この想いを伝えたら、今までと同じようにはいかなくなるんだろうか・・・?
「義丸ー。」
「どうしたんだ?鬼蜘蛛丸。」
「仕事まだ終わらないのか?」
「あと、もうちょっとだけど・・・」
武器の手入れをしている義丸のもとへ一足早く仕事を終わらせた鬼蜘蛛丸がやってくる。
「お頭がこの仕事が終わったら、今日はもう終わりでいいって言ってた。」
「そっか。じゃあ、さっさと終わらせちまうか。」
「俺も手伝う。これが終わったら、一緒に魚釣りしに行こうぜ!」
無邪気な笑顔を浮かべながら、鬼蜘蛛丸はそんなことを言う。そんな鬼蜘蛛丸を見て、義
丸はほんの少し困惑の色が入った笑みを浮かべる。
(ああ、この感じはやっぱり・・・)
まだ幼さの残る鬼蜘蛛丸の笑顔を見て、義丸はドキドキと胸が高鳴るのを感じる。最近気
づいた鬼蜘蛛丸に対して感じる想い。それは、友達や幼馴染、仲間としての『好き』とは
違う『好き』の気持ちであった。
「この前、散歩してたらすごくよさげな場所を見つけたんだ。」
「へぇ、そうなのか?」
「地形的にも潮の流れ的にも魚が集まりやすい場所でさ、これは絶対ここで釣りしなきゃ
って感じなんだ。」
「鬼蜘蛛丸は、そういうのを覚えたり把握したりする能力がすごいよな。」
「えへへ、義丸にそう言われるとすごい嬉しい。」
照れたように笑いながら、鬼蜘蛛丸はそう口にする。そんな表情もたまらなく可愛いと、
義丸の胸は激しくときめいた。
「よし、終わり!!遊びに行こうぜ、義丸!!」
まだまだ遊びたい盛りの年頃であるため、仕事を終わらせると、鬼蜘蛛丸はすくっと立ち
上がって義丸の手をとる。
(あっ・・・)
今までは何にも感じなかったそんな何気ない行動にも、義丸はかなりドキドキしてしまう。
(こんなことでも、こんなにドキドキするんだもんなあ。今まではそんなことなかったの
に・・・)
鬼蜘蛛丸に対するこの想いをどう対処していいのか分からず、義丸は嬉しさと困惑の混じ
った感情を持て余す。それでも、鬼蜘蛛丸と一緒に遊んだり、どこかへ出かけたりするの
が嫌なわけではない。むしろ、今までよりも遥かに楽しく胸が躍る。それはまさに『恋』
と呼ぶにふさわしい感情にひどく近いものであった。
鬼蜘蛛丸が『好き』だということに気づいてから、義丸はひどく悩んでいた。もう少し幼
ければ、ただ一緒に居るだけでも楽しいということだけ済むのだが、十四という年齢にも
なればそうはいかない。鬼蜘蛛丸が他の仲間や兄貴分と楽しそうに話をしたり、じゃれあ
ったりしているのを見れば、イライラしもやもやした気持ちでいっぱいになる。逆に自分
に話しかけてくれたり、笑いかけてくれたりすれば、そんなもやもやなどあっという間に
吹き飛ぶほどに嬉しくなる。そして、どうしようもなく鬼蜘蛛丸に触れたくなる。義丸を
一番悩ませている気持ち、それはこの『触れたくなる』という気持ちであった。
「んー、今日も疲れたな。」
「そうだな。」
「あれ?義丸、ちょっと元気ない?」
「いや、そんなことはないさ。」
ここ最近ずっとそのことで悩んでいるため、義丸の表情はあまり明るいものではなかった。
そんな義丸を見て、鬼蜘蛛丸は心配した表情を見せる。
「調子悪いなら、ちゃんと言えよ?」
「・・・・大丈夫。うん、問題ない。」
鬼蜘蛛丸に答えるというよりは、自分に言い聞かせるように義丸はそう呟いた。
「疲れをとるには、風呂に入るのが一番だと思うぞ。これから一緒に入りに行こうぜ。」
「・・・・っ!!」
その言葉を聞いて、義丸はひどく困ったような顔を見せる。この状態で一緒にお風呂に入
るのはかなり危険だと、本来なら嬉しいはずのその誘いを断った。
「いや・・・ちょっと部屋で休んでから入るから、鬼蜘蛛丸は先に入ってくれ。」
「そっか。分かった。」
