「跡部君、この話の主役やってもらえる?」
跡部は家に帰ろうと鞄をかつぎ、ドアに向かおうとした時、クラスの女子に突然声をかけ
られた。もうすぐ文化祭で跡部達のクラスは短いお芝居をするのだ。もう台本は出来上が
っていて、跡部はその主役になって欲しいと頼まれたというわけである。
「主役?別にやってもいいけど。で、どんな話なんだ?」
「まあ、読んでみてよ。」
「ああ。」
主役と言われて跡部が断るはずがない。だが、まだどんな話かは知らない。渡された台本
に軽く目を通し、話を把握する。
「へぇ、なかなかおもしろい話じゃねーか。これお前が書いたの。」
「まあね。それで、その吸血鬼のお付きの子なんだけどどうすればいいと思う?」
「そうだな・・・それって、女子じゃなきゃダメか?」
「別にどっちでもいいけど。話は結構シリアスチックだけど、男子がやってもそうギャグ
にはなんないと思うよ。」
「そっか。じゃあさ、このメイドの役、宍戸にやらせろ。あいつなら絶対似合うと思うぜ。」
「分かった。じゃあ、頼んでみるよ。確かに宍戸君なら似合いそうだもんね。ありがとう
跡部君。」
いくつかの台本を抱えたそのクラスメートは今度は宍戸のもとへ走って行った。跡部はも
う一度台本を読み返し、クスッと笑う。
吸血鬼とそのお付きのメイドのラブストーリーか。なかなかおもしろいじゃねーの。でも、
よくこんな話思いつくよな。女子ってやっぱ分かんねぇー。
跡部が帰ろうとドアを出た時、宍戸はちょうどさっきの女子につかまり、メイド役をやっ
てもらえないかと頼まれていた。
「ね、宍戸君。お願い。この役やって。」
「この役ったって、メチャクチャ女役じゃねーか。何で俺がこんな役やんなくちゃいけね
ーんだよ。」
「うーん、さっきね、この話の主役の吸血鬼を跡部君に頼んだら、このメイド役は宍戸君
がいいんじゃないかって言われたの。それで、頼みにきたんだけど・・・。」
「この吸血鬼、跡部がやるのか!?」
「そうだけど。」
うわあ、何つーかピッタリじゃねーか。そうなると、もし俺がここでこの役断っちまった
ら、他の女子とかがやることになるんだよな。それはやだなー。まあ、文化祭なんだし、
少しくらいおかしなことしたって許されるよな。
「俺、その役引き受ける。」
「本当!?ありがとう宍戸君。宍戸君ならきっと似合うと思うから頑張ってね!」
うれしそうに手を振りながら、その女子はどこかへ行ってしまった。その次の日までに全
ての配役が決まっていた。文化祭まであと一週間。それぞれ、振り分けられた役をこなす
ため練習をし始めた。
文化祭当日。この日、跡部達のクラスは2回の公演を予定していた。午前中は10時半か
ら、午後は2時半からという予定だった。今、ちょうど1回目の公演が終わったところだ。
「はあー、疲れたあ。」
「意外と長いよな。この芝居。」
主役、ヒロイン役の跡部と宍戸の二人はほとんど舞台に出っ放しとあって、かなり疲れ気
味。そのため、次の公演までかなりの間があいているのだ。
「跡部、一緒に回ろうぜ。」
「ああ。」
二人が制服に着替えようとした瞬間、クラスの文化祭実行委員がそれを止めた。
「あー!跡部、宍戸、着替えるな。」
「何でだよー?」
「そのままの格好で回ってくれよ。そうすりゃ、宣伝効果になって次の公演でかなり稼げ
るんだ。」
跡部達のクラスは舞台だけでなく、来た人達に飲み物や軽いおやつを売ってお金を儲けて
いる。なので、次の公演で1回目より人が来てくれれば、それだけ売り上げも上がりると
