期末テスト三日前の放課後、氷帝学園の三年のとあるクラスにテニス部の二人が一つの机
に向かい、勉強をしている。
「跡部、これはどうやって解くんだ?」
「だから、この公式にこれを代入して因数分解すんだよ。お前、ちゃんと授業聞いてんの
か?」
「聞いてるよ!でも、分かんねーんだよ。」
「お前、目標があればがむしゃらに頑張るくせに、興味のないことには全く手つけないの
な。これくらいの問題解けて当たり前だっつーの。」
「ウルセーな。あっ、これもよく分かんないんだよな。」
「それは・・・」
宍戸は数学で分からないところを跡部に教えてもらっている。跡部は学年でもトップクラ
スの成績だが、宍戸は平均より少し上ぐらいだ。数学がとことん苦手な宍戸は今回こそは
平均点以上を取ろうと頑張っている。
「はあ、やっとここまで終わった。あと三ページだ。」
「もう五時だぜ。まだやるのか?」
「もうちょっとだけつきあえよ。お礼はちゃんとするからさ。」
「言ったな。それじゃあ、たっぷりしてもらうぜ。」
「でも、テストが終わってからな。」
「分かってるよ。そのかわり覚悟しとけ。」
「うー、どうしよう。まあ、いいや。それよりここ教えてくれよ。」
「オッケー。ここはな、連立使って二つの解を・・・」
先生の説明よりくわしい説明を跡部はすることができる。そのおかげで宍戸も大分理解す
ることが出来てきた。お礼を期待して跡部はさらにくわしく宍戸に教える。あっという間
に残りの三ページを終わらせた。
「よっしゃー、終わった!!サンキュー、跡部。」
「やれば出来るじゃねーか。」
「跡部の教え方がうまいからだよ。それよりさ、帰りどっか寄ってかねえ?」
「何、お前のおごり?」
「ちげーよ!俺、今、金ないもん。」
「なんだ、つまんねー。じゃあ、今日の分のお礼。」
「何だよ・・・。」
跡部は窓のところに宍戸を押しつけ、窓に手をついた。
「跡部、これじゃあ外から丸見えだぜ。」
テスト前で部活はないが、外には数人の人が見える。宍戸は顔を赤らめながら、跡部から
目をそらした。
「かまわねえよ。ほら、こっち向け。」
跡部のいう通り宍戸は跡部の方を向いた。その瞬間、やわらかい宍戸の唇に跡部の唇が触
れる。中途半端にのびている髪の毛にそっと触れ、さらに深く口づける。
「ふ・・・うん・・・」
「・・・・宍戸、すっげえ可愛い。」
唇を離して跡部はつぶやく。
「跡部、いっつもそんなこと言ってるけど、それ本心なのかよ。」
赤くなった顔で睨み、宍戸は少し怒った口調で尋ねた。
「当たり前だろ?何、俺の言ってること信じられないの?」
「だって、そういうことは何度も言うくせに一番言って欲しいこと言ってくれないじゃね
ーか・・・。」
「言って欲しいことって何だよ。」
「分かるだろ・・・。」
分かっていても宍戸の反応がおもしろくて、跡部はなかなかその言葉を言わない。
「じゃあ、言ってやろうか。俺、宍戸のこと・・・・って、言うわけねーだろ、バーカ!」
「なっ!?」
一瞬期待してしてしまったことを後悔して、宍戸はカバンを持って教室を即座に出ようと
した。かなり怒っているようだ。
(期待して損した。跡部ってそういう奴だもんな。分かってんのに俺何期待してんだよ。)
教卓のところにさしかかったあたりで、宍戸は跡部に後ろから抱きとめられた。
「何だよ、跡部。」
「本当にお前おもしろいな。さっき言ったこと冗談に決まってるじゃねーか。」
「それでまた、俺をからかうんだろ?俺はもう帰るんだ!離せよ!!」
力を込めて跡部を引きはがそうとするが、跡部がさらに強く抱きしめるのでそれはかなわ
なかった。跡部は後ろから宍戸の肩に顔をうずめる形でそのままの状態ではっきりと言っ
た。
「俺、宍戸のこと好きだぜ。」
「っ!!」
「確かに俺、この言葉はお前に言ってなかったな。でも、普通分かるだろ?あんなことし
たりするんだから。」
