堕天使的幸福 〜10.4〜

宍戸の誕生日から5日後、あっという間に跡部の誕生日がやってきた。跡部と昔から付き
合いのある岳人や忍足、ジローや樺地、滝などはもともと跡部の誕生日を知っていたので、
跡部に様々なプレゼントを渡した。しかし、他のメンバーがくれたどんなプレゼントより
も跡部が楽しみにしていたのは、自分の誕生日を宍戸に祝ってもらうことであった。一緒
にお風呂に入ると、跡部は宍戸を綺麗に洗い、これからすることの準備を万全にした。
「なあ、俺がバースデー・ケーキになるって、マジでやんの?」
「当然だ。もうバッチリ部屋には用意してあるぜ。」
「マジかよ?何かあんまり想像出来ねぇけど。」
「綺麗にテメェを飾って、満足するまで味わって、たっぷり俺の誕生日を祝ってもらう。
そんな感じだぜ。」
「うーん、まあ、やりゃ分かるか。」
そんなことを話ながら、二人は自分達の部屋へと向かう。部屋のドアを開けると、様々な
フルーツの香りとチョコレートのような甘い香りがどこからともなく漂ってくる。
「なんかすっげぇいい匂い。」
「どれもテメェをデコレーションするためのものだぜ。」
「本当にケーキの材料って感じだな。」
ベッドのすぐ近くに用意された様々な食べ物やソースを見て、宍戸は驚く。真っ白なクリ
ームに、苺のソース、深いカカオの香りのチョコレートソースに、チェリーやラズベリー
やブドウなどの果物類。まさにケーキの材料と思われるような食材が、ガラスの食器に綺
麗に並べられていた。
「とりあえず、まずはその邪魔な服を脱いでもらわねぇとな。」
「お、おう。」
服と言っても、宍戸が今着ているのは、浴衣のような簡単に脱ぎ着の出来るような形の服
であった。ぱさっとそれを脱ぎ去ると宍戸は、自らベッドの上に上がる。
「慣れてるとはいえ、やっぱこういう格好になんのは恥ずかしいな。」
「いつまで経っても恥ずかしがるってのも、俺的にはなかなかツボだけどよ。」
「どんなだよ?で、この後、俺はどうすりゃいいんだ?」
「とりあえず、これを羽織っとけ。」
そう言いながら、跡部は薄い透明な布を宍戸に羽織らせる。それは端がだんだんに切られ
ており、それを羽織るとまるでその部分がフリルのようにも見えた。
「こんな布、何の意味があるんだ?透明だから意味ねぇんじゃねぇ?」
「いや、この感じがいいんだ。布一枚隔てていながらも、ラインはハッキリ見えるっつー
感じがよ。」
「なんかマニアックなこと言ってんな。」
「それに、クリームとかソースがシーツに直接つかないようにするって役割もあんだよ。
結構デカイだろ?その布。」
「あー、確かに。その理由は納得出来るぜ。」
透明な布を身に纏いながら、宍戸はそんなことを言う。跡部としては、前者の理由の方が
重要なのだが、宍戸はそれを理解していない。なので、無意識的に跡部好みにフリルがい
い感じ重なるような感じで、布を纏い直したりもしていた。
「さてと、おしゃべりはこのくらいにして、そろそろデコレーション始めるぜ。」
「俺、どうしてりゃいいんだ?」
「普通に仰向けに寝転がってりゃ十分だ。後は俺にまかせておけ。」
「了解。」
跡部に言われた通り、宍戸はその布を纏ったままベッドの上に仰向けになる。布の上から
デコレーションをするわけにはいかないので、跡部は宍戸の体に纏わりついている布を広
げ、綺麗に磨いた肌を露わにさせた。
「・・・・なあ。」
「どうした?跡部。」
「ちょっとオプションつけてぇんだけど。」
宍戸の裸体を眺めて何かを思いついたように、跡部はそう呟く。オプションとは何ぞやと
思いながらも、宍戸は素直に頷いた。
