Please pamper me.

リクエスト内容『跡宍で宍戸さん風邪引きネタ』

キーンコーンカーンコーン・・・
「はい、そこまで。後ろから集めろー。」
中間テスト最終日。今、ちょうど最後の教科が終わった。この後はHRがないので、跡部
は早く帰ろうと宍戸の席へと向かった。
「宍戸、早いとこ帰ろうぜ。」
「・・・・・。」
「おい、宍戸!!聞いてるか?」
「えっ・・・あ、ああ。」
テストが終わってホッとしたのか、宍戸は何だかぼーっとしている。
「宍戸、帰るぞ。」
「・・・・・・。」
あまりにぼーっとしているので、跡部はてっきり宍戸が今日のテストが出来なかったのだ
と思った。
「今日のテストそんなに出来なかったのか?別にそんなに気にすることねぇよ。」
「・・・あー、うん。」
「?」
今日の宍戸何か変だな。今日のテストそんなに難しいってほど難しいのなかったし、第一
テストが出来なかった程度のことで宍戸がこんな風になるとは思えねぇよな。
「行くぞ。」
「・・・・・。」
跡部は早く帰ろうと宍戸を促したが、どうも反応が遅い。いつもなら宍戸の方が早く帰ろ
う帰ろうとうるさいはずなのだが、今日はどこか様子がおかしい。跡部はそんな宍戸を変
だなあと思うが、やはりテストが終わって単に気が抜けているだけだろうと思い、それほ
ど気に止めなかった。

家までの帰り道、やはり宍戸の動きはいつもの半分以下のスピードだ。跡部はそんなのろ
い動きの宍戸に少々イラついていたが、まあこんな日もあるだろうと怒るのを我慢してい
た。
あー、激だりぃ・・・。ここんとこ風邪気味だったもんな。テスト終わって気が抜けちま
ったのかなあ・・・・。
宍戸の歩くペースはさらに遅くなる。初めは跡部の隣を歩いていたが、そのうち普通に歩
いている跡部に追いつけなくなる。さすがにヤバイと感じ、宍戸は跡部に声をかけた。
「跡部・・・待てよ・・・・。」
その声はひどくキツそうで、跡部が歩くのを止めさせるには十分なものだった。
「何だよ?何か今日お前変だぜ。行動全般のろい。」
そう言いながらくるっと体の向きを変え、宍戸に近づいた。手が届くくらいに近づくと宍
戸は跡部の肩に手を伸ばす。
「跡部・・・俺、もうダメ・・・。」
肩に触れた手が体を支えることなく、宍戸は崩れるようにしてその場にへたり込んだ。そ
こでやっと跡部は宍戸の異変に気づく。
「おい、どうした!?」
「ハァ・・・ハァ・・・・」
宍戸はほとんど意識を失いかけていた。息を乱し、苦しそうにしている。跡部はそっと額
に触れてみる。すると、尋常ではない程の熱が手に伝わった。
「こいつ、すっげぇ熱あるじゃねーか。」
そのことに気づいて跡部は周章狼狽した。どう考えても、これ以上宍戸は歩けそうにない。
おぶっていければいいのだが、意識を失いかけている宍戸を自分一人でおぶおうとするの
はかなり困難だ。しかも鞄もある。
「どうすりゃいいんだ。鞄をここに置きっぱで帰るわけにもいかねーし、だからって、鞄
持ったままこいつをおぶうのは無理だ。くそ、落ち着け俺!!」
あまりにも予想外で突然の出来事だったので、跡部は少々冷静さを失っている。宍戸を塀
に寄りかからせて、うろうろしながら何かいい方法はないかと考える。
「そうだ!」
何かを思いついたのか跡部は鞄の中から携帯電話を出した。
「もしもし、樺地か?今、ちょっと緊急事態なんだ。すぐに来い!!」
跡部は樺地を呼び出した。樺地はまだ学校にいたのですぐに跡部達がいる場所に来ること
が出来た。
「宍戸が熱があるみたいで、倒れちまったんだ。」
「ウス。」
「だから、お前俺と宍戸の鞄を持て。俺は宍戸をおぶっていく。」
「ウス。」
樺地は状況からして自分が宍戸をおぶうのかと思ったが、跡部自らおぶうと言うので、跡
部の言う通り、二人の鞄を肩に担いだ。自分の分を合わせて三人分。これだけたくさんの
鞄をいっぺんに持てるのは樺地だからこそ出来ることなのである。跡部は宍戸をおぶって
宍戸の家へと歩き出した。背中からありえないくらいの熱が直接伝わる。跡部の鼓動は不
安と心配で乱れまくっていた。

