「あーあ。思った以上に時間かかっちまったな。宍戸も用があるとか言って先帰っちまう
し、早く帰んねぇと日が暮れちまうな。」
部活関連の書類の整理に時間がかかってしまった跡部は、部室に一人残り帰る用意をして
いる。戸締まりを確認し、部室を出ようとしたその時、鞄の中から携帯の呼び出し音が聞
こえた。
「誰だ?こんな時間に。この着メロっつーことは宍戸でないことは確かだな。」
携帯を出し、通話ボタンを押すと不機嫌声で電話に出る。
「誰だ?」
『あっ、跡部。俺だよ、俺。』
「俺って名前のヤツは知らねぇな。切るぞ。」
『だあーー!!切るな!!岳人だ。向日岳人!!』
「向日?お前が俺に何の用だよ?」
『ちょっと、お前に相談したいことがあってさ。お前、まだ学校なんだろ?帰りに駅前の
喫茶店に来てくれねぇか?』
「何でだよ?面倒くせぇ。それに忍足はどうした?一緒に帰ってただろうが。」
『侑士はもう帰ったよ。飲み物くらいなら奢るからさ。来てくれよ。』
「ったく。しょうがねぇな。少しだけだからな。」
『サンキュー。じゃあ、待ってるから。』
ピッ・・・
跡部は鞄に携帯電話をしまい、溜め息をついた。行くのは面倒くさいがいいと言ってしま
ったのだから、行かないわけにはいかない。部室の鍵をしめ、だるそうな足取りで駅の方
へと向かった。
カラン・・・カラン・・・
「あっ、跡部!!」
「来てやったぞ。で、何の用だ?早く終わらせろ。」
跡部的には早く帰りたくてしょうがない。明らかに嫌そうな顔をして岳人の前の席に座る。
「あのな・・・跡部・・・」
「何だよ?」
「えっと・・・その・・・」
「早く言わねぇと帰っちまうぞ。」
岳人がなかなか用件を言わないので、跡部は本気でイライラし始め、今にも立ち去ろうと
している。そんな跡部の様子を見て、岳人は慌てて用件を口走った。
「あ、あのな、最近侑士とやってんだけど、俺的に何かもっと侑士が気持ちよくなれると
思うんだよ。だから、どうすればいいか跡部に教えてもらおうと思って!!」
焦って言っているので、他の人は何を言っているのか聞き取れなかっただろう。だが、跡
部はしっかりと聞き取った。顔を真っ赤にし、必死になっている岳人を見て跡部はクスク
スと笑った。
「そういうことだったのか。まあ、確かにそういうのは俺様の得意分野だな。」
「だから・・・いろいろ教えてもらおうと思ってさ・・・。」
そういうネタならまかせろという感じで跡部は岳人の話に乗ってきた。岳人はほっと安心
して、落ち着いてイスに座りなおす。
「いろいろ教えろって言われてもなあ、お前らが普段どういうふうにやってるか俺知らね
ぇし。」
「えっ、どういうふうにって普通にだよ。」
「普通って言われても分かんねぇよ。まあ、お前のことだから結構性急に進めるタイプだ
ろ?」
「性急に進めるってどういうこと?」
「そんなに長い時間をかけないで、さっさと繋がろうとするって感じだよ。前戯が少ない
っつーのかな?お前、テニスとかでも速攻型だもんな。」
「うっ。」
跡部があまりにもあっていることを言うので、岳人は言葉を失った。何でここまで分かっ
てしまうのだろうと不思議に思いながら跡部の顔を見る。
「じゃ、じゃあ、そういう場合はどうすりゃいいんだ?」
「そうだな・・・やっぱ、時間をかけるってのが一番じゃねぇの?さっさと終わらせよう
とするんじゃなくて、ギリギリまでじらして、それから繋がるって方が忍足もお前も楽し
めると思うぜ。」
「そっか。そんなに早く進めちゃダメってことだな。」
「ああ。あと前戯って分かるか?それもいろいろやった方がいいな。」
「前戯って、挿れる前に体に触ったり、キスしたりすることだよな?」
「まあ、そんな感じだな。」
「いろいろって何すればいいんだよ?」
「とにかく弱いところ、感じるポイントを攻めまくれ。うまくいけば、それだけでイカせ
られるぜ。」
「マジで!?あー、じゃあ、次やる時試してみよう。」
