Paradisiac Beach

夏休みも終わりに近づき、宿題も一通り終わらせ、やることがなくなってきた頃、跡部、
宍戸、岳人、忍足の四人はたまたま街で会い、せっかくだからということで喫茶店でお茶
を飲んでいた。
「そろそろ夏休みも終わっちまうな。」
「最後にどこか行きたいよなあ。お前ら何か予定あんの?」
「別にー。それほど行きたいって場所もねぇし、まあ、海には行っておきたいなあとは思
うけど。」
「せやなあ。でも、この時期のビーチは人がいっぱいであんまり行く気になれんし。」
海には行きたいが人ごみは嫌。それには跡部や宍戸も同感だった。
「跡部ー、お前んちプライベートビーチとか持ってないの?」
「あるぜ。」
『マジで!?』
何となく聞いてみた質問に跡部はさらっと答える。プライベートビーチなどあまるほど持
っていると言わんばかりにそれがある場所の名前を次々にあげた。
「すげぇ。さすが跡部だな。」
「だったらさあ、その中のどっかに連れてけよ。」
「あーん?何でテメェらを俺様のプライベートビーチに連れて行かなくちゃいけねぇんだ
よ?」
「ええやん。夏の思い出っちゅーことで。」
「俺も行きてぇ。なあ、跡部、行こうぜ。」
宍戸にそう言われると何となく断れなくなってしまう。どうしようかと考えているとふと
良いアイディアが跡部の頭に浮かんだ。
「・・・悪くないかもしれねぇな。」
「何かえらい間があったけど、それは何なん?」
「別に大したことじゃねぇよ。いいぜ、俺様のプライベートビーチ、今回だけは特別に連
れてってやるよ。」
「マジで!?やったー!!じゃあ、いつ行くか決めなきゃだな。」
跡部のプライベートビーチに行けると宍戸は素直に喜ぶ。岳人や忍足もまさか跡部がいい
とは言ってくれるとは思わなかったので、驚きつつも嬉しそうな顔を見せる。
「明日とか言われても用意とかあるから無理だしな。」
「じゃあ、明後日でよくねぇ?夏休みもそんな残ってるわけじゃねぇし。」
「まあ、ええんやない?明後日までに用意しとけばええんやな。」
「じゃあ、決まりだ。明後日の朝、俺んちに集合だ。分かったな。」
『おう!!』
善は急げと出発は明後日の朝となった。これは楽しいレジャーになりそうだと跡部は他の
メンバーに気づかれないように口元を緩ませる。今次々に頭に思い浮かんでくる計画を跡
部はこの中の一人だけに話すことにした。

そして出発日、跡部邸に集まったメンバーは移動のため豪華なリムジンに乗り込んだ。
「うわあ、リムジンで移動とかありえねぇし。」
「毎度のことだろ。それよりさあ、あっち着いたら何する?」
「せやなあ・・・スイカ割りとかどないや?」
「スイカないと出来ねぇじゃん。跡部、スイカとかってあんのか?」
「別にスイカなんてあっちに行って買えばいいじゃねぇか。」
「現地調達ってことか。他には何する?」
『そうだなあ・・・』
快適な車の中で、ビーチに着いてからの計画を練る。宍戸や忍足は純粋に何をしようか考
えて計画を練っている。しかし、跡部と岳人はそんな会話に混じりながらも頭の中では全
く違うことを考えていた。宍戸と忍足がわいわい話しているのを見ながらこそこそと相談
をする。
「跡部、アレいつ使うんだ?」
「今度のは即効型だからな。あっちに着いてからでも十分だ。」
「前のはすげぇ眠くなるみたいだったけど、それは平気なのか?」
「ああ。かなり改良したからな。全く問題ねぇよ。」
「さっすが跡部。その成果、楽しみにしてるぜ。」
「さっきから何こそこそ話してんだ?」
「べ、別に何でもねぇよ。なあ、跡部。」
「ああ。お前らがどんな水着姿になるんだろうなってことを話してただけだ。」
宍戸が不審な目をして尋ねてくるので、岳人は少々動揺してしまった。しかし、跡部は話
していたこととは全く違うことを飄々と言ってのける。しかも妙にリアルな内容なので、
宍戸や忍足は跡部の言葉をそっくりそのまま信じてしまった。
