☆Original Wedding☆

リクエスト内容『跡宍の結婚式』

「景吾ー、日取りどうする?あと招待状も早めに作った方がいいんじゃねぇ?」
「そうだな。やっぱ、ジューン・ブライドがいいだろ。招待状は、まあいいとして、問題
は誰を招待するかだな。」
ただいまこの二人は自分達の結婚式のことについて相談中。ついこの間、跡部が宍戸にプ
ロポーズをし、見事に結婚することが決まったのだ。どんなふうに式を挙げるか、誰を呼
ぶかなど決めなければいけないことがたくさんで、この二人は今とても忙しいのだ。
「忍足とか岳人とかレギュラー陣はもちろん呼ぶだろ。あと監督も呼ばなきゃダメだよな。」
「だからって、テニス部だった奴全員は呼ぶ気ねーし。あっ、他校の奴らも呼ぼうぜ。青
学とか不動峰とか山吹とか。俺達がラブラブなところ見せつけてやろうぜ。」
「別にいいけどよ。そんなに呼んだら結構金かかるぜ。大丈夫なのかよ景吾。」
「当然だろ?それくらいの金は余るほどあるね。」
さすが金持ちの跡部だ。金銭面では全く問題ないらしい。というわけで、招待するのは元
氷帝学園テニス部のレギュラー陣と監督、その他にテニスで関わった学校の人を何人かに
決まった。
「で、形式はどうするよ?」
「俺な、やりたい形式のがあるんだ。」
「何だよ?」
「教会とか神社とかでやるのは嫌だから、超豪華なホテルとかで人前式やりたい。」
「人前式か・・・。なかなかおもしろそうじゃねぇの。」
「だろ?やり方とかもかなり自由に決められるし、楽しそうじゃん。」
人前式というのは教会や神社で神様に結婚の誓いをするのではなく、参列者に向かって誓
いをたてる形式のものだ。アレンジのパターンがいくらでもあり、自分達オリジナルの結
婚式を行うことができる。
「それで、そのあとそのまま披露宴もすんだよ。なっ、いいだろ?人前式やろうぜ。」
「ああ。いいぜ。じゃあ、どんなふうにするかを詳しく考えなきゃな。」
「おう。楽しみだなあ、結婚式。」
宍戸の頭の中には“マリッジ・ブルー”という言葉は存在しないらしい。跡部と結婚でき
ることが本当にうれしいらしく、楽しそうに結婚式のことを考える。この二人の考える人
前式はきっと普通の結婚式とは全く違うオリジナルのものになるのだろう。

そして、跡部と宍戸の結婚式の日がやってきた。都心の大きなホテルで盛大に行われる。
「うっわあ、すっごい大きいホテルだな。」
「確かに。さすが氷帝の跡部。することが違う。」
「ただ、俺達に自慢したいだけじゃないの・・・てゆーか、何で俺達が跡部なんかの結婚
式に参加しなきゃいけないわけ?・・・全くやんなるよなあ・・・自分達の方が早く結婚
したからって何様のつもり・・・」
「こら、深司!!」
「すんまそん・・・」
不動峰のメンバーでこの結婚式に招待されたのは、橘、神尾、深司の三人だ。
「へぇ、すごいなー。こんなとこで結婚式あげるんだ。」
「ホントですね。」
「お前らには派手すぎて似合わないんじゃない?」
「余計なお世話だ!」
「お前にだって出来ないだろ、千石。」
山吹中からは千石、南、東方、室町の四人だ。
「真田副部長、このホテルすごいっスね。きっと、ご馳走とかも豪華なんだろうなー。」
「あんまり騒ぐなよ赤也。結婚式は重要な儀式なんだから。」
「あの二人の場合そういう感じはしなさそうだけどな。」
立海大からは真田、柳、切原が招待された。
「やっぱり跡部すごいね。」
「ああ。というか、男同士で結婚式って出来るものなのか?」
「今の時代は余裕でしょ。」
「あっ、兄貴!」
「あっ、裕太。裕太も招待されたんだ。」
「おや、手塚に不二兄じゃないですか。」
「おい、観月。荷物くらい自分で持てよ。」