残念そうな顔をして、鬼蜘蛛丸は頷く。理由は分からないが、義丸が何か悩んでいるとい
うことはハッキリ分かった。今日は他の者が海に出ているため、義丸と二人きりだ。お風
呂から出たらその悩みを聞いてあげようと思いながら、鬼蜘蛛丸は一人お風呂場へと向か
った。
(こんなに悶々としてるのに、一緒に風呂はさすがにまずいよなあ。今鬼蜘蛛丸の裸なん
てみたら、色々我慢出来なくなりそうだし。)
所謂思春期と呼ばれる年頃はどうしてもそういうことに対しての関心や欲求が、嫌でも高
まってしまう。もちろん義丸も例外ではなかった。
(この気持ちが伝えられたら、どんなに楽だろう・・・)
この溢れんばかりの想いを鬼蜘蛛丸に伝えたいのは山々だが、想いを伝えて拒絶されるこ
とを考えると死ぬほど不安で、簡単に出来ることではなかった。限界まで高まりつつある
欲求不満を抱え、大きな溜め息をつきながら、義丸は部屋へ向かって歩き出した。
鬼蜘蛛丸が風呂から上がった後、義丸は一人で入りに行く。義丸が風呂に入っている間に
鬼蜘蛛丸は部屋に布団を敷き、寝巻きに着替え、寝る準備をしていた。
(義丸が帰ってきたら、悩みをちゃんと聞いてやらなきゃな。俺が力になれるかは分から
ないけど、話すだけでも楽になるってこともあるし。)
そんなことを考えながら、義丸が帰ってくるのを待つ。しばらくすると、髪を下ろし、寝
巻き姿の義丸が戻って来る。
「おかえり、義丸。」
「あ、ああ。」
しっかりと布団が敷かれ、寝る準備万端の鬼蜘蛛丸を見て、義丸は何となくムラっとして
しまう。我慢だ、我慢と自分に言い聞かせながら、鬼蜘蛛丸からは少し離れたところに義
丸は腰を下ろす。やはり様子のおかしい義丸を心配し、鬼蜘蛛丸は義丸のすぐ目の前に移
動する。
「義丸!」
「な、何だよ?」
「お前、何か悩みがあるだろ?一人で抱え込んでないで、俺に話してみろよ。」
真っ直ぐな瞳で鬼蜘蛛丸は義丸の顔をじっと見つめる。そんな目で見つめられたら、本当
に我慢出来なくなると、義丸は鬼蜘蛛丸から目を逸らした。
「べ、別に悩みなんか・・・」
「嘘だ!ここのとこずっと元気ないし、時々思いつめたような顔してるし、溜め息もたく
さんついてるじゃないか。」
(ああ、これ以上、何か言われたら・・・)
「俺が力になれるかは分からないけど、俺に出来ることなら何でもするから!!だから、
一人で悩んでないで、ちゃんと・・・」
何でもするという言葉に反応し、義丸は思わず鬼蜘蛛丸の顔を見てしまう。自分のことを
思って必死になっている鬼蜘蛛丸の純粋無垢なその顔を見て、義丸は今まで我慢してきた
ものが爆発してしまう。
ドサっ!!
「・・・・えっ?」
「ああ、こんなこと・・・ダメなのに・・・」
我慢の限界を越えた義丸の腕は、鬼蜘蛛丸の体を布団の上に押し倒していた。何が起こっ
たかまだ理解出来ていない鬼蜘蛛丸は義丸の下で目をパチクリさせている。
「よ、義丸・・・?」
「ゴメン、鬼蜘蛛丸。」
そう言うと、義丸は鬼蜘蛛丸の唇に、自分の唇を重ねる。それだけでは我慢出来ず、唇の
隙間から舌を差し込み、鬼蜘蛛丸の舌に自らの舌を絡める。
「んっ・・ぁ・・・んんっ・・・んっ・・・・!!」
(えっ、なっ・・・俺、何されて・・・・)
今までに味わったことのない感覚に、鬼蜘蛛丸の頭は混乱する。心臓が壊れそうなほど、
早いリズムで鼓動を打ち、全身が熱くなってくる。腕をしっかり押さえられたまま、長い
時間口の中を探られると、だんだんと変な気分になってきてしまい、ある部分がひどく疼
いてしまう。
(何か・・・何か・・・この感じはまずいかも・・・)
その感じを誤魔化そうと、鬼蜘蛛丸は足をもぞもぞと動かす。しかし、その行動がそこが
反応してしまっているということを義丸に伝えてしまった。