いうわけ。そのため、二人が衣装のままで学校中を回ることによって宣伝しようと文化祭
実行委員は考えたのだ。
「動きにくいけど別に構わないぜ。いいよな、宍戸。」
「えっ・・・ああ。」
本当は嫌だと思っている宍戸だったが、クラスのためだと思い一応了承した。二人は吸血
鬼とメイドという奇妙な格好で学園内を回ることになった。
「跡部、俺、腹減っちまった。何か食いにいこうぜ。」
「そうだな。何食おうか?」
「バナナチョコとか焼きソバとかどうだ?」
「いいんじゃねぇ?確か滝とかジローのクラスがそれっぽいことやってたよな。」
お腹が減っているというわけで、まず二人は何かを食べることにした。滝とジローのクラ
スでそういう店みたいなものを出しているのでそこに行く。
「いらっしゃいませ。って、うわあ、何その格好、二人とも。」
教室に入ってきた二人を見て、滝は驚きの声を上げる。まあ、当然と言ったら当然だろう。
「宣伝も兼ねて、この格好で回れって言われてんだよ。それより、俺達腹減ってんだよ。
焼きソバとバナナチョコ、二つずつな。」
「あっ、宍戸。俺、バナナチョコはいらねぇ。」
「そうか?じゃあ、バナナチョコは一つ。」
「了解。すぐ持ってくるから待ってて。」
制服の上からエプロンをした滝はすぐに注文されたものを持ってきた。二人はそれを食べ
始める。
「うまいな。」
「でしょ?結構自信作だぜ。」
「こんなのバナナ剥いて、チョコつけるだけじゃねーか。」
「そんな言い方ねぇだろ跡部。」
「じゃあ、味見させてみろよ。」
跡部は宍戸が食べていたバナナチョコを一口食べた。
「何すんだよ!お前いらねぇって言ったじゃねーか!!」
「いいじゃねぇか一口くらい。」
宍戸は自分のものを食べられ怒っているが、傍から見ればそんなことよりその光景自体が
問題あるだろとつっこみたかった。吸血鬼とメイドが仲良さ気にバナナチョコを食べてい
る図なんてなかなかないだろう。ここで、軽く食事を済ませると二人はいろいろなところ
を回った。お化け屋敷に入ったり、ゲームをしたりと。その間にたくさんの女子から写真
を撮らせて欲しいという申し出があった。テニス部レギュラーで人気のある二人がこんな
格好をしていたらそうなるのは当然だろう。初めはそんなことも楽しくて、快く引き受け
ていたが、あまりにもその数が多くて、いい加減嫌になってきてしまった。
「跡部、もう写真撮られるの嫌なんだけど。」
「俺もいい加減ウザくなってきたな。今ならまわりに誰もいないし逃げるか。」
「逃げるってどこに?」
「いいとこ知ってんだよ。」
「?」
女の子達がまわりにいなくなったのを見計らい、跡部は宍戸の手を引き、ある場所へと逃
げ込んだ。他の生徒からすれば“開かずの部屋”と呼ばれる教室へ・・・。
「跡部、ここってあの噂の開かずの部屋だよな?」
「まあ、確かに他の奴らはそう呼んでんな。」
「開かずの部屋って、赤いチャンチャンコとかいるんじゃねぇのか!?俺、嫌だぜ!早く
出ようぜこんなとこ。」
「何だよそれ?んなもんいるわけんねーだろ、バーカ!!」
開かずの部屋といったら、妖怪などが封印されている場所だと思い込んでいた宍戸は、思
いきり跡部にバカにされた。いくつかの本棚と小さなテーブルと数個の椅子があるこの教
室は確かにもう使用されていない開かずの部屋だった。だが、開かないはずがない。ふと
したことからこの部屋は跡部が管理することになっていて、鍵は跡部が持っていたのだ。
