とある午後のこと、今日の四年生の授業は校外実習であった。授業が始まった時には爽
やかな青空が広がっていたのだが、突如として黒い雲が現れ、あっと言う間にその青空
を覆い隠してしまった。
「天気が崩れそうだな。長次。」
「ああ・・・」
「まだ、少し時間があるが早目に戻っておくか。」
今回の実習では、仙蔵と長次は同じチームであった。だいぶ森の奥に来てしまったので、
天気が本格的に崩れる前に戻ろうと思ったが、一足遅かった。ポツポツと雨粒が落ちて
きたと思ったのも束の間、バケツの水をひっくり返したような雨が二人の上に降り注ぐ。
ザア―――っ・・・・
「これは戻るよりどこかで雨宿りした方がよさそうだ。」
仙蔵の言葉に長次は黙って頷く。そして、雨宿りが出来そうな場所を探しながら、二人
は同時に走り出した。
しばらく走って行くと、二人は石の壁にポッカリとあいた洞窟を見つける。そこならば
雨宿りが出来そうだと、仙蔵はその洞窟に向かう。
「長次、ひとまずあそこに入ろう。」
「ああ。」
バシャバシャと音を立て、仙蔵と長次はその洞窟に向かって走る。洞窟の中は、真っ暗
ではあるが、かなり奥まで続いており、雨宿りをするには絶好の場所であった。
「これでとりあえず、雨はしのげるだろ。」
「そうだな・・・」
「しかし、これじゃあ、あまりにも暗すぎるな。少し明かりをつけるか。」
火薬の扱いに長けている仙蔵は、常に火種を持っている。雨に濡れて使えるかどうか分
からなかったが、幸いにも火をつけることは可能であった。洞窟内の小枝や落ち葉を集
めると、それに火をつけ、二人は明かりと暖を得た。
「すっかり濡れてしまったな。」
雨に濡れた制服を乾かそうと、仙蔵は着ていた制服を脱ぎ、褌一枚の状態になる。いき
なり目の前で脱ぎ出す仙蔵を見て、長次はドキドキしてしまう。
(ああ、これはヤバイな・・・)
そんなことを考えていると、仙蔵が褌姿のままじっと長次を見上げていた。
「な、何だ・・・?」
「長次も脱いだらどうだ?そのままでいると風邪をひいてしまうぞ。」
それは確かにそうだが、この状況で褌一丁になるのはマズイ。しかし、何もしなければ、
余計に仙蔵に怪しまれてしまう。とりあえず、上だけは脱いでおこうと、長次は制服の
上着を脱ぎ、乾かすかのように広げて置いた。
「これでしばらくは安心だな。」
「あ、ああ・・・・」
「しかし、この格好だと少し寒い。長次もそうだろ?」
「少し・・・」
長次がそう返事をすると、仙蔵はむき出しになっている上半身をピッタリと長次の体に
くっつけた。その瞬間、長次の心臓はドキンと跳ねる。
「せ、仙蔵っ・・・・」
「ああ、これなら暖かいな。」
思ってもみない仙蔵の行動に、鼓動が早くなり、ムラムラしてきてしまう長次であった
が、何とかその欲求を堪えていた。しかし、目の前には真っ白な仙蔵の肌が焚火の火に
照らされながら晒されている。しかも、髪は雨に濡れ、普段とは一味違う色気を放って
いる。
(ダメだっ・・・我慢出来ない!)
