今日の美術はデッサンか。あんまり得意じゃないんだよなあ。あれ?あれは樺地か?とい
うことは、今日は樺地のクラスと合同なのか。
「よぉ、今日はお前のクラスと一緒なんだな。」
「ウス。」
樺地の奴は、コピーが得意技だからな。デッサンとかは得意そうだけど。でも、実際樺地
の絵って見たことないかもしれないな。
「樺地って、やっぱりこういうの得意なのか?」
「ウス。」
「描き終わったら見せてくれよ。」
「ウス。」
さてと、さっさと終わらせてゆっくりするか。・・・ん?何か他の奴らが騒がしいぞ。
「先生ー、さっきから誰かが眠ってるようないびきが聞こえるんですけど・・・」
「誰も寝てないんです。」
いびきだと?・・・ああ、確かに聞こえるな。誰も寝てないのにいびきが聞こえるとは、
七不思議っぽくて興味深い。あれ?でも、このいびきの感じは・・・・
ガタンっ
「どうした?樺地。」
「・・・・・・」
どうしたんだ?樺地の奴。向こうには誰もいないはず・・・じゃないのか。何であんな
ところで芥川さんが寝てるんだよ。
「あれって、三年生の・・・・」
「ああ、テニス部の芥川先輩だよな。何で美術室にいるんだ?」
「おい、芥川っ!起きろ!!」
大方前の時間が三年生の美術で、そのまま寝ちまって置いていかれちまったんだろうな。
先生が声をかけても起きる気配はなしか。
「自分が・・・三年生の教室に・・・・連れて行きます。」
「お前、美術の課題はどうするんだ?」
スッ・・・
ん?スケッチブック?なるほど、もう課題はとっくに終わってるってことか。まだ、ち
ょっとしか終わってないけど、俺もついてこうかな。その方が面白そうだし。
「先生、俺もついて行きます!」
「それじゃあ、樺地に日吉。芥川のことは頼んだぞ。届けたらすぐ戻ってくるんだぞ。」
「はい。」
「ウス。」
行くのはいいけど、芥川さんって三年何組だ?樺地は知ってるのか?
「おい、樺地。芥川さんが何組か分かってるのか?」
「ウス。」
ほぅ、知ってるってわけか。さすが、いつも芥川さんを探しに行って、連れて帰ってくる
だけあるぜ。
「ん・・うーん・・・・はれ?」
あっ、芥川さん起きた。今更起きるだなんて、全く・・・
「あー、樺地だぁ!あれ?でも、何で廊下??」
「起きたんですか、芥川さん。芥川さんが美術室で寝てるから、これから芥川さんの教室
に届けるところなんですよ。」
「そっか。んじゃ、おやすみー。」
「何でまた寝るんですか!?起きたんならいつまでも樺地の背中におぶわれてないで、自
分の足で歩いて下さいよ!!」
どうしてそこで寝るんだ!!ん、樺地の奴、人差し指を口に当てて・・・静かにしろって
ことか?そういや、今授業中だったんだっけ。芥川さんの行動が読めないから、ついつい
大声でつっこんじまったぜ。
「全く、芥川さんにも困ったもんだ。」
「日吉うるさーい。樺地は文句言わずに運んでくれるのにー。」
「樺地はいつもそんなに喋らないでしょう。樺地も少しは嫌がるとか注意するとか・・・」
ここでウスって言わないあたり、芥川さんに甘いんだよなあ。
「やっぱ、樺地やさC〜!!好き好きー!!」
そんな大きな声で何言ってるんだ。たぶん教室に丸聞こえだろ。
ガラっ・・・
「やっぱり、ジローだ。お前、またどこで寝てたんだよ?あー、お前らが連れてきてくれ
たのか、樺地、日吉。」
そうか、芥川さんは宍戸さんと同じクラスだったのか。
「ウス。」
「おー、宍戸。おはよー。」
「おはよーじゃねぇよ!!今は授業中!って、あれ?授業中なはずなのに、お前らどうし
て・・・?」
「俺達、美術の時間だったんですけど、美術室で芥川さんが寝てたんで、連れて来たんで
す。先生の許可ももらってるんで大丈夫です。」
「ウス。」
「なるほどな。連れてきてくれてサンキューな。ほら、ジロー!さっさと樺地から下りて、
自分の席つけよ!!」
「へーい。んじゃ、樺地運んできてくれてありがとー!!また、後でな!!」
「ウス。」
宍戸さんのクラスの人達みんな笑ってるし。先生もそれほど怒っていないとこを見ると、
いつものことなんだろうな。さてと、さっさと美術室帰って課題の続きしないとな。
「あと、30分か。まあ、何とか終わるだろ。」
あれ?樺地の奴、課題終わってるはずなのに、スケッチブックに何描いてるんだ?ちょっ
とのぞいて見てやれ。
「へぇ、やっぱ樺地上手いな。」
「っ!!」
慌てて隠して、別に隠すことないのにな。それにしても、芥川さんの寝顔とか、何だかん
だで樺地も芥川さんのこと慕ってんだな。
「あっ・・・えっと・・・」
「別にもう課題は終わってるんだから、好きなもの描いてても別にいいんじゃないのか?
