甘いのどっち?

「はい、じゃあ次はそこ。」
「はい。宍戸、俺達の番だぜ。」
「お、おう。」
うわあ、どうしよ〜、全然頭に入ってねぇよ。失敗したら跡部絶対怒るだろうし、あー、
ヤバイヤバイ〜。
「はい、じゃあ、始めて。」
宍戸のヤツ、絶対覚えられてねぇな。どうせ覚えてないなら、少しからかってやるか。
「Please tell me your true feeling.(お前の正直
な気持ちを教えてくれ)」
「は?」
ちょっと、待てよ!!しょっぱな何か違うぞ。え、えーと、何て答えりゃいいんだぁ?
「(I can’t live without you.)」
今言ったのを言えってことか?
「あ、I can’t live without you.(俺はお前なしでは生きて
いけない)」
「Really? I love you very much.How much 
do you love me?(本当かよ?俺はお前のこと、すげぇ愛してるぜ。お前
は俺のことどれくらい好きなんだ?)」
あー!?また全然違う文章だぞ!!ったく、どういうつもりだよ?跡部のヤツー。
「(I love you most in the world.)」
I love you?それは、もとのにあったような気がするな。これは言っても大丈
夫だろ。
「I love you most in the world.(俺はお前のコト、世
界で一番愛してる)」
宍戸のヤツ、本当に意味分かってねぇで言ってんのかよ。ここまで疑いもなく繰り返して
くれるとまたおもしれぇな。
「So what do you want me now?(なら、今俺に何して欲し
いんだ?)」
また、全然違うし・・・。次は何て言えばいいんだ?
「(I want you to hold me in your arms.)」
「I want you to hold me in your arms.(俺のこ
と抱きしめて欲しい)」
ん?何か周りが騒がしいぞ。何でだ?
「そうか、お前がそこまで言うなら。」
「ぎゃあっ、何すんだ跡部っ!!」
「跡部君、アドリブはいいけど、今のはちょっと激しすぎかしらね?」
「いいじゃないですか。なあ、宍戸。」
「ちょ、ちょっと待てよ!!俺、全然理解出来てねぇんだけど。って、さっさとその手を
離しやがれ!!」
いきなり抱きしめてくるなんて何考えてんだ跡部のヤツ。よく分かんねぇけど、他の奴ら
はみんな笑ってるし、先生は赤面してるし、何なんだ一体!?
「今俺達が言った英語の日本語訳、してやろうか?」
「ああ。」
「まず一番初めの俺のセリフは、『お前の正直な気持ちを教えてくれ』それにお前は『俺
はお前なしでは生きていけない』って答えたんだぜ。次のセリフは『本当か?俺はお前の
こと、すげぇ愛してる。お前は俺のことどれくらい好きなんだ?』で、お前の答えは『俺
はお前のコト、世界で一番愛してる』だ。俺の最後のセリフは『なら、今お前は俺に何を
して欲しいんだ?』お前は『俺のこと抱きしめて欲しい』って答えたんだ。だから、抱き
しめてやったんじゃねーか。」
「なっ、何だよそれ!?」
「大胆な告白、ありがとよ、宍戸。」
「ふざけんな!!テメェが言わせたんだろ!!」
「何、照れてんだよ?」
「照れてなんてねぇ!!お前なんて嫌いだ!!」
「こらこら、喧嘩しない。はい、じゃあ続きいきましょう。」
真っ赤になっちゃって可愛いじゃねぇの。今日は部活はオフだし、帰りはどこかいいとこ
ろに連れてってやるか。
「宍戸。」
「んだよ、話しかけんな。」
「今日、部活ねぇだろ。最近、ケーキが美味い喫茶店見つけたんだ。一緒に行こうぜ。」
「はあ?テメェが連れてってくれる店は、物が高くて俺の小遣いじゃ無理なんだよ。」
「今日は全部俺の奢りだ。こんなこと滅多にないぜ?」
食べ物でつろうったって、そうはいかねぇぜ。でも、美味いケーキはちょっと食べてみた
いし・・・。よし、いっぱい跡部に奢らせてやれ。
「しょ、しょうがねぇなあ。お前がどうしてもっつーんなら、行ってやってもいいぜ。」
「俺様が直々に連れて行ってやるんだ。ありがたく思いな。」
「俺が行ってやるって言ってんだ。感謝するのはテメェの方だろ?」
「跡部君に宍戸君、他の人が発表してる時は静かにね。」
『はい。』
ったく、また跡部の所為で怒られちまった。本当ムカツクよなあ、跡部って。でも、嫌い
にはなれないんだよなぁ。・・・って、何考えてんだ俺!!

