あやかし達の刺激的な日常 −月寿−

家に帰り夕食を終えると、越知と毛利は各々好きなことをしてくつろいでいた。越知は部
屋で読書をし、毛利はのんびりと入浴する。入浴を終えると、パジャマを適当に羽織るだ
けのような格好で、毛利は越知のいる部屋へ向かう。
(風呂気持ちよかったー。今日はまだ眠ないし、月光さんとゆっくり出来るとええなあ。)
そんなことを考えながらご機嫌な様子で歩いていると、突然ドクンと心臓が大きく脈打つ。
それを契機に身体が熱くなり、下腹の奥がキュンキュンと疼く。
「んんっ・・・」
(何やコレ!?身体の奥がゾクゾクして、もどかしい。何ちゅーか・・・メッチャエッチ
したい!)
軽く息を乱しながら、毛利は越知のもとへ行こうとする。越知の部屋に辿り着くと、毛利
の顔は真っ赤に染まり、だいぶ呼吸は荒くなっていた。ドアを開け、助けを求めるように
越知の名前を呼ぶ。
「つ、月光さん・・・」
名前を呼ばれ、越知は毛利の方を振り返る。越知も読んでいた本を置き、自分の身に起こ
っている異変に困惑していた。
「毛利・・・」
「月光さん、俺、何やおかしくて・・・身体が熱くて、腹ん奥がもどかしくて・・・変な
気分になっとるんです・・・」
「お前もか。」
「お前もって・・・月光さんもってことですか?」
「ああ。先程からそういうことがしたくてたまらないような・・・そんな気分になってい
る。」
こんな状態になっている理由を考えるよりも早くそういうことをしたいと、二人は顔を見
合わせる。越知の顔を見ながら、毛利の頭に無性にこうしたいという欲求が芽生える。
「あ、あの、月光さん、一つお願いしてもええですか?」
「何だ?」
「月光さんの前髪、上げてもええですか?何や無性に月光さんの顔をしっかり見たくて。」
「別に構わないが、おそらく今日は視線のコントロールなど出来ないぞ。」
「ええです。」
きっぱりとそう言いきり、毛利は机の上に置いていた自分用の髪留めで越知の前髪を上げ
て留める。怪異ということもあり、その視線も普通の人よりは力を持っている。この状況
でどんな影響を与えるか分からない不安はあるものの、毛利がそうしたいのならと越知は
毛利の頼みを聞くことにした。
「ベッドに行ってもええですか?」
「ああ。」
邪魔な下着を脱いでしまい、毛利はベッドの上に座る。ドキドキとしながら、越知の顔を
見ると、声が漏れてしまいそうなほどの快感を感じる。
「んっ・・・」
(アカン、月光さんの目見とるとメッチャ気持ちようなって・・・)
「ハァ・・・月光さん・・・」
まだ何もしていないにも関わらず、色めいた表情で小さく震えている毛利を見て、越知は
ゾクっとする。もっと毛利を近くで眺めたいと、越知もベッドに乗り、ずいっと毛利に近
づく。
「っ!!」
「毛利・・・」
「あっ・・・」
普段は長い前髪で隠れている瞳に晒され、毛利はビクッとその身を震わせる。まるで視線
で犯されているような感覚に、毛利の胸はひどく高鳴る。
「まだ触れてもいないのに、随分と気持ちよさそうだな。」
「つ、月光さんに見られると・・・気持ちよくなってまいます・・・」
「そうなのか?それなら・・・」
毛利の顎を指先で上げ、じっとその目を見つめる。媚薬の影響で強い色気を含みながらも、
精神的重圧をかけるような視線で見つめられ、毛利は思わず声を上げる。
「んああぁんっ・・・!!」
「可愛いな。」
「ふあっ・・・月光さんっ・・・んんっ・・・!」
「見つめているだけで、イってしまいそうだな。」
自分と目を合わせながら、蕩けた顔でビクビクと身体を震わせている毛利に、越知の口角
は自然と上がる。それはもちろん種ヶ島がチョコレートに仕込んだ媚薬のせいでもあるが、
もともと眼力が強く怪異としての力も強い越知の瞳に見つめられているせいでもあった。
(月光さんと目合わせてるのたまらん。ホンマにこれだけで・・・)
「はぁ・・・ハァ・・・あんっ・・・!」
毛利の反応がたまらなくなり、越知はベッドの上に毛利を押し倒す。正面からではなく、
上から降り注ぐ視線に毛利は耐えられなくなる。
「やっ・・・ああぁんっ・・・月光さんっ!!」
越知に見つめられているという状況だけで、毛利は達してしまう。何かの影響があるだろ
うと予想はついているものの、あまりにも感じやすく淫らな毛利に、越知は情欲をそそら
れる。
「本当にこれだけでイってしまうとはな。」
「ホンマ今日はおかしいです・・・イッたのに、全然エッチな気分治まらへん・・・」
「それならば、もっといろいろなことをすればいい。俺もしたいことがあるのだが・・・」
「ハァ・・・何ですか・・・?」