芥川さん描いてるってことは、黙っといてやるからよ。」
「ウ、ウス・・・」
樺地が照れてるとか珍しい。何だか面白いものを見た気分だな。何かのネタになりそうだ
から覚えておこう。
やっと、昼休みか。今日は図書室に本を返しに行かなきゃなんだよな。面倒だけど、行っ
てくるか。
『わっ・・・!!』
痛ってぇ・・・全く誰だよ!教室の入口なんだから、ちゃんと注意して歩けよな!!
「大丈夫?二人とも。」
「ゴ、ゴメン、日吉!!荷物が多くて、ちゃんと前見てなくて。」
「鳳に、滝さん。」
二人ともすごい荷物だな。と、言っても本がほとんどか。
「はい、これ、日吉が落とした本。」
「ありがとうございます。二人ともそんなたくさんの本持ってどこ行くんですか?」
「図書室だよ。文化活動委員の仕事でね。」
「ああ、なるほど。」
そういえば、鳳も滝さんも文化活動委員会で同じ委員会だったな。一緒に行くってのは不
本意だが、別々に行く理由もないしな。
「俺もちょうど図書室に行くところだ。」
「そうなんだ。なら、これ運ぶの手伝ってよ。」
「断る。」
一緒に行くのは構わないが、手伝わされるのは勘弁だな。こっちだって何冊か本持ってる
んだし。
「ひどいなあ。」
「それは委員会の仕事なんだろ?俺は報道委員だから関係ない。」
「あはは、確かにね。それにしても、日吉、借りてる本が相変わらずだねー。」
「相変わらずってどういうことですか?」
「学園七不思議系とか怖い話ばっかり。」
「好きですからね。真夜中に読むと最高ですよ。」
昼間に読むのも悪くないが、夜中に読む方が雰囲気出ていいんだよな。鳳は苦手そうだけ
どな。
「鳳には真似出来ないだろう?」
「そ、そんなこと・・・・」
「あれ?でも、この前うちに泊まりに来たとき、そういう話見て相当怖がってたよね?」
「滝さんっ!!」
ほー、それは実に興味深い話だな。滝さんなら少しつっこんで尋ねたら、話してくれるか
も。
「へぇ、それは詳しく聞きたいですね。」
「ちょっ、日吉、何言ってっ・・・」
「そんなに聞きたい?」
「はい、是非。」
滝さんも悪いとこあるなあ。鳳嫌がってるのに聞かせてくれるって。
「この前ね、長太郎、俺の家に泊まりに来たんだ。その時、最近話題のホラー映画がテレ
ビでやっててさー。」
「ああ、先週の休み前の話ですね。それなら俺も見ました。」
「とりあえず見てみようってことになって一緒に見てたんだけど、大きな音とか怖いビジ
ュアルとかが出るたびに、長太郎キャーキャー叫んで、俺の腕にぎゅうってしがみついて
くるの。」
「あうぅ・・・」
「終わった後もすごいビクビクしててね、一緒にトイレ行って下さいとか一人で寝るのが
怖いとかすごい可愛いこと言ってくれちゃって、もうすっごい萌えた。」
すごいいい笑顔だな、滝さん。鳳は真っ赤になって泣きそうだっていうのに。
「だらしないなあ、鳳は。」
「だ、だって、怖いの苦手なんだから、仕方ないだろ!!」
「俺的には怖いの苦手で、大歓迎。」
「滝さんまで〜。」
というか、滝さんが話した話は、鳳が怖がりだっていう話というよりは単なるノロケだよ
なあ。鳳は気づいてないんだろうけど。
「てな話をしてる間に、図書室へ到着ー。」
「それじゃあ、俺は本の返却しに行くんで。面白い話聞かせてくれて、ありがとうござい
ました。」
「なっ・・・!!日吉っ!!」
「うん、じゃあね。」
俺には怒るけど、滝さんにはあんまり怒らないんだなあ鳳の奴。まあ、先輩だしな。とり
あえず、この本を返すか。
「今日も何か借りてくかな。」
怪談系はあっちの方だったな。ここの図書館は俺が好きな本もたくさんあっていいけど、
