされるとしてもそれは勘弁願いたいことだ。だったら
その前に快感を与えてやればいい。そう思い跡部はさっきの舌での愛撫で、半分くらい勃
ち上がっている宍戸のそれに手を伸ばした。
「ぅあっ・・・!」
「そろそろこっちも弄って欲しいだろ?」
「やっ・・・ちょっ・・・待っ・・あっ・・・」
いきなり本格的に弄られ始め、宍戸は抵抗する間もなく跡部の愛撫に呑まれてしまう。
「あっ・・あ・・・んっ・・・」
宍戸が完全に感じ始めていると分かると、跡部は宍戸の首もとにワインを注ぐ。首から滴
る赤い液体は本当に血のように見え、跡部の視覚を興奮させた。手の動きを止めることな
く跡部はそこへ唇をもってゆく。
「ふっ・・あっ・・・!」
敏感な首筋を舐められ、宍戸はビクンと身体を震わせる。当然それは跡部に触れられてい
る部分にも伝わった。初めは滴るワインを味わうかのようにただ舐めたり、吸ったりして
いるだけの跡部だったが、宍戸の快感がだんだんと高まってくるにつれ、ゆっくりとその
部分に歯を立てていく。
「いっ・・あ・・・跡部っ!」
初めはやはり痛みを感じるのか宍戸はやめて欲しいというニュアンスを含み、声を上げる。
しかし、跡部は歯を立てるのをやめることなく、下への刺激をもっと大きなものにしてや
った。もちろんそんなことをされれば、痛みよりも絶頂感に繋がるような快感の方が強く
感じられる。
「やっ・・あん・・・あっ・・・」
痛みと快感、二つの対立する感覚を同時に与えられ、宍戸はわけが分からなくなっていた。
しかし、若干快感の方が多めに与えられるので、それはいつの間にか相乗効果をもたらす
ように混ざり合うこととなった。つまり、跡部が強く歯を立てるほど、それは痛みでなく
快感と感じるようになってしまったのだ。これ以上強く噛めば、本当に血が出てしまうと
いうほど、強く歯を立てられた瞬間、宍戸は跡部の掌に精を放った。
「うあっ・・・ああ――っ!!」
アルコールの匂いとワインの味。そして、宍戸の甘美な声に跡部はすっかり酔っていた。
口を離せばそこにはくっきりと痕が残っている。その痕を見て、跡部は何故だか興奮する。
自分がつけた噛み傷。それは紛れもなく宍戸が自分のものであるという証だ。どうしよう
もなくぞくぞくする感覚に、跡部は久々にこういうことに関して困惑した。
「跡部・・・?」
「ヤベェ、ちょっと酔ってるかもしれねぇ。」
「人にワインぶっかけて、舐めてるからだろうが。」
自業自得だと宍戸は言う。確かに酔っている感じはするが、それはアルコールの所為だけ
ではない。確実に宍戸にも酔っている。自分だけ酔っているのは、なんだか不公平だと跡
部は宍戸も酔わせようとワインのビンを手に取った。そして、そのままそのワインのビン
を宍戸の下半身に向かって傾ける。
「うっわあ、何してんだ!?跡部!!」
「俺だけ酔ってるってのは不公平だからな。テメェも酔え。」
「意味分かんねぇし!!・・・っ!やっ・・やめろよ・・・」
さっき宍戸の放たれた精にワインを混ぜ、跡部は宍戸のまだ閉じている蕾を慣らし始める。
ワインでびしょびしょに濡れているそこは、すんなりと跡部の指を受け入れた。しばらく
普通に弄っていてやるとだんだんとその花弁は開いてゆく。そんな開きかけた花弁をさら
に綺麗にさせてやろうと跡部はその指の隙間から、ワインを直接流し込んだ。
「ひっ・・あっ!!」
「最高級のワインだからな。下の口で味わってもうまいんじゃねーの?」
