After Christmas Party(AS)

跡部の部屋まで来ると、宍戸は迷わずにベッドへ直行した。ご機嫌な様子でベッドに腰か
けると、手招きをして跡部を呼ぶ。そんな宍戸につられて跡部もさっきからずっと顔が緩
んでいる。
「早く来いよ、景吾ー。」
「そんなに慌てんなよ。」
ゆっくり自分のベッドに向かい、宍戸の前まで来るとその隣に腰を下ろす。跡部が隣に座
ると宍戸はまたさっきのように絡み始めた。ニコニコしながら跡部の首に腕を回して、舌
ったらずな喋り方で、いろいろなことを跡部に要求する。
「なあ、景吾、ぎゅうってしてぇ。」
「抱きしめろってことか?」
「おう!!そんでなぁ、そのあとはぁ、キスして欲しい!」
子供っぽい笑顔で宍戸は言う。そんなにして欲しいならと跡部は何のためらいもなしに宍
戸のことを抱きしめ、深い口づけを続けざまに何度もしてやった。いつもなら多少は恥ず
かしがったり、抵抗したりするのだが今日は全く逆だ。ふにゃっと笑いながらもっともっ
とと求めてくる。
「ぅん・・・んん・・・・ハァ・・・景・・吾・・・」
「お前の口ん中、やっぱ美味い。まあ、さっきのシャンパンの所為でもあるだろうがな。」
「なあ、もっとぉ。」
「まだ足りねぇのか?欲張りな奴だな。」
ここまで素直に求められるのはそう滅多にない。確かにいろいろなことを教えてはいるが、
やはり恥ずかしいのかそこまであからさまに誘うということはしないのだ。これは存分に
楽しめそうだと先のことを考えながら、跡部はニヤリと笑ってキスの続きを始める。もう
十何回と口づけをしてやると、さすがに飽きてきたのか宍戸はそれ以上キスを求めること
はしなくなった。しかし、その代わりにもっとすごいことを要求する。
「へへへ、景吾のキス、いっぱいもらっちゃったぁ。」
「満足か?」
「おう!!なあなあ、景吾。」
「何だ?」
「セックスしよ♪」
「・・・・は?」
「だーかーらー、セックスしようって言ってんだよ。」
宍戸のあまりにも率直な誘い文句に跡部は自分の耳を疑う。今の宍戸はその単語を言うこ
とに何の羞恥も感じていないらしい。
「お前、意味分かって言ってるのか?」
「当たり前だろー。俺、景吾にいろんなとこ触られたり、舐められたりするの好きだもん。
だからー、セッ・・・」
「あー、もう分かったからその単語連発するな。・・・何かこっちが恥ずかしくなってく
る。」
普段言われないので、跡部の方が逆に恥ずかしくなってしまう。言われてもちろん嬉しい
のだが、ここまで率直に何の恥ずかしさもなしに言われるとまた微妙だ。しばらくこの心
臓のドキドキを抑えようと黙っていると、宍戸が行動を促すかのような口調と態度で跡部
に話しかける。
「景吾ぉ?しないのか?俺、すっげぇして欲しいぞ。」
「・・・・・。」
プレゼントのようにリボンを体中に巻いて、ベッドの上にあひる座りでペタンと座ってい
る。しかも可愛らしく首を傾げて、こんなことを言われれば、跡部の理性もどこかへぶっ
飛んでしまうだろう。
「その誘い、しっかり受け取ったぜ。今日はもう手加減しねぇ。」
「おう!!いっぱいいっぱい俺のこと気持ちよくさせてくれよな♪」
再びKOされるに近いセリフを言われ、跡部はもう眩暈がするほどドキドキした。こんな
シチュエーションは今まで体験したことがない。そんなことを考えていると、先程滝の言
っていたセリフが頭をよぎる。「動物系にだけ効くおまじない」「この後も相当楽しめる」
この状況になって跡部はやっとその言葉の意味を理解した。

宍戸に誘われるまま、そういうことを始めた跡部はまず宍戸の後ろにまわり、宍戸自身を
自分に寄りかからせた。そして、上着でほとんど隠れてしまいそうな短い短パンの裾から
手を入れ、ゆっくりと内腿を撫で回す。
「あっ・・・」