「・・・だって、お前ってどこまでが本気でどこまでが冗談だか分かんないだもん。一度、
聞いてみたかったんだよ。」
「わがままな奴。言葉にしなきゃ分からないのかよ。じゃあ、何度でも言ってやるぜ。宍
戸好きだぜ。大好き。愛してる。」
「だあー、もう何でお前はそう極端なんだよ!!」
「つーか、俺だけに言わせんな。お前も言えよ。」
「うっ・・・。あ、跡部、好きだぜ。」
とその時、廊下の方から聞きなれた騒がしい声が聞こえた。
「あー!!宍戸が跡部に告ってるー!」
「なっ、あっ、岳人に忍足・・・!?」
「跡部もしっかり宍戸のこと抱きしめとんのやな。放課後だからってあんまりイチャイチ
ャしたらアカンで。」
忍足も岳人もニヤニヤしながら、二人を見る。宍戸は顔を真っ赤にしてうつむいた。
「お前らだけには、言われたくねーよ。」
この時、忍足と岳人はラブつなぎで廊下を歩いていた。確かにこんな二人には言われたく
ない。
「お前らまだ帰らないのー?早く帰らないと昇降口閉まっちゃうぜ。」
「ああ、もう帰るよ。じゃあ、宍戸帰るか。」
「そうだな。って、跡部いい加減離れろ!」
「ほな、俺達は先行くな。」
岳人達は跡部と宍戸をおいてさっさと帰ってしまった。跡部もカバンを持って宍戸の肩を
抱き、ドアの方へ向かう。
「なあ、宍戸。テストが終わったらお前んち行くからな。」
「何でだよ!」
「だって、今日の礼しっかりしてもらわなきゃいけないじゃんか。」
(うー、お礼はちゃんとするなんて言わなきゃよかったー。)
後悔先にたたず。宍戸はさっき自分が言ったことを後悔した。跡部はかなり乗り気なので
必ずテストが終わったら宍戸の家に行くだろう。それも、何をされるかは分かりきってい
る。大きな溜息をついて、宍戸は跡部に寄りかかった。
「しょうがねーな。その日は母さん仕事でいないから別に来てもいいぜ。そのかわり、さ
っさと終わらせろよ。」
「どうしよっかな。まあ、楽しみにしてるぜ。」
二人はそのままそれぞれの家へ帰って行った。テストが近いにもかかわらず、二人とも違
うことで頭がいっぱいだった。
テストが完璧に終わったのは、その日から六日後。最終日の教科は理科と家庭科、そして
宍戸の苦手な数学だ。
「どうだった、跡部?」
宍戸はわざと不安気に尋ねる。
「出来たに決まってんだろ。お前はどうなんだよ?」
「・・・・。」
自信なさげにうつむき、黙ってみせた。跡部はその宍戸の表情を見て焦った。
「お、お前、あんなにやったのにダメだったのか?」
「うっそ。バッチリ出来たぜ。完璧じゃないけどいつもよりよく出来たと思う。」
「何だよ心配させんな。」
「へっへー、これも跡部のおかげだぜ!サンキューな。」
うれしそうに笑って、宍戸は跡部に礼を言う。跡部もうれしそうな顔になった。
「よかったじゃねーか。じゃあ、さっさとお前んちに行くとするか。」
(そうだったー。すっかり忘れてたぜ。あー、寝不足なのに体もつかなあ。)
SHRが終わると、跡部は宍戸のところへ向かい早く帰ろうと促した。宍戸はいやいやな
がらも跡部の言う通り寄り道もせずに家に帰る。宍戸の家につくと二人は何も言わず、部
屋に向かった。
「少しちらかってるけど、適当に座れ。」
「何だよその言い方。俺、別に座らなくてもいいからお前がそのベッドの上に座れよ。」
カバンを机の横に置くと、宍戸はベッドに腰かけた。
「さあて、この前のお礼をいただくとするか。」
腰かけている宍戸の肩に手をかけ、少し強引にキスをする。宍戸はなんの抵抗もせずに跡
部の舌を受け入れる。今回は勉強を教えてもらったお礼としてするので、強く抵抗するこ
とはしなかった。
「・・・ん・・ぁ・・」
喉の奥から声が漏れる。口づけをしたまま跡部は器用に宍戸のワイシャツを脱がせていく。
「・・・・はっ、跡部、いつの間にボタン外してんだよ。」
「これからやるんだから当然だろ?」
