夏休みも中盤に差しかかった頃、氷帝テニス部レギュラーメンバー陣は少し遠出をして、
ただいま海水浴に来ている。全員水着姿になり、今まさに海へ入ろうとしていた。
「うっわーい、海だーー!!」
「早く入ろうぜ!!」
まず初めに波い向かって走っていったのは、ジローと岳人。ろくに準備運動もせずに海の
中へと飛び込んだ。
「うっひゃあ、冷たくて気持ちE〜!!」
「おーい、侑士ー。早く来いよー。」
「そんなに慌てんでもええやん。それにちゃんと準備運動せなアカンで。」
「大丈夫だよ。ほら、早く。」
岳人に急かされ、忍足も海に入っていく。それに続いて滝や鳳、樺地や日吉も三人を追い
かけるようにして海に入っていった。
「長太郎、俺達も早く行こう。」
「はい。」
「たまには、こういうところで泳ぐのも悪くない。」
「ウス。」
この四人は初めの二人に比べたら少しは落ち着いているが、心の内ではかなりはしゃいで
いる。それとは対照的に跡部だけはどこか嫌そうな顔をしていた。
「跡部、俺達も行こうぜ。」
「俺はいい。お前だけ行って来いよ。」
「何でだよ?せっかく海に来たんだから泳ごうぜ。」
「こんな日差しの中で泳いだら俺様の綺麗な肌が焼けちまう。」
跡部のこの言葉を聞いて、宍戸は呆れた。確かに跡部ならこういうことは普通に言うのだ
が、実際言われてみるとかなりうざい。というか、宍戸からすればせっかくみんなで遊び
に来たのだから、全員で一緒に泳ぎたいのだ。
「そんなに焼けるのが嫌なら日焼け止めクリームでも塗ればいいだろ!?」
「お前が塗ってくれるなら、考えてもやらないぜ。」
跡部は笑いながらそう言った。すると宍戸は鞄の中から日焼け止めクリームを出し、自分
の手にある程度の量を出す。
「それくらいしてやるよ。だからさー、一緒に泳ごうぜ跡部。」
あまりにも宍戸が必死になって誘ってくるので、跡部は楽しそうに笑い頷いた。さっきま
での不機嫌顔はどこかへいってしまったようだ。
「しょうがねぇな。言っておくが俺様は水泳も得意だぜ。」
「俺だってそれなりに泳げるぜ。」
「宍戸、お前にも日焼け止め塗ってやるよ。貸せ。」
跡部は手を宍戸の前に出したが、宍戸はそれを渡さなかった。
「ヤダ。」
「何でだよ?せっかく俺様が塗ってやるって言ってやってるのに。」
「そんなこと言って、どうせ変なことするんだろ?跡部、エロいじゃん。」
「こんなところでするかよ。ほら、貸せ!!」
「あっ。」
結局、日焼け止めクリームを取られてしまい、宍戸は跡部に塗られることになってしまっ
た。逃げようとしたが、しっかり腕をつかまれてしまい出来なかった。
「何、そんな嫌がってんだよ?」
「べ、別に嫌がってなんかねーよ!!」
「じゃあ、何でそんなに体に力入れてんだ?そんなに硬直しなくても何もしねぇって。」
「分かってるけどさ・・・」
跡部にとっては普通に塗っているだけなのだが、宍戸にとってはどうもそういうことが思
い出されてしょうがない。なので、体が勝手に緊張してしまうのだ。
別にそういうことしてるわけじゃないけど、何かドキドキしちゃうんだよなー。はあ〜、
俺も相当キてるなあ。
そんな二人をもう既に海に入ってる組は眺める。ただ、日焼け止めクリームを普通に塗り
あっているだけなのに何故だか変な雰囲気に見えてしまうのはあの二人だからであろう。
「何かはなっからラブラブモード全開って感じだよねー。」
「本当、本当。超バカップルしてるよあの二人。」
「二人とも入らないんですかね?」
「入るっしょ。何だったら呼んであげてもいいんじゃない?」