「やっ・・やめ・・・跡部っ・・・あ・・・ひぅっ・・・」
アルコールの所為で宍戸のそこはじんじんと熱くなり、ひどく敏感になってゆく。その内
側を跡部の指がテクニックを駆使して弄るのだ。あまりの気持ちよさに宍戸は思わず自ら
腰を揺らす。
「随分よさそうじゃねぇか。」
「これ・・・マジでヤバイって・・・んっ・・・」
「今のお前見てるとこっちまで我慢出来なくなってくるぜ。」
「な・・・じゃ・・・もう・・・・れろよ」
「あーん?何だって?」
ワインで満たされたそこは指だけでは既に物足りなくなっていた。宍戸は次第に回らなく
なってきている舌を動かし、必死でそれを跡部に伝えようとする。宍戸ももうだいぶ酔っ
てきているのだ。もちろんワインと跡部に。
「もう・・・跡部のが欲しい・・・指じゃいやだ・・・」
「へぇ、イイ感じにおねだり出来るじゃねぇか。いいぜ。」
跡部は宍戸の中ら指を抜き、足を抱えあげる。塞ぐものがなくなった花弁からはコプリと
ワインが流れ出す。再びそこに栓をするかのように跡部は既に熱く固くなっているそれを
宍戸の花弁に突き刺した。
「あっ・・ああ――っ!!」
跡部が自分の内側に入ってきた瞬間、宍戸はビクビクと身体を震わせ、高く艶やかな声を
上げる。自分と跡部が混ざり合っている。酔いからかそんな感覚を全身で感じる。それは
あまりにも甘美で熱くて気持ちがよく、とても現実のものとは思えないような感覚であっ
た。しかし、これは夢ではなく紛れもない現実。それがまた、宍戸の興奮の高まりを強い
ものにしていった。
「ふあっ・・・あ・・とべ・・・・」
「お前ん中のワイン、ありえねぇくらい熱くなってる。でも、すげぇイイぜ。」
いつもより濡れた音を立てるそこは、跡部が自身を抜き差しする度に、紅色の液体を溢れ
させる。それは何とも煽情的で、直接には見えないがどちらの気分をさらに高めた。
「なぁ・・・跡部っ・・・」
「どうした・・・・?」
「体・・・起こして・・・」
「何でだ?」
「そっちのが・・・イイ・・・」
起き上がりたいと言う宍戸の希望を聞き、跡部は宍戸の中に楔を刺したまま、体をゆっく
り起こしてやった。座るような形になれば、自然と跡部の熱は奥の方で感じられる。そん
な感覚に宍戸は身を震わせながら恍惚とした表情を跡部に見せた。
「ハァ・・・」
「大丈夫か?」
「おう。やっぱこっちの方が跡部の顔が近くなっていい・・・」
確かに向かい合うように座る形であれば、自ら顔を跡部に近づかせることが出来る。寝転
がったままの状態であると、それには限界があるのだ。そのままぎゅっと跡部の首に抱き
つきながら、宍戸は自分でも腰を動かし、全身で跡部と繋がる快感を感じようとした。
「ハァ・・あっ・・・はぁ・・・ぅ・・・」
「宍戸・・・俺、そろそろ限界かもしれねぇ。」
「テメェからそんなこと言ってくるなんて珍しいな・・・」
「仕方ねぇじゃねぇか。テメェがあまりにもイイ反応してるから・・・」
アルコールを含んだ宍戸の内側の熱さに跡部はもう耐えられなかった。息を乱しつつ、宍
戸の顔を見つめる。
「なあ、跡部・・・」
「あー?」
熱に浮かされる跡部の唇にちゅっと軽くキスをした後、宍戸は極上の笑顔を浮かべ、跡部
へ向かってとどめの一言を放った。
「俺・・・今、激幸せだぜ。」
その言葉を聞いた瞬間、跡部の熱はビクンと跳ねる。それとほぼ同時に宍戸も幸福の絶頂
に達した。お互いの身体を力いっぱい抱き締め、お互いの熱を感じ合う。辺りは赤と白が