越知自身もいつもの数倍そのような気分になっているので、いつもとは少し違うことがし
たくなる。毛利の耳元に口を近づけ、妖しく囁く。
「お前の身体全てを、この舌で舐め回したい。」
「っ!!」
越知の舌で肌を舐められることがどれだけ心地良いかを毛利は身を持って知っている。越
知のその囁きに、毛利は無意識に頷いていた。
「してください・・・」
「ああ。」
羽織っているだけのパジャマの前をしっかりと開くと、越知は毛利の首筋から鎖骨にかけ
てをじっくり舐める。
「ひゃっ・・・ああぁんっ・・・!!」
毛利の反応を楽しみながら、越知は首筋から胸、胸から腹、腹から下腹部と上から下へ向
かうように余すことなく毛利の肌に舌を這わせる。敏感になっている肌を越知の舌で舐め
られる快感に毛利は数度達する。それ故、毛利の下腹部は放った雫でいくらか濡れていた。
毛利の肌の上にこぼれる白濁の蜜を越知はその長い舌で丁寧に舐め取る。
「んあぁんっ・・・月光さん、そこ・・・アカンですぅ・・・」
「綺麗にしてやっているのに、またすぐに汚れてしまいそうだな。」
「だって・・・月光さんに舐められるん・・・メッチャ気持ちええから・・・」
毛利がそう言うのを聞いて、越知はいい気分になる。それならば、もっと気持ちよくして
やろうと、腿や脚、足の先まで舐めた後、羽織っているパジャマを脱がせてしまい、臀部
や腰、背中も舐めてやる。
「んあっ・・・ああぁんっ・・・あっ・・・ひゃああぁっ・・・!!」
「どこを舐めても気持ちよさそうだな。」
「気持ちええです・・・今日はホンマどこもかしも・・・よすぎて・・・」
「俺もお前を好きなだけ舐めることが出来て、とてもいい気分だ。」
「っ!!」
文字通り全身を舐め回した後、毛利を後ろから抱きしめながら、越知は毛利に口づける。
トロトロに蕩けるような気分の中、甘く深いキスをされ、毛利は再び達してしまう。
「んんっ・・・んんんぅ・・・っ!!」
幾度達しても治まらない淫らな気分に、毛利はむしろ高揚してしまう。越知が唇を離すと
越知の両目を見つめながら、毛利は今して欲しいことを素直に口にする。
「月光さん・・・」
「どうした?」
「そろそろ月光さんと繋がりたいです・・・」
「そうだな。」
越知もそうしたいと思っていたので、毛利の言葉に頷き、毛利の身体を起こすと自分の方
を向かせるようにくるりと反転させる。既にビクビクと震えるほど勃ち上がっている自身
の熱を出すと、対面座位のような形で毛利の蕾にそれを押し当てる。
「いいか?」
「・・・はい。」
ひくひくと痙攣している入口を抉じ開けるように越知は自身の熱を毛利の中に埋める。そ
の瞬間、耐えがたい絶頂感が越知を襲い、その熱全てが毛利の中に入ると同時に達してし
まう。
「くっ・・・う・・・」
「ああぁんっ!!」
越知が最奥へと入ってきたと同時に熱い雫が放たれる感覚。それがたまらず、毛利はビク
ンと下肢を震わせる。
「ハァ・・・毛利・・・」
「んっ・・・月光さんのが・・・入っとる・・・」
毛利を好きなように責めているときはそこまででもなかったが、毛利の中に挿れた瞬間、
越知の性感は大きく高まる。急に余裕のなくなったその感じに越知は戸惑いつつも、その
快感はひとしおなので、毛利を抱きしめながらその心地良さに浸る。
「月光さん・・・動いてもええですか?」
「ああ・・・」
越知がほんの少し腕を緩めると、毛利はより気持ちよくなれるようにと腰を上下に動かし
始める。
「あっ・・・ああぁんっ・・・!!」
「ハァ・・・んっ・・・」
「月光さん・・・あっ・・・中、メッチャ気持ちええです・・・」
「ああ・・・とても気持ちいい・・・」
明らかにいつもより余裕がなく激しく呼吸を乱している越知を見て、毛利は嬉しくなる。
もっともっと気持ちよくなりたいと毛利は激しく越知の熱を擦る。
「くっ・・・ぁ・・・毛利っ・・・!!」
「あっ・・・あんっ・・・気持ちええ・・・!!」
「うあっ・・・イクっ・・・!!」
「月光さんっ・・・あああぁっ・・・!!」
ビクビクと越知の熱が震え、その熱でいっぱいになっている内側がドロリとした雫で濡れ
る。その感覚が気持ちよく、毛利も熱の先から蜜を放つ。
「ハァ、ハァ・・・はぁ・・・」
「ハァ・・・ハァ・・・」
(こんなにイっとるのに、まだ足りひん・・・)
(もっと毛利と繋がっていたい・・・)
言葉を交わさずとも考えていることは同じなので、越知は繋がったままゆっくりと毛利を
ベッドの上に倒し、毛利の脚を抱える。越知がメインで動ける体位になったことで、毛利
は期待に胸を膨らませる。
「月光さん・・・」