少し広すぎるのが難点だな。ん?この声は・・・
「滝さん、日吉にあんな話するなんてひどいですよー。」
「あはは、ゴメンゴメン。だって、あの時の長太郎本当可愛かったからさー。」
「だからって、日吉にする話じゃないですよ。」
「そんなに怒らないで。俺、長太郎のことすっごく好きだから、長太郎が俺の前では可愛
いってこと、つい話したくなっちゃうんだよね。」
そこで黙るのかよ、鳳。普通に絆されてるな。滝さんのあの鳳の扱い、まるで犬でも撫で
てるみたいだな。
「長太郎の泣いてる顔も恥ずかしがってる顔も俺は大好き。だから、ついつい意地悪した
くなっちゃったりもするんだよね。」
近い近い。顔が近すぎだろ。図書館で何やってるんだ、あの二人は。
ガタっ、バサバサ!!
動揺しまくりだな、鳳の奴。机の上にあった本落とすから、他の奴らが注目してるじゃね
ぇか。
「す、すいません!!滝さん!!」
「ううん、大丈夫。昼休みももうあんまりないし、さっさと委員会の仕事終わらせちゃお
うか。」
「はい。」
何事もなかったかのように・・・滝さんさすがだな。図書館であそこまで堂々とイチャイ
チャするのがすごいな。おっと、俺もさっさと借りる本探さないと、昼休みが終わっちま
う。
そういえば、今日の現代文の授業は自習だったな。教室にいて真面目に自習するのもあれ
だし、屋上に行って、今日借りた本でも読みに行くか。
「よし、誰もいないな。」
屋上も広いからな。どこで読むか・・・お、あそこなら、日の当たり方も絶妙だし、いい
感じだな。
「どっちのクラスも自習になるなんてラッキーだな♪」
「せやな。今の時期は先生達、出張とか多くて忙しいらしいで。」
あの声は・・・向日さんと忍足さんか?まあ、こっちの方へ来られなければ特に気にする
こともないか。
「屋上に来たはいいけど、何しようか?」
「昼寝でもするか?」
「ジローじゃねぇんだから。まあ、確かにいい天気だし、昼寝日和ではあるけどな。」
昼寝でもしてくれた方が静かで助かるんだけどな。でも、あの二人は単に寝るとかはない
んだろうな。
「まあ、とりあえずその辺に座っとくか。」
「せやな。」
特に何をするわけでもなくって感じか。あそこなら、ここは死角だから特に移動する必要
はないな。
「そういえばな、侑士。」
「何?」
「この前、姉貴が読んでた漫画がたまたまリビングにあったから、パラパラって読んでみ
たんだけどよ。」
「ああ。」
「少女漫画でな、主人公の相手の男が主人公がこんなふうにしてたんだけど・・・」
こんなふうにどんなふうにだ?ちょっと気になるな。ほぅ、なるほど。片手で頭を引き寄
せて、髪にキスか。少女漫画にはよくありそうな感じだな。
「っ!!」
「やっぱ、侑士もこうされるとドキドキしたりすんのか?」
「そ、そりゃいきなりされたら・・・・」
「聞くまでもなくドキドキしてるみたいだな。侑士、顔真っ赤だぜ?」
「う、うるさい!ふい打ちやったから、ちょっと動揺しただけや!!」
「ふーん、ならこうされたら?」
ドサっ
あの体格差で押し倒せるあたり、忍足さんが相当油断してるってことだな。てか、何を始
める気だ?いくら授業中で、人が来ないとは言えども、屋上でそれはどうかと思うが。
「ちょっ・・・岳人!!」
「別にそういうつもりはねーよ。まあ、これくらいはしてもいいかな?」
ちゅっ・・・
「なっ・・・あ・・・」
「おでこにキスしてやっただけなのに、そんなに真っ赤になって。侑士、可愛いー。」
普段そんなに表情を崩さない忍足さんが、あんなに赤くなったり、動揺したりしてる。向
日さんと二人きりだとああなのか?
