Christmas Magic

赤と緑で飾られた街並み。子供も大人もわくわくする季節。寒さも吹っ飛ぶくらいのにぎ
わいが街を明るくしている。そう、もうすぐクリスマス。誰もが楽しみにしているこの日
は、特に恋人達にとって、とても重要な日だ。それは氷帝のメンバーにとっても例外では
ない。
「じゃあ、クリスマス・イブに。」
「はい。楽しみにしてます。」
つい最近つき合い始めた滝と鳳は、クリスマス・イブに会う約束をした。この時、滝は鳳
にあるプレゼントを用意している真っ最中。
クリスマス・イヴまであと一週間か。もうちょっと、ペース上げないと間に合わないな。
滝が用意している最中のプレゼント。それは、恋人達のお決まりのプレゼント、手作りマ
フラーだ。クリスマスに合わせて、色はグリーン。鳳にはピッタリの色だろう。今年の流
行に合わせて少し長めに作る予定で、まだ50センチメートルくらいしか出来ていないの
で、かなり頑張れなければならない。毎日、少しずつ編んでいって、イブ前日にはほとん
ど完成に近い状態だった。
「よし、あともうちょっと。そうだ!どうせだから、刺繍も入れよう。」
だいたい形は出来ているので、滝は刺繍を入れようと考えた。ところが、刺繍を入れる作
業は結構大変でものすごく時間がかかってしまった。
「はあー、やっと終わった。うん、上出来、上出来。うわっ、もう二時じゃん。早く寝な
きゃ。」
すでに日付は12月24日。すっかり疲れがたまってしまった滝は慌ててベッドに入り、
眠りについた。だが、慌てていたのがいけなかった。目覚ましをかけるのを忘れてしまっ
たのだ。この日、滝は大慌てで用意をすることになるのだ。

「うーん・・・あれ?今、何時だろ?」
枕元に置いてある時計を見て、滝は絶句した。時計の針は午前10時25分を指している。
鳳との約束の時間は10時半。早く用意しなければ間に合わない。ベッドから飛び起きる
と、出来る限り急いで洋服を着て、髪をセットし、バックの中にプレゼントを詰め込んで、
部屋を飛び出した。それでも10分はかかってしまったので、移動時間を考えると大遅刻
だ。
長太郎、ゴメ〜ン!!まさか寝坊するとは思わなかったよー。
そのころの鳳は約束の時間の5分前に来て、滝が来るのを待っていた。もう約束の時間を
15分過ぎている。
「遅いなあ、滝さん・・・。」
滝を待つ鳳の表情はまるで主人の帰りを待つ、賢いワンコ。今か今かとそわそわしながら
あたりを見回している。そのとき、必死で走ってくる滝の姿を見つけた。
「滝さん!」
「ハァ・・・ハァ・・・ゴメン、長太郎・・・ちょっと、寝坊しちゃって。」
「いいですよ。そんなに待ってませんから。」
もし来なかったらどうしよう・・・なんてことを考えていた鳳はニコッと笑って、滝に言
った。
「今日はどこ行くんですか?」
「どこにしようか。長太郎、どっか行きたいところある?」
「特にないですけど、ショッピングモールとか行ったら楽しそうじゃないですか?」
「そうだね。じゃあ、行こう。」
まだ、昼前なので二人はショッピングモールへ向かうことした。特にこれを見たいと思う
ものはないので、適当に歩いてショーウィンドーを眺める。どの店もクリスマス用の装飾
が施されていて、サンタやトナカイがいっぱいだ。クリスマスセールをしているところも
たくさんあり、いつもは興味がないものもよく見えてしまう。二人はオシャレな雑貨屋に
入った。
「へぇ。結構、いい物そろってんじゃん」
「滝さん、このへんの写真立てよくないっスか?」
「本当だー。シンプルだけどオシャレだね。あっ。」
「どうしたんですか?」
滝はある写真立てに見本として入っている写真を見て、声を上げた。
「見て、この写真。この犬、長太郎にそっくり。」
「何でですかー。似てないっスよぉ。」