「ふはっ・・・ハァ・・・ハァ・・・義丸っ・・・・」
義丸が口を離すと、鬼蜘蛛丸は息を切らせ、真っ赤に染まった顔で義丸の名を呼ぶ。そん
な鬼蜘蛛丸に義丸はさらに興奮してしまう。もっといろいろしてやりたいという欲求に抗
えず、鬼蜘蛛丸の下肢に手を伸ばす。ドキドキしながら、そこに触れてみると、鬼蜘蛛丸
の下帯はひどくキツそうな状態に押し上げられていた。
(うわっ・・・接吻だけでこんなに・・・)
下帯の上からきゅっと触れてやると、鬼蜘蛛丸の体がビクンと跳ねる。
「あっ・・・やっ・・・・義丸っ・・・・」
「・・・・無理。」
そう呟き、義丸は鬼蜘蛛丸の褌を取り去ってしまい、すっかり硬くなっている鬼蜘蛛丸の
それに直接触れる。軽く握って、上下にその手を動かし始める。
「ひあっ・・・あっ・・・やぁ・・・ダメっ・・・ダメぇ・・・!!」
義丸の手を何とか止めようとするが、腕にも腰にも力が入らず、鬼蜘蛛丸の抵抗はあって
ないようなものであった。想像以上によい反応を見せる鬼蜘蛛丸に、義丸の手は止まらな
くなってしまう。
(ああ、可愛い・・・鬼蜘蛛丸のこんな声、聞いたことない。もっともっと聞きたい。)
大きな興奮から義丸の呼吸も早くなる。自分のをするように、鬼蜘蛛丸の熱を擦ってやる
と、鬼蜘蛛丸の声はより大きなものになる。
「ああぁっ・・・ヨシっ・・・やだぁ・・・止めてぇっ・・・・」
「そんな声聞かされたら、止められるわけないじゃん。」
「ひぅっ・・・もう・・・ダメっ・・・あっ・・・いやっ・・・ああぁぁ――っ!!」
初めて人から受ける直接的な刺激に、鬼蜘蛛丸はそれほど時間をかけずに達してしまう。
どうして義丸がこんなことをしてくるのか分からず、鬼蜘蛛丸はひどく戸惑う。そして、
義丸の手に自分のモノを放ってしまった羞恥心とどうしたらよいのか分からない混乱から
鬼蜘蛛丸は泣き出してしまった。
「ううっ・・・ひっく・・・ふぇ・・・・」
「っ!!」
ボロボロと涙を流す鬼蜘蛛丸を見て、義丸は胸がぎゅっと締めつけられるように痛くなる。
これはもう嫌われるかもしれないと思いつつ、体はさらに先へ進もうと動き出していた。
「ゴメン、ゴメンな・・・鬼蜘蛛丸。」
「・・・・・っ!」
義丸の手は止まっていないが、その表情はひどく辛そうで、まるで自分がそんな顔をさせ
ているかのように思え、鬼蜘蛛丸はそんな義丸から目が離せなくなる。
(何でそんな泣きそうな顔・・・)
泣きそうな顔であるのに、泣くような素振りなど一切見せない義丸を見て、鬼蜘蛛丸の目
からはより涙が溢れてくる。と、次の瞬間、思ってもみない場所に大きな衝撃が走る。
「ひあっ――っ!?」
「力・・・抜いてて?」
もうここまで来たら後戻りは出来ないと、義丸は鬼蜘蛛丸の後ろを慣らし始める。そんな
場所に触れられるなど、ましてや指を入れられるなど、鬼蜘蛛丸は思ってもみなかった。
「いっ・・・あっ・・・何でっ・・・そんなとこ・・・・」
「ココしかないから。」
「な、何が・・・?ひっ・・・やぁ・・・・」
「鬼蜘蛛丸と、繋がれるとこ。」
義丸がそう口にした瞬間、鬼蜘蛛丸の内側で義丸の指が一番敏感なところに当たる。
「ひっ・・・ぅ・・・!!」
ビクっと身を震わせる鬼蜘蛛丸に、義丸はその部分がいいのかと気づく。痛いよりは気持
ちいい方がマシだろうと、義丸はそこを重点的に解す。
「あっ・・・やあぁ・・・義丸っ・・・ダ、ダメぇ・・・・」
ふるふるとその身を震わせながら、鬼蜘蛛丸は義丸の寝巻きを掴む。泣きながらそんなこ
とをされ、義丸の我慢はもう限界を越えそうであった。
(もう我慢出来ないっ・・・早く鬼蜘蛛丸と・・・)
中に入れていた指を引き抜くと、義丸は鬼蜘蛛丸よりももっと高まっている熱をひくひく