宍戸の家に到着すると、玄関に鞄を置き、宍戸をいったん下ろす。
「サンキューな、樺地。助かったぜ。」
「ウス。」
「もう帰っていいぜ。」
「ウス。」
樺地を帰らせると、跡部は宍戸を姫抱きし部屋まで連れていった。宍戸は今だに苦しそう
にしている。ベッドに寝かせると跡部はネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを外し始め
る。意識が朦朧としていてもまだ自分が何をされているか分かるので、宍戸は跡部に何を
しようとしているのかを尋ねた。
「何・・・やってんだよ・・・・」
「制服のままじゃキツいだろうが。パジャマ着せてやるから大人しくしてろ。」
「そっか・・・」
宍戸は内心ホッとした。普段が普段なので、少し別のことが頭をもたげたのだ。跡部はタ
ンスからパジャマを出し、宍戸に着せていく。宍戸はぼーっとしながらも、跡部が着せや
すいようにと軽く体を動かす。
「今、氷枕作ってきてやるから待ってろ。確か台所にあったよな?」
「ああ。」
跡部は氷枕を作りにとキッチンへ向かった。ついでに洗面器に水を入れ、額にも濡れたタ
オルを置けるようにと用意した。
「持ってきたぜ、宍戸。」
「サンキュー。」
「大丈夫か?」
「あんまり大丈夫じゃねー。頭くらくらするし、体がすげぇだりぃ。」
「じゃあ、ちょっと寝てろ。俺、飯作ってくるから。」
「えっ、いいよ別に。」
「俺が腹減ってんだ。それにお前も食べねぇと薬が飲めねぇだろうが。」
「・・・うん。」
跡部は宍戸を寝かしつけ、額に濡れタオルを置き、再びキッチンへと向かった。宍戸は冷
たいと感じるタオルにそっと手を触れて、跡部のことを考える。
久々だな。こんなになるくらい熱出んの。それにしても跡部の奴、どうしてここまでテキ
パキいろんなことが出来るのかねー。でも、ちょっとうれしいかも・・・。

宍戸が寝ている間、跡部はキッチンで何を作ろうかと考えていた。自分も食べれて尚且つ
宍戸も食べれるもの。それも今ここにある材料だけで作れるものということで、なかなか
難しいなあと頭をフル回転させている。
「やっぱ作るんだったらお粥だよな。でも、ただのお粥じゃ味気ねぇし。梅干しじゃちょ
っとなあ・・・。」
跡部はなんとなく冷蔵庫を開けてみた。そこで目に入ったのが扉の方に並んでいる玉子。
「玉子粥なら、少しはいいかもしれねぇな。」
というわけで、跡部は玉子粥を作り始めた。普通のご飯を鍋に入れ、お粥として煮なおす。
それに玉子や調味料を入れて味を調える。
「よし、こんなもんだろ。」
味見をし、これなら大丈夫と自画自賛した後、深めの皿に半分入れた。そして、まず自分
が食べてお腹をいっぱいにする。お腹をいっぱいにすると言ってもお粥なのでそんなにい
っぱいにはならない。腹八分目という感じだ。
「さてと、宍戸にも持っていってやるか。」
残りのお粥をもう一つの皿に入れて、宍戸の部屋へと持っていく。宍戸はベッドの中には
いるが、眠ってはいないようだ。
「調子はどうだ宍戸。」
「さっきよりはだいぶマシだけど、まだかなりだるい。」
「飯、食えそうか?」
「・・・・あんまり食べたくねぇ。」
「食えよ。玉子粥作ってやったぜ。」
「起きるのもかったりぃ・・・。」
跡部はふぅっと溜め息をついて、宍戸の横に座った。そして、スプーンでお粥をすくい、
宍戸の口へと持っていく。
「じゃあ、食べさせてやるから食え。」
宍戸はゆっくりと口を開けるがスプーンが口に触れた瞬間、宍戸は顔をしかめた。
「熱い!!やっぱ、いらない!」
熱で少々わがままになっている宍戸は、お粥を食べることを拒んだ。跡部は呆れた顔をし
て、スプーンですくったお粥を自分の口に運ぶ。その光景を見て宍戸は「?」状態。跡部
は寝転がったままの宍戸の口に今自分の口に入っているものを移した。
「!?」
あれ?全然熱くねぇ。うわ、それにこれすっげぇ美味い!!
「熱くねぇだろ?」
「うん。」
「これなら食べれるか?」
「・・・・う、うん。」
熱とは別に宍戸の顔は赤くなった。宍戸が嫌がらないので跡部はその方法でお粥を食べさ
せる。結構大変だが、跡部は楽しくて仕方がないし、宍戸も宍戸で素直に食べてしまう。
結局、それで宍戸は玉子粥を完食してしまった。
「何か・・・もののけ姫みてぇ。」
食べ終えた宍戸はそう呟いた。
「はあ?」
「サンがアシタカにこうやって食べさせてた。」
「へぇ。よく分かんねぇけど、全部食べれたじゃねぇか。あとはちゃんと薬飲めよな。」
跡部はそう言いながら、水と薬を渡す。宍戸はそれを素直に受け取って飲んだ。
「じゃあ、もう大丈夫だな。」
宍戸がちゃんとご飯を食べ、薬を飲んだので跡部はもう大丈夫だと思い、帰ろうとした。
自分が居ない方がゆっくりと眠れるだろうと思ったからだ。立とうとする跡部の腕を宍戸
はとっさに掴んだ。
「ゆっくり寝ろよ。俺はもう帰るからよ。」
「嫌だ!帰るな!!」
宍戸は必死で跡部を引きとめる。
「もう薬も飲んだし、熱もしばらくしたら下がるはずだ。もう大丈夫だろ?」
「大丈夫じゃねぇよ。・・・跡部、一緒に寝てくれよ。俺、寒みぃ。」
宍戸はわがままモード全開で跡部に甘えまくる。跡部は本当世話の焼ける奴だなと思いな
がらも、宍戸の言うことを聞いて少し狭いベッドの中に入った。宍戸は跡部にピッタリと
くっつく。
「今日は特別だからな。いつもより優しくしてやんよ。俺は病人には優しいんだ。」
「ありがとな。跡部・・・。」
宍戸はうれしそうな表情で目を閉じた。