「何、意味分かんねーこと話してんだよ。水着姿なんて水泳の時間にいくらでも見てるじ
ゃねーか。」
「別にそんな変わった水着持ってきてへんで。学校で使うてるのより、ちょっと模様とか
色が多いだけや。」
「何だ、つまんないのー。」
跡部の言葉に乗り、岳人も全く嘘の反応を示す。水着の話なんて全くしてはいない。しか
し、今、自分達のしたいことがバレてしまってはせっかくの計画が台無しになってしまう
のだ。
「ま、水着やなんかは着いてからのお楽しみでいいんじゃねぇ?」
「だから普通のだって。」
「そんな楽しみにしててもがっかりするだけやで。」
「いいんだよ!やっぱ、いつもと違う格好ってのはいいもんだからな。」
この岳人の言葉に自分達が計画していることへの期待感がある程度隠されていた。しかし、
宍戸も忍足もそんなことには全く気づいていなかった。

リムジンを降りると次はクルーザーでの移動となった。クルーザーに乗る前に食べ物や飲み
物など必要なものを買って行く。跡部のプライベートビーチは都会から離れた小島にあるの
だ。そのクルーザーの中で、四人は軽くお菓子を食べ、飲み物を飲む。
「おっ、これうまいじゃん。侑士、これ食べてみろよ。」
「ホンマ?」
「俺も食ってみようかな。」
「これもいけるんだぜ。」
「へぇ。じゃあ、俺はそっち食べようっと。」
宍戸も忍足も跡部や岳人が勧めてくるお菓子を疑いなく食べる。全員が同じように食べて
いるのだから、別に疑う必要などなかったのだ。しかし、ここにさっき跡部と岳人がこそ
こそと話していたことの秘密が隠されていた。
「ホンマや。これ、いけるやん。」
「だろ?」
「おっ、これもうまいぜ!!跡部が出すお菓子って、大抵うまいもんばっかだよな。」
「当然だろ?ほら、もっと食えよ。」
あまりのおいしさに二人は勧められるまま、パクパクと出されたお菓子を食べる。満腹に
なって満足したところで、目的地である小島が見えてきた。
「跡部、俺らの目的地ってあそこか?」
「ああ。今は無人島らしいぜ。そんなに大きい島じゃねぇしな。」
「ふーん。それじゃあホンマにそのビーチにいるんは俺らだけになるんやな。」
「あっちに着いたらすぐに遊べるようにさ、今から水着に着替えてようぜ!!」
岳人の一言で、それぞれ持ってきた水着に着替えようとする。さっきのお菓子の効果は既
に表れ始めていた。上着を脱ごうとしたその瞬間、宍戸と忍足はその異変に気がついた。
『・・・・・・』
何かがおかしい。ないはずのものが自分の体にある。しかもそれは何度か見たことあるも
ので、自分達にとってはあまり好ましくない状況だ。
「跡部ーっ!!」
「岳人っ!!」
犯人はもうこの二人しかいない。こんな体では持ってきた水着は着られないと、いや、そ
れ以前にこんな体にして何がしたいんだとつっこむが如く、宍戸と忍足は楽しそうに笑っ
ている跡部と岳人を怒鳴りつけた。
「テメェらまた謀りやがったな!!」
「こんな体になってまったら、水着になれないやんか!」
「心配すんなって。」
「水着なら、ちゃーんとこっちで用意してるぜ。」
そう言いながら跡部は袋の中から女物の水着を出した。どちらもビキニタイプの水着で、
片方は跡部が宍戸に着せたいと思って選んだもの、もう片方が岳人が忍足に着せたいと思
い選んだものである。跡部が選んだ水着は、基本が薄いピンク色で、可愛らしい真っ赤な
さくらんぼの模様が入っている。また、下は横に紐がついており、腰まわりの部分はヒラ
ヒラしたフリルで飾られている。一方、岳人が選んだ水着は、跡部が選んだものよりは少
し大人っぽい感じで、上は首の後ろで紐を結ぶような形になっており、下は短めのパレオ
がついている。色は濃いブルーという感じで、模様はそれほど入っていない。
「・・・何で、んなもん用意してあんだよ・・・?」
「初めからこういうつもりだった・・・ってわけか。」
「まあ、いいじゃねぇか。ほら、早く着替えろよ。」
