あやかし達の特別な出会い −月寿−

とある満月の夜、毛利は引っ越し先の下見に来ていた街で道に迷ってしまう。
(困ったなー。土地勘ないのにこないに歩き回るのアカンかったかも。)
誰もいない道を溜め息を吐きながら歩いていると、少し離れたところに大きな人影を見つ
ける。
(助かった!あの人に聞いてみよう!)
小走りで近づいてみると、途中でその人物がとても大きいことに気がつく。
(俺もまあ身長は大きい方やけど、あの人俺より大きいんやないか?余裕で2メートルは
越えてそうやわ。)
声が届くくらいの距離まで近づくと、毛利はその人物を見上げるように声をかける。
「あ、あの・・・すんません。」
毛利に声をかけられ、その人物は毛利に視線を向ける。月明かりに照らされた青いメッシ
ュの入った白い髪に、全身白で揃えられた服装。鋭い視線で見下され、毛利の心臓はドキ
ンと跳ねる。
(メッチャ綺麗な人や・・・何やろ?メッチャドキドキする・・・)
胸が高鳴っているのは毛利だけではなかった。毛利が声をかけた人物。それは八尺様であ
ることを隠し、人の街で暮らしている越知であった。声をかけてきた毛利を見て、越知は
今までに感じたことのない激しい衝動を覚える。
「ぽ、ぽ、ぽ・・・」
「えっ!?」
無意識に口から漏れる八尺様としての言葉に、越知はひどく動揺する。
(これはまずい。どうしようもなくこの者を手ニ入レタイ・・・)
八尺様の本能が湧き上がってくるのを抑えられず、越知は毛利から離れようとする。
「あっ、すんません!知らない奴にいきなり声かけられたらビックリしてまいますよね。
俺、毛利寿三郎言います!今度、この街に越してこようと思って下見に来てたんですけど、
道に迷ってまって。」
越知が困惑していることに気づき、毛利は声をかけた理由を話す。それを聞いて、越知は
何とか冷静さを保ち言葉を返す。
「そうか。大通りまで案内すれば帰れるだろうか?」
「あ、はい!たぶんそれで大丈夫です!」
「分かった。では、案内しよう。」
「ありがとうございます!!」
八尺様としての衝動を必死で抑えながら、越知はそう口にし、毛利を大通りまで案内する
ことにする。ゆっくりと歩きながら、二人は話をする。
「ホンマ急に声かけてまってすんません。もし、嫌じゃなければ、名前教えてもろてもえ
えですか?」
「越知月光だ。」
「つきみつ・・・ほんなら、月光(つき)さんって呼んでもええですか?」
「さして問題はない。」
越知の名前を教えてもらい、毛利は嬉しそうな表情になる。
「月光さんって、メッチャ背高いですよね。俺より大きい人ってあんまりいないんで、ち
ょっと嬉しいですわ。」
「そうか。」
「そんだけ背が高くて、そないな真っ白な服着とると、何や八尺様みたいですね。」
毛利のその言葉を聞いて、越知はピタッと足を止め毛利を見る。
「あっ!!気ぃ悪くしてまったなら、すんません!!」
今しがた会ったばかりの人に失礼なことを言ってしまったと、毛利は慌てて謝る。
「もし・・・俺が本当に八尺様だと言ったら、お前はどうする?」
「えっ!?えっと・・・さすがに取り殺されるのは嫌ですけど、月光さんみたいに綺麗で
かっこよくて優しい八尺様やったら、魅入られてもええかなーなんて。」
照れたように笑いながら、毛利はそう答える。それを聞いて、越知は薄暗い夜道の壁に毛
利を押しつけ、毛利の耳の横の壁に両手をつく。
「っ!!」
「冗談でもそんなことを言うのはよくない。」
(えっ!?俺、壁ドンされとる!?うわ、月光さん、近くで見るとホンマかっこええ。)
「・・・かっこええ。」
こんな状況で思わず口に出てしまった本音に、毛利は、あっと焦るような反応を見せる。
(この状況で何てことを言っているんだ。そんなことを言われたら・・・)
「俺は今まで人の世界で正体を隠して生きてきた。だが今、お前と出会って、今まで抑え
つけてきた本能が溢れそうになっている。八尺様としての本能がな。」
