嵐の枕に誘われん

ひゅーひゅーと風が啼く夜。忍術学園の六年生は野外実習の真っ最中であった。
「風が強いな。」
長い髪をなびかせながら、仙蔵は空を見る。空は厚い雲に覆われ、今にも雨が降り出しそ
うな状態であった。
「おーい、お前ら!先生からの伝言だ。これから台風が来るらしいから、実習は中止だっ
て!!」
「台風・・・通りで。」
「とりあえず学園に戻った方がいいな。」
「そうだな。」
小平太からの伝言を聞いて、六年の面々は野外自習を止め、忍術学園に戻ろうと歩き出す。
と、その時、一際強い風が吹き抜けた。
ビュオオオォォ・・・・
「うわっ・・・」
風に煽られ、伊作はバランスを崩す。運悪く伊作の立っていた場所は崖のすぐ側で、バラ
ンスを崩したことによって、伊作は足を踏み外した。
「伊作っ!!」
そんな伊作にとっさに腕を伸ばしたのは文次郎であった。伊作の体を捉えることは出来た
が、二人分の体重を支えることは出来なかった。伊作もろとも文次郎は崖の下に落ちてい
った。
『伊作っ!!文次郎っ!!』
残ったメンバーが名前を呼ぶが、既に二人は崖の下だ。それほど高い崖ではないので、致
命的な怪我をすることはないだろうが、登って戻るにはかなり無理がある。
「どうする?」
「あいつらのことだから大丈夫だとは思うけど・・・」
「私達も台風でどうしようもなくなるのはよくない・・・とりあえず、忍術学園に戻って
このことを知らせよう。」
「それが得策かもな。」
台風が近づいていることを考えると、自分達だけでどうにかしようとするのは危険だと、
残った面々はとにかく忍術学園に帰ることにする。風が強くなり、雨も降り出し始める中、
長次、仙蔵、小平太、食満の四人は学園へ向かって走り出した。

「いたたた・・・」
「大丈夫か?伊作。」
「うん、大丈夫。って、文次郎の方が怪我してるじゃん!!」
「このくらいどうってことねぇよ。」
文次郎が腕に抱えていたため、伊作はほとんど怪我をしていなかったが、文次郎は腕を大
きく擦りむき、制服が破れ、血が流れていた。そんな怪我をしている文次郎を見て、伊作
は手当てをしないとということで、どこか手当ての出来る場所はないかと、辺りを見回し
た。
「文次郎、あそこに洞穴がある。これから台風が来るみたいだし、とにかくあそこで手当
てしよう。」
そんな伊作の言葉に頷き、文次郎は立ち上がる。怪我をしたのは腕だけで、足はしっかり
動くことに文次郎は安心した。雨が降り出しているので、二人は小走りでその洞穴に駆け
込んだ。
「ここなら雨も風もしのげるし、台風が通り過ぎるまでは何とかなりそうだね。」
「そうだな。不幸中の幸いってとこか。」
「ゴメンね、ぼくが不運なせいで・・・」
しゅんとした様子で、伊作はそう呟く。そんな伊作の頭にポムッと手を置くと文次郎はふ
っと笑った。
「別にお前が不運なのは今に始まったことじゃねぇだろ。そんなこと気にする前に、さっ
さと傷の手当てしやがれ。」
「う、うん。」
文次郎にそう言われ、伊作は頭巾を外し、ビッと伸ばす。
「文次郎、制服の上着脱いでくれる?」
「ああ。」
文次郎の上着を脱がせると、伊作は傷口に頭巾を巻きつけた。しかし、二の腕から肘の下
まで擦りむけているため、頭巾一枚では傷を覆うには足りなかった。
「文次郎の頭巾も使わせて。あと、出来れば髪留めも。」
「分かった。ほら。」
「ありがとう。」
文次郎から頭巾と髪留めを受け取ると、伊作は丁寧に傷を覆い、すぐには取れないように
しっかりと結ぶ。
「これで、とりあえず応急処置は終わり。学園に戻ったら薬塗らないとだけどね。」
「ありがとな。」
「ぼくのせいで怪我させちゃったんだもん。お礼を言うのはぼくの方だよ。」
「俺が勝手にしたことだから、お前のせいとか思ってないぞ。それにお前に怪我がなくて
よかったって思ってるし。」
