Snowy Park

リクエスト内容『雪の積もった日、あたり一面銀世界の中の話で
ALLキャラだけど跡宍よりな話。』

昨晩はこの地域には珍しく大量の雪が降った。粉雪が一晩中かなりの量が降っていたとい
うことで、今日は一面銀世界だ。そして今日の天気は快晴。そんなこんなで、ただいま氷
帝テニス部レギュラーメンバーは近くの公園に集まっていた。
「おー、すっげー!!どこもかしこも真っ白だ。」
真っ赤な手袋をした岳人が公園を見回しながら嬉しそうな声を上げる。
「ホンマにえらいたくさん積もったなぁ。」
「珍しいよね、こんなにたくさん積もるのって。」
「マジマジすっげー!!これなら何でも出来るじゃん!!」
忍足や滝、ジローも一面雪景色の公園を見て嬉しそうだ。跡部や宍戸、鳳や樺地、日吉も
これから何をして遊ぼうかとそれぞれ考えている。
「樺地、それ貸してくれねぇ?」
「ウス。」
宍戸は何かもうすることが決まっているようで、いろいろな道具を持たされている樺地か
ら一つの道具を借りた。樺地も何かを作るのかてくてくと雪が木の下に歩いて行く。
「樺地何するのー?」
「・・・・。」
「よっしゃ、俺はでっかい雪だるまを作るぞー!!」
ジローは樺地について行きながら雪だるまを作るぞー!!とはりきっている。
「侑士、俺達は何しようか?」
「せやなあ・・・・だっ!!な、何や!?」
何をしようか考えていると忍足の顔に雪玉が当たる。何事かと思い顔についた雪を落とし
て自分の前方を見てみると少し離れたところで、滝を鳳が爆笑している。どうやら犯人は
この二人のようだ。
「あはは、メチャクチャクリーンヒット!!」
「すごいです、滝さん!!」
「何すんねん自分ら!!」
「よし!!俺も加勢するぜ侑士!!」
岳人は仕返しだと言わんばかりに雪玉を連続してぽんぽん投げる。だが、どれ一つとして
滝と鳳には当たらない。
「へたくそ岳人ー。ほら、当ててみそ。」
「くっそー、滝むかつく〜。侑士、行くぞ!!」
「おう。絶対当てたる!!」
滝、鳳、岳人、忍足の四人は雪合戦を始めた。雪がかなり積もっているにも関わらず四人
はパタパタと走り、次々に玉を作り投げてゆく。
「あいつらガキなことしてんな。で、お前は何をしようとしてるんだ宍戸?」
「えっ!?べ、別に何でもいいじゃねぇか。」
宍戸はスコップを使って、雪をかき集めている。跡部はこんな雪ではおもしろいことは出
来ないとただ他のメンバーを見ているだけだ。だが、宍戸が何をしようとしているのかは
気になる。
「別に教えてくれたっていいじゃねぇか。ものによっては手伝ってやらないこともないぜ。」
「だって、言ってもお前どうせ馬鹿にするだけだろ?」
「そんなことしねぇよ。で、何してんだ?」
「・・・かまくら、作りたくてよ。」
「かまくら?お前一人で出来るわけねぇーだろ。」
馬鹿にしたように笑いながら跡部は言う。宍戸はやっぱり馬鹿にしたじゃねーか!!と怒
り顔で跡部にくってかかる。
「やっぱり馬鹿にしたじゃねーか!!お前、最悪っ!!」
「だから、お前一人じゃ無理だから俺もつきあってやるって言ってんだよ。」
「は?」
「聞こえなかったのか?俺も手伝ってやるって言ってんだよ。」
「マジで・・・?」
思ってもみない跡部の言葉に宍戸唖然。跡部がかまくらを一緒に作ってくれるなんて信じ
られない。だが、嬉しいので思わず笑顔になってしまう。
「サンキュー。二人で入れるくらいでかいの作ろうぜ!!」
「ああ。」
その笑顔に魅せられる。跡部はポケットの中からあるものを出し、宍戸に気づかれないよ
うにそれを使用した。
それからしばらく時間が経つと雪合戦組の四人は少し休憩しようと雪で何かを作っている
組のもとへ行く。何かを作っている組とは樺地、日吉、ジローの三人だ。
