Vacation in his island

リクエスト内容『休みバカンス!!跡部のプライベートアイランドで
宍戸二人きりで過ごすつもりが、何故だか氷帝テニス部メンバー
大集合!!』

明日からは夏休み。学校がある日の最後の部活を終えた後、跡部は宍戸に声をかけた。
「宍戸。」
「んー、何?」
「お前、夏休み、いつ暇だ?」
「別に夏休み中は予定ないけど。いつでも暇だぜ。」
今年は高校に入って二回目の夏休み。テニス部の大会の日程も中学の時と若干違うので、
夏休みは結構遊べるのだ。
「去年、一つ島を買ったんだ。」
「はあ!?島!?」
「そんなに驚くことじゃねぇだろ。それで、今年の夏休みはそこで過ごそうと思うんだが、
よかったらお前も来ねぇか?」
島を買ったと聞いて、驚かない者があるだろうか。それは、まあいいとして、跡部は今年
の夏休みは無人島近いその島で、宍戸と二人きりで過ごしたいと思っているのだ。だが、
いきなりそんなことを言われて、即答出来るはずがない。宍戸はしばらく考えた。
「うーん、今年は本当に特に大きな予定はないからなあ・・・。」
「じゃあ、来いよ。」
「そうだな。なあ、樺地も行くのか?」
着替えをしながら、宍戸は向こう側にいる樺地に声をかける。跡部としては今回は樺地を
連れて行くつもりはなかったのだが、樺地の答えは違った。
「あー、今回は樺地は・・・・」
「ウス。」
「は!?」
「だよなあ、やっぱ樺地も行くんだ。跡部一人じゃ大変だもんな。」
「ウス。」
「ちょ、ちょっと待て!!樺・・・」
跡部が樺地に抗議をしようとした瞬間、眠っていたジローが起き出した。目はさっきから
覚めていたようなのだが、面倒だという理由で起き上がらなかった。しかし、こんなに面
白い話を聞いてしまっては、起きないわけにはいかない。
「えー、何々!?跡部とか宍戸とか樺地、旅行行くのー?」
「あ、ジロー。ああ、跡部が島買ったから今年の夏休みはそこに行くんだってさ。」
「いいなあー、俺も行きてぇー!!」
「いいんじゃねぇ?どうせ無人島っぽくなってるんだろうし。別に人数的には問題ねぇだ
ろ。」
「し、宍戸!?」
「人数多い方が楽しそうじゃん。な、樺地。」
「ウス。」
宍戸はたくさんいた方が楽しいとジローが行きたいというのも許してしまった。しかし、
跡部からすれば冗談じゃない。せっかくの宍戸と二人きりのバカンスを邪魔されてなるも
のかとまた文句を言おうとしたが、その時・・・
「あー、疲れたー!!」
「今日の練習も結構ハードやったもんな。」
「滝さん、帰りにどっか寄っていきません?」
「そうだね。アイスとか食べたいな。」
残りの元レギュラーメンバーが部室に戻って来た。すると、ジローがぴょんっと眠ってい
たソファから下りて、今来た四人にさっきの話をする。
「なあなあ、跡部がさ、島買ったから夏休みに行かないかだって。みんなで行こうぜ!!」
「ホンマ?そりゃ楽しそうやん。」
「おう、俺も行きたい!!」
「俺も行きたいなー。ね、長太郎。」
「はい。」
勝手に話が進んでしまっている状態に跡部はただただ唖然とするしかない。このままでは
いけないと、一声上げようと息を吸うと、
「うわー、何か合宿みたいで楽しそうだな。跡部、いいよな?」
満面の笑みを浮かべて、宍戸がそんなことを言ってくる。こんな顔をされたらもうダメだ
なんてことは言えない。跡部はしぶしぶ他のメンバーも来ることを許した。
「・・・ああ。」
本当は宍戸と二人きりのバカンスのはずだったものがこんなことになってしまった。心の
中は不満でいっぱいだが、仕方がない。大きな溜め息をつき、跡部は帰る支度をし始めた。