「この部屋の管理は俺がしてんだよ。だから、俺以外の奴らは絶対に入れねぇ。」
「へぇ、そうだったんだ。知らなかった。」
「もう内側から鍵かけちまったし、外からは誰も入ってこれねぇよ。しばらく、ここで休
もうぜ。」
「そうだな。」
しばらく何もせずにくつろいでいる二人だったが、こんな場所で二人きりになって、それ
も絶対に他の人が入ってこれないと分かっていて、跡部が何もしないわけがない。椅子に
座っていた宍戸に近づき、顎を上げ、キスをした。
「ふ・・・・んっ・・・」
突然の出来事で宍戸はビックリ。でも、こんなことはしょっちゅうあるので、そこまで動
揺はしなかった。
「はぁ・・・何だよいきなり。」
「ここで何にもしないでいるのって勿体ないじゃねーか。しようぜ宍戸。」
「でも、一応ここ学校だぜ。バレねーか?」
「大丈夫だろ。開かずの部屋なんだろここは。」
「あっ、そっか。」
開かずの部屋は宍戸が言っていたように、他の生徒の中では様々な噂がある。だから、あ
まり近づく人はいないのだ。それをいいこと跡部はここでヤろうと言い出した。まあ、バ
レないならと宍戸もかなり乗り気だ。
「それじゃあ、手始めに宍戸俺のをしろ。」
いつも通りの命令口調で跡部は宍戸に向かって言う。それと同時に宍戸の手にいくつかの
ゴムを落とした。
「何だよ、これは・・・。」
「好きなの使っていいぜ。お前、直接やるとこぼして衣装汚すだろ。次の公演もあるんだ
から汚すわけにはいかねぇよ。」
ヤると言ってもそれなりにこのあとのことを考えているらしい。
どこにこんなもんしまってやがったんだ?にしても、本当いろんなのがあるな。どれにし
よう?
フルーツの味からカクテルの香り、無味無臭のものまでさまざまなものがある。宍戸はフ
ルーツの中から好きな味を選んで、跡部のモノにつけやり始めた。
「んっ・・・ん・・んん・・・」
「何かその格好でやってんと、本当、ご奉仕してますって感じだな。」
「んんっ・・・ん・・・」
跡部にそう言われ、宍戸は咥えたままの状態で跡部のことを睨んだ。だが、跡部にはそん
な表情も可愛くて仕方なかった。
「つーかさ、あの話の二人の日常って本当はこんな感じじゃねーの?」
「ぅく・・・ん・・・」
違うと首を振りたいが、出来ないのでやっぱり目で語る。そんなに大きな反応を跡部がし
ないので、宍戸は結構必死だった。確かに顔には出していないが、跡部は意外と感じてい
たのだ。なので、宍戸が、本当に必死でするのでもうそろそろやばかった。
「くっ・・・宍戸、なかなかいいぜ。」
「ん・・・んんっ・・・んん・・・」
「うっ・・・!!」
小さな声を漏らし、跡部は達した。もちろんゴムの後始末は宍戸の仕事。しっかり結んで
紙に包み、ゴミ箱に捨てた。跡部はその間にチャックを上げる。
「さて、今度は俺がお前にしてやらなきゃな。」
「えっ・・・ちょっと・・・」
壁際にいる宍戸を跡部は後ろから抱き、反転させた。そして、スカートの中に手を入れ、
いきなりバックを慣らし始める。
「んっ・・あっ・・・・跡部ぇ・・・」
急に力の抜けたような声を出し、跡部に体を預ける。抱きかかえられるように後ろを慣ら
され、宍戸は跡部の耳元で喘いだ。
「あっ・・・あぁん・・・ああっ・・・・」
「可愛いな。スカートだとやりやすくていい。」
「そんな・・・くっ・・・う・・・」
「俺が挿れるまで、イクんじゃねぇぞ。この状態だと俺の衣装もお前の衣装も汚れる。」
「ハァ・・・あっ・・・じゃ・・そんなに・・・掻き回すなぁ・・・」