「文次郎・・・」
自分のことを思ってくれていることがよく分かる文次郎の言葉に、伊作の胸はきゅんと高
鳴る。手当てをした腕に触れ、伊作は文次郎の顔に自らの顔を近づけながら首を傾げて問
う。
「痛くない?文次郎。」
「あ、ああ。」
「そっか。それならよかった。」
目と鼻の先の近距離でニッコリと微笑まれ、文次郎の心臓はドキンと跳ねる。そんな伊作
の唇に文次郎は無意識に自分の唇を重ねていた。
「・・・・・。」
「あっ・・・悪ぃ。つい・・・」
無意識にしてしまったことなので、文次郎は唇を離すと謝るような言葉を口にする。
「別に謝ることないよ。」
「そうか・・・?」
「けど、文次郎がいきなりそんなことしてくるから・・・」
「な、何だ?」
「したくなっちゃった。」
恥ずかしそうに笑い、冗談っぽくそんなことを言う伊作であったが、半分は本気であった。
冗談半分とは言えども、あまりに率直な誘い文句に文次郎もムラッとしてしまう。外では、
強い雨と風が激しい音を立てている。こんな激しい嵐の中、こんな場所へ来る者がいるは
ずがない。そう思いながら、文次郎は伊作の制服に手をかけた。

文次郎に制服と褌を脱がされ、伊作は今黒い肩衣のみを身につけているという格好だ。そ
の肩衣も胸がさらけ出されるほどまくられ、落ちないようにと裾を咥えさせられている。
「んっ・・・ふ・・ぅ・・・んっ・・んん・・・」
「さすが保健委員だな。これだけ手動かしても全然痛くないぜ。」
「やっ・・・らめ・・・・んっ・・・んんっ・・・!」
さらけ出された胸にある小さな突起を口で弄りつつ、怪我をしている方の手で伊作の熱を
擦る。敏感な場所を同時に弄られ、伊作はビクビクとその身を震わせながら、鼻にかかっ
た甘い声を上げる。
「お前はどうされるのが好きなんだ?噛むのがいいのか?それとも、吸われるのがいいの
か?」
「うぅ・・・」
「ま、やってみれば分かるか。」
どう責めるのが伊作にとって最良なのかを探るため、文次郎は様々な責め方を試してみる。
すっかり赤くなりその存在を主張している胸の突起を軽く甘噛みしてみたり、舌で舐めた
り、唇で挟みつつ思いきり吸ってみたりする。もちろんその間、熱を弄る手を止めること
はしない。
「んんっ・・・んっ・・・ひぅっ・・・!」
「なかなかイイ反応するじゃねぇか。それじゃこれはどうだ?」
「んっ・・・う・・・んんん――っ!!」
弄られれば弄られるほど、下も上も敏感になり、伊作はその身を仰け反らせながら、文次
郎のもたらす快感に溺れる。伊作が想像以上に良い反応を見せるので、文次郎の興奮も相
当高まっていた。
「そろそろこっちは限界なんじゃねぇの?もうこんなにトロトロだぜ?」
「ふっ・・・う・・・ぅ・・・・」
「さっき試した中では、お前はこうされるのが好きみてぇだな。」
そう言うと、文次郎は赤く熟れた突起を思いきり吸ってやった。その瞬間、伊作は一際大
きくその身を震わせ、文次郎の手に白濁の蜜を放つ。
「んんん―――っ!!」
伊作の放った蜜をしっかりとその手で受け止めると、文次郎はニヤリとその口元に笑みを
浮かべる。
「随分溜まってたみてぇだな。結構な量だぜ?」
「しょ、しょうがないだろ!最近は忙しくて・・・自分でしてなかったし・・・」
「でも、量があった方が好都合だ。」
「へっ?・・・ひゃっ・・あ・・・!?」
伊作の蜜を溢さないようにしながら、文次郎はその手を後ろへと持っていく。ぬるぬると
した蜜が潤滑油の役割を果たし、文次郎の指を内側へと誘い込んだ。
「あんっ・・・や・・・文次郎っ・・・」
「ここは全然嫌がってないぜ?」
「ああぁ・・・あっ・・・やあぁん・・・!」
伊作の蜜の全てを内側と入口に塗り付けるかのように、文次郎は激しく指を動かす。中を
探られる快感に伊作は思わず腰を揺らす。ぐちゅぐちゅと濡れた音が洞穴内に響き、どう