喫茶店でこんな話をしていていいのだろうか?確かに今の時間帯ならそれほど他の客はい
ないが、普通は少しは憚るだろう。だが、そんなことはお構いなしに跡部と岳人の会話は
盛り上がってゆく。
「あと、やってるとき絶対ボロボロ泣いてるだろ。そういう時は涙を舐めて拭ってやんだ
よ。これは結構効果的だぜ。そのあとムチャクチャ素直に甘えてくんだよ。」
「へぇ。他には?」
「言葉で攻めるってのもポイントだな。意地悪なことを言った後、一気に優しい言葉をか
けてやったりな。このギャップが重要なんだぜ。」
「それは難しそう。俺に出来るかなあ。」
「出来んだろ。思ったことを素直に言葉にすればいいんだからよ。」
「分かった。頑張ってみるぜ。」
跡部の表情は実に楽しそうだ。岳人も跡部のアドバイスに感心するばかり。かなりムチャ
クチャなことばかり言っているが、岳人にとってはとても重要なことばかりなのだ。二人
が盛り上がりをみせているところに買い物を頼まれた宍戸がたまたま通りかかった。
「あれ?跡部と岳人だ。珍しいなあの二人が一緒にいるなんて。・・・・何かすげぇ楽し
そう。何話してるんだろう?」
気になりつつも早く帰らなければいけないので、宍戸はさっさとその場から立ち去った。
だが、あまりにも楽しそうに話をしていた跡部の顔が気にかかってしまい、後で電話をし
てみようと考える。
「やっぱ、気になるし、後で電話してみよう。」
友達とはいえ、跡部が他の人と仲良さげに話をしているのはやはり気に入らないらしい。
宍戸が見ていたことなど全く気がつかずに、跡部はさらに話を進める。
「それからよ、少しくらい痛くするのもいいんじゃねぇか。宍戸なんかはこれ、かなり効
くぜ。」
「でも、宍戸はマゾじゃん。だからじゃねぇの?」
「そこまで痛くしねぇよ。ほんのちょっと甘噛みしたりその程度。」
「ふーん。あんまり痛くするのは好きじゃないけど、それくらいなら試してみる価値ある
かもな。」
「まあ、だいたいそんなもんかな。少しは参考になっただろ?」
「おう!!すっげー参考になった。ありがとな、跡部。」
「どういたしまして。じゃあ、俺、もう帰るからな。」
「分かった。じゃあな。」
さすが跡部だよなあ。俺の知らないこといっぱい知ってる。よーし、さっそく次の休みに
試してみようっと。
浮かれ顔で岳人は跡部の分の飲み物の代金を払い、喫茶店を出た。跡部にこのことを相談
したのは正解だったようだ。
そして、次の休みの日の前日。岳人はこの前跡部から聞いたことを試すため、忍足を自分
の家に泊まらせた。
「侑士、今日もいっぱいしような。」
「えっ、今日もやるんか?」
「当たり前じゃん。今日の俺はいつもと違うぜ。」
自信満々に岳人は言う。だが、忍足からすれば今日の岳人がいつもとは違うとは到底思え
ない。
「別にいつもと変わらないやん。今日は親御さんいるんやろ?」
「いるけど大丈夫だよ。俺の部屋からじゃ、他の部屋には声聞こえないしね。」
「せやけど・・・恥ずかしい。」
「本当に大丈夫だからさ。ね、侑士。」
岳人はトサッと優しく忍足をベッドに押し倒した。恥ずかしいと言いながらも忍足は抵抗
するつもりは全くないらしい。落ちてくるキスも素直に受け入れ、舌を絡ませた。
「んぅ・・・ん・・・」
「侑士・・・」
「ん・・・ふ・・・ぁ・・・岳人・・・」
唇から繋がる糸が一気に二人を燃え上がらせる。岳人は忍足の眼鏡を外し、枕元へ置いた。
「今日は最高に気持ちよくさせてやるからな侑士。」
「わっ・・・岳人・・そんな急にっ・・・」
着ていたパジャマを一気に脱がされ、忍足は一瞬慌てる。次の瞬間、身体のあちこちにキ
スの雨が降りそそいだ。もう息つく暇もない。
「あっ・・・ん・・あぁ・・・」
「侑士ってさあ、確か腰が弱いんだったよね。」
「えっ・・・ひゃっ・・・うあ・・・ああっ・・・」
