つい先日まで海外研修に行っていた氷帝テニス部3年メンバーは、昼休みに交友棟に集ま
っていた。氷帝学園の海外研修は自分の興味のある分野に関して勉強するために、いくつ
かの国から行きたい国を選択することが出来る。海外研修ということで、ある程度長い期
間その国へ行っているわけだが、今回、跡部と宍戸は違う国を選択し、しばらくの間会え
ない状態が続いていた。
(研修内容は悪くはなかったが、やっぱりあいつがいねぇと物足りねぇんだよな。でも、
物理的に会えない期間も今日で終わりだ。)
やっと、宍戸に会えると胸を躍らせていた跡部であったが、いつものテニス部メンバーが
集まっているその中に宍戸の姿は見当たらない。おかしいと首を傾げながら、跡部は宍戸
と同じクラスであるジローに宍戸がどうしたのか聞いた。
「ジロー、宍戸はどうした?」
「ん〜、宍戸ぉ?何かこの前の海外研修が終わってからずっと休んでるよー。」
眠たそうな声で、ジローは跡部の質問に答える。目的地が違うため、帰国日程も多少のず
れがある。跡部の昨日日本に帰ってきたのだが、ジローや滝、岳人や忍足の他のメンバー
は二日前か三日前に帰国していた。
「時差ボケかなんかでへばってやがるのか?」
「違うよ、跡部。宍戸と同じ国に行った奴に聞いたんだけど、宍戸達が行ったとこ、今テ
レビでやってる新型インフルエンザが流行っているところだったらしいよ。で、帰国した
飛行機の中で、宍戸熱出したらしくて。」
「それってアカンちゃうの?帰国した飛行機の中で、熱出すって、メッチャ感染してそう
な感じやん。」
「あー、そうだ。俺もクラスの奴らに聞いた。宍戸達の行った国のメンバーの中で、新型
にかかった可能性のある奴が出たって。あれ、宍戸だったのか。」
噂は耳にしていたが、それが宍戸だったということにそこにいたメンバーは今気がついた。
思ってもみないことを聞かされ、跡部は非常にもやもやとした気分になる。
「それって誰に聞けば、ハッキリ分かるんだ?」
「C組の担任とかじゃねぇの?まあ、マジで新型インフルだったら、どの先生に聞いても
分かる気がするけど。」
「そうか。分かった。」
とりあえず、宍戸の状況をハッキリと把握したいと、跡部は職員室へと向かう。職員室へ
到着すると、何だか全体的に慌ただしく、どこかいつもと違う雰囲気が漂っていた。
「何かあったんですか?」
その異様な雰囲気に、跡部は多少の不安を感じながら、近くにいた教師に尋ねる。その教
師の口から出た言葉は、跡部が認めたくないと思っていた事実であった。
「3年C組の宍戸が、新型インフルエンザに感染したらしい。日本での発症者はまだそん
なにいないから、隔離入院らしいぞ。」
「そう・・・ですか。」
せっかく宍戸に会えると思って楽しみに帰ってきたのに、新型インフルエンザにかかり、
隔離入院させられているという。頭を何かで打ちつけられたような衝撃を感じながら、跡
部はふらふらとした足取りで、他のメンバーがいる交友棟へと戻っていった。
「どうだった?跡部。」
「ああ・・・やっぱり、新型インフルエンザにかかってるってよ。」
「マジかぁ。大変だなあ、宍戸も。」
「今の時期やったら、そんなに症状がひどくなくても入院させられるやろ?しかも、隔離
状態で。」
「そうらしいぜ。隔離入院させられてるって言ってたからな。」
「宍戸かわいそうだC〜。」
宍戸が新型インフルエンザにかかっていると知った3年メンバーは、宍戸に同情的な言葉
を口にする。しかし、その事実を知って一番へこんでいるのは跡部であった。
「せっかく会えると思ったのにな・・・」
「んー、こればっかりは仕方ないよね。元気だしなよ、跡部。」
「せや。新型言うてもそんなに症状がひどくなるようなもんでもないらしいやん。」