と震えている入口へ押しつける。そして、ぐっと力を込め、その熱を鬼蜘蛛丸の中へ埋め
る。
「うあっ・・・いっ・・・・っ!!」
(思ったよりキツイ・・・けど、鬼蜘蛛丸と繋がって・・・)
もっと鬼蜘蛛丸と深く繋がりたいと、義丸はその身を進める。しかし、鬼蜘蛛丸からすれ
ば、通常の使い方とは全く違う形でそこを広げられているのだ。恐怖と痛みと違和感で、
鬼蜘蛛丸は悲鳴にも似た声を上げる。
「ああぁっ・・・い、痛っ・・・やだっ・・・ヨシっ・・・!!」
「悪い・・・けど、止められない。」
「ひああぁっ・・・あっ・・・んんっ・・・・!!」
あまりに鬼蜘蛛丸が辛そうな声を上げるので、義丸は鬼蜘蛛丸と繋がっている高揚感を感
じつつも大きな罪悪感を感じる。何とか鬼蜘蛛丸の痛みを和らげてやろうと、義丸はゆっ
くりと前を扱いてやり、優しくキスをしてやった。
「んっ・・・ふっ・・・ふぅ・・・っ・・・」
(何か痛いのと気持ちイイのがぐちゃぐちゃに混ざって・・・おかしくなりそ・・・)
前を弄られ、口づけをされると、義丸の大きな熱を受け入れているそこが、大きく収縮し、
ほんの少しだが痛みが和らぐように感じる。しばらくそのまま弄られていると、次第に痛
みや違和感は少なくなり、その代わりにぞくぞくとした何とも言えない感覚が、鬼蜘蛛丸
の身体を包む。
「ハァ・・・あっ・・・んっ・・・ハァ・・・・」
「鬼蜘蛛丸・・・」
「義・・・丸・・・・」
「いきなりこんなことして本当にゴメン・・・でも、こういうことしたのは、鬼蜘蛛丸が
嫌いだからじゃなくて・・・もう自分でも抑えられないくらいっ・・・」
鬼蜘蛛丸の熱い壁に締めつけられ、義丸のそれはもうすぐにでも達してしまいそうなくら
い高まっていた。激しく呼吸を乱しつつ、義丸は鬼蜘蛛丸に思いを告げる。
「鬼蜘蛛丸のことがっ・・・好きだから・・・・」
「ヨシ・・・」
そこまで告げると、義丸はもう限界だと、鬼蜘蛛丸の肩のあたりに顔を埋め、一際奥を穿
つ。鬼蜘蛛丸の中に熱い想いを全て放つと、鬼蜘蛛丸の耳元で呟くように囁いた。
「愛してる・・・鬼蜘蛛丸。」
義丸の言う好きの意味が単に好きということではないということを理解し、鬼蜘蛛丸の胸
はきゅーんとときめき、どうしようもなく嬉しくなる。その瞬間、内側を抉られる痛みは
一切なくなり、全てがとろけそうなほどの気持ちよさと絶頂感が鬼蜘蛛丸の身体を駆け抜
けた。
(ああ、そうか。俺も義丸が好きなんだ・・・)
とりあえず、その気持ちを伝えなければと、鬼蜘蛛丸は義丸の頭を掻き抱き、小さな声で
しかし、しっかりと義丸には聞こえるような声で呟く。
「俺も・・・義丸が好き・・・・」
「―――っ!!」
「んっ・・・あぁ・・・っ・・・」
義丸に自分の想いをしっかりと伝えると、鬼蜘蛛丸は小さく震え、義丸と同じく熱い蜜を
放ち、そのまま気を失ってしまう。鬼蜘蛛丸から自身を抜き、気を失った鬼蜘蛛丸の顔を
見て、義丸の目からはボロボロと涙が溢れ出た。
「うっ・・・ぅ・・・・」
その涙は、鬼蜘蛛丸に嫌われたという悲しみの涙ではなく、鬼蜘蛛丸も自分と同じような
想いを持っていてくれたという嬉しさと安堵の涙であった。鬼蜘蛛丸の言葉に義丸の胸は
いっぱいになり、しばらくその涙は止まることはなかった。
気持ちが落ち着き、涙も止まった後、義丸はしたことがバレない程度に片付けをすると、
鬼蜘蛛丸の横に寝転がる。もう少し鬼蜘蛛丸の寝顔を眺めていたいと思っていたが、義丸
自身もかなり疲れていたため、すぐに夢の中へ落ちて行った。
「はあ〜、とりあえず今日の見張りも異常なしで暇だったな。」
「いいことだろ。ん?こんな時間なのに、明かりがまだついてるぞ。」
次の見張り番と交代したばかりの蜉蝣と疾風が部屋に戻ろうとすると、一つ明かりのつい