「オプション?よく分かんねぇけど、構わねぇぜ。今日は跡部の誕生日なんだし。少しく
らいの無理は聞いてやんよ。」
「そうか。」
だったら、そうさせてもらおうと、跡部は引き出しの中から何かを取り出し、それを宍戸
の手首にはめた。宍戸の手首にはめられたもの、それは細い鎖のついているゴスロリ調な
デザインの手枷であった。まさかこんなものをつけられるとは思っていなかったので、宍
戸は多少困惑したような表情を見せる。
「手枷かよ・・・」
「テメェがつけていいって言ったんだぜ。」
「まあ、そうだけどよ。」
「少し拘束されてる雰囲気を醸し出すのもいいと思ってよ。それにテメェはこういうのメ
チャメチャ似合うし。」
「それ、褒めてんのか・・・?」
「当然だ。多少腕は動かせなくなるかもしれねぇが、別に構わねぇよな?」
「好きにしろよ。さっきも言っただろ?今日は跡部の誕生日だから、多少の無理は聞いて
やるって。」
「じゃあ、こっからは俺の好きにさせてもらうぜ。」
宍戸がなかなか嬉しいことを言ってきてくれるので、跡部はその言葉に甘えて、自分のし
たいように行動し始めた。宍戸の手首につけた手枷から伸びる鎖をベッドの頭の部分にし
っかり固定し、完璧に宍戸を動けないように拘束してしまう。本当に腕が動かせなくなっ
ているか確かめるために、宍戸はガチャガチャと腕を引き、その拘束され具合を確認して
みた。案の定、少し力を入れる程度では全く腕は動かない。それが分かると、宍戸は胸が
ひどく高鳴るのを感じた。
(何かすっげぇドキドキしてきた。)
拘束されてこんな気分になるとは、自分はどれだけMなんだろうと心の中でつっこみつつ、
宍戸は跡部の方をチラッと見た。デコレーションのために使うのか、白いクリームが入っ
た透明なボールを抱え、パレットナイフを手に取った。
「これから、最高に綺麗にデコレーションしてやるからな。」
「それ、生クリーム?」
「いや、レアチーズのクリームだ。スポンジもねぇのに、生クリームだけを食うのは少し
キツイからな。」
「レアチーズか。俺的にも生クリームよりはそっちのが好きかも。」
「後で少し食わせてやるよ。」
そんなことを言いながら、跡部はパレットナイフでレアチーズのクリームを掬い、宍戸の
体に塗りたくり始めた。塗りたくると言っても、満遍なくしっかりと塗るというよりは、
ほどよく肌が覗く程度に大雑把にクリームを垂らしてゆくという感じだ。思ったよりも冷
たいクリームの温度に、宍戸は身を捩ろうとするが、手枷でしっかり拘束されてしまって
いるために思うように動けない。
「跡部っ、それ冷たいっ!」
「アーン?それがいいんだろ?まあ、テメェの体温ですぐに温まっちまうかもしれねぇけ
ど。」
「ひゃっ!ま、マジで冷てぇんだって。」
冷たいことを必死で訴える宍戸だが、跡部は全く聞く耳を持たない。それどころか、宍戸
が思った以上に過敏に反応を示しているのをいいことに、少し悪戯してやろうと考え始め
る。たっぷりとその冷たいレアチーズのクリームをパレットナイフで掬うと、跡部はそれ
を宍戸の内腿に大胆に垂らし、しかもそれをパレットナイフですーっと伸ばした。
「ひゃあぁんっ!!」
冷たいクリームが敏感な内腿に塗りたくられる感覚に宍戸は思わず声を上げてしまう。自
分でもビックリするほど高い声が出てしまったことに、宍戸は激しい羞恥心を感じる。
「随分イイ声で鳴くじゃねぇか。」
「い、今のは・・・あんまりにも冷たくて、ビックリしちまったからっ・・・」
「ほう、冷たくてビックリねぇ。」