「えっ、ほんなら、月光さんはホンマに八尺様ってことですか!?」
「そういうことだ。」
越知の腕と壁の間の狭い空間で聞く越知の告白に、毛利はひどく驚く。しかし、越知の正
体を聞いて感じるのは、恐怖ではなく興奮と歓喜の気持ちであった。
「ホンマに八尺様で、本能が溢れそうになっとるってことは・・・俺に取り憑きたいと思
っとるってことですか?」
「取り憑きたいとは少し違う気がする。お前を俺の側に置いて、俺のものにしたいという
気持ちだ。」
それは怪異の言葉というよりは、まるで愛の告白だと毛利の胸はときめく。一目見たとき
から、毛利も越知に惹かれていた。そんな相手からのそんな言葉。毛利の頬はほのかに染
まり、嬉しそうに目を細め、口元が緩んだような表情で、毛利は越知を見上げる。
「月光さんにそう言ってもらえて、何やメッチャ嬉しいです。」
「なっ!?」
「俺はええですよ?」
何がとはハッキリ言っていないが、越知は毛利の言わんとしていることを理解する。そん
なことを言われたら、本当に我慢が出来なくなってしまうと、越知は毛利の頬に触れる。
「それならば、大通りまで案内するのはやめだ。このまま俺の家に連れていく。そして、
もう帰さない。逃げるなら今のうちだぞ。」
怪異らしい強引な越知の言葉に毛利はキュンキュンとしてしまう。
「引っ越してくることは決まっとっても、どうせまだ住むところとか決めとらんかったし、
それが月光さんの家になったと思えば、全然問題ないですわ。」
「本気で言っているのか?」
「はい!」
まさかそんな提案を受け入れてもらえるとは思わなかったので、越知は戸惑いつつもその
心は喜びに打ち震える。毛利の顔に触れていた手を下ろし、毛利の手を掴む。
「今からお前を攫う。いいな?」
冗談ではなく本気の声色でそう言う越知の言葉に、毛利は胸を弾ませながら頷く。
「はい!攫ってください!」
満面の笑みを浮かべる毛利に魅了され、越知は毛利の手をしっかりと握り、自分の家に向
かって歩き出した。

自分の住んでいる家に着くと、越知はそのまま寝室へと毛利を連れ込む。帰宅したばかり
のため、部屋の明かりはついていなかった。その代わりに窓から月の光が差し込み、窓の
前に立つ越知を照らす。越知の大きな体から伸びる影は、普通の人間の影とは比べ物にな
らないほど大きく、毛利の体をすっぽりと覆う。
(ああ、ホンマに月光さんは八尺様なんやな。)
越知の影に覆われ、毛利はそんなことを思う。ベッドの上に毛利を乗せ、今度は影ではな
くその身で毛利を覆う。
「あ、あの・・・」
「八尺様としての本能が抑えられない。オマエト交ワリ、ヒトツニナリタイ。」
抑えようとはしているものの、八尺様としての言葉が越知の口から溢れる。そんな越知を
前にしても不思議と恐れはなく、毛利は高揚感を覚え、腕を伸ばして越知の言葉を受け入
れる。
「ええですよ。俺に月光さんを刻み込んでください。」
「毛利・・・」
越知の口から発せられる自分の名前に毛利はゾクッと身体の奥が痺れるのを感じる。大き
なベッドの上に押し倒され、越知の顔が近づく。あまりの近さに耐えられず、毛利はぎゅ
っと目を閉じる。
(キスされる!)
そう思った次の瞬間、越知の唇が自分の唇に触れるのを感じる。数度触れ合うだけの口づ
けが繰り返された後、下顎を掴まれ、囁くような声で、しかししっかりとした口調で毛利
は越知から指示を受ける。
「口を開いて、舌を出せ。」
ドキドキとしながら、毛利は指示通りに口を開け、舌を出す。再度越知の顔が近づくと、
出した舌に越知の長い舌が絡む。
「んあっ!!」
明らかに人のそれとは異なる越知の舌に、毛利は衝撃を受けつつも興奮してしまう。しば
らく舌を弄ばれた後、唇が重なり、今度は口内を舐め回される。
「んむっ・・・んんんっ!!」
(アカンっ!!こないなキス初めてで、頭真っ白になってまう!)