「はあ、疲れたー。長太郎、日吉とか樺地の方行かない?」
「そうですね。向日先輩も忍足先輩もあっちで休んでるみたいですし。」
滝と鳳はまず日吉のもとへ行くことにした。日吉はベンチの近くで何かを作っている。
「日吉。」
「うっわ、何なんですか!?」
「何でそんなに驚くんだよ?」
「あっち行けよ鳳。」
不機嫌そうな顔で日吉は二人を見た。滝と鳳は顔を見合わせて笑う。
「何作ってるの?」
「何でもないです・・・。」
「いいじゃん見せてよ。」
鳳は日吉の手をどかし、その下に隠されている雪で作られた何かを見る。日吉は焦ったよ
うな顔をして固まってしまった。
「あっ。」
『可愛い〜vv』
日吉の作っていたそれを見て、二人は声をそろえてそう叫んだ。日吉の作っていたものと
は何匹かの小さな雪うさぎだった。葉っぱを耳にして、落ちていた赤い実で目をつけられ
たうさぎはくりんとした瞳でこちらを見ている。
「〜〜〜〜。」
作っていたものがバレてしまって日吉は顔を真っ赤にしてうつむいてしまう。むしろ、そ
んな反応をする日吉も可愛いと二人は笑った。
「上手だねー日吉。」
「・・・・・。」
「ホント、でも日吉がこんなの作るんなんてちょっと意外。」
余計なこと言うなと日吉は鳳のことを睨んだ。そして、視線を全然違う場所へ移し、ボソ
っと呟く。
「俺のなんて全然だぞ。あいつの見てみろよ。」
「あいつ?」
日吉の視線の先に目を移すと滝と鳳は言葉を失う。日吉の言うあいつとは樺地のことだ。
樺地が作っているものはそれはもう雪で作ったとは思えないもので、彫刻と言っていいよ
うなものだった。二人は樺地のもとまで行き、樺地に話しかける。
「樺地、すごい・・・。これ、全部樺地が作ったの?」
「ウス。」
「猫に狐にウサギ・・・豹に犬・・・うわあ、どれも超リアル。」
樺地のまわりにはたくさんの動物の像が並んでいる。それは本物そっくりでありえないく
らいリアルに作られていた。樺地はその像を指さした後、他のメンバーを指さす。どうや
ら樺地はレギュラーメンバーを動物にみたてて作っていたらしい。
「俺、犬なんだ。」
「俺は狐かぁ。で、今作ってるのは?」
「ウス。」
樺地はジローを指さす。作っている動物は羊。まんまだなあと滝と鳳は笑いながら感心し
た。
「さすが樺地だよね。」
「本当。普通ここまで作れないよ。」
「・・・・。」
少し照れたような表情を見せ、続きを作り始める。すると、向こうの方からジローの騒が
しい声が聞こえた。
「樺地〜、これ俺持ち上げるの無理〜!!やってー!!」
ジローは雪だるまの頭を作ったはいいが、あまりにも大きく作りすぎて持ち上げられなく
なってしまったようだ。樺地は何も言わずにジローのもとへと向かった。滝と鳳はしばら
く樺地の作った雪の像を鑑賞した。
「ありがと樺地。よーし、後は目とか手とかつけるだけだぞ。樺地も手伝ってくんねぇ?」
「ウス。」
樺地は自分の作業をいったんやめ、ジローの手伝いをすることになった。

一方、かまくらを作っている跡部と宍戸はもうあと少しで出来るというところまできてい
る。跡部が手伝っている所為かかまくらの様相は一般のものとはだいぶ違う。確かに二人
が余裕で入れるくらいの大きさなのだが、普通のものに比べて入り口が狭い。そして、外
からの見かけはただのつるつるなものではなく細かい模様が入り、まるで一つのお城のよ
うだ。
「何か・・・これかまくらか?」
あまりにも普通じゃない形に宍戸は首を傾げる。だが、跡部の方は満足そうだ。
「ロマネスク式の建物をイメージしてみた。ほら、宍戸。もうちょっと空洞作らねぇと入
れねぇぞ。」
「あ、ああ。(ロマネスクって確か中世ヨーロッパの建築様式だったよな???)」
何でそんなものをかまくらに使うんだとかなり疑問を持つが、まあ跡部のすることにいち