青学からは手塚と不二、ルドルフからは観月、裕太、赤澤が招待されていた。氷帝メンバ
ーは関係者として、早めにホテルに入っている。みんな挙式が行われるホールに向かい、
式が始まるのを待った。参列者が入場し、全員が着席するとついに式が始まった。司式者
の滝が進行を担当する。
「大変お待たせしました。これより挙式を始めます。まずは新郎新婦の入場です。」
拍手が鳴り響き、奥にある扉が開いた。普通の結婚式では新郎と新婦が腕を組み、二人で
ゆっくりと歩いて入場する。だが、跡部がこんな普通の入場をするわけがない。いきなり
宍戸を姫抱きして入場してきた。宍戸は純白のウェディングドレスに身を包んでいる。そ
れを見て、他校の生徒は唖然。こんな入場の仕方ありかよと誰もが心の中でつっこむ。
「さすが跡部やな。普通はあんなふに入場せぇへんよ。」
「まあ、派手でいいんじゃない?」
祭壇に一番近い席に座っている岳人や忍足は小声で話す。二人が祭壇のところまで到着す
ると、滝は開式の辞を放った。
「これより跡部景吾と宍戸亮の挙式を始めます。ただいまから行う挙式は人前式というも
ので、『誓いの言葉』を自分達で考えそれを列席者の前で読み上げることににより、結婚
を誓うものです。それでは、誓いの言葉をお願いします。」
滝のその言葉で二人は参列者の方を向いた。跡部はマイクを滝から受け取り、宍戸と一緒
に誓いの言葉を読み上げる。
「跡部景吾は一生涯宍戸亮を愛し、大切にし、誰よりも幸せにすることを誓います。」
「宍戸亮は一生涯跡部景吾を愛し、身も心も全て景吾のものになることを誓います。」
この誓いの言葉はお互いに相手に望むことを記したものだった。跡部が言っている誓いの
言葉は誰もが納得いくものだったが、宍戸の誓った誓いは何かおかしいとそこにいた全員
が思った。宍戸が言っているということは、それは跡部が望んだものなのだが・・・。
「千石さん、今の誓いの言葉、宍戸さんの方おかしくないっスか?」
「んー、いいんじゃない?あの跡部が望んでむことなんてそんなもんでしょ。」
「そうですか。」
やっぱり納得いかないが、千石が言うのならと室町は一応納得した。誓いの言葉が終わる
と次は指輪交換だ。
「それでは、指輪交換に入ります。」
二人はお互いに指輪を交換し合う。この時、跡部はある台詞を言いながら、宍戸の左手の
薬指に指輪をはめた。
「この指輪は、俺の不滅の愛と永遠の誠意の印だ。この指輪がお前が俺のものだって証だ
からな。」
そう言いながら、その指輪にキスをする。宍戸は跡部のキスした指輪に自分もキスをし、
そっとしゃがむような形をとる。
「その指輪は、俺の心の投影だ。その指輪をしていることが俺がお前のもんだって証だか
らな。」
上目遣いでこう言い放ったあと、さっき跡部がしたように指輪に口づける。それに跡部も
キスをした。こんなにも大胆で刺激的な指輪交換を見たことがあるだろうか。参列者は言
葉を失い、顔を赤らめていた。こういうことが簡単に出来る奴らだと初めから知っている
氷帝メンバーはそんなに大きなリアクションはないが、みんな羨ましいなあと思っている。
「それでは、ベールを上げて祝福のキスをしてください。」
宍戸を立ち上がらせ、跡部はベールを上げた。宍戸は目をつぶり跡部の口づけを待つ。普
段なら人前でキスをすることを嫌がる宍戸だが、この時ばかりは違った。ここに来ている
奴ら全員に見せつけてやるというような気持ちだ。その気持ちに応えるように跡部は優し
く唇を重ねた。宍戸にとってはものすごく短く感じるキスであったが、他の人から見れば
誓いのキスにしてはとても長いものであった。
「あいつら長すぎだよな。」