「宍戸なら、大丈夫だって。新型インフル程度じゃへばったりしねぇだろ。」
あまりにもへこみまくっている跡部を元気づけようと、三年レギュラーメンバーは、慰め
の言葉をかける。だが、跡部の気持ちはただただ沈んでいくばかりであった。
隔離入院と言っても、それほど重症化しているわけではないので、宍戸は熱の高さに多少
の眩暈を感じながらも、暇を持て余していた。そんな宍戸の状態を理解している病院側は
携帯電話等を使うことを許していた。
「もうマジありえねぇぜ。向こうから帰ってきたら、いきなり39度くらい熱が出てさー。」
『今は下がってんのか?』
「んー、まだ38度近くはあるけど、だいぶ下がった方だぜ。」
『ちゃんと休んどけよ。どれだけ俺様を待たせる気だ?』
「しょうがねーじゃん。俺だって、なりたくてなったわけじゃねぇんだからよ。」
『そりゃ百も承知だ。・・・なあ、宍戸。』
「ん?何だよ?」
『・・・・いや、何でもねぇ。』
会いたいと口にしてしまったら、よりその気持ちが強くなってしまうと、跡部は喉まで出
かかった言葉を飲み込んだ。会いたいのはもちろんのこと、海外研修に行っている時から、
宍戸に全く触れていない。宍戸とそういうことをどうしようもなくしたいという気持ちも
抱えながら、跡部は必死で平静を保とうとした。
「あーあ、早く治んねーかなあ。もう退屈でしょうがないぜ。」
『見舞いに行けたらいいんだけどな。』
「ダメダメ!!そんなことしたら、跡部にうつっちまうじゃねぇか!!」
『分かってるよ。てか、そんなん無理だろ。家族にだってあんまり面会出来ねぇんだろ?
今の状態じゃ。』
「まあな。だから、暇で暇で仕方ねぇんだって。」
『なら、さっさと治すんだな。』
「ああ。・・・本当はもっと跡部と話しててぇけど、早く治したいから寝るわ。」
『そうしとけ。』
「じゃあな・・・跡部。」
『ああ。』
しばらくの沈黙があった後、宍戸は通話終了ボタンを押した。携帯電話を枕の横に置くと、
宍戸はゴロンと横になる。宍戸も宍戸で、跡部に早く会いたくて仕方なかった。横になり
目を閉じると、どうしようもなく寂しい気分になる。
(はあ・・・何でインフルエンザになんてかかっちまったんだろう。俺ってば、本当激ダ
サだぜ。)
大きな溜め息をつき、宍戸はぎゅうっとシーツを握りしめる。跡部に会いたい、跡部とい
ろんなことをしたい。そんな気持ちを抱え、泣きたくなるような寂しさを必死で堪えなが
ら、宍戸はゆっくりと夢の中へと落ちていった。
宍戸が入院してから、一週間。海外研修の時から合わせると、約二週間。跡部は宍戸に会
えない期間が長すぎて、イライラももやもやもしたい気持ちも、もう限界というくらいま
で溜まっていた。そんな跡部のもとへ、一本の電話が入る。
〜〜〜♪ 〜〜〜〜♪
「もしもし?」
着信音は宍戸からの着信を表すものであった。
『もしもし、跡部?俺だけど。』
「ああ、宍戸か。どうよ?調子は。少しはよくなってんのか?」
もう声を聞いただけで、どうにかなりそうな気持ちを抑えながら、跡部はそんなことを尋
ねる。
『へへへ、もうバッチリだぜ。今日の夜、退院出来るらしいぜ。』
「本当か!?」
『おう!もう昨日あたりから、熱は全然なかったんだけどな、一応大事を取って、今日ま
で入院ってことになってたんだ。んで、明日休みだろ?だから、お前に会いたいなあと思
って、電話してみたんだけどよ。』
「もう待ちくたびれたぜ。いいぜ、明日俺の家来い。つーか、迎えに行ってやる。」
『サンキューな。俺も早く跡部に会いてぇ。』
自然と宍戸の口から出た言葉に跡部の胸は、きゅんと高鳴る。明日になったら、やっと宍
戸に会える。期待感で胸がいっぱいになり、跡部の顔は自然に緩んでいた。
(やっと、宍戸に会える。こんなにそのことが嬉しいなんて、俺も相当アイツに惚れてる