「もっと、お前と気持ちよくなりたい・・・」
「ええ。今度は月光さんが、好きなように動いてください・・・」
色気たっぷりの笑顔で毛利はそう口にする。毛利の期待に応えるように、越知は毛利の中
をかき混ぜるかのように腰を動かす。既に中には越知の放ったモノで満たされているため、
越知が動くたびにぐちゅぐちゅと濡れた音が響く。
「ひあっ・・・あんっ・・・んくっ・・・ああぁんっ!!」
「ハァ、ハァ・・・毛利っ・・・!」
「つ、月光さん、もっと奥の方・・・突いて・・・」
「ああ・・・このへんか・・・?」
毛利の中の気持ちよさに翻弄されながら、越知は毛利の奥の方を激しく突く。
「ああぁんっ・・・そこ、気持ちええっ・・・ひあっ・・・また、イクっ・・・!!」
「あっ・・・んんっ・・・!!」
ビクビクと背中を仰け反らせ毛利は達する。収縮する内側は今の越知にとっては非常に強
い刺激となり、毛利の中を熱い雫で再度満たす。
「ハァ・・・ハァ・・・毛利・・・」
「大丈夫ですか・・・?月光さん・・・」
「あ、ああ・・・」
「ほんなら・・・」
竜の鱗の効果かこれだけしているにも関わらずどちらも体力的には余裕があり、媚薬の効
果がまだ残っているためか、まだ交わったままでいたい気分になっている。
「もっとして欲しいです・・・」
「俺も同じ気持ちだ。お前が大丈夫であれば続けたい。」
「決まりですね!もっと一緒に気持ちよくなりましょ。」
「ああ。」
毛利は越知に向かって腕を伸ばし、越知はそんな毛利の誘いに応えるかのようにキスをす
る。いつもとは違う長く続く交わることで得られる大きな快感。媚薬の効果が切れるまで
越知と毛利は存分にその気持ちよさを味わった。

種ヶ島の作った媚薬の効果は予想以上に長く続き、二人は明け方近くまで交わっていた。
効果が切れると、心地良い疲労感の中、深い眠りに誘われる。普段の数倍長い時間そうい
うことをしていた疲労感から、二人が目を覚ましたのはお昼前の時間であった。
「ん・・・」
横になったまま毛利がゆっくりと目を開けると、両目が見えている越知の寝顔があり、ド
キッとしてしまう。
(あー、あのまま寝てしもたんやな。それにしても、顔全部見えとる月光さんの寝顔、か
っこええ。)
ドキドキしながら越知の顔を眺めていると、越知も目を覚ます。
「ん・・・おはよう、毛利。」
「おはようございます。えへへ、前髪上げたままなんで、月光さんの顔がよう見えとって
何や新鮮ですわ。」
毛利にそう言われ、越知は昨夜のことを思い出す。そのままでいるのは何だか気恥ずかし
く、越知は前髪を留めていた髪留めを外した。
「昨日はだいぶ長いことしてしまったが、どこか痛かったり辛かったりはしないか?」
「全然平気ですよ。むしろ、いつもより気分がええくらいです。」
身体を起こしながら越知はそんなことを尋ねる。何も問題はないと、毛利はニコニコとし
ながら答えた。それを聞いて、越知はホッとしたような表情になる。そして、自分も毛利
あのような状態になってしまった原因を考える。昨日したことで、思い当たるふしは一つ
しかなかった。
「昨日のあの感じはおそらく種ヶ島と大曲が持ってきたチョコレートが原因だろうな。」
「えー、けど、あのチョコ、大曲さん達も食べてませんでしたっけ?」
「食べても効かないか、ああなってもいいという覚悟でか、どちらかだろうな。」
「なるほど。まあ、昨日のはいつもと全然違うて、大変でしたけど・・・悪くはなかった
かなーと思いますね。」
照れながらそんなことを言ってくる毛利に越知はきゅんとしてしまう。
「同感だ。前髪を上げていたおかげか、いつもよりもお前の顔がハッキリと見えて、存分
に可愛らしいさまが見れてよかったな。」
「そないなこと言われると、ちょっと恥ずかしいです。」
昨日のことを思い出し、毛利は頬を赤く染めてうつむく。そんな毛利も可愛らしいと、越
知は優しく毛利の頭を撫でた。
「今日は特に急ぎの予定もない。ゆっくりと休むことにしよう。」
「そうですね。今日は月光さんも俺と一緒にのんびりしましょ。」
枕を抱えるようにぼふんとベッドの上でうつ伏せになり、毛利は越知の顔を見上げる。自
分の想い人はなんて可愛らしいのだろうと思いながら、越知はふっと微笑む。
「ああ、そうだな。たまにはこんな日も悪くない。」
甘美で刺激的な夜を越えた日の昼どき、ゆっくりと身体を休めながら、二人は穏やかな時
間を過ごすのであった。

                                END.

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