「ちゃんと、慣らさないと痛いぜ。それでもいいならやめてやるけど。」
「ヤダ・・・痛いのは・・・・」
「じゃあ、我慢しろ。」
「う〜・・・」
跡部にしがみつき、宍戸は必死で跡部の愛撫に耐える。何度もイキそうになるが、それに
跡部が気づき手を止める。しっかり後ろが濡れると跡部はまた宍戸を反転させた。
「宍戸、しっかり体支えてろ。」
「う・・・うん・・・・」
壁に宍戸を押し付け、スカートをしっかりまくり、ゴムをつけ、跡部は宍戸の中に入って
いく。
「うあっ・・・ああっ・・・!!」
「くっ・・・結構キツいな。」
「あっ・・・やっ・・・跡部っ・・・・」
しばらく立ったままの状態で後ろから犯される。宍戸はここが学校だということもすっか
り忘れ、甘い声を漏らしまくった。
「うあっ・・・んくっ・・・はぁん・・・・」
「宍戸、ちゃんと体支えて立ってろ。抜けちまう。」
「そん・・な・・の・・・・無理・・・」
「しょうがねぇな。じゃあ、ゆっくり膝つけ。そうすりゃ、少しはいいだろ。」
そのまま、崩れ落ちるように宍戸は膝をついた。それに合わせ、跡部も体を下げる。
「跡部・・・あっ・・・もっと・・・」
「もっと何だよ。」
「もっと・・・してぇ・・・・」
衣装のせいなのかねだる宍戸の姿はいつもより可愛く、艶めいていた。跡部はそのまま、
激しく攻め続ける。そのうちどちらにも限界が近づいてきた。
「うっ・・あん・・・もう・・・そろそろ・・・やべぇ・・・」
「そうだな。俺もかなりキてるし。」
「あっ・・・ハァ・・・くぅんっ・・・」
後ろから見ていても宍戸の姿はとてもキレイで、跡部は思わず宍戸の首元に噛みついた。
まるで吸血鬼のように。
「ひゃっ・・・あぁんっ!!」
噛みつかれて痛いはずなのに、全く痛みを感じない。むしろ、その刺激が快感になってし
まって、宍戸は達した。
「くっ・・・!」
それに少し遅れ、跡部も宍戸の中で絶頂を迎える。
「跡部、衣装どこも汚れてないよな?」
「ああ。大丈夫だぜ。まあ、俺が配慮してやったんだから当然のことだけどな。」
跡部が何気にいろいろと気を配っていたので、衣装は全く汚れず、まわりも大して汚れな
かった。軽くまわりをかたしたあと、宍戸はふと時計を見た。時間は2時を回っている。
2回目の公演は2時半から。開演まであと十数分しかない。
「うわっ、跡部、早く教室帰んねぇとヤベェぞ。」
「本当だ。じゃあ、行くか。宍戸。」
「おう。」
2回目の公演は1回目よりも主役二人の演技がすごかった。宣伝効果のおかげで、客足も
増え、舞台は大盛り上がり。そして、最後に跡部がアドリブで宍戸にキス。これには観客
も他の出演者もビックリ。だが、そのおかげでインパクトは最高。拍手喝采だった。
「跡部ー、いつも言ってるだろうが、人前でキスすんなって。」
「別にいいだろ?それで盛り上がったんだからよ。」
「うー、でも・・・」
「おい、聞いてくれよ。さっき文化祭実行委員会の集計の結果が出てたんだけど、俺達の
クラス、売り上げ金も人気も1位だってよ!!」
「本当!?すごーい!!跡部君と宍戸君のおかげよ。ありがとう!!」
どうやら2回目の公演でかなりの売り上げと人気が出たようだ。宍戸からすれば納得いか
ない部分はかなりあったが、クラスが学園内で人気投票で1位になれたので一応満足だ。
何はともあれ、今日の文化祭は大成功なようだ。だが、文化祭は明日もある。宍戸も跡部
もクラスの人に褒められ、明日も頑張るぞと張りきるのであった。
END.