『よくない!!』
「だったら、俺らで着替えさせるぜ。それでもいいのか?」
『それは絶対嫌だ!!』
着替えたくないのは山々だが、着替えさせられるのはもっと恥ずかしい。女の体になって
しまった宍戸と忍足は、仕方なく用意された水着に着替えた。
「ほら、似合うじゃねーか。」
「セクシーだぜ、侑士!!」
「そんなこと言われても全然嬉しくねぇ・・・」
「こんな水着・・・ありえへんわ・・・・」
突然こんなことになってしまった二人は全然納得がいかないという表情で、お互いのパー
トナーを見る。しかし、跡部と岳人は実に嬉しそうな、そしてこれから何をしてやろうか
というわくわくとした顔で笑っているだけであった。

「よっしゃー、到ー着!!」
はしゃいだ様子でまず砂浜に下りたのは岳人だ。それに続くように残りのメンバーも真っ
白な砂浜に足をつけた。
「ホンマに無人島って感じやな。」
「自由に使っていいぜ。俺はちょっと取ってくるもんがあるから、適当に遊んでろ。」
何かを取りに行くと言って、跡部は向こうの方へと歩いて行ってしまった。
「自由に遊べって言われてもなあ・・・侑士、何して遊ぶ?」
「せやなあ・・・こないな格好であんまり激しく動きたくはないし。でも、まあ海には入
っとこうか。」
「あっ、それなら俺、ビーチボール持って来てるぜ。跡部が来るまでこれで遊ぼうぜ。」
そう言いながら宍戸は鞄からしぼんでいるビーチボールを出し、息を吹き込んで膨らませ
る。それを持って宍戸は波打ち際まで、駆けて行った。
「ひゃー、冷たくて気持ちいいー!!お前らも早く来いよ。」
『おう!!』
姿形は女の子になっているが、態度やしゃべり方はもとの宍戸のままだ。大きなビーチボ
ールでしばらく水中バレーのようなことをしていると、岩陰の方からモーター音が聞こえ
てくる。
ブーン・・・
「何やこの音?」
「この島、無人島なんだよな?何だろ?」
「あっ、跡部っ!!」
モーターの音は、跡部の乗るジェットスキーの音であった。水飛沫を上げながら、ジェッ
トスキーに乗って、跡部は三人のもとへやって来る。ジェットスキーの立てる水飛沫の所
為で三人は頭から水をかぶる状態になってしまった。
「何すんだよ!!跡部!!」
「せや。こないなとこまで、そんなもんに乗って来たら危ないやろ!!」
「うるせーな。テメェらに用はねぇんだよ。宍戸、後ろに乗れ。」
「は?」
「いいから、乗れ。」
「お、おう。」
どうやら跡部は宍戸を後ろに乗せるためにここまで来たようだ。ただ水をかけられただけ
の岳人と忍足は怒ったような顔で跡部を睨む。
「それじゃあ、俺らは海の散歩でもしてくるから、テメェらはここらへんで遊んでろよな。」
「そのビーチボール好きに使ってていいぜ。」
ジェットスキーでの散歩とはなかなか楽しそうだと、宍戸は跡部の体にしっかりつかまり、
笑顔で不機嫌顔の二人に手を振った。
ブーン・・・・・
遠ざかってゆくジェットスキーのエンジンの音を聞きながら、その場に残された二人は怒
りをそのまま表に出す。
「あー、もう!!跡部の奴、ムカツクー!!わざわざ見せつけに来た上に水かけて行きや
がってー!!」
「あーあ、眼鏡がびしょぬれやわ。岳人、いったん浜辺に戻ってもええ?」
「ああ。大丈夫か?」
「別にダテ眼鏡やからな。外しても見えないってことはないから平気やけど、やっぱ跡部
のあれには腹立つわ。」
「だよなあ。浜辺の方戻ったらさ、日焼け止めの塗りっこしねぇ?今気付いたんだけど、
日差しが結構強くってさ、これは焼けるなあと思って。」
「別にええよ。あっ、でも、変なことはすんなや。」
「あはは、しねぇよ。じゃあ、行くか。」
「ああ。」
眼鏡を外しに、そして、日焼け止めを塗りに岳人と忍足はいったん浜辺に戻ることにした。
浜辺に戻るといつの間にかパラソルが立てられていて、二人は少々驚いた。
「いつの間にこんなの立てたんだろうな?」
