Annual Ring

今日は7月20日。中学のときから毎年祝っている大事なこの日。今年も心を込めて祝お
うと銀は少し前から準備をしていた。
(もう少しで財前はんも帰ってくる時間やな。)
二人ともが高校を卒業した後、ずっと一人暮らしをしていた銀の部屋に転がり込む形で、
財前は家を出た。大人っぽく真面目な銀と一緒に住むことについて、財前の家族は迷惑に
なるのではないかということを気にすることはあったが、反対することはなかった。
「プレゼントも準備してあるし、ケーキも買って冷蔵庫に入れてある。うむ、準備は万端
やな。」
そんなことを呟いていると、玄関のドアが開く音が聞こえる。ゆっくりとこちらに向かっ
てくる足音がし、部屋のドアが開くと、銀は声をかける。
「おかえり、財前はん。」
「あっ、師範もう帰っとったんですね。」
「ああ、今日は特別な日やからな。」
嬉しそうに笑いながらそう口にする銀の顔を見て、財前は恥ずかしそうに笑う。
「師範がこないに早よ帰ってきとるなら、授業サボってでももっと早よ帰ってくればよか
ったっスわ。」
「はは、それはアカンやろ。大丈夫や。まだまだ時間はぎょーさんあるからな。」
「まあ、中学とか高校のときみたいに、帰る時間とかを気にせんでええのは確かですけど。」
一緒に住んでいるので、今はここが二人の家だ。夕方からであろうと、時間を気にせず誕
生日を祝ってもらえることが出来ることは、財前にとって嬉しいことであった。
「さて、まずは何からしたらええやろ?」
「だいぶ腹減ってるんスよね。せやから、夕飯からがええかなーと思うんスけど。」
「ほんなら、夕飯食べて、それからプレゼントを渡すって感じでええか?」
「はい。それでええです。」
空腹を訴える財前の言葉を聞き、まずは夕食を食べることにする。誕生日らしい少し豪華
なメニューと小さな誕生日ケーキ。そこまで派手なメニューではないが、自分達にはこれ
くらいがちょうどよいと、銀も財前も穏やかな雰囲気の中、財前の誕生日を祝いながら、
夕食を取った。

夕食を食べ終えると、銀は自分の部屋から財前のために用意したプレゼントを持ってくる。
リビングにあるソファに財前を座らせると、まずはある程度の大きさの包みを渡す。
「誕生日おめでとう。まずは一つ目のプレゼントや。」
「一つ目?これ以外にも何かあるってことですか?」
「うむ。二十歳という特別な節目やからな。いくつか用意させてもろたで。」
「メッチャ嬉しいですけど、そないに用意してもろて何や申し訳ないっスわ。」
「ワシがしたくて準備したもんやからな。何も気にせんでええ。嬉しそうにしてくれた方
がワシも嬉しいで。」
「分かりました。ほんなら、まずこれ開けてみてもええですか?」
「ああ、もちろんや。」
銀から受け取った包みを財前はゆっくりと開ける。中には見たことのある着物が入ってい
た。
「あれ?これ、師範の着物やないっスか?」
「ちゃんと広げて見てみるとええで。」
銀に言われた通り、綺麗に畳まれているその着物を広げてみる。広げてみたことで財前は
あることに気づいた。
「この着物、俺のサイズっスね。師範とお揃いのを買ったってことっスか?よう分からん
のですけど、着物って結構高いんじゃないっスか?」
自分も銀も大学生なので、あまりに高価なものをもらうのは申し訳ないと財前は思わず尋
ねてしまう。
「これは中学、高校のときはよう着てたもんやけど、今はあまり着なくなったワシの着物
や。ワシのサイズのままでも財前はん、よう着てはったからな。せっかくやから財前はん
のサイズにしてもろたんや。」
「サイズ直しでも結構手間もお金もかかりそうですけど・・・」
「そこは心配せんでもええ。財前はんも知っとる知り合いに、最近流行りのアミューズメ
ントパークのペアチケットでしてもろたもんやからな。」
銀の話を聞いて、財前はある人物が思い浮かぶ。
「あっ、もしかして、ユウジ先輩っスか?」
「正解や。ユウジはんは財前はんの服のサイズも分かっとるし、着物のサイズ直しもお手
のものって感じやったで。」
「なるほど。それは納得っスわ。」