もんだな。)
明日になるのが待ちきれないと感じるほど、跡部の胸は躍っていた。それは、まだ病院に
いる宍戸も同じことであった。
次の日、跡部は宍戸を家まで迎えに行き、自分の家へと連れていった。メイドや執事がお
茶やお菓子を持って来ようとするのを全て断り、自分の部屋へ入ると跡部はドアに鍵をか
けてしまう。
「久しぶりだな、宍戸。」
「そうだな。二週間ぶりくらいか?」
「本当、待ちくたびれたぜ。」
そんな会話をしながら、二人の足は自然とベッドの方へと向かう。二週間というのは、二
人にとってはあまりにも長く、いろいろなものを二人の中に溜め込ませていた。
「俺様に二週間も禁欲生活を強いたお前には、ちょっとしたお仕置きが必要だな。」
「はあ?俺の所為かよ。」
「安心しろ。お仕置きっつっても、痛くするわけじゃねぇからよ。」
「痛くねぇんだ。」
「テメェが痛いのがいいっつーんなら、それでもいいけどよ。でも、どうせなら気持ちイ
イお仕置きの方がいいだろ?」
「気持ちイイお仕置きってどんなお仕置きだよ?」
くすくすと笑いながら、宍戸はそんなことを言う。もちろんお仕置きなど言葉だけで、す
ることは今までしたくても出来なかったコトだ。ベッドに腰かけている宍戸の肩に手をか
け、そのまま布団の上へ宍戸のことを押し倒すと、跡部は噛みつくように宍戸の唇にキス
をした。
「んんぅ・・・んん・・・」
いつもより余裕のない跡部のキスに、宍戸はぞくぞくと体の奥が疼いてくるのを感じる。
久しぶりのこの感覚。この後する行為への期待感が宍戸の中で次第に高まっていき、全身
が熱く火照ってくるのを感じていた。
(ヤベ・・・キスだけでかなりキてるかも・・・)
深く長いキスから解放されると、宍戸はとろんとした表情で跡部を見上げた。そんな宍戸
の表情に跡部はもう我慢出来なくなってしまう。
「入院中は出来なかったんだろ?」
「まあな。一度トライしようとしたけど、キツくて無理だった。」
跡部の率直な質問に、宍戸は苦笑しながら答える。熱が出ていようが、溜まるものは溜ま
るのだ。しかし、やはり体調不良の時に自分でするのは、かなり無理があった。
「だったら、俺様が最高に気持ち良くさせて、イカせてやるよ。」
自信満々な笑みを浮かべながら、そんなことを口にし、跡部は宍戸の熱く硬くなっている
熱に触れる。跡部の手に触れられるだけで、宍戸はピクンと体を震わせ、胸を高鳴らせた。
「あっ・・・」
「気持ちイイなら、思いきり声出していいぜ。」
「ん・・あっ・・・あっ・・・ああっ・・・!!」
跡部が熱を握った手を動かし始めると、その手の動きに合わせるかのように宍戸は甘い声
を上げ始める。あまりの久しぶりの刺激だったので、宍戸のそこはすぐに蜜を溢れさせ、
跡部の手の滑りをよりよくしていった。
「あっ・・・ひあっ・・・ああぁっ・・・あっ・・・」
「どうよ?なかなか気持ちイイだろ?」
「あ・・んっ・・・気持ちイイっ・・・うあっ・・・ああ・・・」
「もうこんなにヌルヌルになってきてるもんなあ。あと20秒くらい擦ってやったら、イ
っちまうんじゃねぇの?」
宍戸の反応を楽しみながら、跡部はさらに勢いよく熱を擦る。そんな刺激に宍戸は感じま
くり、足には力が自然と入り、ビクビクと痙攣し始める。
「やっ・・・そんなっ・・・んっ・・・んんっ・・・・!!」
「そろそろ限界なんじゃねぇの?すげぇ足震えてるぜ。」
「だ、だってよ・・・久しぶりで・・・気持ちよすぎて・・・もう・・・っ」
呼吸を乱しながら、そんな言葉を紡ぐ宍戸に跡部の胸はひどく高鳴る。だったら、さっさ
とイカせてやろうと、絶妙な力で跡部は宍戸の熱に刺激を与え続けた。
「あぁっ・・・ヤバっ・・・もうイ・・クっ・・・・」
「ほーら、イっちまえ。」