「そりゃそうだけど・・・。キスしながら脱がすなんてヤラシイ。」
「別にいいじゃん。それよりさっさと先進むからな。」
ボタンが外され、はだけた胸に跡部は唇をおとす。宍戸がどこが一番感じるところか知り
尽くしているので、そこを中心に攻めていく。
「んっ・・・あ・・あっ・・・」
「お前、反応良すぎ。これくらいで声あげるなんて女みてえ。」
「ウルセーよ・・・お前が俺の弱いとこばっか攻めるからいけないんだろ。」
「そうだよな。ここもこんなになってるし・・・。」
「あ・・・っ・・・」
ズボンの上から宍戸のモノに触れる。それだけで、痺れが走った。跡部はそのままチャッ
クをおろし、直接触れようとするが途中で手を止めた。
「宍戸、手と口、どっちでして欲しい?お前のして欲しい方でやってやるぜ。」
「えっ・・・そんなの・・言えない。」
思ってもみなかった跡部の言葉に宍戸は困惑した。こんなことを聞かれても恥ずかしくて
答えられるはずがない。
「言わないと、何にも慣らさないでいきなり突っ込むからな。」
跡部の脅迫じみた台詞に驚き、宍戸は答えることを余儀なくされた。
「・・・口がいい・・・・。」
「オッケー。バッチリ、イカせてやるからな。」
そういうと跡部は何のためらいもなしに宍戸のモノを口に含む。宍戸はベッドに敷いてあ
る布団の端をつかんで与えられる刺激に耐える。
「くっ・・・はぁ・・あっ・・・あ・・」
「宍戸、目つぶるな。ちゃんと俺のこと見ろ。」
跡部を見るということは口でされている自分のモノを見ることと同じだ。宍戸は閉じてい
た目を恐る恐る開いた。自分の想像以上の光景に宍戸は跡部から目をそらせなくなる。
「あっ・・・やだ・・跡部・・・」
あまりの舌の動きのやらしさに思わず宍戸は跡部の頭に手を置いて離そうとした。だが、
頭で考えていることとは全く逆のことを頭に置かれた手はしていた。
「何、宍戸、そんなにして欲しいわけ?」
「ち、ちがっ・・・!!手が勝手に・・・」
「ふーん、手が勝手にねえ。」
跡部はニヤニヤを笑って、口での愛撫を続ける。宍戸はしだいに話す余裕がなくなってき
ている。
「うあ・・・っ・・・あ、跡部・・もう・・・」
目に生理的な涙をいっぱいに浮かべながら、宍戸は息を乱す。跡部は何も言わず宍戸が達
するまで離そうとしない。
「やっ・・・ああっ・・・!」
跡部の口元に白い液体が流れる。口の中に残ったそれを飲み干すと跡部はぐったりと力が
抜けている宍戸の隣に座った。
「なあ、宍戸。俺のもして欲しいんだけど。」
「えっ・・・。俺が跡部のをするのか?」
「そうだよ。まあ、お前は慣れてないから直にやんなくていいぜ。」
「・・・?」
跡部は自分のカバンの外側のポケットからエメラルドグリーンの袋に包まれたコンドーム
を取り出した。
「これ、ミント味なんだぜ。これならやってくれるだろ?」
「ミント味?」
「そ。だって、お前ミント好きだろ?わざわざ買ってやったんだぜ。」
「わ、わかった。やるよ。」
グリーンのコンドームを受け取り、跡部のモノにつける。こんなにも間近で見るのは初め
てだったので、宍戸は口に含むのを躊躇した。
「どうした宍戸。早くやれよ。」
「あ、ああ。」
思い切って舌で舐めてみる。跡部の言う通り確かにそれはミントの味だった。
(うわあ、本当にミントだよ。確かにこの味俺好きだな・・・。)
ミントの味しかしないと分かると、宍戸は夢中で跡部のモノを口に含む。
「んっ・・・ふ・・う・・」
「そんなにうまいのかよ。つーか、お前結構うまいじゃねーか。」
宍戸の頭を撫でながら、跡部はベッドの上に座っている。しだいに暑くなってきたので、
着ていたワイシャツは脱いでしまった。
「宍戸、もういい。」
「えっ、何で。俺そんなに下手?」
「ちげーよ。俺はお前の中でイキたいんだよ。だから、後ろ向いて四つん這いになれ。」
「なっ!?何だよそれ!!」
「ほら、早くしろ!」