「さあ。きっと跡部の執事とかメイドとかが立てといたんちゃう?」
「さすがだな。あっ、侑士、水着の紐解けかけてるぜ。」
「どこ?」
「首のとこ。あっ、下手に動くと・・・」
忍足の水着の紐はもう解ける寸前まで緩んでいた。ふと忍足が首を動かした瞬間、その紐
は完全に解けてしまう。水着の構造上、その紐が取れてしまったために、今の忍足だから
こそある胸のふくらみが岳人の目の前で露わになってしまった。
「わああっ!!」
どう隠していいのか分からず、忍足は思わず岳人に抱きついた。確かにそうしておけば、
岳人からは見えないが、そのかわりに岳人のむき出しの体にそのふくらみが直接当たるこ
とになってしまう。
「わあわあ、ちょっと待て侑士!!それはヤバイって!!」
「そないなこと言われても〜。」
いったんそうしてしまうと、下手に離れることは出来ない。直接感じる柔らかな感触に岳
人の心臓はドキドキと速くなりまくっている。女の子バージョンの忍足の水着姿が見てみ
たいとは思っていたが、こんなハプニングが起きるとやはりパニくってしまうのだ。
「じゃ、じゃあ、俺、目つぶってるからその間に水着直せよ。」
「せ、せやな。ちゃんと、目つぶっててな。」
「分かってるよ!」
何とか解決策を見つけ、二人は落ち着こうとする。しかし、こんなことが起こってしまう
となかなか胸のドキドキはおさまらない。忍足が水着を直し、問題がなくなっても、しば
らく二人はまともに目を合わせられなくなってしまった。

そのころの跡部と宍戸は、ジェットスキーでかなり沖の方までやってきていた。ある程度
のスピードを出しているので、潮風が普通に吹いている時よりも強く涼しく感じる。
「すげぇー。超気持ちいいー。」
「もう少し飛ばすか?」
「おう!!」
「落ちねぇようにしっかりつかまってろよ。」
跡部がそう言うと宍戸は素直に跡部にしがみつく。女の子になった宍戸の体は男の時の体
よりかはいくらか柔らかく、跡部はそんな柔らかい感触を背中で感じ楽しんでいた。しか
し、調子に乗りスピードを出しすぎたジェットスキーはバランスを崩し、転覆してしまう。
『うわっ・・・』
バッシャーンっ!!
二人はそろって海に投げ出された。しかし、宍戸が跡部にしっかりとしがみついていたた
め、二人がそれほど離れたところに飛ばされるということはなかった。
『ぷはっ・・・』
だいたい同じようなところに顔を出した二人は、顔を見合わせて笑う。あれだけのスピー
ドを出して、激しく投げ出されたわりには大丈夫であるようだ。
「おっまえ、飛ばしすぎー!!」
「ちょっとハンドル操作をミスっただけだ。でも、たまにはこんなスリル味わうのもいい
だろ?」
「まあ、悪くはねぇな。」
立ち泳ぎをしながら、楽しそうに話す二人だが、突然宍戸が悲鳴を上げた。
「ひゃああっ!!」
そして、思いきり跡部に抱きつく。そこまで深い場所ではないがとっくに足のつかなくな
っている場所なので、跡部は一瞬沈みそうになる。
「うわっ・・・ど、どうしたんだよ?宍戸。」
「あ、足に何か絡み付いてる〜・・・やっ、の、のぼってきてる〜!!」
得体の知れないものが足に絡み付いていると宍戸は大パニック。のぼってきてるいう言葉
を聞く限りでは何か生物らしい。
「跡部、やだっ・・・取ってぇ!!」
「取ってって言われてもこの状態でどう取れってんだよ!?」
足のつかない場所で、思いきり抱きつかれている状態でどう取れというのか。跡部が困惑
しながらもその何かを取ろうと宍戸の足に手を伸ばすと、宍戸はさらに跡部を困らせるよ
うな反応を見せる。
「やっ・・あ・・・跡部、そんなとこ触んなあ。」
「こ、こんなときにそういう声、出してんじゃねぇよ!」
「だってぇ・・・わっ・・・跡部、早くぅっ!!もう太もものとこまできてる〜。」
「あーん?太もも?全く、何がくっついてんだ?」
宍戸の反応に興奮する気持ちを抑えつつ、跡部は太ももに手を伸ばす。そして、何か柔ら