高い熱の所為で宍戸はとある夢を見る。もう一度目が覚めると自分一人になっていて、さ
っきまでいた跡部の姿もなく、体はだるいままで気分は最悪だという夢を。不安で寂しく
て切なくて、泣きたくなった。どうしようもなくなって、まるで暗闇に落とされる感覚に
なったとき、ふと目が覚める。

今、目開けて跡部がいなかったらどうしよう・・・。怖い・・・。
「ん・・・」
苦しそうに宍戸がうなると跡部は優しく髪の毛を撫でる。
「どうした?大丈夫か宍戸。」
跡部の声がすぐそばで聞こえたので、宍戸はふと目を開けた。
「跡部・・・・。」
宍戸は本当に安心したような声で呟いた。さっきの夢は夢だと心底ホッとする。
「よかった・・・。」
「だいぶ顔色よくなったな。もう夕方だぜ。」
「そっか。確かに気分はよくなったかも。」
「今日、お前の親は?」
「もうちょっとしたら帰ってくると思うけど。」
跡部は布団に入ったまんまの状態でそっと囁いた。
「今日、お前んち泊まっていいか?」
「えっ、泊まってくれんの?」
「もうここまで居たら泊まった方がいいだろ?お前、俺が帰ったら寂しくてたまんないじ
ゃねぇのか?」
「う・・・うん。」
さっきの夢のこともあって、正直跡部には帰って欲しくなかった。ぎゅうっと服を掴み、
顔埋める。
「本当、今日はいつも以上に甘えてくるな。」
「熱の所為で何か変な気分なんだよ。たまにはいいだろ?」
「そりゃな。ほら、もうちょっと寝てろ。それでさっさと治しちまえ。」
「帰んなよ・・・跡部。」
「帰んねーよ。さっき泊まるって言っただろうが。」
「そうだよな・・・。」
宍戸はもう一度目を閉じた。跡部は宍戸の可愛い寝顔が見れると飽きることなく見続ける。
宍戸自身は気づいていないが、夢を見ているとだいぶ寝言を言っているのだ。
寝てる間にあんな名前呼ばれてちゃ、帰るにも帰れねぇよなあ。早く治せよな宍戸。
そう心の中で呟き、跡部はそっと宍戸の唇にキスをする。跡部もテスト期間で寝不足だっ
たのでそのまま宍戸と一緒に寝てしまった。ただ、宍戸の親が帰って来て驚かれるのは、
まず間違いないだろう。

                                END.

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