軽く横向きにさせ、岳人は忍足の腰に唇をつける。ただそれだけのことにも関わらず、忍
足からすればまるで電気を流されたような痺れがその部分から走った。
「やだぁ・・・岳人・・・腰はダメや・・・・」
「ホントに腰弱いんだね。下も脱がしちゃおうかなあ。どうなってるか見たいし。」
「い・・嫌や!!あっ・・・岳人・・・ダメやって・・・」
嫌がる忍足のズボンに手をかけ、下着ごと下ろしてしまう。あからさまな反応を見せてい
るそれが恥ずかしくて忍足は両手で顔を隠した。そんな反応が可愛いと岳人はクスッと笑
って、再び忍足の弱い場所を攻め立てる。
「はぁんっ・・・やっ・・・あ・・・んぅ・・・・」
「顔隠さないでよ。イイ顔してるんだからさ。」
「じゃあ・・・もう・・・そこやるの・・・やめて・・・」
「分かった。次はどこがいい?あっ、イイ感じにここ立ってきてるじゃん。」
「そん・・なっ・・・あぁ・・・」
もう一度仰向けに寝かせ、今度は胸についた小さな実を口の中で転がし始める。それと同
時に濡れ始めた茎に手を添え、少しずつ擦っていく。
「あっ・・・ああ・・・あぁん・・・」
「すごい、すごい。いっぱい溢れてきてる。侑士、気持ちイイの?」
「岳・・・人っ・・・そないにしたら・・・」
「出ちゃうって?大丈夫そう簡単にはイカせないから。」
満面の笑顔で岳人は言う。それを聞いて忍足は目を見開いた。いつもの岳人ならこんなこ
とは言わない。初めは冗談だと思った。だが、それは本気なようで、添えられた手に力が
こもっているのを感じる。
「痛っ・・・手・・緩め・・・これじゃ・・イケな・・い・・・」
「だって、わざとそうしてんだもん。たまにはこういうのもいいんじゃない?」
「嫌や・・・岳人・・・手・・離してぇ・・・」
「だーめ。嫌とか言いながら侑士相当感じてるでしょ。ココ、すごくドクンドクンいって
るよ。」
イキたいのにイケなくて、忍足はシーツを掴み、そのつらさから逃れようと首を振る。岳
人は赤く充血していく胸の飾りを軽く甘噛みしたり吸ったりを繰り返す。痛いのか気持ち
いいのか分からなくて、忍足は泣きながら途切れ途切れに喘ぎ声を漏らした。
「あっ・・・う・・・はぁ・・・くぅん・・・」
「侑士、イキたい?」
「イキ・・・たい・・・・イカせてぇ・・・」
これ以上ないくらい甘い声でねだられ、岳人は体がぞくっとするのを感じる。この後、忍
足がどんな表情でイクのかを見たいと言われるまま手を離し、顔を隠されないようとフリ
ーになった手で腕を固定して、視線を忍足の顔へと移した。熱を止めるものがなくなると
忍足は白濁の液体をいつも以上の快感とともに放つ。
「あっ・・・ああ――っ!!」
「最高だぜ。侑士。すっげぇ可愛い。」
跡部に言われた通り、潤んだ瞳からとめどなく流れる涙を岳人は舌ですくいとり、キレイ
に拭う。普段はされないようなことをされ、忍足はドキドキと高鳴る鼓動を抑えられない
でいた。
「岳人・・・何か今日・・・いつもと違う・・・」
「だからする前に言ったじゃん。今日の俺はいつもと違うぜって。」
「どうしよ・・・心臓のドキドキ・・・全然止まらへん・・・」
「いつもよりイイだろ?ほら、後ろ慣らすからもっと足開いて。」
「うん・・・」
恥ずかしいと思いつつも忍足は岳人の言いなりになってしまう。ペロッと自分の指を濡ら
し岳人は蕾をほぐそうとそこへ手を持ってゆく。
「はっ・・・あぁ・・・んっ・・・」
「柔らかーい。俺、ここに入れるんだよな。すげぇ楽しみ♪」
「やっ・・・ん・・・恥ずかし・・・」
「何でぇ?俺と繋がるのは気持ちイイことだろ?恥ずかしがることないじゃん。」
「だってぇ・・・ん・・はぁ・・・」
「挿れる前にまずは指で気持ちよくさせてやるからな。確かこの辺だよな?」
「ひっ・・ああっ!!ソコ・・・だめっ・・・ああっ・・・!!」
前立腺を刺激され、忍足は高い声をあげて背中を仰け反らせる。そこばかりを刺激され、