「それはずるいやろ・・・この体勢でおでことか。」
「何だよ?おでこじゃ満足出来ないって?」
「別にそないなこと言ってないやろ!」
「照れんなって。お望み通りちゃーんと口にしてやるよ。」
「なっ・・・ちょ・・・岳人っ・・・!!」
向日さん、あー言っておきながら忍足さんの顔見てるだけだな。忍足さんは目を閉じてる
から分からないみたいだけど。
「あ・・れ・・・?」
うちゅ・・・
「っ!!??」
「あはは、侑士すっごい顔。そんな驚くことか?」
「お、驚くに決まってるやろ!!何で目開けた瞬間にすんねん!!」
「その方がドキドキするかなあと思って。」
「メッチャするわ!!もうありえへん・・・・」
忍足さん取り乱しまくりだな。冷静さ皆無だし。逆に向日さんはすごい楽しそうだし。こ
んな場面滅多に遭遇出来ないし、写真の一枚でも撮っておくか。これでも一応報道委員だ
からな。
パシャ、パシャ・・・・
うん、なかなかいい感じで撮れたぞ。これ女子とかに売ったら高く売れそうだな。まあ、
さすがにそんなことはしないけど。
「もうええやろ、岳人。これ以上ドキドキさせられたら死んでまう。」
「大袈裟だなあ、侑士は。でも、ドキドキしまくってるってのは本当みたいだな。」
「当たり前や。いきなり髪にキスしたり、押し倒したり、おでことか口にもキスしたり、
心臓が落ち着いてる暇、全くあらへんわ。」
「でもさー、侑士。」
「何や?」
「俺だって、さっきからドキドキしっぱなしなんだぜ?」
自分の胸に手を当てさせて、心臓の音を聞かせてそのセリフか。どんな少女漫画かラブロ
マンス映画の一場面だよ。さすがいつも忍足さんと一緒にいるだけあるな。
「・・・ホンマやな。」
「侑士がさっきから可愛い顔たくさん見せてくるからな。もうときめきまくりだぜ。」
「どんなやねん。」
「侑士だってドキドキしまくってんだから、おあいこだろ?」
「まあなぁ。」
「へへ、何かお互いに対してドキドキし合ってるって何かいいな♪」
「まあ、好き同士じゃないとありえへんからな。」
何かだんだん自習の時間に屋上でする話じゃなくなってるぞ。さすが忍足さんと向日さん
といったところか。聞いてるこっちが恥ずかしくなってくる。あんなの聞かされたら、全
然小説の内容頭に入ってこないよなー。まあ、写真も撮れたし、いい感じの暇つぶしにな
ったな。
今日もなかなかキツイ練習だったな。他の奴らはほとんど帰っちまったみたいだし、俺も
さっさと着替えて帰るか。
ガチャっ・・・
「あれ?跡部さん。今日も引き継ぎ資料の整理ですか?」
「まあな。今日の練習はもう終わりか?鳳や樺地はもう帰ったみたいだけどよ。」
「はい。片付けに少し時間がかかってしまって。」
「なるほどな。俺はまだ時間がかかりそうだから、戸締りは任せとけ。」
「分かりました。」
部長の引き継ぎってのも大変だな。戸締りは任せろってことは、別に俺が確認しなきゃい
けないことはないってことだな。
「おー、お疲れ日吉。」
「宍戸さん。お疲れ様です。」
特に練習した様子もないのに何で宍戸さんがいるんだ?鳳もいないし、部室で何やってる
んだろう?
「今日は何の用でいるんですか?」
「んー、ちょっと調べたいものがあって。ここのパソコン使い慣れてるしな。」
「そうですか。」
調べものねぇ。ん?調べものと言いつつ、パソコンの画面にはソリティアが開かれてるぞ。
暇つぶしにでも来てるのか?