「ワシの服のお下がりみたいになってしもたけれど、財前はんが喜ぶものって考えたら、
それもありかと思うて。検討違いやったら堪忍な。」
「いや、大正解っスわ。」
銀が長らく身につけていた着物を自分に合ったサイズにしてもらってプレゼントされるな
ど、こんな嬉しいことはないと財前は嬉しそうな顔を銀に見せる。喜んでもらえてよかっ
たと銀もホッとしたような表情で笑った。
「風呂入ったら、早速これ着てみてもええですか?」
「もちろんええで。ワシも財前はんがそれを着てるところ見てみたいしな。」
銀からもらった一つ目のプレゼントを抱えながら、財前は口元を緩ませる。そんな財前を
見て、銀も顔を緩ませながら次のプレゼントを手にした。
「これがもう一つのプレゼントなんやが、受け取ってもらえるやろか。」
二つ目のプレゼントは、先程の包みと比べるとかなり小さく、箱に入っているような形状
をしていた。シンプルでありながらも高級感のあるラッピングが施されたそのプレゼント
を見て、財前は全く想像がつかないと首を傾げる。
「何やろ?開けてもええっスか?」
「うむ。」
丁寧に包みを開けると、中にはこげ茶色の箱が入っていた。ゆっくりとその箱のふたを開
け、その中身が何であるかを認識すると、財前の心臓はドキンと高鳴る。
「えっ・・・あの、師範・・・これっ・・・」
「二十歳の誕生日やし、こういうんもありかと思ってな。一応、ここの指につけてもらう
ことを前提に用意してみたんやが・・・」
そう言いながら、銀は財前の左手の薬指に触れる。こげ茶色の箱の中には、大きさの異な
る二つの指輪が並んでいた。
「財前はんの方の指輪、つけさせてもらってもええやろか?」
「はい・・・」
小さな箱の中に置かれた小さい方の指輪を取ると、右手で財前の左手を支え、その薬指に
指輪を通す。以前二人でアクセサリーが売っている雑貨屋へ行ったときに、それぞれ指輪
の大きさがどれくらいなのか、興味本位で測っていた。その大きさを銀は記憶していて、
今回お揃いの指輪を用意したのだ。
「よかった。ピッタリやな。」
「あの・・・もう一つの指輪って・・・」
「うむ、もちろんワシの指輪やで。」
もう一つの指輪を右手で取ると、銀はそれを自分の左手の薬指につけてみせる。左手の薬
指につけられたお揃いの指輪。まるで結婚指輪のようだと、財前の顔は赤く染まっていく。
「こんなんもろたら、もうプロポーズと大差ないやないっスか。」
「財前はんがそう思うんやったら、そう思ってもええで。」
「へっ!?」
「プロポーズとか大層なことは考えとらんかったけど、財前はんとこれからも末永く一緒
にいたいという気持ちを込めて贈っとるからな。」
「っ!!」
さすがにその気持ちを素直に伝えるのは恥ずかしく、銀は照れたように笑っている。銀に
つけてもらった左手の薬指の指輪を見て、財前の胸は天にも昇るような気持ちでいっぱい
になる。
(アカン、嬉し過ぎて言葉が出てこうへん。)
「さすがにちょっとやりすぎやったか?」
財前が指輪を見て固まっているので、銀は困ったような表情でそう尋ねる。銀のその言葉
に財前はぶんぶんと首を横に振った。そして、銀を見上げながら、たどたどしく言葉を紡
ぐ。
「あの・・・何ていうか、ちょっと嬉し過ぎて、何言うたらええか分からんくて・・・と
もかく、このプレゼントメッチャ嬉しいんは間違いないんで。」
「ホンマか?」
「はい。ホンマもう・・・師範、大好きっス。」
あまりにも言葉が思いつかな過ぎて、財前は今心の中を占めている想いを素直に口にする。
それを聞いて、銀は嬉しそうに笑い、指輪のついている左手で財前の頭を優しく撫でる。
「それならよかったわ。ワシも財前はんのこと大好きやで。」
幸せそうな笑みを浮かべながらそう返す銀の言葉を聞いて、財前は喜び、嬉しさ、幸福感
など様々なポジティブな感情で心の中が埋め尽くされるのを感じる。
(ああ、ホンマに幸せな誕生日や。)
「師範。」
「ん?何や?」
「ありがとうございます。ホンマのホンマに嬉しくて、また師範のことがぎょーさん好き
になりましたわ。」