「んっ・・・あ・・・ああぁ―――っ!!」
跡部の言葉にも煽られ、宍戸はそのまま達してしまう。ドクンドクンと放たれた白く濃い
雫を跡部は口に運んで、宍戸の味をじっくり味わった。
「ハァ・・・ハァ・・・」
「相当溜まってたみてぇだな。テメェのミルク、すげぇ濃いぜ。」
「んなもん・・・口にすんなよ。」
「テメェの出したもんだ。味わいたくなるのは当然だろ?」
そんな跡部の言葉に、宍戸は軽く赤面しながら、横たえていた体を起こす。そして、ぐい
っと跡部の足を開かせた。
「今度は俺の番だ。」
「ほう。何してくれるんだ?」
「と、とりあえず、口でしようかなあって思ってるんだけどよ・・・・」
「そりゃいいな。大歓迎だぜ。」
自ら口でしてくれると言うことを聞いて、跡部の顔はひどく緩む。積極的な宍戸も悪くな
いと、跡部はカチャカチャとベルトを外し、宍戸が口でしやすいように用意をしてやった。
「じゃ、するからな。」
「ああ。」
熱くなっている茎を、はぐっと宍戸はその口に含む。自分でする時には、絶対に味わえな
い感覚に、跡部は言葉では表現出来ないような甘い痺れを感じる。
「んむ・・・んんっ・・・・ん・・・」
「すげぇ気持ちイイぜ、宍戸。久々だとやっぱ違うな。」
「ハァ・・・マジで?」
「ああ。最高だぜ。」
跡部に褒められるような言葉をかけられ、宍戸の胸は高鳴り、どうしようもなく嬉しくな
る。もっともっと跡部を気持ちよくさせたいと、宍戸は一生懸命口を動かす。頭の中がと
ろけるような快感を感じながら、跡部は宍戸の頭をぐっと自分の足の間に押し付ける。
「んぐっ・・・ん・・・んん・・・」
「はっ・・・宍戸、そろそろ・・・っ」
ドクンと口の中の熱が脈打ち、熱い雫が放たれる。出されるまま、宍戸はいったんその蜜
を口の中に溜める。全てが出され、跡部の熱から口を離すと、宍戸は口の中に溜めていた
蜜を飲み込もうとする。しかし、思った以上に量が多かったため、一度では飲み込めず、
軽くむせながらも宍戸はしっかり全てを飲み込んだ。
「ケホっ・・・ハァ・・・」
「病み上がりなんだから、そんなに無理すんじゃねぇぞ。」
「このくらい何ともねぇよ。けど、今日の跡部のいつもより量が多くて、濃かった。」
「まあ、俺も結構溜まってたからな。」
「ま、悪くはねぇ味だけどよ。」
ニッと笑いながら、宍戸はそんなことを口にする。そんな宍戸にときめきながら、跡部は
ちゅうっと自分の味のする口にキスをした。舌を絡めながら、跡部は利き手を宍戸の双丘
へと持ってゆく。
「んっ・・・!!」
「ここ使うのも久しぶりだよな。」
「やっ・・ぁ・・・跡部っ・・・・」
かなり久しぶりなので、宍戸の蕾はきゅうきゅうと跡部の指を締めつける。そのキツさが
逆にたまらないと、跡部はぐりぐりと中を弄った。
「んっ・・・あっ・・・ああっ・・・・」
「いい感度じゃねぇか。こっちもして欲しくてたまらなかったんじゃねぇの?」
普段なら、そんなことはないと首を振る宍戸だが、今日ばかりは素直に頷いてしまう。跡
部にしっかりしがみつき、内側を弄られる快感に宍戸はその身を委ねる。じわじわと快感
が高まるように跡部は絶妙に刺激を与えた。かなりいいところまで高まるが、指では一番
欲しい刺激は与えられない。そんなもどかしさに、宍戸は自ら跡部のモノが欲しいと口に
してしまう。
「ハァ・・・跡部っ・・・もう指じゃ足りねぇよ・・・・跡部ので、もっと奥までして欲
しい・・・・」
あまりに率直な宍戸のおねだりに跡部の下半身は爆発寸前だ。締まりのよい蕾から指を抜
き、代わりにすっかり硬くなった熱の塊を押し当てる。そして、下から突き上げるように
跡部は宍戸の中に、己の楔を突き入れた。
「あっ・・・ああぁんっ・・・!!」
「ハァっ・・・ヤベェ・・・・久しぶりだから、すげぇ気持ちイイ。」