しようもなく二人を興奮させた。
「あっ・・・文次郎ぉ・・・・いっ・・・・あぁんっ・・・!」
「中、トロトロのぬるぬるですげぇエロい感じになってるぜ。」
「だ・・って・・・・文次郎が・・・そんなに弄るからぁ・・・・」
「そろそろ俺も良くしてもらいたいもんだがな。」
文次郎のその言葉を聞いて、伊作はふと文次郎のそれに目を落とす。特に触れた覚えはな
いが、文次郎の熱は伊作のそこを貫くにはもう十分すぎるほどの大きさと強度を持ってい
た。これからこの大きなモノで貫かれるという期待感に、伊作の胸はひどく高鳴り、文次
郎の指が入っている蕾は大きく蠢く。
「んっ・・・んん・・・・」
伊作自ら文次郎にキスをし、舌を絡める。そして、ゆっくりと唇を離すと、色気たっぷり
の声色で言葉を紡ぐ。
「もう入れて・・・文次郎・・・・」
その言葉に文次郎の理性は一気に吹き飛んだ。内側を弄っていた指を抜き、代わりに大き
な熱の塊をその入口に押し付ける。
「一気に・・きて・・・・」
文次郎の首に腕を回し、伊作は耳元でそう囁く。その望み通り、文次郎は一気に伊作のそ
こを貫いた。
「くっ・・・」
「あっ・・・あああぁんっ!!」
大きな熱の塊が内側を広げ、壁を擦りながら奥へと到達する衝撃。その衝撃は伊作にこの
上ない快感をもたらした。自分の中で自分のモノではないモノが脈打つ感覚が、伊作の頭
をとろけさせる。
「はっ・・・あぁ・・・」
「やっぱ・・・この感じはたまんねぇな。」
「ぼくも・・・文次郎が中に入ってる感じ・・・すごい好き・・・・」
呼吸を乱しつつも、口元に笑みを浮かべる伊作に文次郎の鼓動は速くなる。もっと激しく
犯してやりたいという欲求がどこからともなく生まれ、文次郎は伊作の腰を掴んだ。
「動くぞ、伊作。」
「うん・・・」
始めはその形を覚えさせるようにゆっくり動き、次第にその激しさを増してゆく。体を上
下に揺さぶられ、内壁を擦られる。繋がっているそこから生まれる大きな快感に、伊作は
夢中になってゆく。
「あっ・・・ん・・・ひあっ・・・ああぁ!!」
「ハァ・・・伊作っ・・・」
「文次郎・・・気持ちいっ・・・あっ・・・あぁんっ・・・」
「俺も・・・すげぇイイぜ・・・」
「んっ・・・ねぇ・・・キスしたい・・・よ・・・」
「ああ・・・」
喘ぎながらキスをしたいとねだる伊作に、文次郎は熱く深い口づけを施す。お互いの口の
中を探り合うような深い深い口づけ。その口づけは交わっているという感覚をより高め、
二人を絶頂へと押し上げる。
「んっ・・・んぅ・・・んんん・・・・」
(キスしてると、より気持ちよくなる気がする・・・)
(これじゃ、そんなにもたねぇな。よすぎる・・・)
「ふはっ・・文次郎・・・ぼく・・・もうっ・・・」
「奇遇だな。俺もだ。」
「もっかい・・・キス・・・して?」
「いいぜ・・・」
少しの会話を交わした後、二人は再び唇を重ねる。そして、互いに激しく腰を揺らすと、
絶頂という名の高みに昇りつめる。
「・・・んぅっ・・・んんん―――っ!!」
「・・・・・っ!!」
どちらも熱い雫を放ち、二人は抱き合ったまましばらくその余韻に浸る。内側に放たれた
文次郎の熱を感じ、伊作はうっとりとした表情で、その顔を緩ませた。
「何、笑ってるんだ?」
「内側を慣らすとき、文次郎ぼくが出したのを使っただろ?」
「ああ、まあな。」
「今、文次郎もぼくの中に出したわけだから、ぼくと文次郎の遺伝子が、ぼくの中で混じ
り合ってるんだなあと思って。別に何が出来るってわけじゃないんだけど、なんか嬉しい
なあと思ってさ。」
嬉しそうにそんなことを言う伊作に、文次郎の心臓はドクンと大きく跳ね、熱は再びその
熱さを取り戻す。自分の内側での変化に気づいて、伊作はくすっと笑った。
「まだ、全然台風おさまってないみたいだからさ、もう少し続けよう?」