滝の言葉で、鳳は大きく手を振って跡部と宍戸を自分達のところへ招いた。それを見て、
二人は立ち上がる。
「宍戸さーん、跡部さーん、こっちに来て一緒にボールで遊びましょうよー。」
「あー、今行くー!跡部、行こうぜ。」
「そうだな。」
宍戸の誘いに今度は素直に応じた。日差しが強いのが少しばかり気になるが、宍戸が手を
引いてくるので水着一枚という格好で青空の下に出る。本当は上から何か羽織っていたい
のだが、一気に海の中まで連れていかれ、それは出来なかった。
「ビーチボール持ってきたんで、これでボール投げしましょう。」
「あんまり本気で投げんじゃねーぞ長太郎。」
「確かに。長太郎のボールってどの球技でも相当速いもんねー。」
鳳とのダブルスを経験している滝と宍戸は鳳の球の速さを嫌というほど把握している。本
気で投げられたりしたら、おそらく普通に取ることはビーチボールとはいえ不可能だろう。
そんなことに注意しながら、鳳、滝、宍戸、跡部の四人でボール投げを始めた。他のメン
バーもそれぞれ好きなことをして遊んでいる。
「行きますよ。それっ。」
「いっ!!長太郎〜、もうちょっと手加減しろよ。いくぜ、滝。」
「宍戸、どこ投げてんだよ。俺のほうに来てないぜ。」
「あれ?おっかしいなあ。」
宍戸の投げたボールは滝のところではなく跡部の方へと飛んでいった。滝にいくはずのボ
ールがいかなかったので、跡部は滝に向かってボールを投げる。
バスンっ
「うわっ!!跡部、何でそうとりにくい球投げんだよー。」
「あー、思わずくせで手首に当てようとしちまった。」
「ボール投げで破滅への輪舞曲はねぇだろ。」
宍戸も鳳も跡部の言葉を聞いて笑う。こんな感じでしばらくボール投げをしていたが、次
第に白熱してきてしまう。みんな簡単にはとれそうもないボールを投げ、それをとろうと
必死だった。そうこうしているうちに、ボールは鳳の手に渡る。
「一球入魂っ!!」
「って、ちょっと待て長太郎!!」
白熱してきたということで、鳳は思わず本気でボールを投げてしまった。勢いよく飛んで
きたボールを宍戸は思わずよけてしまう。
『あっ・・・。』
宍戸がよけたため、ビーチボールは沖の方へ向かって飛んでいった。重さが軽いというこ
ともあり、そこまで沖へは行っていないがとりにいくのはかなり大変だ。
「あーあ。宍戸がよけたからいけないんだぞ。」
「うっ。だって、あんなボールとれねーよ。」
「すいません、宍戸さん。」
「どうすんだよ?あれ。とりに行くのか?」
「俺がとりに行ってくんよ。あれくらいなら余裕だ。」
そう言って宍戸はボールをとりに少し沖の方へ泳いでいく。確かに波は穏やかで、それほ
ど深くなっているような感じはしなかったので、誰もが何の問題もないと思っていた。だ
が、宍戸がボールに到着したあたりで異変が起こる。
「うわっ!!」
一瞬、宍戸の体が沈んだ。それを見ていた三人は初めは単に高い波を受けただけだと思っ
た。だが、どこか様子がおかしい。
「な、なあ、跡部。宍戸、もしかして溺れてない?」
不安そうな表情を浮かべ滝は跡部に尋ねる。跡部も同感だった。ただ波を受けただけなら、
波が引いたあとすぐに戻ってくることが出来るはずだ。だが、今の宍戸はどうみてもそう
いうふうには見えない。むしろ、もがいているようにも見える。
「何やってんだ、あのバカ!!」
慌てて跡部は宍戸のところへ向かった。顔を上げたままクロールをし、かなりのハイスピ
ードで波を掻き分け宍戸のもとへ泳いでいく。その異変に岳人や忍足も気づき、滝や鳳に
何があったのかを尋ねる。
「滝、何かあったの?」
「宍戸が溺れてる。」