ニヤリと笑って、跡部はもう片方の足にも同じようにクリームを垂らし、それをパレット
ナイフで伸ばす。
「ああぁっ・・・あぁんっ!!」
再び似たような声を上げる宍戸に、跡部はくっくと笑う。宍戸はあまりの恥ずかしさに口
を覆いたいと思ったが、手は頭の上でしっかり固定されてしまっているために、それは叶
わなかった。
「そ、そこに塗るの・・・やめろよぉ・・・」
「俺的には、テメェが可愛い声出してくれるから、もっと塗ってやりたい気分なんだけど
よ。」
「それが嫌だっつーの!!」
「しょうがねぇなあ。もうそんなにたくさん残ってねぇし、他のところにしてやるよ。」
今度はまだマシだろうと思って安心しかけていた宍戸だったが、それは大きな勘違いだっ
た。ボールの底に残っていたクリーム全てを、跡部は宍戸のある部分めがけて垂らす。
「ひぅっ・・・!ああぁ――っ!!」
冷えたクリームは先程クリームが塗りたくられた場所より少し上のより中心部に一気に注
がれた。冷たさという刺激は、宍戸の熱の中心を責めるには十分であった。
「よし、ベースはこんなもんだろ。」
「ハァ・・・今のはずりぃぞ・・・」
「テメェが望んでた通り、足には塗らなかったぜ?」
「だからって・・・こんなとこにかけることねぇじゃねぇか!!」
クリーム塗れになってしまった下肢に目をやりながら、怒ったような口調で宍戸は文句を
言う。しかし、跡部はいつもの自信たっぷりの笑顔で宍戸に言葉を返す。
「何だよ?クリームかけられて感じちまったってか?」
「べ、別にそんなこと言ってなっ・・・」
「でも、エロくていいぜ。クリーム塗れのコレ。美味そうで、食欲も増すってもんだ。」
「なっ・・・!?」
「さてと、ベースのレアチーズクリームは塗ったし、次は苺ソースとチョコレートソース
だな。」
跡部の言葉に宍戸は、真っ赤になってしまう。どうしてこう恥ずかしいことをさらっと言
うんだと、心の中で文句を言いつつ、跡部の行動を目で追った。真っ赤な苺のソースと黒
味の強いチョコレートソース。そのコントラストが、宍戸の目を惹きつける。この二種類
のソースをどんなふうに塗られるのだろうと考えていると、宍戸は腰のあたりが疼いてく
るのを感じた。
(何か・・・変な気分になってきちまった。)
そんな宍戸の気持ちを知ってか知らずか、跡部がソースを塗るために選んだ道具は何種類
かの刷毛であった。毛の長さや幅がそれぞれ異なっており、白いクリームのベースに様々
なラインの装飾が施せる。
「まずはチョコレートの方からいくか。」
中くらいの刷毛をチョコレートソースにつけ、跡部はそれを宍戸の首もとから胸のあたり
に向かって滑らせる。濡れた刷毛が肌を擦る感覚に、宍戸は何とも言えない淡い快感を感
じてしまう。
「んっ・・・」
「なかなかいい感じだぜ。こっちの方からも引いた方がいいかもしれねぇな。」
先程とは逆の方から、跡部は同じようにチョコレートソースでラインを引く。
「あっ・・・んぁ・・・」
ハッキリと表情に表さないまでも、自然と声は漏れてしまう。そんな宍戸の反応を楽しみ
ながら、跡部はわざと宍戸の感じやすい部分を中心に刷毛でソースを塗っていった。チョ
コレートソースがなくなるころには、宍戸はだいぶ息を乱していた。
「ハァ・・・ハァ・・・」
「どうした?宍戸。だいぶ息が上がってるみてぇだが。」
「そ、そんなことねぇよ!!」
「なら別にいいけどよ。チョコレートソース、なかなかいい感じに塗れたぜ。」
「そりゃよかったな・・・」
「次は苺ソースだ。これもなかなかイイ色してるからな。塗り甲斐があるぜ。」
実に楽しそうな笑みを浮かべながら、跡部は苺ソースに一番小さな刷毛を浸す。赤く色づ