しばらく堪えていた長次であったが、思春期真っ只中なこの時期の理性など、そんなに
大きなものではない。力強く仙蔵の体を抱きしめると、長次は仙蔵の柔らかい唇に口づ
けた。
「ちょ、長次っ・・・んぅっ・・・!?」
一度我慢出来なくなるともう止められない。深いキスを仙蔵に施すと、長次はそのまま
仙蔵を押し倒した。
「ふはっ・・・長次・・・・」
「これからすることは・・・全部夢だと思えばいい・・・・」
「えっ・・・?」
いきなりキスをされ、押し倒され、そんなことを言われる。あまりの突然のことに、仙
蔵の頭の中は混乱しまくっていた。しかし、心臓は速いリズムを刻んでいるものの、長
次がしたことに嫌だという感情は全くもって伴っていなかった。
仰向けになっている仙蔵の足を開かせ、長次は褌の中に手を入れ、その熱の中心を弄る。
それを弄りながら、仙蔵の味を確かめるかのように長次は深い深い接吻を続けていた。
「んっ・・・んぅ・・・ぁ・・・んんぅっ・・・・」
軽く自分ですることはあっても、人にされることは初めてであった。自分でするのとは
全く違う感覚に、仙蔵はビクビクとその身を震わせる。
(人にされるのって、こんなに気持ちいいのか。ヤバイ・・・これじゃ、そんなにもた
ないかも・・・)
口の中を探られる感じも仙蔵にとってはひどく心地よく、正常な思考を奪い去ってゆく。
長次の手に収められた熱は次第に硬さを増し、長次の手を滲む蜜で濡らしてゆく。その
蜜で滑りがよくなると、長次はさらに大きく速く手を動かす。
「んぁっ・・・ん・・・ふぁ・・・んんっ・・・・」
長次の手の動きに比例して、快感もより大きくなる。しばらくそのまま大きな刺激を与
えられ続けると、仙蔵はビクンと一際大きくその身を震わせ、長次の手の中に白濁の熱
い雫を放った。
「んん――っ!!」
仙蔵が達したことを確認すると、長次はゆっくりと唇を放す。舌に絡まる透明な蜜が糸
を引き、二人の唇を繋げる。しかし、その糸はすぐに切れ、仙蔵の口の端に一筋の雫を
残した。そんな雫を長次はそっと舐め取る。
「ふあっ・・・」
そんな些細な刺激にも仙蔵は敏感に反応し、小さくその身を震わせる。そんな仙蔵の反
応を見て、長次はより先へと進みたくなってしまう。仙蔵の足に纏わりついている白い
褌をしゅるりと外してしまうと、長次はさらに大きく仙蔵の足を開かせた。
「な、何・・・?」
「少し痛いかもしれないが・・・努力はする・・・・」
「えっ・・・何が・・・・いっ・・・ああっ!!」
仙蔵の放った蜜を長次は後ろ蕾に塗りたくり、一本の指をその中に埋め込んだ。普段な
らば何かが入り込むことなど、ほとんどありえない場所に指を入れられ、仙蔵はその奇
妙な感覚に悲鳴にも似た声を上げる。
「やっ・・・ああぁっ・・・・あっ・・・あ・・・」
その声を聞いて、とても悪いことをしている気分になる長次であったが、同時に今まで
に感じたことのない興奮を覚える。なるべく痛みを与えないように注意しながら指を動
かしていると、徐々にその固く閉じていた蕾は締めつけを弱めていった。
「あっ・・・うあっ・・・ああ・・・・」
「痛いか・・・?仙蔵・・・」
長次の問いに仙蔵はふるふると首を横に振った。確かに何とも言えない異物感を感じる
が痛いわけではない。もう何をされているかよく分かってはいないが、仙蔵は長次のす
ることを拒む気にはなれなかった。
「変な感じはするけど・・・痛くは・・・ない・・・」
「そうか・・・」
それならば、もう少しちゃんとそこを慣らしてやろうと、長次は先程よりも大きく指を
動かし始める。長次の指が動くたびに仙蔵は声を上げるが、それは決して拒絶を示すも
のではなかった。
「ふっ・・・あっ・・・んぁ・・・ああ・・・」
と、長次の指がある部分に触れた瞬間、仙蔵は今までにない大きな反応を見せる。