「ふっ、仕方ねぇなあ。お前がそんなにしたいっつーんなら、いくらでもしてやるよ。」
「文次郎だってしたいんだろう?」
「そりゃな。お前がエロいことばっか言ってるから、感化されちまってんだよ。」
まだまだ続ける気満々の二人は、再び唇を重ね合わせ、そのまま交わり続ける。結局、台
風が通り過ぎるまで、二人は暗い洞穴の中、その身を重ね続けた。

満足いくまで交わり、二人は体を寄せ合い眠りにつく。いつの間にか台風は過ぎ去り、洞
穴の入口から、明るい朝日が差し込んできていた。
「ん・・・まぶし・・・・」
「起きたか。」
「あっ、おはよう、文次郎。」
「おはよう。台風はもう過ぎたみたいだぞ。台風一過でよく晴れてる。」
「そっか。」
んーと背伸びをしながら、伊作は眠っていた体を起こす。台風もおさまっているので、す
ぐにでも忍術学園に帰ってもよいのだが、伊作としてはもう少しだけ文次郎と二人でいた
かった。
「もう忍術学園に帰る?」
「その方がいいだろうが、お前大丈夫なのか?調子に乗ってやりすぎた気がするんだが。」
そんな文次郎の言葉を聞いて、伊作は本当は全く問題ないが、わざと大丈夫ではないふり
をする。
「んー、ちょっとまだだるいかもー。もう少し休んでいっていいかな?」
「そうか。それなら少し休んだ方がいいかもな。まだ完全に夜が明けきってるわけでもな
いし。」
「ありがとう、文次郎。」
文次郎の隣に腰かけ、頭をこてんと文次郎の肩に預けながら、伊作はお礼の言葉を口にす
る。可愛らしいことをしてくれると、文次郎はそんな伊作の肩に腕を回し、ぎゅっと自分
の方へ引き寄せた。
「夜が明けたら戻るぞ。」
「うん。・・・ねぇ、文次郎。」
「どうした?」
「ぼくはいつもすごく不運だけどね、文次郎とこんなふうにしていられる時はとっても幸
せだなーって思うよ。本当、普段不運なの忘れるくらい。」
「そ、そうか。」
「いつもぼくのことを想ってくれて、ありがとう。大好きだよ。」
屈託のない笑顔で、伊作は恥ずかしげもなくそんな言葉を口にする。その言葉が気恥ずか
しくて、しかし、とても嬉しくて、文次郎は顔を軽く赤らめる。
「俺も・・・その・・・お前のことは、好き・・・だぞ。」
「えへへ、両思いだね!」
「両思いじゃなきゃ、あんなことはしないだろーが。」
「あはは、確かにー。」
お互いの想いを確かめ合うような会話を交わしながら、二人は完全に夜が開けるまでの時
間を潰す。日が完全に昇り、外がすっかり明るくなったところで、二人は制服をしっかり
と着直し、外へと出た。
「ちょっと遠回りになるが、崖を登るのは無理だからな。こっちから帰るぞ。」
「うん。ぼくもそのルートがいいと思う。」
「よし、じゃあ行くぞ。ほら。」
そう言いながら、文次郎は伊作に向かって手を差し出す。ナチュラルに手を繋ごうとする
あたり、さすがだなあと思いつつ、伊作は差し出された手を握った。
「文次郎から手繋いでくれるなんて、意外だなー。」
「こうしてた方がお前が転ばなくて安心だからな。」
「それは確かに言えるかも。」
「お前の不運防止だ。」
「なるほどね。なら、ぼくが転ばないように途中で離さないでね。」
「言われなくても、離さねぇよ。」
お互いに手をぎゅっと握り合い、二人は朝日に照らされた森の中を歩く。崖から落ち、台
風に見まわれるという不運な出来事に遭いながらも、二人は全くその出来事を不運なこと
と思っていなかった。むしろ、二人きりでいつも以上に心を通わせることが出来たとプラ
スに捉えている。その証拠に、二人の顔はいつもより生き生きとし、充実感の溢れる表情
が浮かんでいた。

                                END.

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