「いや、マジで似てるって。ふふ、ホントそっくり。」
写真と鳳を見比べて、滝はクスクスを笑う。鳳は反論しながらもその写真を見て、一理あ
るなあと思ってしまった。でも、犬に似ていると言われてそんなに素直には喜べない。ほ
っぺをぷうと膨らませて怒った感じを表そうとするが、滝にとってはそんな表情も可愛く
て仕方がない。
「ゴメン、ゴメン。そんなに怒るなよ。」
「別に怒ってなんかないですよー。」
写真立てより奥の方へ入ると女の子がするような羽や頭につける飾りが置いてある。羽は
ちょうど天使の羽のよう感じで、背中につけられるようになっていた。
「滝さん、この羽、ちょっとつけてみて下さいよ。」
「えー、恥ずかしいよ。」
「ちょっとでいいですから。お願いします。」
「しょうがないなあ。ちょっとだけだぞ。」
鳳に言われて滝は天使の羽を背中につけた。その姿は全く違和感がなく、まさに天使と言
うにふさわしい。
「めちゃくちゃ似合いますね、滝さん。本物の天使みたいです。」
「そうかな?でも、やっぱ恥ずかしい。もう取るね。」
滝はさっさと羽を取ってしまった。鳳は残念そうにその羽をもと置いてあった場所に戻す。
そこを見終えると、今度はオルゴールがある場所を見る。クラッシックからポップスまで
さまざまなジャンルの曲がオルゴールになっている。二人は自分の好きな曲を探し、ふた
を開けて聞く。
「俺さ、このkinkiの『to heart』好きなんだ。」
「その曲いいですよね。でも、俺はこっちの方が好きだな。」
「へぇ。『僕の背中には羽がある』か。それも好きかな。」
どちらもkinkiのバラードっぽいラブソングがお好みらしい。オルゴールを一通り見
終えるとこの店を出る。だいぶゆっくり見ていたので、もうお昼近くになっていた。喫茶
店っぽいところに入り、軽い食事を取ってから、また街を歩く。アクセサリーの店やペッ
トショップなどいろいろな店に立ち寄り、デートを満喫していた。夕方になると飾りの豆
電球が輝き始める。

「だいぶ暗くなってきたね。」
「はい。何か雲がすごいですね。」
「もしかしたら雪が降るかも。あー、どうりで冷えるわけだ。」
「そうですね。って、滝さん、何でこんなに寒いのに手袋もマフラーもしてないんですか
!?」
「あー、寝坊したから忘れちゃった。それにマフラーなら長太郎だってしてないじゃん。」
「俺はいいんです。マジで寒そうですよ。俺の手袋、片方貸します。」
鳳は左手にしていた手袋を取り、滝に渡した。正直、本当に寒かったので滝は素直に受け
取る。
「ありがとう、長太郎。でも、左手寒くなっちゃわない?」
「それより滝さんの方が冷えてるんじゃないですか?ほら、こんなに冷たい。」
外した方の手で滝の右手を握る。ずっと冷気にさらされていたので、とても冷たくなって
いた。
「長太郎の手、あったかーい。」
「じゃあ、俺が温めてあげますよ。ここからは手を繋いで歩きましょう。」
「いいよ。そうだ。中央広場にある大きなクリスマスツリー、見に行こうよ。今ならきっ
とライトアップされててキレイだよ。」
外側にきている手には手袋をし、内側にきている手でぬくもりを分け合う。そのままの状
態でツリーのある場所まで行った。やはり、中央広場であるので少々混んではいたが、そ
れが気になるほどではなかった。赤や青や黄色の明かりがついたり、消えたりを繰り返し
ている。
「うわあ、キレイ。」
「ホントですね。あ!」
「どうしたの?長太郎。」
「滝さん、雪ですよ!雪が降ってきました。」
ツリーを見るために上げた顔に雪が落ちてきたのだ。冷たいが滝や鳳にとってはホワイト
クリスマスになることの方がうれしくて、ほとんど気にならなかった。
「ホワイトクリスマスだね。なんかうれしいな。」