自然と蜜が溢れていく。みるみるうちに忍足のそこは濡れていった。岳人が指を抜くとも
っと確かな刺激が欲しいと忍足は無意識に腰を揺らした。
「侑士、ココに俺の欲しい?」
「欲・・しい・・・岳人・・・早くきて・・・・」
「じゃあ、俺のしてよ。そうしたら挿れてあげる。」
岳人に言われ忍足は力の入らない体を無理やり起き上がらせ、それなりに大きくなり始め
ているそれを口に含んだ。早く挿れて欲しいと懸命に濡らしていく。
「んん・・・んぅ・・・ん・・・」
「気持ちイイぜ。侑士。」
「んんっ・・・はぁ・・・んぅ・・・」
「上手だね。もう少ししたらちゃんと挿れてあげるからね。」
「ん・・ぁ・・・ハァ・・・岳人・・・も・・ええやろ・・・?」
「そうだな。どうしたの侑士?そんなに早く挿れて欲しいの?」
意地悪く笑って岳人は尋ねる。
「もう・・・我慢できへん・・・お願いや・・・岳人・・・」
ハァ、ハァと息を乱し、涙目で忍足は岳人にすがった。さっきのように仰向けに倒すと岳
人はしっかりと足を抱えて、ゆっくりと身を進めていく。
「はぁっ・・・あぁんっ!!」
「侑士・・・」
「ああっ・・・岳人ぉ・・んっ・・ああ・・・」
「何か今日すごくいい。」
「俺も・・・イイっ・・・はぁん・・・あぁ・・・」
岳人にしがみつき、忍足は高く甘い声を上げ続ける。あの低いトーンからは想像しえない
程その声は濡れていた。何度も突き上げながら、岳人は優しい口づけを忍足に施す。下か
らの激しい刺激とお互いに与え合う柔らかい口づけの感触に忍足はをもう意識を奪われか
けている。もうこのまま体が一つになってしまうのではないかという錯覚にもとらわれる
程の快感が二人を襲った。
「岳人っ・・・んっ・・・はぁっ・・・」
「どうしよう・・・こんなにイイのってありえない。」
「あぁん・・・岳人ぉ・・・もう・・ダメや・・・」
「ハァ・・・うん。俺ももうダメ・・・。」
「ハァ・・あっ・・・・ああ・・・あっ・・・」
「侑士・・・好きだぜ。」
息を乱しながら、岳人は忍足の耳元で囁く。息のかかる感覚と頭の中を溶かしてしまいそ
うな程甘く低い声が耳を刺激して、その心地よさが全身に行き渡った。もう忍足の脳は岳
人を感じる以外何も出来なかった。
「ああ―――っ!!岳人っ・・・」
「うあっ・・・侑士っ・・・」
体だけでなく声も気持ちも重なり、二人は同時に達した。忍足のあまりの気持ちよさに意
識を失い、岳人も思わず瞳を閉じてその余韻に浸る。跡部のアドバイスはおおいに役に立
ったようだ。
「ん・・・」
「あっ、侑士。目覚めた?」
しばらくして、忍足は目を覚ます。まだ、頭がぼーっとして思考回路が働いていないらし
い。今の状況を把握するのに大分長い時間を要した。
「あれ、俺何してたんやっけ?」
「ああ、後始末は俺がちゃんとしといたから大丈夫だぜ。」
ニコッと笑って岳人は答える。しっかりとパジャマも着せられていて、普通にベッドで寝
ているという状態だったので、そう言われてもすぐには理解出来なかった。だが、記憶的
には今さっきのこと。思い出せないはずがない。忍足の顔はみるみる赤く染まっていく。
「あっ・・・」
「侑士、顔真っ赤だ。さっきの思い出しちゃった?」
「うわ、もう恥ずかしいー。岳人と目合わせられへん。」
「何でだよぉ。ほら、ちゃんと俺の方見て。」
「うっ・・・」
初めは目を泳がせていた忍足だが、岳人が無邪気な声でそういうことを言ってくるので、
チラッとだけ岳人の方を見た。目が合った瞬間、ふわっと唇を奪われる。
「!!」
「あはは、侑士の反応おもしろーい。なぁ、なぁ、今日のいつもよりよかっただろ?」
「何で、そんなこと聞いてくるん?ただでさえ恥ずかしいのに・・・」
「なぁ、どうだった?侑士。」
「・・・・そりゃ、よかったで。気ぃ失うくらいやからな。」
「ホントか!?うれしいぜ!」
素直に喜ぶ岳人に忍足は何を言っていいのか分からなかった。だが、いつもよりよかった
