跡部の奴、まだかなー。先生に呼び出されるって何の用だろ?
跡部が先生に呼び出されているので、宍戸は教室で跡部の帰りを待っていた。他の生徒は
もう全員帰ってしまった。教室に残っているのは宍戸だけだ。
「早く帰って来いよなー。」
一人で暇なので、宍戸は軽くぼやいてみる。すると、何やら廊下の方から騒がしい声が聞
こえてきた。
あれ?ほとんどうちの学年の奴帰っちまったはずなのに誰だろう?
廊下の方を眺めていると、明らかに氷帝学園の制服ではない服を着た男子生徒が三人歩い
ているのが見えた。髪は金髪や茶髪に染められていて、制服の着かたからして、おそらく
不良と呼ばれる部類の人だと、宍戸はすぐに察知した。関わらないでおこうと窓の方を向
こうとしたその瞬間、その中の一人とバッチリ目が合ってしまった。
うわっ、ヤベッ!!
「おっ、この教室まだ誰か残ってるぜ。」
「ホントだ。あの制服からしてたぶん男だよな。」
「でも、結構可愛くねぇ?俺、好みだぜ。」
「じゃあ、ちょっと悪戯するか?」
「ああ。そうしようぜ。」
声が大きいのでその会話は宍戸の耳にしっかり入っていた。宍戸はヤバイと思い、くるっ
と体を反転させ、思いっきり目を逸らした。
「なあ、あんたここの生徒だよな。」
「へぇ、近くで見てもやっぱ可愛い顔してんじゃん。」
「ちょっと、俺達につき合わねぇ?」
マジでヤベェ。どうしよう・・・こういうのには関わらないのが一番だと思うんだけどな、
ここまでまともに声かけられちゃ、無視できねーよ。
「俺、男だけど。」
「そんなの見りゃ分かるって。でも、顔は好みなんだよねー。お兄さん達と遊ばねぇ?」
「今、友達待ってるんで。」
「いいじゃねぇか、ちょっとくらい。暇つぶしにいいことしようぜ。」
不良の一人に腕を掴まれ、宍戸は思いきりそれを振り払った。
「離せっ!!」
「へぇ、そういう態度とるんだ。」
「言うこと聞かないガキはお仕置きしないとな。」
ドスッ
「ぐっ・・・は・・・」
宍戸はみぞおちを殴られ気を失ってしまった。そして、不良の一人が倒れこんだ宍戸を肩
に担ぐ。
「ここじゃ、バレバレだからよ。体育倉庫とかそこらに連れてってやろうぜ。」
「そうだな。はは、楽しみ。」
「鍵があるとこのがいいよな。」
いやらしい笑みを浮かべながら、三人は宍戸をそのまま体育倉庫のある方まで担いで行っ
た。
「侑士、今日は帰りどこ寄ろうか?」
「せやなあ・・・あれ?」
これから帰ろうと仲良く話をしていた岳人と忍足だが、学ランを着た見たこともない生徒
が歩いているのを見て不審に思った。
「なんやあいつら。どう見てもうちの生徒やないよな。」
「うん。あっ、ねぇ、あいつらの一人が誰か肩に抱えてるよ。」
「ホンマや。・・・あれ、宍戸とちゃうか!?」
「うそ!!・・・本当だ。ねぇ、侑士。これってかなりヤバイ状況じゃない?」
「せやなあ。あっ、あいつら体育倉庫に入りおった。」
「どうしよう!!宍戸が危ない!!」
しばらくその様子を眺めていた二人だったが、事の重大さに気づいて青ざめた。今のは見
た感じどう見ても、高校生の不良だ。そんな奴らが宍戸を抱え、体育倉庫に入っていった。
こんな状況で何も起こらないはずがない。
「侑士、宍戸を助けなきゃ!」
「でも、相手はどうみても不良っぽいし、年上って感じやで。俺達だけで助けられるか?」
「でも・・・・そうだ!跡部。跡部を呼びに行こう!!」
「ああ。跡部ならなんとかなるかもしれん。」
岳人と忍足は跡部を呼びに校舎内へと走った。宍戸がものすごいことに巻き込まれようと
している。そんなことを見逃すわけにはいかないのだ。
その頃、跡部は教室に戻り、宍戸がいないことを不思議に思っていた。
「あれ?おっかしいな。宍戸の奴、どこ行きやがったんだ?鞄が置いてあるからまだ帰っ
てはいねぇみたいだけど・・・。」
『跡部!!』
跡部が首を傾げ、考えていると、岳人と忍足がすごい形相で教室に駆け込んで来る。
「どうした、お前ら?」
「跡部、宍戸が・・・宍戸が大変!!」
「何か高校生の不良っぽい奴が、宍戸を連れて体育倉庫に入っていったんや!!」
「跡部、早く助けに行ってあげて!!じゃないと宍戸が・・・。」
この二人の慌てっぷりと話の内容から跡部は宍戸の身に何が起こったのかをすぐに理解し
た。とっさにテニスラケットを掴み、教室を飛び出す。全力で走り、跡部は体育倉庫へと
向かった。岳人達もそのあとを追う。
「うっ・・・う・・ん・・・」
宍戸は薄暗い倉庫の中で目を覚ました。ブレザーは脱がされ、ネクタイで手首を頭の上で
縛られ、サッカーボールの入ったかごに繋がれていた。
う、うそだろ・・・。何だよ、この状況は!?