それだけのことでも宍戸は敏感に反応し、身体をピクンと震わせた。滝が持ってきたシャ
ンパンの影響で相当敏感になっているようだ。
「う・・・ぁ・・・景・・吾ぉ・・・」
「ここ、そんなにいいのか?まだ、内腿撫でてるだけだぜ?」
「分かんねぇ・・・でも、何か・・・変な感じ・・・」
「へぇ。随分と感じやすいんだな。」
すっと指を下から上へと走らせてやるとまた宍戸の身体はビクビクと震えた。
「んっ・・・ああ・・・っ!」
少し触れられるだけでもこんなにも感じてしまう自分の身体を不思議に思いながら、その
所為で潤む目を跡部に向ける。そんな瞳で見つめられては、跡部も何かもっとしてやろう
という気分になる。おもむろに宍戸の穿いていた短パンと下着を脱がせてしまうと跡部を
露わになったそれに視線を落とした。
「やだ・・・何でズボン脱がすんだよ・・・・」
「脱がさなきゃ先進めねぇだろ。」
「そ・・・だけど・・・」
あれだけ誘っておいても、やはり脱がされるという行為は恥ずかしいらしい。宍戸は羞恥
に染まった顔でうつむき、次に与えられる刺激を待った。しかし、跡部は露わになったそ
れには全く触れようとしない。上に着ている長めの服を捲くり上げ、まだ大人しくそこに
あるだけの胸の飾りを指先を使って弄り始めた。
「やっ・・・あん・・・!!」
「ふーん、こっちの感度もなかなか良好だな。」
「あっ・・・景吾・・・そんないっぺんに・・・弄られたら・・・うあっ・・・」
両手を使い、跡部は両方の飾りを刺激してやる。ぐりぐりとこねるように弄っているとす
ぐにそれは赤く充血し、ぷっくりと立ち始めた。つまみやすくなったそれを少し強い力で
同時につまんでやる。すると宍戸は一際大きな声を上げ、身を捩り軽い抵抗さえも見せる。
「あっ・・・やぁっ・・・!!」
「すげぇ固くなってきてるぜ。こんなに立たせて女みてぇだな。」
「っ!?・・・景吾・・・女ともこういうことしたことあんのか・・・?」
ひどく不安気な表情で宍戸は尋ねる。そんなやきもちじみたことを言う宍戸をひどく可愛
いと感じ、跡部はさらに強い刺激を小さな突起に与えつつ答えた。
「いや、こんなことをするのはお前だけだ。俺はいろんな本を読んでるからな。そういう
知識もあるってわけよ。」
「ふっ・・あぁん・・・なら・・よかった・・・あっ・・・」
「やきもちやいてくれてんのか?可愛い奴だな。」
「だってぇ・・・俺・・・は・・・景吾のこと・・・一番好きだもん・・・」
「ふ、そうだよな。」
また宍戸が嬉しいことを言ってくるので、それを自分自身の中で確認するようなセリフを
放つ。そんな宍戸の反応が可愛くて、跡部はしばらく胸の飾りだけを弄っていた。それだ
けでも相当感じているようで、宍戸の茎からは先走りの蜜が溢れている。跡部の視点から
その様子は非常によく見えた。しかし、そんな様子を見てもまだそれには直接触ろうとは
しない。ひたすら胸の突起だけに刺激を与えられるだけの宍戸は言いようもない快感と切
なさを感じ、思わず跡部に向かって懇願する。
「景吾ぉ・・・下にも・・・触ってぇ・・・」
赤く染まった頬と生理的な涙で濡れた瞳は跡部の嗜虐心をひどく刺激した。跡部は宍戸の
体に巻かれたリボンを適当な長さに切ると、それをすっかり勃ち上がった宍戸の熱にしっ
かりと結ぶ。そうされるとどうなるかを宍戸は分かっていない。
「?何してんだ?」
「こうすると、もっと気持ちよくなれるんだぜ。」
あながち間違ってはいないが、ある意味で苦痛も感じる。そんなことを分かっていない宍
戸はそうなのかと素直に納得し、跡部に身を任せた。そんな素直な宍戸の姿を見て、跡部
はニヤっと笑った。リボンで縛られたそれを跡部はあらゆるテクニックを駆使して、弄り
まくる。
「ひゃっ・・ああっ!!あっ・・・あぁん・・・」
「どうだ?気持ちイイだろ?」