「俺もです。ハ、ハクシュンッ。」
雪が降ってきて寒さが増したのか、鳳はクシャミをした。
「大丈夫?長太郎。あっ、そうだ!」
「何ですか?滝さん。」
滝は鞄の中から袋に包まれたプレゼントを取り出した。緑色で刺繍入りの少し長めのマフ
ラーを鳳の首にかける。鳳は驚いたような表情でそのマフラーの端を手に取った。そこに
は、“Chotaroh”と刺繍がされていた。
「クリスマスプレゼントだよ。でも、手作りマフラーなんてやっぱ嫌だった?」
「い、いえ、すっごくうれしいです!!でも、少し長くないですか?」
「今年は長いのが流行なんだよ。」
「へぇ。あっ、じゃあ・・・。」
鳳は自分の首に一周くらい巻いて、余った部分を滝の首に巻いた。一つのマフラーを二人
で巻くという状態だ。滝は少し恥ずかしそうな表情で鳳を見た。
「これはさずがに恥ずかしくない?」
「俺は全然恥ずかしくないですよ。滝さん、嫌ですか?」
恥ずかしくないとキッパリ言われたあと、しゅんとした顔で問われたので、嫌だとは言え
なかった。
「別に嫌じゃないよ。でも、このままここにいるのはやっぱり、ちょっと・・・」
と、その時、聞き覚えのある声が二人の耳に入った。
「お前らも来てたのか?つーか、すごい格好してんな。」
この二人と同じく、クリスマスデート中の跡部と宍戸だ。まさか知り合いに会うとは思っ
ていなかったので、滝と鳳はちょっとビックリ。それも今している格好のことを言われて、
二人は赤くなった。
「だいぶ、うまくいってるみたいじゃねーか。俺らはこれからもう家に帰るけど、お前ら
はまだここにいんのか?」
「いや、もうそろそろ移動しようかと思ってる。」
「それじゃあ、ちょっと目立ちすぎだもんな。跡部、早くお前んち行こうぜ。」
「ああ。じゃあな。」
宍戸はどうやら今日は跡部の家に泊まりらしい。二人を見送ったあと、滝と鳳も歩き始め
た。雪は未だにちらついているが、マフラーと手袋のおかげで寒さは微塵も感じられない。
「ねえ、長太郎。」
「何ですか?」
「これからうちに来ない?」
「えっ、いいんですか?」
「うん。長太郎がいいなら。オッケーだよ。」
「じゃあ・・・」
日が沈んで、だいぶ時間が経っていたので、二人は滝の家に向かうことにした。鳳にとっ
ては初めての滝の家の訪問だ。帰る途中で家で食べようとケーキを二つだけ買った。

「ただいまー、つっても誰もいないけど。」
「お邪魔します。」
わあ、滝さんの家って広いなあ。今日は誰も家の人いないのかな?
「ここが俺の部屋だよ。お茶とケーキ用意してくるから、ちょっと待ってて。」
「はい。」
滝は一階に下りていく。鳳は部屋に一人残されて、どうしようか少し戸惑った。滝の部屋
はキレイに整理されていて、とても男の子の部屋とは思えない。ベッドに軽く腰かけて、
滝が戻って来るのを待つ。
「おまたせ。はい、紅茶とケーキ。」
「ありがとうございます。」
「夕飯どうしよっか?うち、親帰ってくるの遅いから、二人分だけでいいと思うんだけど。」
「食べに行くか家で食べるかってことですか?」
「違うよ。何が食べたい?材料は結構あるから、たぶん何でも作れるよ。」
滝のこの言葉に鳳は驚いた。ようするに夕飯を滝自身が作るというのだ。
「何でもいいですよ。」
「じゃあ、シチューとかどう?雪降ってるし、雰囲気的にはピッタリだよね。」
「あ、いいですね。俺も手伝います。」
ケーキを食べ終えると二人は一階にあるキッチンに向かい、夕食の用意をし始めた。滝の
提案でメニューはシチュー。そんなに難しいものではないので、すぐに出来た。テーブル
に並べて、二人で仲良く食べ始める。
「おいしいですね。」
「うん。なかなかいけるよ。」
「滝さんって、何でも出来るんですね。編み物もできるし、料理も上手だし、部屋もキレ
