I feel warm in your arms.

リクエスト内容『跡宍の喧嘩ネタで、喧嘩の後は甘くてラブラブ
(出来れば裏設定あり)』

今日でこの前やったテストが全部返された。よりにもよって最後に返されたのは俺の苦手
な数学。もちろん点数は見れたもんじゃねぇ。
解答用紙を手にして、宍戸は固まっていた。相当今回の数学の点数が悪かったらしい。は
あ〜と大きな溜め息をつき、自分の席に戻る。その様子を見て、跡部はからかいにきたの
か、宍戸の席にやってくる。
「随分と悪かったみてぇだな。宍戸。」
「ウ、ウルセーな!!テメーには関係ねぇだろ。」
「見せてみろよ。分かんないトコ俺様が教えてやるぜ。」
「別にそんなことしなくていい!!」
「見せろよ。」
「嫌だ!!」
こんなに悪い点数は見せられないと、宍戸は答案用紙を跡部に取られまいと必死で抵抗し
た。だが、跡部にとっては宍戸の動きなど目をつぶっていても読める。隙を見て宍戸の手
から解答用紙をさっと取り上げてしまった。
「あっ!!」
「ホント、どうしょうもなく悪ぃな。どうしたらこんな点数が取れるんだよ?」
馬鹿にしたような笑みを浮かべ、跡部は宍戸を見る。くやしさから宍戸はキツイ目つきで
跡部を睨み、早く返せと手を伸ばした。だが、そう簡単に跡部が返すはずがない。
「返せよ!!」
「返して欲しいなら取ってみろよ。」
「返せってば!!」
跡部の手から解答用紙を取ろうと頑張る宍戸だが、やはり跡部にはかなわない。宍戸が必
死になればなるほど跡部はおもしろがって、より返そうとはしなくなる。当然のことなが
ら宍戸のイライラは募るばかりだ。その光景をクラスメートはいつものことだと特に何も
思わず眺めていた。しかし、宍戸のイライラは思っていた以上に積もっていたようだ。次
の瞬間、鈍い音が教室内に響いた。
「あっ・・・・。」
宍戸はしまったというような表情をし、跡部はうつむき加減で左頬を押さえている。そう
イライラのあまり宍戸は跡部の頬をグーで殴ってしまったのだ。頬を押さえたままの状態
で跡部は宍戸を睨みつける。その視線のあまりの鋭さに宍戸は固まってしまう。
「お、お前が悪いんだからな・・・。」
宍戸がボソっとそう呟くと、跡部は解答用紙を宍戸に突き返し、自分の席へと戻ってゆく。
しばらく教室内がシーンと静まりかえった。
跡部が悪いんだ。俺が悪いんじゃねぇ。跡部があんなことするから・・・・。
宍戸は言い訳のように心の中でそう繰り返して、自分の席に座る。その後の授業は何とも
気まずい雰囲気でいつも通りに行われた。

その日の部活を二人は休んだ。そして、バラバラに家へと帰る。普通に部活に出ていた他
のメンバーは今いない二人のことについて好き勝手に話していた。
「今日は跡部も宍戸もサボリか。」
「珍しいよねー、跡部も休むなんて。」
「俺、クラスの奴に聞いたんだけどさ、あの二人また喧嘩したらしいよ。」
「またかいな。ホンマあの二人はよく喧嘩するよなあ。」
半ば呆れつつ、体を温めるため軽くランニングをする。最近はだいぶ気温が下がり、準備
運動をせずに部活を行うのは少々危険なのだ。
「まあ、明日からは休みだし、休みがあけたら喧嘩したことなんて忘れていつも通りに戻
ってんじゃねぇの?」
「せやな。さてと、だいぶ体も温まったし軽く打ち合いでもするか?」
「そうだね。」
二人がいなくても部活には何の支障も出ないらしい。岳人と忍足はコートに入り、練習を
始めた。ジローや滝もランニングをし終えると、ラケットを持ちコートに入って行った。