他の者には見せないような満面の笑みを浮かべ、財前は心からの感謝の意を銀に伝える。
そんな財前を見て、銀も財前を想う気持ちで胸がいっぱいになる。
(こないな笑顔見せられたら、ホンマに離れられなくなってまうな。)
「財前はん、財前はんが欲しいと思うんやったら、もう一つだけプレゼントがあってな、
それはまあ、風呂入ってからのがええかと思うんやが、どうやろ?」
だいぶ遠回しな誘い方であるが、財前は銀の言わんとしていることをすぐに理解する。
「欲しいです。今日は誕生日なんで、いつもよりぎょーさんして欲しいです。」
即答する財前に、銀の顔は思わず緩む。こういうところは本当に素直で可愛らしいとニヤ
けてしまう。
「ほんなら、早めに風呂入る準備した方がええな。」
「そうっスね。もう一つのプレゼントもメッチャ楽しみにしとるんで。」
「はは、それは気合入れていかなアカンな。」
冗談を言い合うような口調で二人はそんな会話を交わす。楽しそうな雰囲気の中、銀も財
前もこの後のことを考え、期待感からドキドキと胸が高鳴っていた。

さくっと入浴を済ますと、二人は真っすぐに寝室へと向かう。銀からもらった着物を身に
つけた財前は、ポスっとベッドの上に座った。少しでも雰囲気をよくしようと、銀はいつ
も座禅をするときに焚いている香を焚き、ベッドの横にある和の雰囲気のライトをつける。
「いつもと同じ部屋っスけど、何や特別感あってドキドキしますね。」
「せやな。特別な日言うんは間違ってないしな。」
淡い光に照らされた枕元に移動し、財前は腰に巻かれている帯をほどく。そして、銀に向
かって腕を伸ばすと、甘えるような声で銀を招く。
「師範、三つ目のプレゼント下さい。」
昔からこういうときの財前はひどく魅力的だと思っていたが、年々艶やかにより魅力的に
なっていると銀は思う。財前に誘われるまま、銀はベッドに上がり、財前の前まで移動す
る。
「ホンマ、財前はんはおねだり上手やな。ちょっと心配になるくらいの可愛さや。」
「何も心配することなんてないっスよ。俺のこないな姿見せるん、後にも先にも師範だけ
なんで。」
「昔にも聞いたことあるセリフやが、何度聞いても嬉しくなるな。」
「すぐ師範からプレゼントもらえるように、師範からもろた着物しか着てないんスよ。せ
やから・・・」
風呂から出た後、財前は下着を穿かずに銀からプレゼントとしてもらった着物だけを身に
つけていた。はだけた着物の合間から覗く肌と内腿にドキドキしながら、銀は財前の頬に
優しく触れる。
「ほな、三つ目のプレゼントあげんとな。」
「はい。」
嬉しそうに目を細め、財前は銀の首に腕を回して目を閉じる。口づけを待つその顔に胸を
高鳴らせながら、銀はゆっくりとその厚い唇で財前の唇を覆った。
(何度してもこないなことしとるときは、ドキドキしてしまうな。財前はんに心臓の音が
聞こえてしまいそうや。)
心から想っている者との熱い口づけは、銀の鼓動を速くする。もちろんそれは財前も同じ
であった。もっと相手を深く感じたいと、その口づけは次第に激しくなっていく。体温が
上がり、呼吸も速くなる。息つく暇もなく絡む舌と触れ合う唇は、二人の心と身体を溶か
していく。
「はっ・・・んっ・・・んん・・・」
銀の口づけは、財前の熱を高めるには十分であった。着物の裾から見え隠れするそれに銀
は気づき、唇を重ねたまま、それに触れる。
「んんっ・・・!」
鼻にかかった甘い吐息とビクンと跳ねる身体。そのまま軽く手を動かしてやると、腰を浮
かせて、もっと触れて欲しいと言わんばかりの甘い声が唇の隙間から漏れる。
「んぅ・・・んっ・・・ぁ・・・んっ・・・!」
さすがに少し苦しそうだと気づいた銀は、熱に触れている手を止めずに唇を離す。
「ハァ・・・しは・・んっ・・・あっ・・・ハァ・・・」
紅色に染まった頬に、酸素を取り入れるために大きく開いた口。唇同士を繋げる銀色の糸
に、快感に濡れている瞳。そのどれもが銀の心を鷲掴みにする。
「あっ・・・師範っ・・・そこ、気持ちええ・・・」
「ほんなら、こんなんはどないや?」
「ふあっ・・・あぁんっ・・・それ、アカンっ・・・ひっ・・あっ・・・」