「はあ!?それメチャクチャ大変やん。人呼ばんと!!」
「今、跡部さんが助けに行ってます。」
不安げに見つめる四人の視線の先では、跡部がもう宍戸のもとへ到着していた。
「宍戸!!」
「あ・・・跡部っ・・・」
何があったのかは分からないが、宍戸は明らかにもがき溺れている。波が来るたびに海中
へ沈み、波が引くとまた海面に顔出す。
「何やってんだ!!お前、泳げるんじゃなかったのか!?」
「違っ・・・足・・・」
水に沈んだり出たりしているので、宍戸の言葉は相当途切れ途切れになっている。足でも
つったのかと思い跡部は宍戸の体を支え、岸の方まで連れて行こうとしたがそれが出来な
い。
「はっ・・・海藻が・・・足に・・・」
苦しそうに宍戸は跡部に今の状況を伝える。跡部はすぐに状況を把握した。いったん海中
に潜り、その様子を確認する。すると宍戸の足にかなりの長さがある大きな海藻が複雑に
絡まっていた。
「まずはこれを外さなきゃいけねーな。」
少し長い時間を要すると予想されるので、跡部は海面に上がり、出来る限り大きく息を吸
ってから、もう一度海中に戻った。そして、その海藻に手をかけ出来る限り力を込めて引
きちぎっていく。思ったよりその海藻の強度は弱く簡単に取り外すことが出来た。と次の
瞬間大きな波が宍戸を襲う。海中に潜っている跡部にもその衝撃はかなり感じられた。さ
っきのことで体力をかなり失い、まともに呼吸が出来なくなっていた宍戸は水に沈んだ瞬
間全ての空気を吐いてしまう。その様子が跡部にははっきり見えた。慌てて宍戸を海面に
出し、呼吸をさせようとする。
「・・・はあ、おい、宍戸!!」
「・・・・・。」
名前を呼ぶが返事がない。今の衝撃で気を失ってしまったようだ。おそらく水を飲み、呼
吸はまともに出来ていない。跡部は高い波が来ないことを確認すると、何の躊躇いもなし
に宍戸の口に自分の口をつけ、空気を肺に直接送り込んだ。
「・・・っ、ゲホ・・ゲホ・・・」
宍戸は水を吐き、大きく息を吸った。その様子を見て跡部は一安心。何とか最悪の事態は
避けられたようだ。
「宍戸、大丈夫か?」
「・・・ハァ・・・あと・・べ・・・」
呼吸をし、意識は取り戻すものの宍戸の目はまだ光を取り戻していない。跡部は宍戸の体
をしっかり抱くと、そのまま岸へと戻っていった。その間に宍戸はまた意識を失ってしま
う。だが、今度はちゃんと呼吸をしているのでそう問題ではないだろう。宍戸を抱えてこ
ちらへと戻ってくる跡部を見て、岸の方にいた滝や鳳、岳人や忍足も安心する。
「何とか助かったみたいだね。」
「よかったです。」
「でも、宍戸の奴何で溺れたりしたんだろうな?アイツ、水泳は得意なはずだぜ。」
「さあ。後で跡部に聞いてみたらええんやない?」
跡部は浜辺まで戻ってくると、宍戸をしっかりと抱き上げ、パラソルのあるところまで運
ぶ。宍戸はまだぐったりとしているが、顔色は悪くない。自分も休もうとレジャーシート
の敷かれたパラソルの下に跡部は座り、宍戸を寝かせた。
初めは宍戸を心配し、集まっていたメンバーもしばらくするとまた海に戻りおのおの遊び
出す。跡部に任せておけばいいやという気持ちがそうさせているのだ。
「ん・・・んん・・・」
気を失っていた宍戸が目を覚ました。目を開けてぼうっとした意識の中で一番初めに目に
入ったのは跡部の顔だ。
「目、覚めたか?」
「跡部・・・?」
跡部に助けてもらったということは覚えている。だが、その後の記憶が全くと言っていい
ほどない。それに今見えている跡部の顔の位置がどうもおかしい。普段はこんな角度から