ている部屋を見つける。片付けはしたものの、明かりを消すのを忘れて、義丸は寝入って
しまったのだ。
「若い奴らの部屋だな。今日は鬼蜘蛛丸と義丸しかいねぇはずだけど?」
「まだ、起きてるのか?あいつら。」
少し気になり、蜉蝣と疾風は二人のいる部屋の様子を見に行く。そっと障子を開けてみる
と、一つの布団で仲良く二人は眠っていた。
「何だ。寝ちまってるじゃねーか。」
「そうだな。ん?」
「どうした?蜉蝣。」
「見ろよ、疾風。こいつら、顔に涙の後があるぜ。」
「本当だな。珍しく泣くほど大喧嘩して、疲れてそのまま眠っちまったって感じか?」
「はは、そうかもな。だから、明かりはつけっぱなしになってるのか。けど、大喧嘩した
わりには、随分と仲良く寝てるな。」
「こいつらのことだし、すぐに仲直りしたんじゃねーの?こういうとこ見ると、まだまだ
ガキだなあって思うよな。」
本当のことを知らない蜉蝣と疾風は、義丸と鬼蜘蛛丸の寝姿に、好き勝手なことを言いな
がら笑う。自分達もさっさと部屋に戻って休もうと、つけっぱなしの明かりを消し、二人
は部屋を後にした。
夜が明ける少し前、鬼蜘蛛丸はふと目を覚ます。目の前には義丸が寝顔があり、昨晩の情
事を思い出し、カアァっと顔が赤く染まる。
(うわあ、何か恥ずかしい・・・)
「鬼蜘蛛丸。」
「よ、義丸っ!?」
パチっと目を開く義丸に、鬼蜘蛛丸は動揺したような声を上げる。次の瞬間、鬼蜘蛛丸の
体は義丸の腕に収まっていた。
「昨日は、本当悪かった。」
「えっ・・・何が?」
「何がって・・・覚えてないのか?」
「い、いや、覚えてるけどよ、別に謝られることじゃないだろ。」
「本当にそう思ってくれてるのか?」
「だ、だって、義丸はその・・・俺が嫌いだからあーいうことをしたわけじゃなくて、な
んていうか・・・・」
恥ずかしそうにもじもじしながらそんなことを言ってくる鬼蜘蛛丸に、義丸はひどくとき
めく。
「もちろん、好きだからだ。鬼蜘蛛丸が言ってくれたことも嘘ではないんだよな?」
「ま、まあな。ずっと気づかなかったけど、お前といるとすごく胸がドキドキして、何す
るにも楽しくて、もっとお前と一緒にいたいなあって思ってた。それって、お前のことが
好きだからだったんだなーって、昨日お前にあーいうこと言われて気がついた。」
「そしたら、俺達は両思いってことだな。」
「そうなるんだろうな。」
「よかった。俺が悩んでたのはそのことなんだ。鬼蜘蛛丸が好きで好きでたまらないけど、
それを伝えたら、今まで通りじゃいられなくなるんじゃないかって、不安で不安ですっご
く苦しかった。でも、それも今日で終わりだ。」
本当に嬉しそうな笑顔を浮かべ、義丸は鬼蜘蛛丸をぎゅうっと抱きしめる。何度も義丸に
好きと言われ、鬼蜘蛛丸の心臓はドキドキと高鳴っていた。
「これからもよろしくな、鬼蜘蛛丸。これからもずっと一緒にいて、もっともっと仲良く
なろうな。」
「お、おう。今度からは、そんなことで悩んでないで、もっと早く相談しろよな!いきな
りあーいうことされたらビックリするからよ・・・」
「了解。いっぱい泣かせちゃってゴメンな。」
「それはこっちのセリフだ。俺が寝た後、お前もすごい泣いたんだろ?」
「えっ、どうして・・・」
「そんなに目腫らしといて、分からないわけないだろ。」
「さすが、鬼蜘蛛丸。」
「当然だろ。俺だって、お前のこといっつも見てるんだからよ。」
何て可愛いことを言ってくれるんだと、義丸の胸はきゅんきゅんしまくりだ。これからは
余計な不安なんて抱えず、こんなにイイ気分でいられるのかと思うと、義丸はもう嬉しく
てたまらなかった。
想いを伝えても何も変わらなかった。いや、すごく変わったか。これからはもっといろん
な気持ちを伝えて、たくさんたくさん大事にしてやるからな。鬼蜘蛛丸。
END.