いちつっこんでいたらやってられない。入り口から中に入り空洞を広げていく。やっとの
ことで二人が入れるくらいの空間が出来た。
「ふぅ〜、こんなもんでいいか?」
「そうだな。じゃあ、俺達は中に入って休むとするか?」
「おう!!」
跡部に誘われて宍戸は早速かまくらの中に入る。跡部は他のメンバーが入って来ないよう
にとそこら辺にあった板で入り口を塞いでしまった。
「おい、跡部そんなことしたら真っ暗になっちまうぞ。」
「問題ねぇ。・・・ほら、こうすればいいだろ?」
跡部はポケットから小さなキャンドルを出し、火をつけ雪の中にさした。
「何でそんなもん持ってんだよ?」
「そんなことは気にすんな。それにしても、ここ、意外と暖けぇな。」
「そうだな。」
かまくらの中は外の冷たい空気が入ってこないので暖かく感じる。その上、キャンドルの
火がまた穏やかな暖かさを生んでいる。そんな雰囲気の中で跡部と宍戸は黙ってしまう。
気まずいなあと宍戸が感じ始めたとき、跡部が手袋を外した手で頬に触れた。
「ひゃっ!!跡部、お前手冷てぇよ。」
「あんだけ雪に触ったりしてたんだから当たり前だろうが。」
「その手で顔に触んなよ。冷てぇ・・・。」
「じゃあ、少し暖まるようなことするか?」
「えっ!?」
跡部は頬に触れていた手を髪に移し、唇を重ねる。宍戸は逃げようと思ったがこの狭い空
間でそんなことが出来るはずがない。跡部が離れるような素振りを見せないので、宍戸は
息苦しくなって口を開けてしまう。
「ふっ・・・う・・・ぅんん・・・」
跡部はそれを見計らって、さらに深く口づけを施す。そんなことをされれば自然と体温が
上がってしまう。もう息も絶え絶えになってきても跡部はまだ離さない。
「はっ・・・あと・・べ・・・も・・・やめ・・・んっ・・・」
酸素不足と微妙な感覚に宍戸の頭はぼーっとしてきてしまう。今が冬だということを忘れ
てしまいそうな程熱くなってくると跡部はやっと宍戸を解放した。
「はっ・・ハァ・・・ハァ・・・」
「どうだ?暖まっただろ?」
「お前、何考えてんだよ!!こんなところでっ。」
「誰も見てねぇよ。つーか見えねぇし。」
「あー、もう!!俺もう外出るからな!!」
「もう出ちまうのか?もう少し楽しませてくれてもいいんじゃねぇの?」
「ウルセー!!」
宍戸は板を外して外へ出る。かまくらの中が暖かかったので、外の気温はさっきよりも寒
く感じた。
「寒っ。」
「あー、こんなとこにいた!!お前らすげーな。これかまくらか?」
「ま、まあ一応な。」
「一応じゃねぇよ。れっきとしたかまくらだ。」
宍戸の後を追い、跡部もかまくらから出る。宍戸の顔が赤くなっているのを見て岳人はニ
ヤニヤしながら宍戸をからかう。
「宍戸ー、お前この中で跡部と何かしただろー?」
「なっ!?何にもしてねぇよ!!」
「必死で否定してるあたり怪しいぞー?」
「ウ、ウルセーな!!してないっつったらしてねぇんだ!!」
さらに赤くなり宍戸は否定する。そんな宍戸を見て岳人はケラケラ笑った。そんなことを
していると向こうの方で今ここにいるメンバーを呼ぶ声がした。
「岳人ー、宍戸ー、跡部ー。こっちに来いよ。すごいぜここらへん。」
声の主は滝。樺地やジロー、日吉が作ったものを見せようと呼んだのだ。三人は素直にそ
の声に従う。当然、そこに来た三人は雪祭りかと思うほどの作品に感嘆の声を上げる。
「すっげー!!何だよこれ!?」
「ジローも随分デカイ雪だるま作ったなー。」
「すごいだろー。樺地と一緒に作ったんだぜ♪」
「そっちの動物は樺地か?」
「ウス。」
しばらくそれを見て楽しんでいると、鳳がふとあることを呟く。
「カメラとか持ってくればよかったですねー。これ、撮っておきたいじゃないですか。」
「カメラなら俺様が持ってきてるぜ。」