は見ない。何故だろうと考えていると跡部がその答えを口走った。
「起きたんならもうそろそろどいてくれねぇか?さすがに足が痺れてきた。」
「へ?」
そう宍戸は跡部に膝枕をしてもらっているという状態で今まで眠っていたのだ。そのこと
に気づき、宍戸は真っ赤になりながら、がばっと起き上がる。
「うっ。」
さっきまであんな状態だったので、いきなりそんな動きをしたら体に響くだろう。宍戸は
目眩を感じてまた跡部の膝へと逆戻りだ。
「何やってんだよ?」
「うー、起き上がれねぇ。跡部、俺どうしたんだっけ?」
「あー、足に海藻が絡まって溺れてたな。俺様が助けてやらなかったらお前たぶん死んで
たぜ。」
「うわっ、俺、激ダサ!!」
「それより宍戸。その前に言うことがあるだろう。」
「は?」
何も分かっていない宍戸を半強制的に起き上がらせ、跡部はじっと宍戸の顔を見る。しば
らく考えて、宍戸はあっというような顔をして跡部に向かって頭を下げた。
「助けてくれてありがとうございました。」
「気持ちがこもってねぇ。」
「何だよ、ちゃんと礼言ったじゃねーか!!」
「もっとちゃんと感謝の気持ちを表せ。」
そう言われて宍戸はむぅっとふくれたが、助けてもらったのは事実なので嫌だなあと思い
ながらも目をつぶり、軽くキスをして赤くなりながら跡部の顔を見ながら言った。
「・・・・サンキュー、跡部。」
「よし、それくらいしてもらわねぇと感謝の気持ちは伝わらねぇよな。」
周りから見たらすごい光景なのだろうが、跡部は全く気にしてはいない。むしろ、見せつ
けていることで逆にうれしそうな顔をしている。と、海の方から何人かの叫び声が聞こえ
た。
「ぎゃあー、やめろ岳人!!」
「こっちに持ってこないでください〜!!」
「滝も鳳もこんなのダメなの?何にもしないぜ。」
「そうだよ。ほら、なあ忍足。」
「ジロー、そんなもん触るな!!」
岳人とジローが何かを持って、他の三人にちょっかいを出しているらしい。何事かと思い
そちらの方に視線を向けていると、岳人が気づいたらしくこっちに向かってその持ってい
るものを投げてきた。
「あー、宍戸起きたんだ。宍戸ー、跡部ー、プレゼント。」
投げたものはしっかりと二人のところまで届いた。初めは何か分からなかったがよくよく
見てそれが何かを確認する。
「うわああっ!!」
叫び声を上げたのは、跡部の方だった。その様子を見て、岳人とジローは爆笑している。
「し、宍戸!!その気持ち悪いものを何とかしろ!!」
「気持ち悪いものって、ただのナマコじゃねぇか。岳人ー、俺達こんなのいらないから返
すなー。」
宍戸は全然平気なようで、普通に投げ返した。さっきのボールと同じく投げた人のところ
にはいかず、別の人のところに向かって飛んでいく。投げたナマコは鳳に直撃した。
「うっわああっ、滝さん!!」
「って、長太郎!!ちょっ・・・」
バシャンッ
ナマコが当たってパニクった鳳は思わず滝に抱きついた。だが、自分よりかなり大きな鳳
を滝が支えられるはずがなく海の中へと倒れる。それを見て笑う岳人やジローだったが、
二人が倒れた衝撃で飛び散った海水が目や口にもろに入ってしまった。その痛さから目を
つぶり、思わずあたりを動き回ってしまう。
「痛ーい!!」
「うわっ、岳人!!危なっ・・・」
バシャンッ
岳人と忍足も滝や鳳と同じく水の中へ倒れた。ジローも目の痛みから何も見えていないに
も関わらず動いてしまう。すると、普通に泳いでいた日吉にぶつかり二人そろって海中へ
沈んだ。それをとっさに樺地が持ち上げる。
「芥川先輩!!いきなり何するんですか!?」