「ゲームの攻略法でも調べてるんですか?」
「へっ!?あ、いや、これは・・・・」
「することがないなら、帰ったらいいじゃないですか。戸締りは跡部さんがするって言っ
てましたし。」
もしかすると、宍戸さんは跡部さんを待ってるのか?ああ、それならわざわざすることも
ないのに部室にいるのも納得がいく。
「もしかして・・・・」
「な、何だよ?」
「跡部さんと帰る約束してて、待ってるとかですか?」
「そ、そんなことねぇよ!!ど、どうして俺が跡部なんかを待たなきゃいけねぇんだよ!」
ここまで分かりやすいのもすごいな。いわゆるツンデレってやつか。
「なるほど。早く跡部さんの仕事終わるといいですね。」
「だから、違うって言ってんだろ!!」
「お前ら少しは静かに出来ねぇのか。全く。」
「跡部っ!!」
「跡部さん。」
少し騒ぎすぎたか。と言っても、大声出してたのは宍戸さんの方だけどな。
「宍戸がかなり待ってるみたいだったからよ、予定より早めに終わらせてやったぜ。」
「なっ・・・!!」
「すぐ片付けて出ますんで。お二人はこれから一緒に帰るんでしょう?」
「帰るというより、これから夕飯食べに行く約束しててな。」
「なるほど、放課後デートですか。」
「ち、違っ・・・」
「何、そんなに照れてやがる。別に否定するようなことじゃねぇだろ。」
「照れてなんかねぇ!!」
この二人のやりとりは相変わらずだな。よし、帰る用意はほとんど終わった。このまま帰
るか、それとももう少しこの二人の様子をうかがうか・・・・
「跡部さん達はまだ帰らないんですか?」
「いや、もう帰るぜ。だいぶ宍戸を待たせちまったみてぇだからな。」
「べ、別に待ってなんかねぇよ。ただ、跡部が夕飯奢ってくれるっつーから・・・」
あ、デレた。分かってるんだろうなあ、跡部さん。すごい顔が緩んでるし。これ以上邪魔
するのは悪いか。
「それじゃあ、お先に失礼します。」
「ああ。お疲れ。」
「お疲れ様です。」
とは、言ったもののやっぱ気になるよなあ。とりあえず外に出て、窓から様子を探ってみ
るか。
「遅ぇーよ、跡部。どんだけ待たせんだよ。」
「悪かったな。その代わりお前の好きなもの何でも奢ってやるから。」
「うーん、じゃあ、とりあえず・・・・」
「何だ?」
おっ、宍戸さんから何か行動起こしたぞ。跡部さんのネクタイを引っ張って・・・うーん、
これはちょっと意外だな。
「とりあえず、今はこれで我慢しといてやるよ。」
「ふっ、随分可愛いことしてくれるじゃねぇか。お前からキスしてくるなんて。」
「嫌なのかよ?」
「嫌なわけねぇだろ。何度でも大歓迎だぜ。」
「じゃあ、今度はお前からしろよ。」
「仕方ねぇなあ。」
宍戸さん、完全にデレモードだな。いくら二人きりだからって、イチャイチャしすぎだろ。
ここも一つ激写しとくか。・・・いや、たぶん跡部さんにはバレるだろうから、やめてお
こう。
「・・・・ふはぁ。」
「さてと、あんまりここでこういうことばっかしてると、もっと先へ進みたくなっちまう
からな。そろそろ帰るか。」
「お、おう・・・」
おっと、そろそろ部室から離れないとヤバイな。帰ったとみせかけて、のぞいてたなんて
ことバレたら大変だ。とりあえず、向こうの木の陰に隠れるか。
ガチャっ
「よし、戸締りはオッケーだな。」
「たぶん大丈夫だと思うぜ。」
「まあ、この部室はもともとセキュリティは高いからな。問題ねぇだろ。」
「それもそうだ。」
やっと出てきたみたいだな。二人が見えなくなったらちゃんと帰ろう。
「なあ、跡部。」
お、今度は何するんだ?宍戸さん。耳元で何か言ってるみたいだが、ここからじゃ聞こえ
ないな。
「ふっ、言ってくれるじゃねぇの。俺もお前のこと・・・・」
今度は跡部さんか。だいたい想像はつくけど、聞こえないの少し残念だな。宍戸さん、あ
んなに真っ赤になって、でも、随分と嬉しそうだな。
ブブブ・・・ブブブ・・・
こんなときに携帯が・・・メールか?誰からだ?
『のぞくなら、もっとバレないようにのぞけ。報道委員ならそれくらい出来て当然だろ?』
「跡部さんからだ。バレてたのか。」
さすが跡部さん。何でもお見通しってわけか。しょうがない、今日はこれくらいにして帰
るか。
今日は何だかいろんな組み合わせでイチャコラしてるところを見せられたな。スキャンダ
ルチックだが、あの程度はいつも通りと言えばいつも通りだからなあ。とりあえず、ネタ
の一つとしてストックしておくか。
END.