「ひっ・・・ああぁんっ!!」
そんな仙蔵の反応を見て、長次はドキンとしてしまう。先程とは比べ物にならない程、
色めいた高い声。その声をもう一度聞きたいと、長次は同じ場所をぐっと押した。
「ああっ・・・ああぁんっ!!」
「仙蔵・・・」
「だ、ダメぇ・・・そこ触られると・・・・変になっちゃう・・・・」
そんなことを言われたら、よりしたくなってしまうと、長次はわざとそこばかりを責め
た。その度に仙蔵は甲高い声を上げ、ビクビクとその身を震わせる。その所為かあれほ
ど固く閉じられていた蕾は程良くほぐれ、だいぶ中に入れている指も動かしやすくなっ
ていた。
「ハァ・・・あっ・・・はっ・・・ハァ・・・」
(もう我慢出来ないかも・・・)
仙蔵の内側を弄り、色気たっぷりの喘ぎ声を聞き、長次の熱はもう限界寸前まで高まっ
ていた。まだ自身を入れるには少し早いと分かっていながらも、長次は仙蔵の中に自身
を入れたいという欲求を抑えることが出来なかった。
「・・・仙蔵。」
「えっ・・・やっ・・・ちょっと待っ・・・ひっ・・・ああぁ――っ!!」
「くっ・・・」
何とか入ったものの、想像以上に仙蔵の内側は狭かった。これは自分もキツイが、仙蔵
はもっと辛いだろうと、長次は心配になる。案の定、あまりの痛さに仙蔵はボロボロと
涙を流していた。
「痛っ・・・ふっ・・・うぅ・・・・」
「すまない・・・仙蔵。今抜くから・・・」
ぐっと身を引いて、長次が自身を抜こうとすると、ぎゅうっと長次の腕を仙蔵は掴み、
それを止めた。
「そのままでいい・・・抜くな・・・・」
「けど・・・」
「せっかく長次が・・・私の中に・・・いるのに・・・・これくらいの痛み、全然何と
もないんだからな!」
強がるようにそんなことを言う仙蔵に、長次の胸はひどくときめく。しかし、仙蔵が痛
がっているのは事実だ。とにかくある程度仙蔵がこの状態に慣れるの長次は待った。
(ハァ・・・だいぶ痛みは引いてきたかも・・・・)
まだだいぶキツイ感じはするが、入れられた瞬間の痛みはだいぶ和らいでいた。このま
までは長次の方も辛いだろうと、仙蔵は大きく息を吸って吐くと、長次に向かって言葉
をかける。
「長次・・・ゆっくりなら動いてもいいぞ。」
「大丈夫なのか・・・?」
「大丈夫だ。絶対大丈夫だから・・・・」
自分にもそう言い聞かせるかのように、仙蔵はそう口にする。まだ仙蔵のことが心配で
あったが、自分が辛いのも確かであったので、長次はゆっくと動き始める。その瞬間、
仙蔵の中に、先程の痛みとは全く別の感覚が自分の内側に生まれるのを感じる。
(うわっ・・・何だこれ?ヤバイ・・・こんなの・・・こんなの・・・っ)
「あっ・・・んぁ・・・あっ・・・・」
「仙蔵・・・?」
「やっ・・・何か・・・何か・・・」
「まだ・・・痛いか・・・?」
「ち、違っ・・・あっ・・・ふあぁんっ!!」
長次の熱が自分の中を擦るたびに感じるのは、紛れもなく快感と呼ぶにふさわしいもの
であった。まだ確かに痛みは残っているのだが、それ以上に全身が粟立ち、頭の奥が痺
れるような快感が長次の熱に触れているところから生まれくる。そんな感覚に、仙蔵は
いつしか夢中になっていた。
「長次っ・・・もっとちゃんと動いて・・・」
「でも・・・」
「お願いだ・・・私がそうして欲しいんだ・・・」
仙蔵がそう言うならと、長次は先程よりも少しだけ大きく動く。動くたびに仙蔵の内壁
は絡みつくように長次の熱を締めつけ、長次にも大きな快感を与えた。
「ハァ・・・仙蔵・・・」
「あっ・・・長次っ・・・あぁんっ・・・あ・・・ああっ・・・」
一度その気持ちよさを味わってしまうと、もうどちらも止まらなくなってしまう。繋が
り合う熱さと痛さと気持ちよさ。その全てが二人の身体を支配し、お互いを求めること