混じり、二人の視界はピンク色に染まった。

「うわー、どうするよこれ?」
ワインを体にかけたり、慣らすのに使ったりとそんなことに使ってしまったため、跡部の
ベッドのシーツはすっかり赤く染まってしまった。赤というよりは強い赤みを帯びたピン
ク色をしたそのシミは、先程の行為を宍戸にまざまざと蘇らせる。
「シーツなんていくらでも替えられるから問題ねぇだろ。何だったら今メイド呼んで替え
てもらうか?」
「いい!!こんな格好してるところに来られても困るだろ!?」
「まあな。テメェのそんな姿を見るのは俺だけで十分だ。」
「そういう問題じゃねぇよ!!でも、マジでどうする?これに寝るってのは、ちょっと辛
いんじゃねぇ?」
宍戸がパジャマの上だけを羽織りながら、そんなことを言っていると跡部はその汚れたシ
ーツをバサっと剥がした。そして、タンスの扉からまっさらなシーツを出すと、それをベ
ッドに敷き始める。
「別にシーツなんて誰でも換えられるからな。俺が出来ねぇわけねぇだろ。」
ふだんは絶対に自分でシーツを換えたりすることなどはないのだが、今回ばかりは仕方が
ない。キチンと敷き終えると跡部はそこに腰かけ、宍戸を手招きした。
「ほら、これでいいだろ?来いよ。」
「おう。」
「俺様が自分でシーツを取り替えるなんてそう滅多にないぜ。そんなベッドで寝られるん
だ。光栄に思え。」
「いや、別にシーツなんて誰でも替えられるから。でも、まあ、ありがとな。」
たかがシーツで俺様なことを言う跡部に少々呆れる宍戸だが、自分のために替えてくれた
のはやはり嬉しい。ここではまあ素直になっていいかと、宍戸は笑顔でお礼の言葉を述べ
た。
「お前、服着なくていいのか?」
「うーん、着ないとやっぱ寒いか?」
「別にそんなことはねぇと思うけど。」
「じゃあ、いいや。これだけで。あっ、でも下着は穿いといた方がいいな。」
もう着替えるのは面倒だと宍戸は下着と上着だけの状態で、跡部のいるベッドに上がった。
まっさらなシーツの上に寝転がると宍戸は布団の中にもぐり込む。
「跡部も入れよ。」
「ああ。」
宍戸の誘いの応じ、跡部も布団の中へと入る。シーツは替えたものの、あれだけワインを
贅沢に使ったのだ。布団の中に入るとワインの匂いがほのかに漂ってくる。
「まだワインの匂いするな。」
「たぶんお前の体に匂いが染み付いちまったんだろ。明日、またシャワーを浴びればいい。」
「そうだな。今日はもう少しこの匂いを楽しもうぜ。」
この匂いが残っている限りは先程までのひたすら気持ちよかったひとときを思い出せる。
まだその気分に浸っていたいと宍戸は、跡部に身をすり寄せながらそう呟いた。
「次は五日後だな。」
「俺の誕生日の時もこういうことしてくれるのか?」
「当たり前だろ。今度は俺が跡部を楽しませてやるよ。」
「そりゃあ、楽しみだな。期待してるぜ。」
「おう!」
跡部の誕生日にもこんなことをすると約束して、宍戸はニッと笑った後、ゆっくりと目を
閉じる。そんな宍戸を見て、跡部も穏やかに微笑んだ後、同じように目を閉じた。心地よ
い疲労と気分のよい酔い方が二人をあっという間に夢の世界へと導いてゆく。宍戸にとっ
ては大人になって初めての夜。そんな夜にふさわしく、二人はワインの香りに包まれなが
ら、紅い夢を見るのであった。

                     to be continued

戻る