イだし。俺、滝さんみたいなお嫁さん欲しいな。」
「じゃあ、なってあげようか?」
『・・・・・。』
しばらく沈黙が続く。二人とも何気なく言ってしまった言葉なので、言ったことの重大さ
に気づいて恥ずかしくなってしまったのだ。でも、どちらもお互いにうれしいと感じてい
たので、顔を見合わせて笑い出した。
「あはは、滝さん、顔真っ赤ですよ。」
「長太郎だって。さっき言ったこと本気だよって言ったら、どうする?」
「俺、絶対、滝さんを幸せにしてみせます!」
「本当ー?じゃあ、俺、長太郎と結婚したいなあ。」
半分冗談、半分本気で滝も鳳も言う。楽しいディナーを終えるとそれぞれバラバラにお風
呂に入って、再び滝の部屋へ向かった。
「長太郎、今日はもちろん泊まりだよね?」
「はい。滝さんがお風呂は入っている間に、家に電話しましたから。」
「そっか。もう10時か。これから、何する?」
「何しましょうか?そうだ、俺、滝さんにプレゼントがあるんですよ。」
「何?」
鳳は小さな袋を鞄から出した。それを滝に渡す。
「開けてみて下さい。」
その袋の中からは、見覚えのあるアクセサリーが出てきた。シルバーのロザリオだ。
「これ、長太郎がいつもつけてるやつ。」
「はい。俺と同じのです。おそろいにしたいなあと思って。」
「ありがとう。じゃ、さっそくつけてみようかな。」
鳳からもらったロザリオをつける。パジャマを着ているので服に合うかといったら微妙だ
が、顔にはとてもよく合っていた。
「似合う?長太郎。」
「とってもよく似合ってます!うれしいな、滝さんとおそろいvv」
「じゃあさ、まだ、母さん達帰ってきそうにないし、これだけつけてしない?」
「えっ・・・」
そんなことを言いながら、滝は鳳を自分のベッドに押し倒した。

「ふぁっ・・・・滝さ・ぁん・・・」
「長太郎。ココいいの?」
「あっ・・・あん・・・そんなとこ・・・・ダメです・・・」
「今更、何言ってんの。もう結構濡れてるよ。」
「やあ・・・あぁっ・・・」
例え外は雪でも、部屋には暖房がきいている。滝も鳳もパジャマを脱いでしまって、身に
つけているものはあのロザリオだけ。時折、それがぶつかり合ってカシャンと音を立てる。
「あっ・・・滝さっ・・・もう・・・・くっ・・あぁん・・!!」
「いいね。俺、長太郎のそんな顔好きだよ。」
「恥ずかしいですよ・・・何、言ってるんですか・・・」
「いいじゃん♪今日はクリスマス・イブだしさ。」
「なんか、楽しそうですね。」
「楽しいよ。だって、こんな日に長太郎と一緒にいられる上にこんなことできるんだもん。
楽しくないわけないじゃない。」
「滝さんのエッチ。」
「そんなこと言ってもやめないよ?」
「うあっ・・・やめ・・・そこは・・ぁ・・・」
本当に楽しそうな表情で、滝は鳳のバックを慣らし始める。さっきイッたばかりだが、こ
の行為の所為で鳳のモノは再び熱を持ち始めた。腰を揺らし始める鳳を見て、滝はドキド
キと胸を高鳴らせる。
「んっ・・・はぁっ・・・」
「今の長太郎の顔、すっごい色っぽい。どうしてそんな顔できるの?」
「だってぇ・・・滝さんの・・・指が俺の中で・・・くぅんっ・・・」
「長太郎だって、エッチじゃん。もう三本目、入りそうだよ。」
「ひっ・・・!」
潤滑剤を使っているわけでもないのに、鳳は滝の指をあっという間に三本飲み込んでしま
った。十分に慣らされたソコはもっと確かな刺激が欲しいと滝の指を締めつける。
「滝さん・・・もう・・・俺・・・」
「何?長太郎。」
「俺・・・もう・・・滝さんに・・入ってきて・・・欲しいです・・・」
潤んだ瞳で鳳は滝に懇願する。言わせるつもりはなくとも鳳は誘うようなことを自ら言っ
てくる。滝はそんな鳳を本当に愛しいと思い、ぎゅうっと抱きしめてから自分のモノをゆ
っくりと挿入していった。