越知の口づけは激しいながらも優しく、蕩けるような快感が全身を駆け巡る。毛利を自分
のモノにしたいという八尺様らしい欲求がその舌から伝わり、毛利の心はまるで媚薬を飲
まされているかのように越知に夢中になっていく。
「ハァ・・・毛利。」
「んはぁ・・・ハァ、ハァ・・・」
唇を離すと、越知の長い舌とだらんと力の抜けた毛利の舌を艶やかな糸が繋ぐ。甘く激し
い口づけの余韻に呼吸を乱している毛利の服を、越知はゆっくりと丁寧に脱がしていく。
下に身につけていたものを全て取り去ると、越知は毛利の足を大きく開く。
「あっ・・・」
「ちゃんと感じてくれているのだな。」
先端から透明な蜜を溢れさせ十分に勃ち上がっている熱を見て、越知はどこか嬉しそうな
雰囲気でそう呟く。ペロリと長い舌で大きな手の長い指を舐めると、唾液の絡んだその指
で毛利の蕾に触れる。
「ここを使ったことは?」
越知の質問に毛利は恥ずかしそうに首を横に振る。
「そうか。」
毛利のそこを使えるのはこれから自分だけであることを知り、越知は毛利に気づかれない
程度に口元を緩ませる。
「まずは指を挿れるぞ。」
初めてのことで壊れそうなほど胸を高鳴らせながらも毛利は頷く。毛利のそこに指を挿れ
ながら、越知は毛利の耳に口を近づけ、八尺様の言葉を囁く。
「ぽぽぽぽ・・・」
「ひっ・・・あっ・・・!!」
「俺のすることを全て受け入れろ。」
「んあっ・・・あ・・・」
「俺はお前に痛みや苦しみを与えることはない。お前が俺にされて感じるのは、快感と心
地よさだけだ。」
「ハァ・・・んあっ・・・!」
低く落ち着いた声で、まるで呪いをかけるかのように越知は言葉を紡ぐ。その言葉通り、
越知の指が入っているそこは違和感や痛みを感じることなく、じわじわと快感が高まって
いく。
(月光さんに弄られてるとこ、メッチャ気持ちええ。初めてやのに・・・これも月光さん
が相手やから?)
「んっ・・・月光さぁん・・・」
「だいぶほぐれてきたな。だが、俺のを挿れるにはもう少しほぐさないと。」
「ひあっ・・・ああぁん!!」
もう少し毛利のそこをもう少しほぐそうと、越知は指を増やす。自分の内側触れる越知の
指が増えると、毛利はビクビクと下肢を震わせ、甘い悲鳴を上げる。
「フッ、可愛い声が出るんだな。」
「ハァ・・・月光さんの指・・・気持ちええですぅ・・・」
(可愛いな。本当にたまらない。)
もっと毛利を気持ちよくさせたいと、越知は毛利の内側を余すところなく擦る。越知の指
が動くたび、毛利の下肢は大きく跳ねる。
「あっ・・・あんっ・・・んああっ・・・!」
(中しか弄られてないのに、イッてまいそう・・・あ、アカンっ!)
「あんっ・・・月光さん・・・イッ・・・っ!!」
越知の言ノ葉の効果もあり、毛利は後ろだけで達してしまう。初めての経験に毛利は呆然
としながらも、その心地よさに心を奪われる。
「たくさん出たようだな。」
「ハァ、ハァ・・・月光さん・・・」
「そろそろ大丈夫そうだな。」
後ろを弄るだけで達した毛利を愛おしく思いながら、越知は一旦身体を起こし、自身の熱
を出す。予想していたよりもだいぶ大きなそれを見て、毛利はビクっと身体を強張らせる。
「怖いか?」
「こ、怖くはないんですけど・・・そんな大きいのが入るかどうか分からんくて、ちょっ
と不安です。」
「正直だな。大丈夫だ。痛くはしない。俺のことを信じて、ただ受け入れることだけ考え
ていろ。」
「は、はい・・・」
不安はあるものの、越知の言葉を信じることにする。毛利と交わるために大きくなったそ
れを越知は毛利の入口にあてがう。そして、先程と同じように毛利に覆いかぶさり、耳元
で囁く。
「ぽぽぽ・・・」
ずぷ・・・
八尺様の言葉を口にしながら、越知は腰を進め、毛利の中に侵入する。かなりの質量があ
るにも関わらず、毛利のそこは越知の楔を嬉々として受け入れる。
(すご・・・こないに大きくて太いのに、全然痛くも苦しくもないし、むしろ・・・)
「んあああぁっ!!つ、月光さんっ!!」
「ハァ・・・毛利っ・・・」
もっと深いところで繋がりたいと、越知は更に腰を進める。毛利の負担を減らすため、あ
の言葉を何度も耳元で囁く。
「ぽぽぽぽ・・・」
「ああぁんっ!!き、気持ちええっ!!」
「ぽぽぽ・・・」
「あああぁっ・・・月光さんの・・・奥まで来よるっ!!」
八尺様の言葉で、毛利が感じるはずだった痛み、違和感、圧迫感は全て快感に変換され、
越知と繋がるこの瞬間をこの上なく甘美なものにする。毛利と奥の奥まで繋がり、越知は
今までに感じたことのない悦びに打ち震える。