そして、夏休みに入り、氷帝テニス部メンバーは跡部のプライベート・アイランドにやっ
て来た。いまだに跡部は腑に落ちない状況だが、それ以外のメンバーは実に楽しそうだ。
「うわあ、マジで島だ!!すっげぇ!!」
「森とか自然はそのままなんだね。」
「もう少ししたら、別荘みたいなところがあるらしいぜ。」
島の景観はそのままで、かなり奥に行ったところに別荘が建っているらしい。八人はそこ
まで、まるで遠足に来ているかのように歩いて行った。数十分歩いていくと建物がある場
所へと到着する。そこはさっきまでの自然がいっぱいだった景色とは大幅に変わり、豪華
な屋敷とキレイに整えられた庭園が広がっていた。
『すっげぇー・・・』
さすが、跡部だなあとその景色を見たメンバーは感嘆の声を上げる。跡部はまだ不機嫌な
ようで、ぶすっとした表情で屋敷の中へと案内した。
「何か跡部機嫌悪いよなあ。」
「ホンマは俺らに来て欲しくなかったんちゃうか?」
「何で?」
「ほら、跡部のことやから、宍戸とここでバカンスを過ごしたいと思っとたんよ、きっと。
だから、今あないに不機嫌になっとるのや。」
「なーるほど。」
コソコソと話しながら、岳人と忍足は跡部を見る。その視線に気がついたのか、跡部は二
人を睨んだ。
「やっぱり、怒ってるな。」
「ああ。あんまり怒らせんとこ。」
これ以上跡部の逆鱗に触れるのはヤバイと二人はなるたけ跡部を怒らせないようにしよう
と決めた。怒った跡部は何をしでかすか分からない。特に宍戸絡みになるとすごいのだ。

宍戸以外のメンバーに用意された部屋は二つ。こんなにも部屋があるのに何故二つしか貸
さないかというのは、あからさまに跡部の嫌がらせであろう。
「こっちが、樺地の部屋。こっちがお前らの部屋だ。」
「何で樺地だけ違う部屋なのー?俺も樺地と一緒がいいー!!」
いきなりだだをこね始めたのはジローだ。ジローのこの態度にカチンとくるが、跡部はふ
いっとそっぽを向いて冷たい口調で言い放った。
「勝手にしろ。」
「じゃあ、俺は樺地と同じ部屋で寝るー。」
「俺ら四人はこっちの部屋でええよな。」
「うん。」
岳人と忍足はもちろん滝や鳳も跡部の機嫌の悪さには気がついている。あえてこの理由に
気づいていないものがいるとしたら一人だけ。そう宍戸は跡部が何故こんなに不機嫌なの
かを理解していないのだ。
「跡部ー。」
「何だ?」
「何、そんなに怒ってんだよ?それに俺の部屋は?」
「お前は俺の部屋だ。文句でもあんのか?」
「別にないけどさ・・・」
せっかくみんなで来たのに、ここの持ち主である跡部がここまで機嫌が悪いと困ってしま
う。宍戸は文句を言いたい気持ちを抑えて、黙って跡部について行った。

部屋を分けられると、適当に荷物の整理をして一休みしてから外へと出た。海もあるし、
森もある。遊ぶには最適な島だ。それぞれ自分の行きたいところに向かい、存分に遊ぶ。
高校生といえどもまだ遊び盛りの年頃。海や森の中で全員日が暮れるまで遊んだ。
「あー、疲れたー。」
「やっぱ、水着は持ってきて正解だったね。」
「ジローとか樺地はどこで遊んで来たんや?」
「俺達はねー、森ん中で遊んでた。カブトムシとかクワガタいっぱいいたぜ。」
「へぇ。跡部、俺も森の中行ってみたい。明日、行こうぜ。」
「そうだな。」
遊ぶのは宍戸と二人きりだったので、跡部の機嫌も少しはよくなったようだ。ちなみに岳
人、忍足、滝、鳳の四人は海まで行って遊び、ジローと樺地は森の中で遊んだようである。
適度に疲れた体を部屋で休めようとメンバーは自分の部屋へと戻って行った。
「飯はいつでも電話で連絡を入れりゃあ、部屋に持っていかせるからな。後は好きなよう
にしてろ。」
『はーい。』
と返事をしながら部屋に入る。昼間は昼間、夜は夜。これからもお楽しみだと、全員実に
楽しそうな顔である。