「ああっ・・・跡部っ・・・ふあっ・・・ああぁっ!!」
一番感じるところを熱い楔で擦られ、宍戸はたまらず甘い声を上げる。跡部も熱に絡みつ
く宍戸の内側の壁が与える快感に息を乱した。
「んっ・・・中、すげっ・・・激気持ちよくて・・・あっ・・・」
「いつもより少しキツイが、それがまたたまんねぇな。こんなんじゃ、すぐイっちまいそ
うだぜ。」
「俺・・・も・・・また、すぐイキそ・・・」
久しぶりに交わった気持ちよさに、二人はあっという間に意識を奪われる。どちらも夢中
になって腰を動かし、お互いに快感を高め合った。熱の塊とぎゅうぎゅうと収縮を繰り返
す内壁が擦れ合い、二人は程なくして絶頂という名の高みへと昇りつめる。
「ああっ・・・ああぁ――っ!!」
「くっ・・・・」
跡部の楔は宍戸の中で大きく脈打ち、熱い想いを迸らせる。そんな想いを身体の奥で感じ、
宍戸も跡部と触れ合うことの出来なかった期間に溜まっていた熱い雫を迸らせた。
「ハァ・・・ぁ・・・ハァ・・・・」
「やっぱ、最高だな。コレ。」
「ああ。」
「けど、俺的には少し足りねぇな。何せ二週間で禁欲させられてたんだからよ。」
「そりゃ俺だって同じだぜ。俺も・・・もっとしてぇ。」
「だったら、するしかねぇだろ。」
「だな。」
繋がったまま、二人は深い口づけを交わす。二週間出来なかった分を取り戻そうと、二人
は満足するまで、何度も交わった。
何度もして、十分に満足した時には、二人はこの二週間溜まっていたもやもややイライラ
が綺麗さっぱり消えるような爽快感を感じていた。爽快感を感じていたとしても、してい
ることがしていることなので、その体は汗や体液でそれなりに汚れてしまっている。そん
な体を綺麗にしようと、二人は真昼間ではあるが、シャワーを浴びることにした。
「はあー、こんなにゆっくり風呂に入るのも久しぶりだー。」
「あー、入院中は入れねぇもんな。」
「熱が高かったから、結構汗はかくんだけどよ、風呂入るのは体力使うし、そもそも隔離
状態だったから、全然入れなくてさー。マジ辛かったぜ。」
「だったら、満足いくまで入っとけ。誰も邪魔なんかしねぇからよ。」
「おう!」
髪や体を綺麗に洗うと、宍戸も跡部もゆっくり湯船に浸かる。跡部の家の浴槽は、温泉な
りに大きいので、手足を伸ばしながら、のびのびと入ることが出来た。
「気持ちいー。」
「ゆっくり入るのは構わねぇが、のぼせねぇように気をつけろよ?」
「分かってるって。はあー、何か今日は体もすっきりしたし、インフルエンザの所為で、
何となくもやもやしてた感じがなくなって、すげぇいい気分だぜ♪」
「俺も今まで溜まってもんが、一気に解消出来たって感じだな。」
「何だかんだ言っても、あーいうのってすると気持ちいいし、すっきりするよな。」
「まあ、人間の三大欲求の一つだしな。」
「でも、俺は跡部とだから、気持ちいいと思うし、したいと思うんだと思うぜ。」
屈託のない笑顔でそんなことを言ってくる宍戸に、跡部の顔は自然と赤くなる。
「お前・・・そんなこと言ってると、また襲っちまうぞ。」
「あれだけやったのに、お前どんだけ元気なんだよ?」
「冗談だ。さすがに昨日まで入院してた奴にそんなに無理はさせられねぇからな。」
「跡部がそんなこと言うなんて、めっずらしー。どうしたんだよ?」
「テメェ失礼だぞ。」
「あはは、うそうそ。心配してくれて、ありがとな。」
こんな何でもないやりとりが楽しくて、そして、嬉しくて仕方がないと、二人の顔には始
終笑顔が浮かんでいた。会えない期間が長かったため、今一緒にいる時間が、いつも以上
に貴重で楽しい時間に感じられる。そんな気持ちを共有しつつ、二人はゆったりと湯船に
浸かりながら、二人だけの甘いひとときを存分に堪能するのであった。
END.