「毛利っ・・・」
「ハァ・・・月光さんっ・・・んあっ、月光さんと繋がっとる・・・!!」
「ああ・・・俺はこの瞬間を待ち望んでいた・・・」
八尺様としての本能を長らく抑えていた越知にとって、こんな瞬間が訪れるとは考えてい
なかった。しかし、八尺様としての本能が満たされた今、足りなかった何かが溢れんばか
りに満たされるのを感じる。
「月光さん・・・俺、もっと月光さんが欲しいです・・・」
「俺ももっとお前が欲しい。」
もっと深く交わりたいと、越知は激しく毛利の中を穿つ。越知の楔は毛利の内壁を大きな
快感をもたらしながら擦り上げ、毛利の内側の襞は越知の熱を離すまいと強く締め上げ絡
みつく。
「ああっ・・・んあんっ・・・ああぁんっ!!」
「くっ・・・毛利っ!!」
「月光さんっ・・・んあっ・・・ああぁっ!!」
「毛利、お前はもう俺だけのものだ。」
今まで感じたことのない強烈な所有欲と独占欲。それが越知にそんなことを口にさせる。
そんな越知の言葉に、毛利は艶やかな笑みを浮かべ、それを受け入れるような言葉を返す。
「はい!俺の全部、月光さんにあげますわ!」
(ああ、毛利で全てが満たされる・・・)
強い充足感と満足感に越知の八尺様としての魔力が溢れるほどに高まる。制御出来ないほ
どの魔力の上昇は、二人に極上の絶頂感をもたらす。
「ふああっ・・・気持ちええっ!!ああっ・・・イクッ・・・あああぁんっ!!」
「ああっ・・・毛利っ・・・くっ!!」
ドクドクと奥の奥に注がれる越知の精を受け止めながら、毛利は越知に独占される歓びに
酔いしれる。人ならざる者と交わり、心も身体も全て捧げる恍惚感。それを知った毛利は、
これから一生越知と添い遂げることを決めた。

初めての交わりを終えると、二人は月明かりが差し込むベッドの上で横になり、身を寄せ
合っていた。
「今日初めて会った月光さんとこないな状況になってるん、ホンマ信じられへんわ。」
「そうだな。」
「せやけど、俺がこの街に越して来たいと思ったんは、月光さんに出会うためな気がして
ます。」
越知の顔を見ながら、嬉しそうに目を細めて毛利はそんなことを言う。
「何故だ?」
「あそこで月光さんに会うたとき、何やビビっときて、初めて会ったはずやのに、やっと
会えたって気持ちになった気がして。メッチャドキドキしましたわ。」
「俺もだ。お前を一目見た瞬間、お前を手に入れたいという気持ちが抑えられなくなった。」
「俺と月光さんが出会うのは、運命だったのかもしれへんね。」
「フッ、そうかもしれないな。」
自分達が巡る会うのは運命だったと言う毛利の言葉に、越知は嬉しそうにそう返す。
「月光さんと一緒に住むのはもう大歓迎って感じなんやけど、一度今住んでる家に戻って
もええですか?」
それを聞いて、越知の顔が一瞬曇る。そのことに気づいて、毛利は慌てて言葉を続ける。
「いや、月光さんから離れたいとか逃げたいとか全く思ってないですよ?ホンマ普通に引
っ越しの作業がしたいってだけで。」
「ああ、なるほど。」
「心配やったら、月光さんも手伝ってください。それやったら、俺も助かるし。」
「無論だ。いくらでも手伝ってやる。」
「ありがとうございます。」
越知の家に引っ越してくることを前提に毛利は話をする。それを聞いて、越知も安堵する
ような顔を見せる。すぐ側にある毛利の身体を抱き寄せ、越知はその身体を抱きしめなが
ら、毛利への想いを口にする。
「俺と出会ってくれたことに感謝する。これから先、ずっとお前と共に生きていきたい。
よいだろうか?」
「何やプロポーズされてるみたいで照れますね。もちろんええですよ!俺も月光さんとず
っと一緒にいたいです!」
恥ずかしそうに笑いながら、毛利は越知の顔を見上げそう返す。自分の想いを受け入れて
くれた毛利を腕に抱き、越知は八尺様とは思えないような優しく穏やかな微笑みを浮かべ
る。
「ありがとう。お前と過ごす日々はきっと幸せな日々になる。これからよろしくな。」
「こちらこそ、末永くよろしくお願いします!」
月明かりのように静かだった越知の居場所に、明るい光を放つ毛利が取り込まれる。今ま
で八尺様であることを隠して生きてきた越知であったが、毛利と出会ったことで八尺様と
して生きることを許される。それは目の前に広がる世界をより鮮やかに彩るような変化を
もたらすのであった。

                                END.

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