四人部屋である岳人、忍足、滝、鳳は順番にシャワーを浴びてしまうと部屋にあるベッド
に腰かけて話をする。
「この部屋四人で泊まるってことになってるけどさ・・・」
あたりを見回しながら、岳人は呟いた。
「四人でも広いよな・・・。」
もとが二人部屋なので、ベッドは二つしかないが、そのベッドもセミダブルくらいの大き
さである。それもそんなに大きなベッドがあるにも関わらず、部屋は広々としている。
「せやなあ。」
「これなら、全然文句なしでオッケーじゃん。」
「ですよね。」
初めは一つの部屋で四人も泊まるというのは、少々狭いのではないのかと思っていたが、
全くそんなことはない。ちょっと豪華なホテルの部屋の二倍の広さはあるだろう。
「にしてもさ、跡部、あからさまに不機嫌だったよな。」
「そうそう。宍戸と二人できっと来たかったんだろうね。」
「でも、やっぱ俺らも来たいしなあ。」
「そうですよね。こんなにいいとこですもん。」
跡部がいないのをいいことに四人は言いたい放題だ。そんなことを話して笑い合っている
と岳人が突然ボスっとベッドに寝転んだ。
「このベッド、超ふかふかだぁ!!」
「ホンマ?ほんなら、俺も。」
岳人に続いて、忍足も寝転がってみる。忍足が寝転がったのを見計らって、岳人はその上
にのしかかった。押し倒された状態にされ、忍足は困惑するが、岳人はけらけら笑ってい
る。
「あはは、侑士引っかかったー。」
「な、何やのん?」
「このまま、やっちゃおうかなあ。」
「は!?そ、それはアカンで岳人!!」
必死で抵抗するがその体勢ではうまく力が入らなく、岳人をどかすことが出来ない。そん
な光景を見て、滝も鳳も笑っている。
「俺達いるのにやるの?」
「えー、別にいいだろ?」
「まあ、見るのもおもしろそうだから別にいいけど。」
「な、何言っとんのや滝!!鳳も見てないで助けてぇな。」
「勉強させてもらいます。」
「さっすが鳳♪それじゃあ・・・」
そんなことを言いながら、岳人は本当に忍足にキスをする。冗談だと思っていたのにここ
までされるとさすがの忍足もパニクってしまう。岳人がいったん離れると忍足は本気で涙
目になっていた。
「岳人ぉ・・・」
「ふ・・あははは、ゴメンゴメン。冗談だって。本気でするわけないだろ?」
「でも、さっきはメッチャ本気ぽかったやん。」
「あれは、滝とか鳳がノってくれたからさあ。」
「ひどいで。」
岳人と忍足がそんなやりとりをしてる間に滝と鳳もかなり微妙な雰囲気になっていた。
「た、滝さ・・・」
『・・・・・。』
自分達がいるのもお構いなしに滝は鳳に迫っている。岳人がやっていたのより何倍も激し
いキスを滝は普通にしていた。
「ん・・・んん!」
「俺、あそこまでしてないぜ侑士。」
「せやなあ。」
「ぷ・・はぁ・・・何するんですか滝さ〜ん。」
真っ赤になりながら、鳳は潤んだ瞳で滝を見る。その表情は岳人や忍足から見ても可愛い
なあと感じるものだった。
「いやあ、岳人達見てたらついしたくなっちゃって。」
「だからって・・・」
「鳳。」
「何ですか?忍足先輩。」
「頑張りや。」
ふっと笑いながら忍足はそんなことを言う。再び鳳は真っ赤になった。
「何言ってるんですか!!」
「忍足もああ言ってくれてるし、長太郎Vv」
「ダメですってば!!」
四人部屋はそれなりに楽しいことがいっぱいなようだ。というよりはこの四人だからこそ
こんなことになっているのであろう。

一方、ここは樺地&ジローの部屋。遊びつかれたジローはうとうとしているが、自分とし
てはもう少し起きていたいようだ。
「樺地ー。」
「ウス。」
ベッドの端に座りながら、ジローは樺地に声をかける。樺地はというと今シャワーから上
がったという感じで髪の毛を拭いている。
「跡部、本当はさ、俺達を連れて行くつもりなかったんだよな。」
「ウス。」
樺地は即答でそう答えた。だが、今回みんながここに来ることになってしまった原因を作
ったのは樺地なのだ。
「樺地、全部分かってて宍戸に聞かれた時、ああ答えたの?」
「・・・・ウス。」
ちょっと間をあけてから頷く。最近、樺地は少し反抗期気味なのだ。なので、今回は全て
分かっていて跡部に反抗したということ。
「やるじゃん、樺地!!」
樺地の言葉を聞いて、ジローはにぱっと笑った。いつも黙って跡部のいうことを聞くだけ
の樺地がそんなことをしたと知って何となく嬉しくなったのだ。
「跡部にはちょっと可哀想だけど、たまにはこういうこともあっていいよな!」
「・・・・・。」
跡部のあの不機嫌っぷりを見て、少し罪悪感を感じていた樺地はジローにそう言われて気
持ちが軽くなった。ニコニコしながらジローは樺地を自分の隣に手招きする。樺地は素直
にジローの隣へ腰かけた。
「へへー、今日は俺、樺地と寝るーVv」
「ウス。」
「やっぱ、たまにはこういうことしなきゃダメだよな。今度さ、俺と一緒に跡部にいたず
らしねぇ?」
小学生のように笑いながらジローは言う。樺地はちょっと戸惑ったが、それはおもしろそ
うだと頷いた。
「よっしゃー、今日は早く寝て、明日もいっぱい遊ぶぞー!!明日は海行こうぜ海!!」
「ウス。」
コロコロ話の話題を変えるジローに樺地はちゃんとついていっているようだ。しばらく楽
しそうに話すジローだったが、いつものように眠ってしまう。座ったまま眠ってしまった
ので、ちゃんと横にして寝かせてやる。樺地自体もそのまま横になった。電気を消すのを
忘れたので、いったん起き上がりパチンとスイッチを消すとまたベッドへと戻る。二つの
ベッドがあるが、一人ずつ寝ようとは思わないようだ。樺地はジローの隣に横になり、目
を閉じた。