いた刷毛を跡部はひとまず宍戸の唇へと持っていった。
「んっ・・・!?」
「味見させてやるよ。どうよ?このソースは。」
「んー・・・甘いんだけど、それが嫌な甘さじゃなくて甘酸っぱい感じで、俺的にはかな
り美味いと思うけど・・・」
唇に塗られた苺のソースを舐めながら、宍戸はそんな感想を述べる。これはなかなか味的
にも期待出来ると、跡部は再び苺のソースに刷毛を浸し、今度は宍戸の体の違う部分へそ
の刷毛を持っていった。
「ひゃっ・・あっ・・・!?」
「ここはやっぱ赤を入れた方がいいと思うんだよな。そう思わねぇか?宍戸。」
「やぁっ・・・跡部っ・・・そんなとこ刷毛で撫でるなぁ・・・」
跡部がじっくりと真っ赤なソースを刷毛で塗りつけているところは、宍戸の胸の突起であ
った。刷毛で敏感な突起を擦られる感覚は、かなり直接的な刺激になる。ギシギシと鎖を
引きながら、宍戸は突起を弄られる快感に身悶える。
「んっ・・・く・・・」
「ココにソースを塗られるのは、かなりイイ感じみてぇだな。」
「そ、そんなこと・・・・」
「ほら、こうされてどうなんだよ?気持ちイイんだろ?」
「ああっ・・・いっ・・・・ダメぇ・・・」
「赤く熟れた木の実みたいで、美味そうだぜ。けど、もうちょっと赤さが増した方が俺好
みだな。」
「あっ・・・あぁんっ・・・そんな擦られたらっ・・・んっ・・・やぁ・・・」
しつこいくらいに跡部は苺ソースを二つの胸の突起に塗り込む。刷毛で擦られる刺激とソ
ースの色で宍戸のそれは真っ赤に染まり、ぷっくりと立ち上がっていた。苺のソースもす
っかり使い切ってしまうと、跡部はフルーツを体のいたるところや真っ黒な羽の上に飾り、
仕上げに真っ赤な薔薇を頭から足先まで散らす。
「最高の出来だぜ宍戸。食うのがもったいねぇくらいだ。」
「ハァ・・・ここまでしたんなら食えよ。」
「食うに決まってんだろ。こんな豪華なバースデーケーキ、他にないぜ。」
「ちゃんと、跡部への誕生日プレゼントになってるか・・・?」
「そりゃもちろん。マジで最高のプレゼントだぜ。」
その言葉を聞いて、宍戸は心の底から嬉しくなる。跡部が喜んでくれているなら、もうこ
の後、どんな食べ方をされてもいいと、宍戸は心底そう思った。そう思った瞬間、無性に
跡部に触れたくなる。
「あ・・のさ、跡部・・・・」
「何だ?」
「そろそろこの手枷、外してくんねぇ?」
「ああ、そうだな。デコレーションも終わったことだし。」
デコレーションが終われば、もう自由に動いても構わないだろうと、跡部は宍戸の手首に
つけていた手枷を外した。腕が自由に動かせるようになると、宍戸は跡部に向かって両手
を差し伸べ、ニッと笑いながら最高の誘い文句を放つ。
「跡部、早く俺を食って?」
「っ!?」
「今が食べ頃だぜ。」
思ってもみない誘い文句にしばし撃沈していた跡部だったが、そんなことを言われてしま
ったら、もう我慢など出来なくなってしまう。本能の赴くままに跡部は綺麗にデコレーシ
ョンされた宍戸を食べ始めた。

フルーツを先に食べきってしまい、跡部は宍戸に塗られているレアチーズのクリームをじ
っくり舐め取ってゆく。
「んっ・・・あ・・んん・・・」
「レアチーズと苺ソースの相性抜群だぜ。」
苺ソースのたっぷり塗られた胸の突起を跡部は口に含み、その周りのクリームとソースを
堪能する。先程、刷毛でしつこく擦られたために、赤い突起は非常に敏感になっていた。
そんな部分を舌で転がされ、宍戸は自由になった手でシーツを握り、その快感に喘ぐ。
「んぁっ・・・あぁ・・・」