「うん。誓いのキスってもっとこう軽くするものなはずなのにね。やっぱ、跡部って変態。」
「アキラも深司ももっと静かにしてろ。」
「そういう橘さんだって、顔真っ赤だし、結構声大きいですよ。」
「う、うるさい!」
こういうことにあまり抵抗のない橘はかなり赤面していた。そんな橘を深司はからかう。
なかなかいい度胸だ。
「では、参列者のみなさん。賛同の拍手をお願いします。」
滝の言葉で、参列者の全員が拍手をした。これで、跡部と宍戸はみんなに結婚を認められ
たことになった。
「次に結婚証明書の署名に入ります。新郎と新婦は署名をしてください。」
署名台に乗せられた、結婚証明書に二人は署名をする。
「やっぱ、こういうのあるといいよな。」
「ああ。普通の結婚式じゃなかなかできないぜ。」
「よし。あとは樺地に署名してもらって終わりだな。」
二人が書き終わったのを見計らい、滝は立会人代表の樺地を署名台に呼ぶ。
「それでは立会人の樺地にも署名をしてもらいます。」
「頼むぞ樺地。」
「ウス。」
樺地が結婚証明書に署名をしたことにより、完璧に二人の結婚が成立した。
「結婚証明書への署名が終わりました。これで、新郎と新婦は正式に結婚したことになり
ます。みなさん、大きな拍手をお願いします。」
参列者の拍手により挙式は終わりに近づく。滝は挙式の結びと参列者にグラスを持たせ、
乾杯でしめる。
「これにて挙式を終了します。みなさん、グラスをお持ちください。」
乾杯!!と大きな声が響き、グラスが上にかざされた。跡部と宍戸はうれしそうな顔でお
互いに顔を見合わせ、笑い合った。
「これより先は披露宴になります。司会は鳳長太郎に変わります。」
そう言って、滝は鳳にマイクを渡した。これから、結婚披露宴が始まるのだ。
「司会の鳳です。ただいまより跡部家と宍戸家の結婚披露宴を開宴いたします。」
緊張気味の鳳だが、なんとか開宴の辞を言うことができた。
「それでは、まず初めに新郎新婦のプロフィールを紹介してもらいましょう。新郎の跡部
さん、新婦の宍戸さんお願いします。」
このプロフィール紹介は跡部と宍戸がお互いのものを紹介し合うことにした。特に原稿な
どがあるわけではないので、アドリブで好き勝手なことを言いまくる。
「新郎の跡部だ。亮のプロフィールは誕生日は9月29日。天秤座。血液型はB型。性格
は負けず嫌いでわがままで甘えん坊で、それもかなりのマゾっ気アリ。どうしようもない
奴だが、俺にとってはどれも可愛くてしょうがねぇ。こんな奴と結婚できるのは俺だけだ
と思うぜ。」
全くどこがプロフィールなのだろうかと、参列者は笑いをこらえる。もちろんそれを聞い
た宍戸はかなりご立腹。自分の紹介が終わるとマイクを跡部から奪い取り、同じようにプ
ロフィールの紹介を始めた。
「新婦の宍戸だ。跡部景吾のプロフィールは誕生日は10月4日。俺と同じ天秤座。血液
型はA型。性格は性悪でナルシーで自意識過剰で、とにかく変な奴。」
「何だと!?」
「だけど、それに見合うくらいの実力はあるし、意外と優しい一面もあったりすんだ。俺
はそこに魅せられたんだけどな。」
初めは散々バカにし、最後は褒める。ちらっと跡部の方を見ると睨んでいるかと思ったが
そうでもなかった。どちらかといえば、笑っているようにも見える。このノロケだかプロ
フィールの紹介だかよく分からないものを聞かされた参列者は半分呆れ、半分羨ましがっ
ていた。氷帝のメンバーはもちろん全員笑っていた。
「では、次に主賓による祝辞です。榊太郎監督お願いします。」
来賓代表の祝いの言葉として太郎が祝辞をいうことになった。この人が送る祝辞とはいっ
たいどんなものなのであろうか?