「跡部。」
「何だよ?」
岳人達やジロー達と比べものにならない程大きな部屋に宍戸はいた。どちらとも既に寝る
時の服装に着替えている。
「今日は何であんなに怒ってたんだ?」
「・・・・お前、マジで分かんねぇのか?」
「うん・・・。」
はあ〜と溜め息をつき、跡部は宍戸のあごを掴んで、ぐいっと自分の方へ向けさせた。
「な、何だよ・・・?」
「よーく、聞いとけよ。」
「あ、ああ。」
何を言われるのかと宍戸はドキドキしまくっている。跡部はギリギリまで顔を近づけて低
い声で囁くように言った。
「俺はお前だけとここに来たかったんだよ。」
「へっ・・・?」
そう言う跡部の顔はほのかに赤くなっている。宍戸は呆然としてしまった。しかし、跡部
の言っていることが実はすごく恥ずかしいことだと気づくと爆笑した。
「ぶ・・・あははは!!」
「な、何で笑うんだ!?」
「それで、あんなに機嫌が悪かったのか。お前、本当まだまだガキだな。」
「あーん!?テメェにガキって言われる筋合いはねぇ!!」
「悪ぃ悪ぃ。跡部、ゴメンな。」
いまだ笑いがおさまらない宍戸は必死で笑うのをこらえながら謝る。跡部はムスっとして
いるが次の宍戸の行動で、一気にその表情は変わった。
「っ!?」
「別にあいつらがいたって、俺らは俺らで別行動すればいいじゃん。だから、そんなに機
嫌悪くなるなよ。」
宍戸は跡部の唇にちゅっと軽くキスをして笑いながらそう言った。本当は嬉しいのだが、
ここで喜んでしまうと何だか負けた気がするので、跡部は不機嫌な表情を崩さず、宍戸か
ら目をそらす。全く素直じゃねぇなあと宍戸はくすくすとまた笑った。
「なあ、跡部。まだ、機嫌直らねぇのか?」
「さあな。」
どっちつかずの反応に困りながらも宍戸は次の手を考える。どうするかなあと考えた後、
冗談半分で着ていたパジャマを脱ぎ始める。さすがにそれには跡部は驚いた。
「な、何やってんだ?宍戸。」
「うーん、だってここどうせ防音壁なんだろー?それなら別にやってもいいかなあなんて。」
それを聞いて跡部はそのまま宍戸を押し倒した。まさか、率直にこんなことをされるとは
思っていなかったので、宍戸は目をぱちくりさせて跡部を見る。
「何そんなに驚いた顔してんだよ?」
「えっ、あっ、だって・・・・」
「してもいいんだろ?」
「い、今のは冗談・・・・」
自分で誘っておきながら、あまりにも困惑している宍戸を見て今度は跡部が笑い出す。
「あははは、お前の今の顔おもしれぇぞ。分かってる。マジにはやらねぇよ。」
「何だよ、ビックリさせんな。」
「お前がしてもいいっ言ったらするけどな。」
「え・・・えっと、もうちょっとしたらな。」
今はまだ夜になったばかりだが、もっと夜になったらいいと言う宍戸に跡部はちょっと驚
きながらもふっと笑う。軽く頬にキスをして自ら外したボタンを止めてやった。
「それじゃあ、今日は期待していいんだな。楽しみにしてるぜ。」
「おう。・・・・なあ、跡部。」
「あーん?何だよ?」
「あいつらは早めに帰らせて、後半は二人で過ごさねぇ?」
跡部の本音を聞いてしまうとやはり宍戸もそうしたくなったようだ。当然だと跡部は頷く。
「だが、さすがに明日帰すってのは可哀想だからな。三日間はおいてやるか。」
「跡部、やっさしー。」
宍戸はけたけたと笑ってそんなことを言う。夜のお楽しみはこれから。二人きりの楽しみ
もこれからだとベッドに横になりながら時間が経つのを待つのであった。

                                END.

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