跡部と宍戸が喧嘩をした次の日からはちょうど三連休になっていた。いつもなら休みはだ
いたい二人で過ごすのだが、今日はそうはいかない。休みになってしまっては直接会うこ
とが出来ないので、微妙な気分のまま一日目の休日を過ごすことになってしまった。
「あーあ、何やってんだろ俺。」
宍戸は自分の部屋のベッドに寝転がり、枕を抱えて呟いた。いくらイライラしたからと言
って殴るのはさすがにダメだろうと今更ながら後悔しているのだ。
「電話して、謝ろうかな・・・。」
そう考えるもののこの状態だと電話にすら出てくれない確率の方が高い。いったんは手に
した携帯電話も机の上に置く。跡部と過ごさないとなると何をしていいのか分からなくな
ってしまう。そこまで跡部にハマってしまっているのかと苦笑しながらも、やはり寂しい。
宍戸は今日一日をどうやって過ごしたらいいのかが分からず、大きな溜め息をつき、何と
なく目を閉じた。そのまま宍戸は眠ってしまう。軽い睡眠にも関わらず、その眠りの中で
宍戸は鮮明な夢を見た。
ここどこだろ?知らねぇ場所だな。あっ、跡部だ!!跡部なら何か知ってるかも。
『跡部!!』
『・・・・・。』
何だよ跡部の奴。シカトかよ。
『なあ、跡部、跡部ってば!!』
『・・・・・。』
うっ、何でそんな目で俺のこと見んだ。俺、何か悪いことしたか?そんなキツイ目で睨む
ことねぇじゃねーか。
『跡部、何怒ってるんだよ。』
『ウゼェ。お前の顔なんてみたくねぇよ。さっさと俺の前から消えろ。』
『じょ、冗談だろ?跡部。なあ、ここどこだよ?教えてくれよ跡部。』
『ウルセーな。さっさと俺の前から消えろって言ってんのが分かんねぇのか?お前なんて
嫌いだ。これ以上俺に近づくんじゃねぇよ。』
な、何言ってんだよ・・・跡部の奴。俺、何か嫌われるようなことしたか?あっ・・・。
『俺が・・・お前殴ったから、怒ってるんだよな?ゴメン、そのことは謝る!!』
『そんなことはどうでもいい。とにかく俺の視界から消えろ。テメーが消えないなら俺が
消えてやる。』
『なっ!?何言ってんだよ!!そんなの嫌だ!!』
『・・・・・。』
や、嫌だ!!跡部、行かないでくれよ!!あっ、体が動かねぇ・・・っ!!嫌だっ、跡部
行くな!!跡部、跡部っ!!
「跡部っ!!」
多量の汗をかき、宍戸はガバっと横たえていた体を起こした。さっきの夢が鮮明に頭をよ
ぎる。ハァ、ハァと呼吸を乱し、思わず顔を覆った。心臓の鼓動が速くなっているのが嫌
という程分かる。
「跡部・・・・」
不安に押しつぶされそうな感覚に宍戸はひどい息苦しさを感じた。このままではいけない。
夢の通りになってたまるかと宍戸は頭の中でとある決心をする。
「明日、跡部に直接謝りに行こう。」
もし夢と同じになってしまったらという不安も感じるが、それ以上に跡部とこのままの状
態でいる方が嫌だとそう決めた。宍戸はベッドを下り、渇いた喉を潤そうとキッチンへと
向かった。

さらに次の日、休みの日にも関わらず宍戸はいつもより早く起きた。テレビを見ながら、
朝食をとっているとちょうど天気予報が流れていた。
「今日はこの冬一番の冷え込みとなるでしょう。最高気温8℃、最低気温4℃・・・」
今日は随分と寒みぃんだな。でも、跡部んちに行かないと俺の気が済まねぇ。さてと、も
う少ししたら準備して行くか。
朝食を食べ終えると宍戸はすぐに自分の部屋に戻り、跡部の家へと行く用意をする。特に
持っていくものなどはないが大きな覚悟は必要だった。
あれは俺がいけないんだもんな。俺が謝らなきゃ何にも解決しねぇ。
そう心の中で呟き、宍戸は気合いを入れるべく少し伸びた髪の毛を結び、自分の部屋を後
にした。
そのころ、跡部もどこかへ出かける用意をしていた。宍戸がいないとどうもイラついてし
まう。そんな気持ちを何かで紛らわそうと今日は午前中から街へと出かけることにしたの
だ。
あー、やっぱ一人で過ごすってのはつまんねぇな。買い物でもすりゃあ、少しは気が紛れ
るだろ。それにしても、この前は少しやり過ぎちまったな。まさか殴られるとは思わなか
ったぜ。
テキパキと出かける準備をすると、跡部はすぐに家を出る。宍戸のことが少し気にはなる
がまだ少し殴られたところが痛むこともあり、すぐに宍戸に会う気にはなれなかったのだ。
「買い物に行ってくる。夕方あたりには帰って来るからな。」
『いってらっしゃいませ。』
何人かの執事とメイドに見送られ、跡部は玄関を後にした。外に出ると冷たい風が跡部の
体を包む。
「今日は一段と冷えるな。でも、ま、買い物だったらほとんど室内だし特に問題はねぇな。」
少し早足で、跡部は街へと歩き出した。