しぶしぶ跡部の言う通りに四つん這いになる。跡部は持ってきてあった潤滑剤を入り口の
ところへ垂らす。
「うっ・・・そんなもんまで持ってきてんのかよ。」
「まあな。」
次の瞬間、自分が想像していたのとは違う衝撃が宍戸を襲った。
「うっあああ・・・!!」
「うわっ、やっぱキツ・・・。」
潤滑剤は垂らしたものの指で慣らさず、そのまま跡部は宍戸の中に自分を入れた。
「なっ・・・あっ・・・何してんだ・・よ・・・跡部!!」
「早くお前とつながりたかったからさ。」
「くっ・・・慣らさないと・・お前だって・・・あっ・・・ツライだろ・・・」
「俺は大丈夫だ。それに宍戸だってこれぐらいの痛みがあった方がいいんじゃねえの?お
前かなりマゾっ気あるもんな。」
「ちがっ・・・くっ・・ん・・・・あぁ・・・」
慣らさずに入れられて確かに痛いはずなのに、宍戸にとってはそれさえも快感だった。頭
では否定したいと思っていても体は反応してしまう。気持ちよさと痛みが同時に走って涙
が勝手に流れる。
「あっ・・・うあっ・・・跡部ぇ・・・」
喘ぎに涙声が混じってきたのを聞き、跡部は宍戸の体を反転させ仰向けにした。
「俺、泣いてる顔とかに弱いんだよな。もっと、めちゃくちゃにして泣かせたいって思っ
ちまうんだ。特に宍戸。お前だとな。」
「・・・っ!!」
つながったままの状態で前の方にも触れられて、宍戸の頭の中は真っ白になる寸前だった。
意地悪く鋭い視線で見られることがさらに宍戸を興奮させる。
「はっ・・・あ・・跡部・・・あとべ・・・」
「何だよ宍戸。そんなに俺の名前呼んで。何か言いたいことでもあんのか?」
「・・・もっと・・もっと・・・・俺のことめちゃくちゃにして・・・」
「しょうがねえ奴だな。どうなっても知らねえからな。」
宍戸のマゾっぷりが発揮されて、跡部もかなり乗ってきた。何度も奥を貫かれるたび、宍
戸は甘い声を漏らし、跡部にしがみつく。跡部の背中にはいくつもの引っかき傷が出来て
いた。
「くっ・・あ・・っ・・・あと・・べ・・・俺・・・もう限界・・・」
「じゃあ、一緒にイこうぜ。」
跡部がもう一度大きく突くと、宍戸の喉から悲鳴にも似た声があがる。跡部もほとんど同
時に絶頂を迎えた。
「あっ・・ああぁぁぁ―――!!」
「―――くっ!!」
「あー、腹減った。宍戸、何か買いに行くか。」
「何言ってんだよ。俺は今、腰痛くて動けねーんだ!」
「だって、お前があんな誘うようなこと言うからいけねーんだぜ。」
「跡部が激しすぎんだよ。」
「いいじゃんか。気持ちよかっただろ?」
「そうだけど・・・って、そんなのどうでもいいから、何か食いもん下から持って来いよ。」
「しょうがねーな。取って来てやるよ。」
跡部は階段を下りて、台所からテーブルの上に置いてあったパンを宍戸の部屋に持ってい
く。
「これ食っていいのか宍戸?」
「ああ。かまわねえよ。」
二人はパンの袋を開けて、食べ始めた。昼ごはんを食べる前にやったのでかなりお腹が空
いている。
「そういえばさ、宍戸。今回のテスト80点以上お前がとったら、今度は俺がご褒美あげ
てやるよ。」
「マジで。何くれんの?」
「内緒。」
「何だよそれー。」
「あはは、俺、これ食ったら家に帰るな。今日は楽しかったぜ宍戸。」
「分かった。そうだ、今度の日曜どっか行かねえ?せっかくテスト終わったんだしさ。」
「そうだな。考えとくぜ。じゃあ、俺もう帰るな。」
「おう、じゃあな。また、明日。」
「宍戸。」
「何だよ、跡部。」
「俺、本当にお前が一番好きだからな。」
「俺もだぜ。跡部。」
跡部は宍戸からもらったパンを食べ終えると、宍戸の部屋を出た。お互いに好きだという
ことを確認して・・・。
『うわっ』
その日の夜、二人は風呂場で鏡を見て驚いた。宍戸の上半身には跡部の残したキスマーク
が、跡部の背中には宍戸がつけた引っかき傷がバッチリ残っていたのだった。
END.