「どうよ?ケーキになって食われる気分は。」
「ハァ・・・何か変な感じだけど・・・・」
「だけど?」
「すっげぇ・・・気持ちイイ・・・」
うっとりとした表情で宍戸はそう呟く。本当に自分好みの反応を返してくれると、跡部は
自然と顔がニヤけてしまう。もう片方の突起の周りのクリームも綺麗に舐め取ると、跡部
はぐいっと宍戸の足を広げ、他の部分よりたっぷりクリームの塗られているところに口を
つける。
「ひゃっ・・あっ!?」
「ここらへん、すっげぇクリームついてるぜ。」
「あ、跡部が・・・塗ったんだろっ・・・!!」
「ああ、テメェがあんまりにもイイ反応してくるからな。」
「あうぅ・・・」
「この周りにべったりついてるのもいいが、やっぱりココのが一番美味そうだ。」
内腿に塗ってあるクリームには見向きもせず、跡部はその中心にある、それ自身が蜜を溢
れさせている部分に口をつけた。そして、そこにかかっている真っ白なクリームを食べ始
める。
「あっ・・・あぁんっ!!」
「ココのは、テメェの蜜と混じってんな。」
「やっ・・そこは・・・ひぅんっ・・・!!」
茎に絡むようについているレアチーズクリームを跡部は丁寧に舐め取ってゆく。下の方も
上の方も裏も万遍なく舐められ、宍戸はビクビクと身を震わせる。
「ひぁっ・・・ああ・・・あんっ・・・!」
「テメェのココ、ビクビクしてるぜ。蜜もすげぇ溢れてきてるし。」
「んっ・・あ・・・舐めながらっ・・・しゃべんなぁ・・・」
「しゃべるなって?なら、しゃべらないで、舐めるのに集中しといてやるよ。」
意地悪く笑って、跡部は宍戸の白いクリームまみれのそれをパクッと口に含む。そして、
そのままそれ自身に刺激を与えるように、口を上下に動かし始めた。
「んあっ・・ああぁ・・・ふぁっ・・あぁんっ!」
どんなに宍戸が喘ごうとも跡部は一言もしゃべらず、とにかく熱を咥え続けた。
「ああぁ・・・跡部っ・・・あとべ・・・っ・・・」
(たまんねぇな。この声で名前呼ばれるの。)
「跡部・・・あっ・・・ああっ・・・」
何度も紡がれる自分の名前。それが心地よく跡部はより激しく宍戸の熱に刺激を与える。
内側に溜まっているものを全て吸い出されてしまいそうなほどの快感に、宍戸は堪えきれ
ない絶頂感を感じる。
「あぁんっ・・・も・・出るっ・・あっ・・・んんっ!!」
「・・・・・っ」
口に放たれたクリームを跡部は喉を鳴らして飲み込む。ケーキ風味のそれは、跡部の喉を
程よく潤した。
「テメェのクリームも極上だな。」
ニヤリと口元を緩ませ、唇を舐めながら跡部は言う。達した後の脱力感に、宍戸は荒い息
を吐きながら、ぼんやりと跡部の方へ視線を移すことしか出来なかった。すっかりとろけ
ている宍戸の顔を見て、跡部は無性にキスをしたくなる。
「んっ・・・」
レアチーズや苺の匂いのする唇を押しつけられ、宍戸は無意識的に口を開く。絡んでくる
舌はひどく熱く、クリームの味がハッキリと残っていた。
(跡部の舌、ケーキの味がする・・・)
そんなことを考えていると、下半身にも何か熱いものが触れるのを感じる。ドキっとして、
目を開けると、跡部の妖しく微笑っている顔が映った。
「んっ・・・!んんっ・・・!!」
何をされるのか悟った宍戸は、跡部は押し返そうとするが、力の入らない体で跡部を自分
から離すことは出来なかった。次の瞬間、クリームにまみれた足の間に衝撃が走り、熱い
塊が入り口を抉じ開けて、内側へ入ってくるのが感じられた。ほとんど触られてもいない
そこにいきなり十分に大きくなった熱の塊を突っ込まれ、宍戸は腰を浮かせて、ガクガク
と足を震わせる。