「あ・・・んんっ―――・・・!」
まだ全部は入れていないのに、鳳のソコは収縮し滝の熱を締めつけた。滝はその衝撃に一
瞬戸惑ったが、そのまま無理やり入れるわけにもいかず、動きを一度止める。
「長太郎、そんなに締めつけられちゃうとやりにくいんだけど。」
「あ・・・だって・・・こんなの・・・自分の意思でしてる・・・わけじゃ・・・」
「じゃあさ、もうちょっとしがみつくの緩めてくれない?」
鳳がしがみついていた手を緩めると、滝は一気に身を進めた。
「は・・・ああっ――・・・・!!」
「どう?長太郎。ちゃんと入ったよ。」
その衝撃に思わず緩めていた手に力がこもる。滝にしがみついて、内側から来る言いよう
もない快感に腰を揺らした。
「あぁ・・・滝さんっ・・・滝さん・・・」
「すごい。いい感じに絡みついて、俺のを締めつけてる・・・。」
「やっ・・・もう・・・変になりそ・・・ですよ・・・」
「いいんじゃない?なっても。ねぇ、もっと俺が欲しいって言って。」
滝は軽く唇にキスをしながら言った。それと同時にさらに奥の方を刺激する。鳳はビクン
ッと身体を震わせて、滝の背中にしがみつき、涙声で滝を求めた。
「んっ・・ぁ・・・滝さん・・・もっと・・・もっと・・して下さい・・・!」
「うれしい。俺、長太郎がいれば他に何もいらないよ。」
「あ・・・んっ・・・は・・ああんっ・・・!!」
薄れゆく意識の中、二人は深い口づけを交わした。頭の中が雪の色のように真っ白になる
のを感じて、二人は一つになるのだった。

さっき脱ぎ捨てたパジャマを着なおし、二人は毛布を背中にかけて雪の降る外を眺める。
「キレイだね。雪。」
「そうですね。ホワイトクリスマスって初めてだな。」
「そういえばそうだね。この辺、あんまり雪降んないもんね。」
「俺、今、滝さんと一緒に居れてすごく幸せです。」
「俺もだよ、長太郎。そういえば、長太郎って、何歳くらいまでサンタさん信じてた?」
「小学校低学年くらいですかね?滝さんは?」
「俺もそれくらいかな。俺達、結構夢ないよね。」
クスクスと笑って滝は鳳を見た。
「でも、今は信じてるんですよ。」
「えっ、何で?」
「サンタさんって、クリスマスにプレゼントっていう幸せを運んできてくれるんですよね。」
「まあ、そういうとらえ方もあると思うけど。」
「だったら、俺のサンタさんは滝さんですよ。クリスマスにたくさん俺に幸せをくれた。
滝さんは俺だけのサンタさんです。」
無邪気に笑いながら言うので、滝も思わず笑顔になった。
「そっかあ。俺、サンタさんかあ。でも、そういう考えだったら俺のサンタさんは長太郎
だな。」
「本当ですか?うれしいです。」
二人ともお互いが自分のサンタクロースだと言って、笑い合った。ふと滝が鳳にキスをす
る。
「いきなり何ですか!?滝さん!!」
「なんとなく。長太郎が可愛いなあと思ったから。」
「そんなの理由にならないですよぉ。」
「じゃあ、クリスマスの魔法かな?」
「クリスマスの魔法?」
「そう。クリスマスはみーんなを幸せにしてくれる魔法なんだよ。だから、勝手に体が動
いちゃったの。」
「何ですか、それ。」
クスクスと笑いながら、鳳はそう口にする。そんな鳳の言葉に滝は笑顔で答える。
「いいじゃない。とにかく幸せだったらさ。」
外の寒さとは対照的な暖かさがこの部屋にはあふれていた。気温だけの問題ではなく、お
そらくこの二人の心の暖かさが影響しているのだろう。そのまま、二人は眠りについた。
そんな中、どこか遠くの方で鈴の音が聞こえる。クリスマスの魔法は確かにあるようだ。

                                END.

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