財前の様子を見ながら触れ方を変え、その大きな掌で財前の熱に刺激を与える。自分の手
で気持ち良くなっている財前がこの上なく愛らしく感じられ、銀はもっと悦ばせてやりた
いと手の動きを大きくする。
「あっ・・・そないに強くされたら・・・あっ・・・ああっ・・・」
「イってもええで。気持ちええの我慢する必要あらへん。」
「くっ・・・んんっ・・・あっ・・・―――っ!!」
向かい合っている銀の着物をぎゅっと掴みながら、財前は銀の手で果てる。掌の中に放た
れた熱い雫に軽く興奮しながら、銀はくたっと頭を預けてくる財前の吐息の熱さを肩で感
じる。
「大丈夫か?財前はん。」
「ん・・・大丈夫っス。それより師範・・・」
「何や?」
「今日はいつもより長く師範と繋がってたいんで・・・ローションでも何でも使ってええ
んで、早よコッチの方慣らしてください。」
腰の下のあたりに軽く触れながら、財前はそんなことを口にする。なかなか率直なおねだ
りだなと思いつつ、銀は財前の希望通りベッドの横の引き出しにしまってあるローション
を出し、それを使う準備をする。
「ほんなら、ちょっと座って足広げてもろてもええやろか。」
「師範・・・普通に恥ずかしいコト要求してきますね。」
「今更やろ?」
「まあ、そうなんスけど・・・これでええですか?」
脚にかかっている着物の裾を捲り上げ、財前は銀に向かって大きく足を開き、大事な部分
を全て晒す。これはなかなか視覚的にクる光景だと思いながら、銀は利き手の指にローシ
ョンを垂らす。
「全部丸見えやな。」
「ちょっ・・・そういうこと言わんといてもらえます?」
「せやけど、財前はんはちょっと意地悪なこと言うとわりと感じやすくなるやん?」
「っ!!」
「試してみてもええで。」
「そないなこと・・・」
否定しようと思ったが、もうそれだけでも財前の鼓動は速くなり、これから触れられよう
としている部分が疼く。ローションで濡れた銀の指がそこに入ると、財前の体はビクンと
震えた。
「あっ・・・くっ・・・」
「財前はんのココ、ぬるぬるやで。そないに早よ挿れて欲しいん?」
「やっ・・・あっ・・・んんっ・・・」
わざと恥ずかしがるようなことを言うと、財前は顔を真っ赤にしながらもひどく感じてい
るような様子を見せる。これはこれでたまらないと、銀はじっくりとそこをほぐすように
指を動かす。
(アカン・・・恥ずかしいのにゾクゾクして、いつもより気持ちええ・・・)
「もう二本も入ってまうで。財前はんはホンマエッチやなぁ。」
「ひぅっ・・・師範っ・・・あっ・・・あんっ・・・」
「気持ちええやろ?」
「ハァ・・・んっ・・・・気持ち・・ええです・・・」
ビクビクと全身を軽く痙攣させながら、蕩けた表情で財前はそう答える。そんな財前に銀
は我慢ならなくなってしまう。すっかり柔らかくなったそこから指を抜くと、銀は財前の
腕を引いて、自分の方へ引き寄せる。
「もう我慢出来へん。」
「ほんなら、師範の・・・挿れてください。」
「ええんやな?」
「はい・・・」
自分の足を跨がせるように財前の足を広げると、トロトロにほぐした中心に既に大きくな
っている熱を押し当てる。ゆっくりと財前の腰を落とすと、大した抵抗もなく中へ中へと
引き込まれていく。
「ああっ・・・はっ・・・ああぁっ・・・」
「・・・ああ、財前はんの中、やっぱりええな。」
(何やろ・・・今日、メッチャ気持ちええ・・・こんなやと、すぐにイってまう・・・)
しっかりと奥まで挿れたいと、銀が軽く突き上げると、財前は背中を仰け反らせるように
達する。
「ああっ・・・ああぁ――っ!!」
「っ!!そないに強く締められると、すぐにでも達してしまいそうや。」
「ハァ・・しは・・んっ・・・今日、俺・・・気持ち良すぎて・・・アカンかも・・・」
絶頂の余韻に震えながら、財前は途切れ途切れにそう伝える。財前がある程度落ち着くの
を見計らって、銀は再び財前の中を突くように動き出す。
「ひあっ・・・あんっ・・・アカン・・・師範の・・・良すぎて・・・すぐ・・・」
「ホンマに今日は感じやすいんやな。何度でもイったらええ。」