「ゴメン日吉〜。あう〜、でも目が痛くて開けられないよー。」
涙目になりながらジローは日吉に謝る。自分が投げ返したナマコが原因でこんなことにな
るとは思っていなかったので、宍戸はちょっとだけ罪悪感を感じながらも大爆笑している。
「あははは、何かすげぇことになってる。跡部、ここにいると俺達も巻き込まれちゃいそ
うだから逃げちまおうぜ。」
「ったく。何やってんだよ。でも、まあおもしろいからいいか。」
笑いながら跡部と宍戸はパラソルから出て、走ってその場から逃げてしまった。少し岩場
がある方に行き、日陰の部分に腰をかける。海の中メンバーは大パニック状態なので、二
人がいなくなってしまったことなど全くもって気がつくことはなかった。
「ハァ・・・ここまで来れば大丈夫だろ。」
「お前、さっきまであんな状態だったのによく平気だな。」
「もうすっかりよくなったぜ。これも跡部のおかげだ。」
「当然だろ?で、こんなとこまで来てどうすんだよ?」
「うーん、どうすっかねー?日光浴とか?」
「日焼け止め塗ったのにそれじゃあ意味ねぇだろ。」
「あっ、そうだよな。うーん、じゃあ、ホント何しよう。」
特に何も考えずにここまで来てしまった二人はすることが見つからず、しばらく頭を悩ま
せる。
「キスでもしとくか?」
「何でそうなんだよ!?・・・でも、ま、少しだけなら。」
というわけで、軽くキスなどをし始めてみたり。人工呼吸もどきと、さっきの宍戸からの
ものとを合わせ、本日三回目。先ほどのよりかは少々深いもので、どちらもかなりしてい
て楽しそうだ。
「何かしょっぱいな。」
「しょうがねぇだろ。さっき少し海水飲んじゃったし。」
「でも、やっぱお前の味。美味いぜ。」
「跡部・・・・」
何度か交わしているうちに夢中になってきてしまう。人気のないところなので特に問題は
ないのだが、これだけ時間が経ってしまうとさすがに他のメンバーもいないことに気づく。
そのため、いつ見つかってしまってもおかしくない状態なのだ。
「そこのバカップル二人!!」
ギクッ
「こんなとこにいたんですか。探しましたよ。」
「滝に・・・長太郎。」
「ちっ。」
やはり見つかってしまった。二人はいったん離れて滝と鳳を見る。宍戸は見られてしまっ
たことに少し赤くなり、跡部は不満そうに舌打ちをした。
「みんなで海の家行かないかってことになってるけど跡部達どうするんだよ?」
「みんな向こうで待ってますよ。」
「まあ、別にラブシーン続けててもいいけどさ。」
冗談っぽく滝が言うと、宍戸は立ち上がった。
「行く。跡部、戻ろうぜ。」
「しょうがねぇな。行ってやるか。」
「じゃあ、俺達先に戻ってるから。」
「早く来てくださいね。」
一足早く滝と鳳は他のメンバーのところへと戻る。跡部と宍戸もそのあとを追うようにし
て歩き始めた。まだ跡部は不満顔だが、宍戸がこっそりと耳元で囁くのを聞いてふと笑顔
になる。
「今度は二人で来ような。」
そう言う宍戸の顔は子供っぽく、実に楽しそうだった。跡部は頷いて頭をくしゃっと撫で
る。
「もっと豪華なビーチに連れってやるよ。楽しみにしてな。」
「やりぃ!!」
さらに笑顔になる宍戸を見て、跡部もうれしくなる。すると、向こうの方から手招きをし
急かす声が聞こえる。
「跡部ー、宍戸ー、早くしないと先行っちゃうぞー!!」
「あー、ちょっと待てよー!!今行くからー。早く行こうぜ跡部。」
「そうだな。じゃ、走るか。」
二人は他のメンバーが待つところまで走り出した。とある夏の日。楽しそうな何人もの笑
い声が真っ青な青空の下に響くのであった。
END.