「あっ・・・うん・・・でも、リボンが痛ぇ・・・」
「いいんだそれで。これからもっとよくしてやるぜ。」
ある程度手で弄ると、今度は位置を変えて口でしてやる。リボンが唾液と先走りの蜜で濡
れてゆく感覚が宍戸の熱をさらに敏感にしてゆく。あまりの気持ちよさに宍戸は喘ぎまく
り、跡部の髪をぎゅっと摑む。跡部が一際強く先端を吸うと宍戸はビクンと身体を震わせ
た。しかし、そこで宍戸は異変に気がつく。こんなに強い刺激を受けているのにイクこと
が出来ないのだ。
「あっ・・・やだ・・・景吾っ・・・俺・・・イケないっ・・・」
「そりゃそうだろうな。リボンでイケないようにしてるんだからよ。」
「何で・・・そんなこと・・・」
「だから言っただろ?もっとよくしてやるって。お前にはありえないくらいの気持ちよさ
を味あわせてやるよ。」
そんなことを笑いながら言う跡部の目を見て、宍戸は恐怖とともにゾクゾクとした快感を
全身で感じる。次に襲いくる刺激はどんなものであるのだろうか、自分はそんな刺激を受
けて耐えられるのだろうか、そんなことが頭の中を一気に駆け巡る。そんなことはお構い
なしに、跡部は宍戸の茎を再び口に咥えた。達する直前まで高められたそこは考えられな
いほど敏感になっていて、ただ咥えられるだけでも耐え切れないほどの快感が走った。
「ああぁ――っ!!景吾っ・・・あっ・・あっ・・・」
舌を使い、唇を使い、跡部はこれでもかというほどに宍戸のそこを刺激した。本当ならば
即達してしまってもおかしくないほどの刺激を断続的に与えられ、宍戸の身体は悲鳴を上
げる。全身が快感の波に飲み込まれ、宍戸はもう喘ぎ続けるしかない。身体をビクビクと
痙攣させ、跡部の名前をひたすら叫ぶ。そんな声を聞き、跡部だんだんと身体が熱くなっ
てくるのを感じた。
「景吾っ・・ふぁ・・・景吾・・あっ・・・景・・吾ぉ・・・っ!!」
「ハァ・・・」
「もう・・・変になっちまう・・・ああっ・・・あ・・・」
「どうして欲しいか言ってみろよ。」
そんなことは分かりきっていた。ただ言わせたいだけなのだ。快感に身を震わせ、ボロボ
ロと涙を流して、自分の名前を呼んでいる宍戸に、その言葉を言わせたいのだ。
「イカせて・・・早く・・・イカせてくれよぉ・・・ふ・・あぁ・・・」
「お前、やっぱ最高だぜ。俺のこと、こんなに酔わせて楽しませてくれるんだからな。」
泣きながらに懇願する宍戸を見て、跡部は何とも言えない恍惚感を感じた。もういいだろ
うと口を使い、さっきからビクビクと震えている茎に巻かれたリボンを外す。その瞬間、
せき止められて熱が一気に外へと放たれた。
「あっ・・・ああぁ―――っ!!」
解放されたという安心感と絶頂感を感じ、宍戸は恍惚とした表情でベッドに倒れた。大量
の熱を浴びた跡部は満足そうにその熱を口に運び、舌なめずりをする。吸血鬼にとって好
きな者の体液は何よりものご馳走なのだ。
「今日はいつもより量が多いな。味もいい感じだぜ。」
「ハァ・・・ハァ・・・・すげ・・・気持ちよかった・・・」
息を乱しながらも宍戸は率直な感想を呟く。あれだけ焦らし、我慢を強いたにも関わらず
単に気持ちよかったと漏らす宍戸に跡部は少々驚く。しかし、それでこそ自分のパートナ
ーだと跡部はふっと笑みを浮かべた。
「さてと、先に進まないといけねぇよな。」
そう言って跡部は先程宍戸の放った白濁の液をたっぷりと指に絡め、まだ閉じたままの蕾
を慣らし始める。ヒクンっと宍戸の身体は反応するが、さっきの行為の影響で全身の力が
抜けているため無駄な力が入っていない。そのおかげであっという間にそこは解れ、跡部
の指を軽々二本飲み込んでしまった。
「ふっ・・・あ・・・あっ・・・」
「随分簡単に解れたな。これなら、すぐにでも俺のを挿れらるぜ。」