「お目覚めか?」
「おいっ、テメーら何のつもりだ!!」
「何のつもりだって、そんなの決まってんじゃねぇか。なあ?」
「ああ。お前、男のくせに可愛い顔してるからよ・・・」
「一回くらい犯らせてもらおうと思ってな。」
「ふざけるな!!何で、男の俺がテメーらなんかに犯られなきゃなんねーんだよ!!」
くっそー、どうやら鍵かけられちまってるみたいだし、この状態じゃどう考えても逃げら
んねぇじゃんか。う〜、どうしよう・・・。
「じゃ、始めるか。」
「そうだな。」
不良の一人がワイシャツのボタンに手をかけると、宍戸は思いきりそいつを蹴飛ばした。
「やめろっ!!」
「ってぇ・・・ちょっと、今のはやりすぎだよな。」
「ああ。おい、お前、足押さえてろ。」
「了解。」
すると、蹴られた不良が学ランの内ポケットからナイフを取り出し、宍戸の顔に突きつけ
る。
「あんまりおいたしてると、そのキレイな顔が傷つくことになるぜ。」
「くっ・・・」
ナイフ出すなんて卑怯だ。マジでヤベェよ。怖い・・・誰か助けて。
宍戸は抵抗するのをやめ、目をつぶった。さっきのナイフでワイシャツは切り裂かれ、ほ
とんど跡部しか見たことのない肌が露わになる。
「体の方もキレイじゃねーか。」
「俺、上の方やるからお前下の方やっていいぜ。」
「お前らずりーぞ。俺だってやりてぇよ。」
「あとで、たっぷり犯らしてやんよ。」
あー、俺、このまま本当にこいつらに犯られちゃうのかな?そんなの絶対嫌だ!!跡部以
外の奴なんかに触られたくねぇ!!
そんな宍戸の思いとは裏腹に、不良三人組は宍戸の体に触り始める。二人に上と下を同時
に弄られ、嫌だと思いながらも敏感に反応してしまう。
「んっ・・・くっ・・・」
「ほら、もっと声出してもいいんだぜ?」
「いいんだろ?ここを弄ばれて。」
いいわけねぇだろ!!嫌だ・・・気持ち悪ぃ・・・何で俺がこんな目に合わなきゃいけね
ぇんだよぉ。
悔しさと羞恥心と怒りから宍戸の目から涙が零れ落ちる。跡部にされるのとは違い、体が
感じるのは嫌悪感のみ。なのに抵抗も出来ない、下の方は与えられる刺激に反応してしま
う。そんな自分が悔しくて、宍戸は唇を噛み、必死で声が出るのを抑えていた。
もう嫌だ!!誰か助けて!!跡部以外にこんなことされたくない・・・跡部、助けて。跡
部・・・跡部・・・跡部っ!!
宍戸は何度も心の中で跡部の名前を呼ぶ。そして、ついに耐え切れなくなり、声に出して
叫んでしまった。
「助けて、跡部―――っ!!」
その瞬間、向かいの窓の外から聞き覚えのある声で聞いたことのある台詞が聞こえた。
「絶望への前奏曲を聴きやがれ――!!」
ガッシャ―ン!!
