電話越しのLOVE

(はぁー、もう三日もしゃべってねぇよ・・・。そろそろ限界かなあ。)
枕につっぷしながら、宍戸は溜め息をつく。またいつものように跡部とケンカをし、ここ
三日間一言も口をきいていない状態が続いているのだ。謝りたいのは山々なのだが、顔を
合わせるとどうしても素直な言葉が出てこない。だからと言って、こっちから電話などを
するのは気が引ける。そんなもやもや感にさいなまれ、宍戸はゴロゴロとベッドの上で寝
返りを繰り返した。
「あー、もう!イライラする!!よっし、ここは覚悟を決めて、さっさと謝りに・・・」
〜〜〜♪ 〜〜〜〜♪
そう思った瞬間携帯の着信音が鳴る。その音を聞いて、宍戸は心臓が止まるかと思う程驚
く。鳴り響く着信音は跡部からの電話を示すものなのだ。
「マジでタイミングよすぎだし・・・。って、ビビッてる場合じゃねぇ!早く取らないと
切れちまう。」
跡部からの電話を取ると、宍戸はしばらく間を置いたあとで、声を発する。
「・・・・もしもし。」
『宍戸か?テメェ、取るの遅ぇんだよ。』
「ウルセーよ!そんなこと言うために電話してきたのか!?」
思わず出てしまった怒ったような言葉に宍戸はしまったと思った。自分の言いたいことは
そんなことじゃない。切られると思った瞬間、耳元で囁かれた言葉は意外なものであった。
『・・・この間のこと謝りたいと思ってよ。』
「えっ・・・?」
『俺様から謝るなんて本当はしたくなかったんだがな・・・テメェの声がどうしても聞き
たくなってよ。』
「ふ、ふーん。そうなんだ。」
普段は聞かないようなセリフを聞き、宍戸はドキドキしてしまう。
(いきなりそんなこと言うなよな〜。うわあ、何か顔が熱ぃ。)
『この前は悪かったな宍戸。』
「・・・・・」
本当に素直に謝ってきた跡部の言葉を聞き、宍戸は固まってしまう。そんなに大したこと
を言われたわけではないのに、鼓動が高鳴り、言葉が出なくなる。
『宍戸、聞いてるか?』
あまりにも無言な宍戸に跡部はそう問いかける。
「あっ、おう!聞いてる、聞いてる!!俺の方も悪かった。ゴメンな跡部。」
『ああ。』
お互いに謝り合うと、二人はしばらく電話を耳に当てたまま黙ってしまう。
『なあ。』
「な、何?」
沈黙を破ったのは、跡部の方だった。いつもしゃべっている声よりいくらか低い声で耳を
くすぐられ、宍戸はどもりながら返事をする。
『久しぶりにテメェの声聞いたからよ・・・・』
「ああ・・・」
『何だか興奮してきちまって。』
「な、何、サカってんだよ!?んなこと言われたら・・・・」
そんな宍戸の言葉を先読みするかのように跡部はからかうように言う。
『テメェもしたくなっちまうって?』
図星を指され、宍戸の顔はカアっと赤く染まる。しかし、跡部の声を聞き、そういう気分
になってきているのは確かなのだ。
『宍戸、今どこにいる?』
「今は自分の部屋だけど・・・テメェは?」
『俺も自分の部屋だ。しかもベッドの上だぜ。』
「へ、へぇ。奇遇だな。俺もだぜ・・・」
お互いのいる場所を確認すると、二人はまた黙ってしまう。ここまでいい条件がそろって
いるのなら、とあることを試したくなる。
『宍戸。』
「お、おう。」
『しようぜ。』
「し、しようって、何すんだよ?」
分かってはいるが、思わず聞いてしまう。顔が紅潮し、電話を持っている手とは逆の手が
自然とズボンへと伸びてゆく。
『テレフォンSEX。』
キッパリとそう言い放つ跡部のその言葉を聞き、宍戸は理性で抑えていた何かがプツンと
切れるのを感じた。この三日間、跡部と何も触れ合うことが出来ず、宍戸も溜まっていた
のだ。
「マジですんのか・・・?」
『俺はしてぇ。テメェが嫌なら電話切ってもいいんだぜ。俺は一人でする。』
「んなこと言われて切れるわけねぇだろ。・・・いいぜ、嫌じゃねぇ。」
ドキドキと心臓の刻む音を速めながら、宍戸はハッキリとそう言う。電話の向こうで跡部
が笑うのが容易に想像出来る。自分は今すごく恥ずかしいことをしようとしている。それ
が分かっていても、宍戸は跡部の誘いに乗らざる得ない状況になっていた。

『宍戸、ズボンは全部脱いじまえよ。テメェは後ろも弄らなきゃいけねぇんだからよ。』