「指じゃ・・・もう足りねぇよ・・・景吾・・・早く挿れてぇ・・・」
すぐに解れたそこは、跡部を求めるかのようにひくついている。もう指では足りないと宍
戸は腰を揺らし、跡部に向かってねだる。今日の宍戸は本当に刺激的だと跡部は眩暈を感
じながら、宍戸の内側から指を抜き、脚を抱え上げた。
「挿れるぜ、亮・・・。」
コクンと宍戸が頷くのを確認すると跡部は一気に身を進めた。余裕がない。さっきから宍
戸の反応を見ているだけで、イってしまいそうな程の快感を感じていた。簡単に奥まで入
ったわりには、締めつける力がいつも以上に強く跡部は戸惑う。
(これじゃあ、そんなにもたねぇ・・・)
そうは思いつつも動かないわけにはいかない。少しでも動けば、それだけの反応を宍戸は
返してくれる。自分の首に腕を絡め、宍戸は感じている気持ちよさを喘ぎという言葉にな
らない言葉で伝えてくれる。耳元でそれを伝えられれば、自分も同じくらい気持ちよくな
る。そんな一連の流れに身を任せながら、跡部は果てしない一体感と幸福感を感じた。
「はあっ・・・あっ・・・景吾・・・あ・・・もっと・・・・」
「ハァ・・・何だよ?もっと、どうして欲しいんだ?」
「もっと・・・奥に・・・お前の突き刺して・・・」
「随分大胆なこと言ってくれるじゃねぇか。・・・そんなこと言われたら、マジ余裕なくな
っちまう。」
「景吾・・・早くっ・・・あ・・・あん・・・」
「ちっ、仕方ねぇな。」
最奥を突いてしまえば、自分がもうもたなくなることは分かっていた。本当はもう少し長
くしていたかったのだが、宍戸からここまで求めてきてくれるなら仕方がない。宍戸の身
体をしっかりと支え、一番奥の奥を突いてやる。その瞬間、どちらも我慢出来ない快感に
全身を支配された。
「くっ・・・亮っ!!」
「あっ・・・景吾っ!!ああぁ――っ!!」
お互いの名前を口にし、果てしない快楽を感じながら二人は果てた。しばらくの間、二人
は繋がったままの状態で身体を重ね合わせ余韻に浸る。その何とも言えない感覚のまま唇
を合わせると、不思議なくらい落ち着いた気分になり、心が一気に満たされてゆくのを感
じた。

すっかり汚れてしまったシーツを取り替えると、跡部は宍戸を全裸にさせ、その体を濡れ
たタオルで拭いてやっていた。
「本当は風呂に入った方が手っ取り早いと思うんだが、それは少しだるいもんな。」
「・・・・・。」
行為が終わったと同時に滝のおまじない効果が切れたらしく、宍戸はいつもの調子を取り
戻していた。お酒を飲み、あれだけ酔っていたにも関わらず記憶だけはハッキリしている。
そのため、宍戸はただいま恥ずかしくてしょうがないのだ。
「俺・・・絶対恥ずかしいこといっぱい言ったよな・・・?」
「そんなことないぜ。いつもより積極的で可愛くて最高だったぜ。」
「でも・・・あんな俺、絶対変だ。」
「変じゃねぇよ。俺はあーいうお前もすごく好きだぜ。」
うつむき加減の顔を上げさせ、跡部は笑いながら言う。跡部の顔を見ると余計に恥ずかし
いと宍戸の顔はカアっと赤く染まった。
「ほら、服着せてやるから腕伸ばせ。」
「おう・・・」
これ以上恥ずかしがらせるのも可哀想だと感じ、跡部は服を着せてやった。宍戸の服を着
せ終わると今度は自分が寝間着に着替える。ゆったりとした寝間着を着ると、跡部はさっ
きのように宍戸の隣に腰かけた。
「疲れたか亮?」
「ああ。でも、嫌じゃなかった・・・」
「そうか。それならよかった。」
嫌じゃなかったという言葉を聞き、跡部はホッとする。しばらく黙っていると宍戸が突然
寝間着の袖を小さく摑み、コテンと頭を跡部の肩に乗せた。
「どうした?亮。」
「んー、何となくこうしてぇ。」
「ふっ、甘えたいって?」
「そんなこと言ってねぇだろ!!でも・・・そうかも。」
からかうつもりが素直に認められ、跡部は少々拍子抜けしてしまう。しかし、これもまた