その声と共に窓ガラスが割れ、見慣れたテニスボースが目にも止まらぬ速さで飛び込んで
きた。そのボールは足を押さえていた不良の後頭部を直撃。その不良はそのまま床へ倒れ
こんだ。そして、割れた窓からテニスラケットといくつかのボールを持った跡部が軽やか
に入ってくる。
「テメーら、俺の宍戸に何しやがる。」
跡部は見下すような視線で不良達を見下ろした。
「跡部・・・」
宍戸が安堵の声を漏らし、名前を呼ぶと跡部は宍戸の方を見た。ワイシャツを切り裂かれ、
かなり乱れた格好の宍戸を見て、跡部の表情は一変した。
「何だ、テメー。俺達をなめてんのか?」
宍戸のワイシャツを切り裂いた、ナイフを持った不良が跡部の方を振り返り、こう放った。
だが、跡部には全く持って聞こえていない。
「テメーら、絶対許さねぇ!!」
「はん、出来るもんならやってみろよ。こっちにはナイフがあるんだぜ?」
そんなことを言われても跡部は全く無視。持っていたテニスボールを上にあげ、ラケット
を振り下ろした。
「破滅への輪舞曲だ!!」
ボールは見事にナイフを持った手に命中。ナイフはどこかへ飛んでいってしまった。そし
て、手に当たったボールが跡部のもとへと戻ってくる。それを、今度はその不良のみぞお
ちを目がけて放った。
「ぐっ・・・くはっ・・・」
これも見事に命中し、その不良は気を失った。最後の一人はこの跡部の気迫に押され、逃
げようとする。だが、跡部は容赦しない。
「わ、悪かった!だから、許してくれ!!」
「許すだと?許すわけねぇだろ、バーカ!!」
跡部はもう一度ボールを放ち、最後の一人の急所を狙った。これももちろんヒットし、そ
の不良も気絶した。そして、とどめだと言わんばかりに跡部はその不良達の手、頭、腹を
思いきり踏みつける。不良達は鈍い声を上げ、再び気を失う。この時の跡部の表情はまさ
に鬼と言うにふさわしかった。
「俺の大事なもんを傷つけたんだ。当然の報いだと思え。」
跡部はそう言い放ち、宍戸を助ける。手首のネクタイを外し、ブレザーを着させた。
「大丈夫か?宍戸。」
宍戸は返事もせず、ただ、涙を流ししきりに震える。相当怯えているらしいことが見てと
れた。ここにいても宍戸が落ち着くはずがないと思い、あとのことは全て岳人と忍足に任
せ、跡部は宍戸を連れ、体育倉庫をあとにした。
宍戸を自宅に連れて帰り、自分の部屋へと直行する。鞄を置き、宍戸をベッドに座らせ、
思いきり抱きしめた。宍戸は一度は止まった涙をまた溢れさせ、跡部にしがみつき、泣き
じゃくった。
「うわああ――っ、跡部――!!」
「大丈夫だ。もう大丈夫だぜ。」
「怖かった・・・怖かった・・・・」
「ああ。もう大丈夫だから安心しろ。」
しばらく跡部の胸で宍戸は泣きじゃくる。跡部はその間、ずっと、大丈夫だと繰り返して
いた。ある程度、宍戸が落ち着くと跡部は優しく宍戸の唇にキスをする。
「んっ・・・・」
さっきまでの恐怖をかき消すように、跡部は何度も何度もキスを繰り返す。そして、ブレ
ザーを脱がせて、さっきつけられたキスマークを消すがごとくに宍戸の上半身のいたると
ころにキスの雨を降らせた。
「あっ・・・ああ・・・跡部・・・」
「今日は最後までやらねぇから安心しろ。」
そう言うと跡部は宍戸の一番敏感な部分に口をつけた。さっきは弄られ嫌悪感しか感じな
かった部分ではあるが、跡部にされるとこれ以上ない快感が体中を駆け抜ける。
「やっ・・・あぁ・・・んんっ・・・」
「ここをこうしていいのは、俺だけだ。」
「うっ・・・はぁん・・・」
「俺だけを感じろ。あいつらのことなんか忘れちまえ。」
「あっ・・・ああっ・・・・」
跡部の言葉、一つ一つが宍戸にとってはうれしくてたまらなかった。跡部に全て身をまか
せ、体中で跡部を感じる。傷が少しずつ癒されていくのを感じながら宍戸は達した。
「はぁ・・・・あぁんっ!!」
息を乱して、しばらくその余韻に浸る。呼吸が整ってくると跡部の顔をしっかりとした目
で見据えて、宍戸は言った。
「跡部・・・跡部のもしていいか?」
「ああ。直でしてくれんのか?」
「うん。今日はどうしてもしたいから。」
「分かった。」
跡部は快く頷き、宍戸に自分のものをさせた。宍戸は夢中で跡部のものを咥える。自分が
跡部にすることによって、今日のことを忘れたいのであろう。
「くっ・・・宍戸っ!!」
「んんっ・・・んん・・・・」
宍戸は跡部の出した雫を全て飲み込むと満足したような吐息を漏らした。
「・・・ふ・・はぁ・・・・」
「大丈夫か?」
「ああ。なあ、跡部。もっと、キスしてくれよ。」
「ああ。」
再度、二人は口づけを交わす。また、何度かしたあと、宍戸は跡部に抱きつくような形で
寄りかかった。
「少しだけ、このままでいさせてくれねぇか?」
「ああ。いいぜ。」
宍戸はそのまま、ゆっくりと瞳を閉じた。跡部の腕の中でこれ以上ない安心感と優しいぬ
くもりを感じ、宍戸は眠りに落ちた。跡部はそんな宍戸を抱きしめ、耳元でそっと囁く。
「お前は俺だけのもんだ。他の奴のには絶対に渡さねぇ・・・。」
しばらくの間、二人はこの状態でいるのであった。宍戸が目を覚ましたとき、跡部の腕の
中にいる限り、今日の出来事はもう過去のことになるだろう。
END.