跡部が買い物へ出かけてからしばらくして、宍戸は跡部の家に到着する。大きな門の横に
つけられたインターホンを押すと、執事らしき人が応対した。
『はい、跡部ですが。』
「景吾君の友達の宍戸ですけど、景吾君いますか?」
『ただいま出かけております。伝言があれば伝えておきますが。』
「いえ、いいです。それじゃあ、失礼します。」
失礼しますとは言ったものの宍戸は全く帰る気ゼロ。今日、絶対跡部に謝らなくてはいけ
ないという強い思いから門の前で跡部が帰ってくるのを待っていることを決めた。
ちょっと寒みぃけど、跡部に会いたいしな。少しくらい我慢するか。
跡部を待つことを決心した宍戸だが、待てども待てども跡部はなかなか帰って来ない。冬
は日が短いのでもうすっかり空は夕焼け色に染まっていた。それでも、宍戸はひどい寒さ
の中真っ白な息を吐きながら跡部を待ち続けた。
「寒みぃ・・・跡部、まだ帰って来ないのかな・・・。」
寒さの所為で宍戸の手は氷のように冷たくなり、顔は真っ赤になっていた。朝、天気予報
を見て今日の気温が相当低いと知っていたにも関わらず、宍戸はマフラーも手袋もしてき
ていなかった。
だいぶ、いろんなもんが買えた。少しは気分転換になったな。あれ?うちの前に誰かいる
みてぇだな。誰だ?
跡部は大きめの紙袋を手に下げ、ゆっくりと家路を辿っていた。家が見えると門の前に人
影があるのに気がつく。誰がいるのだろうと思い、跡部は歩く速さを少し速めた。
「宍戸っ!?」
「あっ、跡部・・・。」
やっと帰ってきてくれたと宍戸は安堵の表情で跡部を見るが、跡部は驚きを隠せない。顔
の赤さやほのかに紫色になっている唇を見て、相当長い時間この寒い外で待っていたこと
が見てとれた。
「お前、こんなところで何やってんだ?」
「・・・・この前のこと、謝ろうと思って跡部んち来たんだけど・・・出かけてるってい
うからお前が帰ってくるの待ってた。」
「バカヤロウ・・・。こんなになるまで待ってんじゃねぇよ。」
跡部は宍戸の手を取った。その冷たさはまるで氷で跡部の胸はひどく痛んだ。その手を引
き、跡部は自分の家へと入っていく。
「ホントにテメーはバカだな。ほら、うちに入れ。温めてやる。」
「おう・・・。」
小さなぬくもりを握られた手の平から感じ、宍戸は引っ張られるまま跡部について行った。

家の中に入ると跡部は迷わず自分の部屋へと連れて行った。そして、執事に体の温まるよ
うなハーブティーを持ってこさせ、宍戸に飲ませる。
「全く、何やってんだよ。」
「だって・・・この前のことどうしても跡部に謝りたくて・・・・。」
「そりゃ分かった。だからって、何でわざわざあんな寒みぃ中、俺を待っている必要があ
るんだ?」
「分かんねぇ。ただ、待ってなくちゃいけないような気がして・・・」
「ったく、しょうがねぇ奴だな。」
冷え切った体を跡部はそっと抱き締める。手や指だけでなく宍戸の体はどこもかしこも冷
え切っていた。
「あったけぇ・・・。」
「こんなに冷たくなってこれじゃあまるで死体だぜ?」
「そんなこと言ったって、跡部がなかなか帰って来ないのがいけねぇんだろ。」
「それは悪かった。それから、この前のことも謝らなきゃいけねぇのは俺の方だ。」
「別にいいよ謝らなくても。その方がお前らしいじゃん。」
クスっと笑いながら宍戸は言う。跡部も笑って宍戸を自分のベッドに乗せた。宍戸は何で
ベッドと疑問をもった顔で布団の上に座る。もちろん跡部の意図はアレしかない。
「宍戸、その冷え切った体、俺様が温めてやる。」
「あ、温めてやるってまさか・・・・」
「まあ、お前の考えてる通りだな。いいだろ?」
「・・・・確かにまだ寒いからな。ちゃんと体の芯まで温めろよ。」
「当然だろ?」
腕を伸ばして宍戸は跡部に抱きつくような体勢をとる。一気に距離が縮まった宍戸に跡部
は熱を与えるための接吻を施した。