「跡部に宍戸、結婚おめでとう。あんなに仲が悪そうに見えたお前達が結婚するとは正直
驚いた。これから、大変なこともたくさんあるだろうが、頑張ってくれ。何か悩みでもあ
ったら私のところに相談に来なさい。いつでも相談にのってやる。それでは・・・。」
ここで、氷帝メンバーは出るぞ出るぞとわくわくしていた。
「行ってよし!」
『あははは!!』
そこでそれかよ!とみんな大爆笑。祝辞もとてつもなく短く全然意味が分からない。太郎
はそんなふうにされても全く表情も変えず、自分の席へと戻って行った。
「ありがとうございました。それでは、次に披露宴のメインイベント、ウェディングケー
キ入刀です。」
みんながデザートとして食べれるようにと二人が用意したケーキは生ケーキだった。ウェ
ディングケーキに二人揃ってナイフを入れる。その瞬間を写真に撮るものも何人かいた。
そして、その切られたケーキを皿に乗せて、二人はお互いに食べさせ合う。
「まず、景吾からな。」
まずは宍戸が跡部に食べさせる。一口食べると、今度は跡部が宍戸の口にケーキを運んだ。
「ほら、口あけろ。」
お互いに食べさせ合うところを思いっきり見せつけられ、他校の者はちょっとジェラシー。
自分達もあんなことしてみたいなーと思う人がいったい何人いるだろうか。ウェディング
入刀が終わると、もう一度乾杯がされ、祝宴がスタートした。ここからは食事を食べなが
ら歓談の時間だ。参列者が食事をしている間、跡部と宍戸はお色直しに向かう。
「それにしてもすごいんだな結婚式って。」
「これは結構変わった形式だと思いますよ。こんな結婚式は初めてですよ。」
「そうなんですか。知らなかったなあ。」
「これは跡部と宍戸だからじゃないの?ねぇ、手塚。」
「さあ。あまりこういうものには出席しないからな。」
ルドルフメンバーと青学メンバーは豪華な食事をしながら、仲良く対話中。他の学校のメ
ンバーもそれなりに楽しんでいるようだ。しばらくして、跡部と宍戸がお色直しをして戻
ってくる。二人はさっきとは全く違う衣装で入場してきた。それも、結婚式では着ないだ
ろというような衣装で。
「お色直しをした二人の入場です。これから、二人が皆さんのテーブルを回り、キャンド
ルサービスをします。」
キャンドルサービスはどうでもいいから、この二人の格好はいったい何なんだという感じ
で、参列者はお色直しをした跡部と宍戸を見る。二人の格好はまるで平安時代を思わせる
ようなものだった。十二単を着た宍戸にまるで帝のような格好をした跡部。どちらもよく
似合っているが、誰もがすごい衣装だと思った。
「すごいな。」
「ああ。でも、こういうのもいいんじゃないか。」
「そうっスか?でも、真田副部長はこういうの好きそうですよね。」
和風なものが好きな真田はこの衣装に少し心を惹かれていた。キャンドルサービスを終え
ると、祝辞と余興が始まる。日吉が古武道をしたり、岳人がアクロバティックなことをし
たりとなかなか派手な演技が多い。祝辞は忍足や慈郎、橘や真田が行った。全ての催しが
終わると雰囲気は終わりに近づく。
「もうそろそろお開きにしたいと思います。最後に宍戸さん、ブーケを皆さんの方に投げ
てください。」
「オッケー。じゃあ、いくぜ。」
着物の袖を翻し、宍戸は思いっきりブーケを投げた。好きな人がいるメンバーは誰もが取
りたいと思った。宙を舞うブーケに誰もが腕を伸ばそうとする。身長が大きな人が多いの
でかなりの接戦だった。そして、そのブーケを手にしたのは・・・・
ポスッ
特に取ろうとしていたわけではないが、たまたま自分の方に来たので受け取ってしまった
という感じ。一際大きな体の持ち主が花嫁のブーケを受け取った。
「わあー!!樺地、マジマジスッゲー!!」
そう樺地だ。ブーケを受け取りちょっと戸惑い気味の樺地だったが、その表情はどこかう
れしそうだった。
「あーあ、樺地か。」
「残念やったな。」
「でも、いいんじゃない?このメンバーなら誰が受け取っても。」
「そうですよ。みんなそれぞれうまくいってるんですし。」
氷帝メンバーは誰もがこの結婚式に満足していた。ブーケを受け取ろうが受け取らまいが、
次は自分達だと思っている。盛り上がる雰囲気の中、鳳は最後の司会の仕事としての言葉
を言う。
「それでは、新郎新婦の退場です。皆さん、拍手で見送りましょう!」
拍手の中、跡部は一番初めに入場してきた時と同じように宍戸を抱いて、退場していく。
跡部も宍戸もどちらもとても幸せそうな顔をしていた。扉を開け、外に出ると二人はもう
一度深く口づけを交わすした。これから幸せな日々を作っていく序章として・・・。

                                END.

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