「本当?じゃあ、ここにあるの撮ろうよ。」
「いいぜ。」
カメラを持ってきていた跡部はそれでここに並んでいる雪像を撮る。だが、10枚くらい
撮ったところでメモリがいっぱいになってしまった。
「あれ?もうメモリいっぱいなんか?早ない?」
「そうですね。跡部さん他に何か撮ってたんですか?」
「まあな。まあ、一通り撮れたんだからいいじゃねぇか。」
跡部はどうやらこれを撮る前に何かをいろいろ撮っていたらしい。だが、何を撮っていた
かは誰にも分からない。だが、確かに跡部はさっきたくさんの写真を撮っていたのだ。
「さてと、もうそろそろ帰らねぇか?風も冷たくなってきたことだし。」
「そうだな。はあ〜、今日は楽しかったー!!侑士、帰りなんか温かいもん買っていこう
ぜ。」
「ええよ。おでんとかがええな。」
「あっ、いいな忍足達。俺達も何か買ってこうよ長太郎。」
「そうですね。」
「俺はまっすぐ帰るか。」
「えー、日吉はどっか寄ってかないのー。樺地は寄るよね?」
「ウス。」
「じゃあ、俺も何か買って帰ろうかな。」
どうやら帰りに大半のメンバーはどこかに寄って温かいものを買っていってから帰るらし
い。跡部達、氷帝メンバーがこの公園に作ったものが、この後ここを通る人みんなを驚か
すことはまず間違いない。今日一日たくさん遊べたと全員満足感いっぱいでこの公園を後
にした。

数日後、公園に作った雪の芸術品はすっかり溶けてしまったが跡部の撮った写真が出来上
がった。それを部室の机に広げて見ている。
「へぇ、よく撮れてんじゃん。」
「でも、やっぱ数的には少ないよなあ。跡部、お前が他に撮ってた写真はないの?」
「あるけど、あれはダメだ。お前らには見せられねぇ。」
「何でー?見たいよなぁみんな?」
『うん。』
「とにかくダメなものはダメだ。お前らはそれだけ見てればいいんだよ。」
そんなこと言われては逆に見たくなってしまう。ジローと岳人は協力して跡部から残りの
写真を取ろうと試みた。いきなり二人に飛びつかれ、跡部は持っていた残りの写真を手か
ら離してしまう。その瞬間、写真が床の上に散らばった。そこに写っていたのは・・・
「うわああっ!!」
その写真を見て叫んだのは宍戸。跡部が隠し持っていた写真は全て宍戸を撮ったものだっ
た。かまくらを作っているところ、跡部に思わず見せてしまった笑顔、そして、かまくら
の中でしたことまで全てが写真に収められてられている。
「すっげー、全部宍戸だ。」
「跡部、こんなに宍戸ばっか撮ってどうすんの?」
「どうするって、ちゃんとアルバムに入れて保存するぜ。」
「なっ、何考えてんだテメーは!!お前らも見るなー!!」
「でも、どの顔もいい表情だよね。宍戸、跡部の前じゃこんな顔するんだー。」
いくつかの写真を見ながら滝は感心したような感じで言う。他のメンバーも滝の意見に賛
成だった。宍戸は滝の手からその写真をひったくり床に落ちているものも全てかき集めた。
「お前らさっさと部活行けよ!!跡部も見てねぇでさっさとこの写真しまえ!!」
「お邪魔虫はさっさと出て行きますよー。」
「ほら、みんな宍戸が出て行けってさ。早く出て行って二人きりにしてやろうぜ。」
「せやな。じゃあな、宍戸。頑張れよ。」
「ふざけんな!!あー、もう!!テメーが余計なことするからいけないんだからな!!」
宍戸は真っ赤になりながら、他のメンバーを怒鳴りつけ、跡部に対してもかなり怒ってい
る。この後、跡部と宍戸がどうなったかは誰も知らない。ただ一つ言えるのは宍戸は他の
メンバーを全員追い出してしまったことを超絶に後悔したということだ。

                                END.

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