のは確かだったので、忍足としてはどうして岳人が急にこんなにうまくなったかを知りた
かった。
「何で今日はこんなにいつもと違うんや?」
「跡部にいろいろ教えてもらったんだ。」
「えっ!?まさか、実践で!?」
「んなわけないだろー。口頭でだよ。俺には侑士がいるし、跡部には宍戸がいるんだから
さ、するわけないじゃん。第一、俺、跡部にやられるなんて絶対ヤダもんね。」
「そ、そっか・・・。」
実践で教えてもらっていないということにほっとしながらも、口頭で教えられてここまで
出来てしまう岳人に驚きを隠せない。忍足はボスッとベッドに倒れて、ドキドキを抑えよ
うと努めた。
「俺、何か疲れてしもうた。もう寝るな。」
「うん。今日は楽しかったな。」
「せやな。おやすみ。」
「おやすみ。侑士。」
おやすみと言い、目をつぶるが全くもって眠れない。しばらくすると、隣からスース―と
寝息が聞こえてくる。岳人はすっかり夢の中のようだ。
岳人のヤツ、ホンマにこないなことの才能あるんやないか?口頭で教えられてあそこまで
出来るなんてありえへん。でも、正直本当よかったんだよなあ。あー、ヤバイくらい心臓
ドキドキしてるわ。今日は眠れんかもしれへんなあ・・・。
気持ちよさそうに眠る岳人の髪に触れながら、忍足ははぁと溜め息をつく。それは、これ
以上自分を夢中にさせてどうするつもりだという気持ちと、今日は本当によかったなあと
いう満足感の両方が合わさったものだった。しばらくして、忍足も眠りに落ちる。やはり
体は疲れていたのだ。忍足は無意識に岳人の手を握っていた。岳人もその手を握り返し、
うれしそうに笑う。眠りの中でも二人はラブラブなのである。
END.
〜オマケ〜
「跡部ー、この前岳人と喫茶店で何話してたんだよ?」
「何でお前それ知ってんの?」
「そん時買い物頼まれてて、たまたま見ちゃったんだ。で、何話してたんだ?」
跡部と岳人があのことについて話していた日、帰ってからまたもや手伝いを頼まれた宍戸
は跡部に電話することが出来なかった。なので、今、それを問いただそうとしている。
「別に大したことじゃねーよ。」
「何でだよ?教えろー!!」
「お前、岳人に相当妬いてるな。そんなに気になるのか?」
ニヤニヤ笑いながら跡部は宍戸尋ねた。かなり図星なので、宍戸は赤くなる。
「ウルセーな。そうだよ!!だから、教えろ!!」
「岳人がな、忍足とやってて何か物足りないからいろいろ教えろって言ってきたんだよ。
そのこと話してただけだぜ。こうやるといいとか、宍戸はこういうことすると悦ぶぜとか。」
「なあっ!?」
話の内容を聞き、宍戸は再び真っ赤になった。自分についてのそういう話を他の人にされ
て恥ずかしくないわけがない。枕で跡部を思いっきり叩き、怒鳴りつけた。
「跡部のアホ!!何でそういう話すんだよ!!俺、岳人に合わせる顔ねぇじゃねーか!!」
「痛ってぇな。お前が聞きたいって言ったんだろ?」
「ウルセー!!跡部のバカ!!最悪っ!!もう知らねぇ!!」
本気で宍戸は怒っているらしい。涙目でそっぽを向いてしまった。自分から聞きたいと言
っておいて、聞いたら聞いたで突然怒り出す。ホントに自分勝手なヤツだなあと思いなが
らも、跡部はそんな宍戸も可愛くて仕方なかった。
「宍戸。」
「跡部なんか嫌いだ!!話しかけんな!!」
ふぅっと溜め息をついて跡部は無理やり宍戸を自分の方に向かせ、キスをする。初めは思
いっきり抵抗していた宍戸だったが、跡部のキスのテクにはかなわない。すぐに大人しく
なり自ら背中に腕を回してしまった。
「・・・・ハァ。」
「どうだ?機嫌直ったか?」
「前言撤回。やっぱ、俺、お前のこと好き。」
「そうこなくちゃな。俺もだ。」
宍戸はすっかり跡部に飼いならされている。くやしいと思いながらもやっぱり跡部とキス
するのは気持ちいい。こっちはこっちでいつものようにラブラブなようだ。
END.