可愛げがあっていいと思わずニヤけてしまった。そんな甘えん坊な宍戸に跡部はとある話
をしたくなった。
「なあ、亮。」
「何?」
「クリスマスはキリストの誕生日だって言ったろ?」
「ああ。キリスト教を作った人なんだろ?」
「そうだ。キリストはな、愛のためだけに生きて愛のためだけに死んだんだ。確かにいい
死に方とは言えなかったけど、それは神の愛が確実に存在するという証明になったんだぜ。」
「ふーん、何かよく分かんねぇけどすげぇな。」
「俺らは人間じゃねぇけど、愛するって感情は知っている。」
「愛するって、すっげぇ好きってことだろ?」
「そうだ。俺はお前のこと本当に好きだし、お前も俺のことは好きだよな?」
「もちろん。俺、景吾のことすっげぇ好きだぜ。」
「愛のために生きたキリストの誕生日に、こんなふうにお互い愛し合ってるってことを確
認出来るなんてすげぇことだと思わねぇ?少なくとも俺はすごいことだと思うし、いいこ
とだと思うぜ。」
「俺もそう思う!!」
「本当か?俺の話ちゃんと分かってるのか?」
自分のしている話がかなり宍戸には難しいことだということが分かっているので、跡部は
バカにしているわけではないが思わずそう聞き返してしまう。うーんと宍戸は頭を捻るが
やっぱりそうだと頷く。
「細かいとこはやっぱりよく分かんねぇけど、俺が景吾を好きで景吾が俺を好きだってい
うことがすげぇいいことだってのは分かる!」
ちょっとニュアンスは違っているがまあだいたいあっているからいいかと跡部は宍戸は話
を理解しているということにした。難しい話をこれ以上しても仕方がないので、跡部は一
番重要なところだけを繰り返す。
「俺はお前を愛してるぜ。」
いつの間にか猫耳のなくなっている宍戸の頭を撫でながら、跡部は優しく微笑みそう呟く。
その表情を宍戸は本当にカッコイイと感じ、思わず見惚れてしまった。しばらくぼーっと
している宍戸だったが、ハッと気づいたように跡部に向かって言葉を放つ。
「お、俺も景吾のこと愛してる!!」
「お前にそう言われると何か不思議な感じだな。お前は好きとか大好きって言葉を使う方
があってるぜ。」
「そうなのか?じゃあ、俺は景吾のこと大好きだ!!」
「いちいち言い直さなくてもいい。でも、その気持ちはしっかり受け取ったぜ。」
自分を好きだということを言葉を変えて何度も伝えられ、跡部は柄にもなく幸せだなあと
感じる。普段はあまり言葉にされなくていいと思う言葉もこんな日には何度も聞きたくな
る。好きという相手のことをかけがえないのない存在として見る言葉。跡部は今日、この
言葉を何度も宍戸から聞かされた。自分がどれだけそれを嬉しいことだと感じているか、
宍戸はきっと気づいていないだろう。
「そろそろ寝るか?今日はもう疲れただろ?」
「えー、もうちょっと起きてようぜ。確かに疲れたけど、俺、もっと景吾の顔見てたいも
ん。」
(また、こいつは俺を喜ばすことを言う。ったく、どれだけ俺の心を揺さぶれば気が済む
んだ?)
そんなことを思いながら跡部は宍戸の肩をぎゅっと抱いた。そして、額にキスをしてやる
と愛情いっぱいの言葉を宍戸にかける。
「それじゃあ、もう少し起きてるか。おっ、もう日付変わってるじゃねぇか。メリー・ク
リスマス、亮。」
「メリー・クリスマス、景吾。」
日付が変わっていることに気づき、クリスマス限定のあいさつを交わす。笑顔の溢れるこ
の部屋は愛の神が生まれた日を祝福するには十分すぎるほどの暖かさがあった。それだか
らこそ、この二人はこんなにも幸せを感じているのであろう。

                                END.

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