「んん・・・やだっ・・・跡部っ・・・あっつい・・・」
「さっきまで、あんなに冷たかったのにえらい変わりようだな。」
どちらも邪魔な服は脱ぎ捨ててしまい、跡部は直接触れ合う肌から宍戸の体に熱を移した。
触れ合っている部分からのぬくもりはもちろん温かいのだが、それ以上に繋がっている部
分が熱くてたまらない。
「あっ・・・ん・・あぁ・・・跡・・部っ・・・」
「お前のここ、すげぇ熱いな。さっきまであんな寒い中に何時間も立っていたなんて思え
ねぇ。」
「んぅっ・・・お前のだって・・・かなり熱ぃよ・・・」
さっきまでの寒さなど微塵も感じられないと宍戸は熱に浮かされ、腰を揺らす。それに合
わせ跡部も動く。その度に内側を掻き回されるような感覚が宍戸を襲い、頭をぼーっとさ
せ、それと同時に強い快感が体中を駆けめぐった。
「あっ・・・あん・・・やぁ・・・あっ・・・!」
「余裕・・・ねぇみてぇだな。そんなにイイのか?」
「う・・ん・・・・すげ・・・イイ・・・」
「やらしい奴だな。でも、お前と繋がってん時は俺も最高に気持ちイイぜ。」
「じゃ・・・お前も・・・変わんねぇじゃんか・・・・はっ・・・」
「いいじゃねぇか。・・・・ほら、こっちもこんなに溢れてきてるぜ。」
「やぁ・・・ああっ・・・んなとこ・・・触るなぁ・・・」
跡部が特に熱を持ち熱くなっているところに触れてくるので、宍戸は首を仰け反らして喘
ぐ。そんな反応を跡部は実に楽しそうな笑みを浮かべて眺めた。
「くっ・・・ぅ・・・跡・・部・・・・もう・・・」
「まだ、早ぇーだろ。もう少し我慢しろよ。」
「やっ・・・無理・・・あっ・・・あぁっ・・・」
「しょうがねぇな。じゃあ、イってもいいぜ。」
もう限界だと訴える宍戸に跡部は許しを出すが、宍戸はすぐには達しないでギリギリまで
耐える。そして、息を乱したまま途切れ途切れに跡部に向かって言葉を放った。
「跡・・部・・・・一緒にイこ・・・」
必死で笑おうと努めている宍戸に跡部はドキっとさせられる。その所為でさっきまであっ
たはずの余裕全くなくなってしまった。
「お前・・・それは反則だぞ。そんな顔されて、んなこと言われたら余裕なくなっちまう
じゃねぇか・・・。」
「へへ・・・ちょっとうれしー・・・」
「ふん。そんな顔してられるのは今だけだぜ。すぐに崩してやるよ。」
そう言うと跡部は一際大きく腰を打ちつけ、宍戸の奥の方を突いた。その瞬間、跡部の言
葉通り、宍戸は顔を歪めあっという間に果てる。だが、それとほぼ同時に跡部も自分自
身を宍戸の中に放った。
「あっ・・・ああ――っ!!跡部っ!!」
「・・・・はっ・・宍戸っ!」
二人はぐったりと濡れた体を重ね合わせ、呼吸が整うのを待つ。その間にも、お互いのぬ
くもりが触れ合う肌から感じられ、ただ心地よさだけが全身を覆っていた。

「温まったか?宍戸。」
「そりゃな。あんなことすりゃあ、芯まで温まるわ。」
「そうか。そりゃよかった。」
満足そうに跡部が言うので、宍戸は何だか恥ずかしくなってしまう。かけられた布団で顔
を隠そうかとも思ったが、目の前にある跡部の顔を見ないのは勿体ないような気がして、
それはやめた。
「そういえば跡部。この前、俺が殴っちゃったとこ大丈夫か?」
「まだちょっと痛むけど、まあ平気だろ。」
「ホントゴメンな。殴るつもりはなかったんだけどよ・・・。」
「もう気にすんな。俺も悪かったんだし。」
今日の朝までは少し気にしてた跡部だったが、宍戸があんなにも寒い中一人で自分を待っ
ていてくれたことがあまりにも嬉しくて、そんな気持ちはどこかに消えてしまった。
「でも・・・よかった。」
「何が?」
「えっ、何でもねぇ!!」
夢のようにならなくてよかったと宍戸は心からホッとした。それが思わず口に出てしまい、
それを跡部につっこまれて宍戸は少し戸惑う。不思議そうな顔をしている跡部を見て、な
んとなく嬉しくなり、宍戸はそっと跡部の頬にキスをした。
「どうしたんだよ?なんのサービスだ?」
「別に。ただしたかったからしただけ。」
「何だよそれ?じゃあ、俺も・・・」
「ん・・・」
跡部がするキスはもちろん口へのキス。だが、宍戸はそれが嬉しくてたまらなかった。唇
が離れると素直に笑顔を見せる。
「あー、でも跡部と仲直り出来てよかった。」
「そうだな。」
「なあ、明日どっか一緒に行こうぜ。昨日はお前がいなくて激つまんなかった。」
「いいぜ。俺も同じだ。どこ行きたい?」
「そうだなあ・・・・」
布団に包まりながら、二人は明日の予定について楽しそうに話し合う。明日は明日でまた
楽しい一日になるのだろう。そして、その次の日学校に行けば、間違いなく岳人や忍足達
はやっぱりなというような表情を見せ、仲直りした二人をからかうのであろう。

                                END.

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