しか考えられなくさせていた。
「ハァ・・・長次っ・・・も、もう・・・・あっ・・・ああ・・・」
「仙蔵っ・・・」
「ふあっ・・・ああ・・・ああぁ――っ!!」
仙蔵の高い声が洞窟内に響くと同時に、二人はビクンと体を震わせ、熱の先から想いの
つまった雫を溢れさせた。
初めての行為に二人はしばらくの間ぐったりとその身を横たえていた。先に動き始めた
のは長次の方で、ゆっくりと体を起こすと、すぐ傍で横になっている仙蔵に目を落とす。
「あっ・・・」
一糸纏わず硬い地面に体を預けている仙蔵を見て、長次は自分のしてしまったことの重
大さに気づく。震える手で仙蔵の髪に触れようとすると、今まで目を閉じていた瞳を開
け、長次を見る。
「ん・・・どうした?長次。」
「・・・すまない、仙蔵。」
あまりにも泣きそうな表情で長次が謝ってくるので、仙蔵は横たえていた体を起こし、
すっと顔に手を伸ばした。
「どうしてそんな顔をする?」
「仙蔵に・・・ひどいことしてしまったから・・・・」
ボソボソとそう呟く長次に見て、仙蔵は小さく溜め息をついた。
「私はそうは思ってないぞ。」
「えっ・・・?」
「確かに初めは少し痛かったが・・・それ以上にお前が私の中に入っている感じは気持
ちよかったからな。」
「仙蔵・・・・」
長次が言葉に詰まっていると、仙蔵はちゅっと軽く長次の頬にキスをし、ふっと口元を
緩ませる。
「お前はさっきしたことを夢だと思えばいいと言っていたが、私はそうは思わないから
な。」
「どうして・・・」
「どうしてって、夢だと思うにはもったいなさすぎるからさ。長次が私に触れてきてく
れたことも、口づけてくれたことも、私の中に入ってきてくれたことも・・・私にとっ
てはすごく嬉しいことだったから。」
恥ずかしそうにそう言う仙蔵の言葉に、長次の胸はひどく高鳴る。自分の仙蔵に対する
想いは一方的なものだと思っていたのだが、今の仙蔵の言葉はそれを覆すようなものだ。
「私を好きでもないのに、あんなことをしたと言うのなら怒るし謝ってもらうが、そう
ではないだろう?」
「もちろんだ。」
「長次は私が好きなのだろう?」
「ああ。」
仙蔵の問いに長次は即答する。その答えを聞いて、仙蔵は実に嬉しそうな顔でニッコリ
と微笑む。
「私も長次のことが好きだ。だから、さっきのお前がしたことは、別に何もひどいこと
ではないし、謝ることじゃない。ただ・・・」
「ただ・・・?」
「今日のことは二人だけの秘密だからな。」
顔の前に人差し指を立て、悪戯っ子のように仙蔵はそんなことを言う。そんな仙蔵の言
葉に長次はコクンと頷いた。そんなやりとりをしている間に、火の近くに置いておいた
制服はすっかり乾き、いつの間にか雨の音も止んでいた。
「さてと・・・」
乾いた制服を手にとり、仙蔵はパパッとそれを身につける。長次にも乾いた上着を渡し、
それを着るように言う。
「着物も乾いたし、雨も止んでいるようだ。さっさと着替えて学園に変えるぞ、長次。」
「ああ。」
仙蔵に渡された着物をバサっと羽織り、長次は立ち上がる。そして、焚火の火を消し、
二人は洞窟の外に向かって歩き出す。外に出ると、雨の代わりに明るい月の光が二人の
上に降り注いだ。
「すっかり晴れているな。」
「そうだな。」
「はあー、疲れたが、何だかすごく気分がいいぞ、長次。」
「そうか。私も・・・すごく気分がいい。」
「とりあえず、学園に帰ったらまずは風呂だな。」
「ああ。一緒に入るか・・・?」
「当然。長次に洗ってもらうからな。」
実に楽しそうに仙蔵は長次と言葉を交わす。長次も表情こそ無愛想だが、心の中では仙
蔵以上に嬉しさや楽しさを感じていた。月明かりが照らし出す、忍術学園までの帰り道。
そんな道のりを長次と仙蔵は、他愛もない話をしながら歩いて行くのであった。
END.