「あっ・・・んんっ・・・くっ・・・――――っ!!」
ビクビクと震え、再び財前は達する。非常に果てやすくなっている財前に銀は興奮してし
まう。今度は落ち着くのを待たずに、さらに激しく中を穿つ。
「ひっ・・・ああっ・・・しは・・・あっ・・・ああぁ――っ!!」
「ハァ・・・この感じ、たまらんな。いつもよりぎゅうぎゅうと締めつけて、搾り取られ
てしまいそうや。」
「あっ・・・んんっ・・・また・・・くっ・・・んん・・・っ!!」
休む暇を与えられず財前は何度も達する。あまりに間隔が短いので、熱から溢れる雫は出
たり出なかったりしている。激しく収縮を繰り返すそこは、銀の熱を根元から先端まで余
すことなく締めつける。さすがに耐えられなくなり、財前の何度目かの絶頂と同時に銀も
果てる。
「くっ・・・・―――っ!!」
(師範の俺ん中で出とる・・・ああ、メッチャ嬉しい・・・)
「財前はん・・・」
「ハァ・・・ハァ・・・師範・・・」
どちらもうっとりとしながら、お互いの顔を見つめる。そして、ある程度落ち着くと、銀
に首に腕を回し、色めいた声色で銀にお願いをする。
「もっと、して欲しいです。」
「ええで。財前はんが満足するまで、何度でもしたる。」
「ありがとうございます。今日はホンマに幸せな誕生日っスわ。」
「今年もやろ?」
「そうっスね。師範と過ごす誕生日はいつでも最高ですわ。」
軽い口づけを交わした後、体位を変えて二人は再び一つになる。体を重ねて、深く深く繋
がり、極上の心地よさの中で何度も果てる。心も身体も多幸感で満たされる至福の時間。
三つ目のプレゼントは、財前を心の底から満足させた。

数えきれないほど、心地よさの極みに達した財前は、事が終わると銀の腕の中で気を失う
ように眠ってしまう。しばらく熟睡していたが、日付が変わる数十分前に財前は目を覚ま
した。
「ん・・・」
「起こしてしもたか?」
「あー、俺、あのまま寝てしもたんですね。」
「えらい気持ちよさそうに眠っとって、見てて飽きへんかったで。」
「俺、いっつも師範に寝顔見られてばっかりや。」
「はは、どうしても財前はんの方が先に寝てしまうからな。」
「まあ、別にええんですけど。」
銀の腕の中からは動こうとはせず、財前はそのまま銀と話をする。
「そういえば・・・」
「どないしたん?」
「この指輪、金属やなくて木で出来てますよね?俺的には結構好きな雰囲気なんスけど、
何で木の指輪にしたんスか?」
左手の薬指につけられた指輪を眺めながら、財前はそんなことを銀に問う。
「木の指輪やったら、和服と合わせても合うんやないかと思うて。それから、木は年ごと
に年輪が刻まれていくやろ?そんなふうに、財前はんとも一緒に年を重ねていけたらええ
なあと思ったんや。」
木の指輪を選んだ理由を銀は素直に述べる。それを聞いて、財前の胸はひどくときめき、
嬉しい気持ちでいっぱいになる。
「やっぱ、師範さすがっスね。俺のツボを的確に突いてくるやないっスか。」
「まあ、言うてもうだいぶ長いこと一緒におるからな。」
「ホンマに嬉しいです。」
またあの大好きな笑顔で笑う財前を見て、銀の心は跳ねる。これからもこの笑顔を自分
に向けて欲しいと、銀は心の中で願った。
「これからも一緒にいてくれるなら、ワシも嬉しいと思うとるで。」
「そんなん当たり前やないっスか。中学んときから今まで一緒にいた年数軽く超えるく
らい一緒にいるつもりっスから。師範もそのつもりで、この指輪贈ってくれたんですよ
ね?」
「まあ、そうやな。実質プロポーズみたいなもんや。」
「ほんなら、返事はイエスですよ。それでええですよね?」
「はは、もちろんや。来年もまた誕生日一緒に祝おうな。」
「はい。」
二十歳という節目の誕生日。そんな特別な日に、銀と財前はこれからも共にある未来を
想像し、二人で年輪を刻んでいく約束をするのであった。

                                END.

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