かいぐにゅぐにゅした感触のものを捕らえた。その瞬間、その物体(生物)は何かを放ち、
宍戸の足から離れていく。
「わあああっ!!」
その何かが足にかかり、宍戸は再び悲鳴を上げる。とにかく離れたから大丈夫だと落ち着
かせようとするが宍戸は半べそ状態で、さらに激しく跡部に抱きつく。
「宍戸、マジで落ち着け!!このままだとお前も俺も溺れるぞ!」
「もうやだあ、浜辺に戻る〜!!」
「分かった。分かったから、ちょっと離れろ。マジで沈む・・・」
涙目になっている宍戸を必死でなだめ、ジェットスキーに乗せる。自分もそれに乗り、ハ
ンドルを握ると浜辺に向かって発進させた。
(女の宍戸。確かに見かけも感触もなかなかいいけど、逆に刺激が強すぎだ。まだ、胸の
感触・・・ハッキリ残ってやがる。)
思いきり抱きつかれていたために、跡部の体には柔らかな宍戸の胸の感触が残っていた。
そして、さっきの反応。跡部はもう理性を保つことでいっぱいいっぱいになっていた。

跡部達が浜辺に戻ると今度は四人でスイカ割りやビーチバレーをして遊んだ。時間が経つ
のを忘れ、存分に遊ぶと、すっかり太陽は水平線に近づき、オレンジ色にその色を変えて
いる。
「はあー、疲れたー。女になってんと体力半減するよな。」
「分かるわー。いつもよりメッチャ疲れとるもん。」
「侑士、海見てみろよ!!」
「なかなかいい景色だぜ。」
宍戸と忍足の二人がぐったりとして休んでいると、岳人と跡部が海を指差しながら声をか
ける。そこには夕日で出来た黄金色の光の道が出来ていた。
『うわあ・・・』
その滅多に見られない素晴らしい景色に宍戸と忍足は思わず感嘆の声を漏らす。さっきま
での疲れもすっかり忘れ、二人は跡部と岳人のもとへと駆け寄る。
「すげぇ・・・道が出来てるみてぇ。」
「綺麗やなあ。こんな景色、東京にいたら見られへんわ。」
「何か映画のワンシーン見てるみてぇだよな。ラブロマンスだとさ、こういうシーンでは
必ずラブシーンだよな侑士。」
「ま、まあ、大抵はそうやろな。」
「じゃあ、俺達もしようぜ。」
「えっ、でも、跡部とか宍戸とかいるやん。」
「別にいいじゃん。そんなのお前ら気にしねぇよな。」
「わっ、跡・・・」
くるっと岳人が振り向いた瞬間、跡部は既に宍戸の唇を奪っていた。見せつけるかのよう
に跡部は深々と宍戸にキスをしている。宍戸が女になっているため、それこそまるで映画
のワンシーンのようであった。
「見せつけやがってー。よし、俺らもするぞ侑士!」
「もう少し雰囲気とか考えろや。」
「いいんだよ!ほら、早くしないと日が沈んじまうぜ。」
「仕方あらへんなあ。」
少々呆れながらも忍足は岳人がキスをしやすいように、少し屈んでやる。跡部と宍戸ほど
ディープなものではないが、二人もこの美しい景色をバックにラブシーンをやってのけた。
そんなことをして、どちらも満足すると、もう一度夕日の方へ視線を移す。
「そろそろ沈んじまうな。」
「この島は星も綺麗なんだぜ。いったんここにある屋敷に戻って、着替えてからまた夜に
来ようぜ。」
「こんな小さな島にも屋敷があるんかい。」
「当然だろ。そういえば、花火も用意してやったんだ。たくさんあるから、ここでやろう
ぜ。」
「おっ、いいじゃん花火!楽しみだな。」
そんなことを話しているうちに太陽は水平線の向こうにすっかり消えてしまった。藍色の
闇がだんだんと四人のもとへ迫ってくる。
「よし、じゃあいったん屋敷に行くか。」
『おう!!』
いったん屋敷に戻り、シャワーを浴びたり、着替えをしたり、夕食をとろうと四人は海と
は逆の方へと歩き出す。花火もしかり、屋敷に泊まることもしかり、夜になっても楽しみ
はたくさんあるようだ。

                                END.

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