「んぐっ・・・んんんっ!!」
「はっ・・・キツイけど、この締めつけがたまんねぇな。」
「ハァ・・いっ・・た・・・跡部・・・あっ・・・」
「ちゃんと咥え込んでるから大丈夫だ。ほら、ちゃんと入っててるだろ?」
「ああぁ・・・くっ・・・ああっ・・・」
狭い内側を無理矢理広げられるような感覚に、宍戸は痛みも似た熱さを感じる。しかし、
無理矢理自分の中が跡部のモノで直接広げられる感覚に、宍戸は苦痛よりも今までにない
ほどの興奮を感じていた。
「ハァ・・・はっ・・・んっ・・あぁ・・・」
「すげぇエロい顔してるぜ。俺のぎゅうぎゅう締めつけてきやがるし。」
「はっ・・・いきなり・・・突っ込まれたんだ・・から、しょうがね・・・だろっ・・・」
「痛ぇか?」
「ちょっと・・・痛いけどっ・・・あっ・・ん・・・」
「平気そうだな。だったら、もう少し奥に・・・」
まだキツキツな内側のより奥へ自分のモノを跡部は進める。熱い楔で内側を激しく擦られ
る感覚に宍戸の内側の壁は、跡部自身をより強い力で締めつけた。
「ああっ・・ああぁ――っ!!」
「くっ・・・ヤバッ・・・・」
あまりに強い締めつけに跡部は耐え切れずに達してしまう。自分の中が跡部の放った蜜で
濡れてゆく感覚に、宍戸は恍惚となりながら身を震わせる。
「あっ・・・あ・・あっ・・・」
「テメェの中も、クリームまみれになっちまったな。」
「中、激あちぃ・・・」
「でも、これで動かしやすくなったぜ。」
「んあっ・・・あぁんっ!!」
中がすっかり濡れたために、先程までは少し動かすのも大変だった熱の塊を動かすことが
容易になった。跡部が動くたびに中のクリームが掻き回され、ぐちゅぐちゅと濡れた音が
響く。
「ひあっ・・・んっ・・・跡部っ・・・中が・・あぁ・・・っ」
「さっきのも悪くねぇが、やっぱりこれくらい激しく動かせた方がいいな。」
「んっ・・・ああ・・・はあぁっ・・・」
「宍戸、もっと鳴いて俺を満足させろよ。テメェのそういう声、大好きだからよ。」
「あっ・・・跡部ぇっ・・・あぁんっ・・・」
「いいぜ。最高だ。その声も顔も・・・誕生日にテメェとこんなふうに繋がってられるな
んて・・・こんな幸せなことないぜ。」
本当に幸せそうに微笑む跡部の顔を見て、宍戸は胸の奥がキューンと熱くなり、何故だか
涙が溢れてくる。自分は跡部と共に居ることを選んでよかった。これ以上幸せなことはな
い。宍戸は心からそう思った。
「テメェに出逢えてよかった。こんなに誕生日が来て嬉しいと思ったのは初めてだぜ。」
「跡部・・・」
「俺は・・・テメェのことを全身全霊をかけて愛する。だから、これからもずっと、命が
続く限りずっと・・・俺の側に居て欲しい。」
いつもは命令口調の跡部が、心を込めてこんなことを言ってきてくれている。それが嬉し
くて、ひどく心に響いて、宍戸はしばらく言葉が出なかった。しかし、答える想いはただ
一つしかない。
「・・・・当たり前だろ。」
「宍戸・・・」
「俺だって・・・跡部のこと・・・すっげぇすっげぇ好きなんだからな!!命が続く限り
どころか・・・たとえこの体がなくなっちまっても・・・俺はテメェの側に居るつもりだ
ぜ。」
繋がり合っている果てしない快楽の中で、宍戸は必死で自分の想いを言葉にする。その言
葉は跡部にとって、最高に嬉しい一番望んでいた答えだった。心の中が満たされるような
温かさを感じ、跡部は全ての愛を宍戸の中に注ぎ込むかのように、何度も宍戸の中に自分
自身を打ち込む。
「あっ・・・ひあっ・・・跡部っ・・・あっ・・跡部・・・っ」
「もうテメェさえ居れば、俺は幸せだ。好きだぜ、宍戸・・・」