結局、ついてきちまったけど、やっぱ跡部の入る店って高そうな店だな・・・。
「ほらよ。好きなの選べ。」
「ああ。」
うわ・・・やっぱ、高ぇ。でも、どうせ跡部の奢りだし、いっぱい食わなきゃ損だよな。
「じゃあ、レアチーズケーキとチョコレートケーキ、あとこのフルーツのタルトに焼プリ
ン。で、飲み物がオレンジジュース。」
「よく食うな。それじゃあ、俺はガトーショコラにイチゴタルト、あと飲み物はローズテ
ィーでいいか。」
宍戸のヤツ、たくさん奢らせようって魂胆だろうが、この程度じゃまだまだだな。俺の財
布の中身だったら、あと200個は余裕だぜ。
「何だよ、ニヤニヤしやがって。」
「別に何でもないぜ。」
「足りなかったらもっともっと食ってやるからな!」
「俺は全く構わないぜ。好きなだけ食えよ。」
余裕こきやがって、ムカツクー!!ケーキなんてそんなにたくさん食べれるわけねぇって
の。あー、跡部のことぎゃふんって言わせてやりたいぜ。
「ここでいいな。」
「ああ。どこでもいいよ。」
ちょっと窓際すぎる気がするけど、まあいいか。にしても、このケーキ。この大きさであ
の値段かよ。マジ高ぇし。
「随分不機嫌な顔してるじゃねーか。まだ英語のこと怒ってんのか?」
「当たり前だろ!!テメェ、このケーキでご機嫌とりでもしようと思ってるのかもしれね
ぇけど、そうはいかないぜ。」
「あー、そうかよ。まあ、とにかく食べてみろ。絶対美味いから。」
「仕方ねぇなあ。・・・・・」
何だかんだ言って、宍戸は食べ物に弱い部分があるからな。こんだけ美味いケーキ食わせ
てやれば、機嫌も一発で直るだろ。
「・・・・・・。」
「どうだ?美味いだろ?」
うわあ、何だよこれ!?ありえねぇくらい美味いじゃねーか。美味いって素直に言うのは
ちょっとくやしい気するけど、これは不味いなんて嘘つくの絶対無理っ!!
「美味い・・・」
「だろ?俺もここのケーキ、かなり気に入ってんだぜ。」
うっ。何でそこでそんな嬉しそうに笑うんだよ・・・。そんな顔見せられたら・・・。
「俺のヤツも味見してみるか?これもかなりいけるぜ。」
「いいのか?」
「ああ。ほら、食えよ。」
ヤバイ・・・これも美味すぎ。それに跡部がケーキ食ってる顔って、冗談ぬきでカッコイ
イし〜。
「どうした?宍戸。」
あー、もう英語のことなんてどうでもいいや!!素直に言っちまえ!
「跡部、ここのケーキ激うめぇ!!なあ、もっといろんなの食べていい?」
機嫌直ったみたいだな。本当宍戸のヤツ、単純で扱いやすいぜ。ま、そんなところも可愛
いんだけどな。
「いいぜ。テメェが食えるだけ買って来い。」
「よっしゃー!!跡部の財布の中身、からっぽになるまで食ってやる。」
「それは無理だと思うぜ。でも、ま、腹壊さない程度に食えよ。」
跡部のヤツ、いくら持ってきてんだよ?まあ、いいや。もっといろんなの食おうっと。

「はあ〜、苦しいー。でも、激満足。」
「お前・・・少し食べすぎじゃねぇ?太るぞ。」
「大丈夫だって。どうせ、明日は部活でいっぱい動くしな。」
「じゃあ、明日は宍戸だけ特別メニューにしてやるか。」
「マジで!?あんましキツイのは勘弁な。」
「さあ。どうだろうな?」
ケーキだけ15個なんてよく食えるよなあ。口もあんなに汚くして。くまみてぇ。
「宍戸、口の周りすげぇ汚いぜ。」
「は?マジで?」
夢中になって食っちまったからなあ。口が汚れるとか全然気にならなかったぜ。拭かねぇ
と・・・
「ぶっ!!」
「こんなに汚してガキみてぇだな。」
何してんだ、跡部ー!!自分で拭けるっての!!
「よっし、綺麗になったぜ。」
「何すんだよっ!!」
「俺様がわざわざ拭いてやったんだろ。感謝しろよな。」
「して欲しいなんて一言も言ってねぇ!!」
「あーん?何だ?その態度は。」
「ウルセー!!英語の時のこともそうだけど、そういう恥ずかしいことを他人の前でする
なっての!!」
「他人の前じゃなきゃいいのかよ?」
「ああ。他人がいなけりゃ何の問題もねーよ!!」
随分、すごいこと言ってくれるじゃねーか。宍戸が気づくまで後5秒ってか?
「あっ・・・?」
ぎゃー、俺、今絶対おかしなこと口走ったー!!跡部、絶対気づいてるし〜。あああ、ど
うしよ〜。
「それじゃあ、うちに行くか?二人きりだったら問題ねぇんだよな?」
「ち、違っ!!い、今のなし!!」
「違くねぇだろ。行くぞ、宍戸。」
「だから、今のは口が滑って・・・・」
Chu☆
「!!!!????」
「お前の唇、超甘いぜ。」
「あ、あ、跡部ーっ!!人前でそういうことそんなって言ったばっかだろー!!」
「じゃあ、二人きりならいいんだよな?」
「〜〜〜〜〜っ。」
だーもうっ!!余計なこと言うんじゃなかった。とにかくここにはいたくねぇ。さっさと
この店から出よう!!
「行くぞ、跡部っ!!」
「おっ、行く気になったか?」
「違ぇーよ!!とにかく行くぞ!」
照れちゃって。可愛いじゃねーの。今日はお持ち帰り決定だな。さて、今日はどういうふ
にこいつを食ってやろうか?あんだけケーキを食べたんだ。どこもかしこも甘いに違いな
い。楽しみだ。
ったく、今日は厄日かよ。あれもこれも全部跡部がいけねぇんだ!!人前じゃなけりゃ、
俺だってあんなに怒らねぇのに・・・。もうちょっと乙女心ってモンを分かって欲しいも
んだな。・・・って、乙女心はねぇだろ俺。はあーあ、結局、跡部んちにはついて行っち
まうんだろうな。俺ってば、どうしてこう跡部に弱いんだろ?

                                END.

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