宍戸の全てと繋がりたいと、跡部は言葉をこれ以上紡ぐのをやめ、宍戸の唇に優しく口づ
ける。悪魔と天使のハーフとして生まれてきた跡部は、これまで一度も誕生日が嬉しいも
のだと思ったことはなかった。むしろ孤独と迫害の運命を抱えて生まれてこなければなら
なかったこの日を恨めしいとさえ思っていた。しかし、今は違う。宍戸と出逢い、心から
生まれてきたことを祝福される日になった。今この瞬間が嬉しくて楽しくて幸せで、全て
が喜びに満ち溢れている。
「んっ・・・あと・・べ・・・」
「一緒にイこうぜ、宍戸。」
「ああ・・・」
お互いの身体を掻き抱くと、二人は同じ快楽の高みに身を委ねる。絶頂の瞬間、二人の瞳
からは熱い雫が零れ落ちた。かけがえのない存在である者と繋がり、想いを伝え合う幸せ。
それが堪らなく心を揺さぶり、涙腺を緩ませる。幸せであるが故に流れる天使の涙。それ
はこの世に存在するどんなものよりも、穢れなき美しさを持つ一水であった。

身体中についたクリームをやソースを落とすためにシャワーを浴び直し、部屋に置いてあ
った食器やボール類を片付けると、二人はまっさらになったベッドの上に乗る。先程の行
為の疲労感からか、宍戸は跡部の膝に頭を乗せたまま眠り込んでしまった。心地よさそう
に眠る宍戸の寝顔を眺めながら、跡部は今日一日を振り返る。
「誕生日なんて、来なきゃいいもんだと思ってたのにな。」
優しく宍戸の頭を撫でながら、跡部はそんなことを呟く。膝に伝わる体温と柔らかな髪の
手触り。それが跡部の心を穏やかにさせていた。
「アイツらからプレゼントをもらうのも久しぶりだったし、コイツにこんなに祝ってもら
えるなんて思ってもみなかったし。」
独り言のように跡部は続ける。
「本当テメェと出逢って、全てが変わっちまった。誕生日がこんなに嬉しいものになるこ
とも、毎日がこんなに楽しくなることも、こんなふうに人のぬくもりを感じることも、少
し前の俺だったら考えられねぇことだったもんな。」
宍戸と出会う前のことを思い出しながら、跡部は今がどれだけ幸せな状況であるかを噛み
しめる。そんな跡部の言葉が聞こえたのか、宍戸はすりっと跡部の膝に顔を擦りつけ、跡
部の名前を呼ぶ。
「んー・・・あと・・べぇ・・・」
「本当、可愛い顔してやがる。」
そんな仕草を見せる宍戸を見て、跡部はふっと微笑む。そして、唇を耳に触れてしまいそ
うな程近づけ、ゆっくりと低い声で自分の想いを囁いた。
「テメェと一緒に誕生日が迎えられたことに感謝するぜ。ありがとよ、宍戸。最高の誕生
日だったぜ。」
くすぐったそうにもぞもぞと手を動かす宍戸であったが、跡部の声が届いたのかへらっと
顔を緩ませる。
「来年も今年と同じように、お互いの誕生日を祝い合おうな。」
眠っていると分かっていても、跡部は宍戸にそう言わずにはいられなかった。その言葉に
答えるかのように、宍戸はきゅっと跡部の手を握る。
「はは、聞こえたみてぇだな。」
「んー・・・」
「大好きだぜ、宍戸。これからもずっと一緒にいろんなことしていこうな。」
溢れる想いを全て言葉にしながら、跡部は宍戸の手を握り返す。幸せな気分に浸りつつ、
跡部はふと窓の外を見上げた。窓の外には、晴れ渡る夜空に光る雪白の月が輝いている。
そんな白い光が二人の漆黒の翼を照らし出し、穏やかで幸せな雰囲気を優しく彩るのであ
った。

                                END.

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