「な、何勝手に決めてんだよ!?」
『その方が気持ちよくなれるぜ。ほら、早く脱げよ。』
跡部の言葉に促され、しぶしぶ宍戸はベッドの上で穿いていたズボンと下着を脱ぎ去り、
それをベッドの下へと落とす。
「脱いだぜ。」
『それじゃあ、まずは脚を開いてそれを軽く擦ってみろ。どうせもう勃ってんだろうけど
よ。』
くっと笑いを含んだような口調で言われ、腹が立つなあと思いながらも宍戸は露わになっ
ているそれに手を添える。瞬間、ぞくっと背中を淡い痺れが駆け抜ける。
「あっ・・・!」
『イイ声出すじゃねぇか。宍戸、テメェ携帯どうにかして両手使えるか?』
「両手?」
両手と言われても、右手はしっかりと携帯を持ってしまっているので使えない。どうにか
しろと言われてもどうすればよいものか。しばらく考えた結果、宍戸は布団の上に寝転が
り、携帯はオンフック設定にして耳元に置いた。
「何とか両手は使えるようにしたぜ。」
『へぇ。どうやって使えるようにしたんだ?』
「えっと、枕んとこに携帯置いて、オンフックにして、寝転がってるみたいな感じ。てか
何でそんなことまで聞いてくんだよ?」
『テメェがどういう格好してるか、リアルに想像出来た方がいいだろ?つーことは、下半
身丸出しで、脚開きながら、テメェは寝転がってるってわけか。なかなかいい格好じゃね
ぇの。』
宍戸がどんな格好をしているかを想像し、跡部は口元を緩ませる。自分で触れている熱も
さっきよりも大きくなっている。
「な、なあ、この後、俺どうすりゃいいんだ?」
『そうだなあ・・・指舐めて後ろ弄ってみろよ。出来んだろ?』
「えっ・・・んなこと出来ねぇよ・・・・」
『テメェなら出来る。俺にされてると思ってすりゃいいんだ。』
「う・・・」
出来ると断言されたらしないわけにはいかない。目を閉じ、跡部にされているとイメージ
しながら、人差し指と中指を舐めて、おずおずとまだしっかりと閉じている蕾に持ってゆ
く。
(したことねぇわけじゃねぇけど、やっぱ自分でするのって超緊張する〜。跡部にされて
るみたくってどんな感じだったっけ?)
はあーと息を吐き、宍戸は自分の指を蕾の内側へと埋め込む。緊張からかそこはぎゅっと
締まり、入れた指を締めつける。しかし、それがまた何とも言えない快感を生み出した。
「やっ・・・あん・・・」
『入れたみてぇだな。その様子だとまだキツイんだろ?』
「ふっ・・・ハァ・・・でも、痛くはねぇぜ・・・」
『そりゃそうだろ。俺がしょっちゅう慣らしてやってんだからよ。』
「あっ・・・ヤバっ、何か・・・」
『何だよ?』
「跡部の声聞いてんと、勝手に手が・・・」
上擦った声でそんなことを言われ、跡部は非常に興奮する。目を閉じて、宍戸がどんな顔
で、どのように自分を愛撫しているのか、それを想像し跡部も自分のものを先程よりも激
しく扱く。
『ハァ・・・宍戸。』
「あ、跡部も・・・自分のしてんのか・・・?」
『当たり前だろ。テメェの声聞きながらだと、やっぱいつもと違うぜ。』
跡部も自分で自分のものをしているのかと、思わず宍戸は想像してしまう。普段してる時
は考えられないような姿を想像し、宍戸は堪らず受話器に向かってさっきよりも濡れた声
を漏らす。
「あっ・・・う・・・」
『どうした・・・?』
「別に何でもねぇよっ・・・!」
『もしかして俺がしてるの想像して、興奮しちまったとか?』
「っ!?」
『図星かよ?なあ、もっと指奥まで入れてみろよ。そろそろ平気だろ。』
自分で指を動かすのはなかなか難しいのだが、なるべく自分がしてると意識せずに、とに
かく跡部にされていることだけをイメージして、宍戸は跡部の言うとおりにやってみる。
「あっ・・あぁっ・・・!」
『入ったなら今度はその指をギリギリまで抜いてまた入れてみろ。それを繰り返すんだ。
ついでに前を擦ってやってもいいんじゃねぇ?』
耳元で囁かれる跡部の言葉に宍戸は魔法をかけられているかのように従ってしまう。何度
か指を抜き差ししていると、前から滴る先走りの蜜が蕾を濡らし、くちゅくちゅと卑猥な
音を立て始める。それがとても恥ずかしいのだが、それ以上に気持ちがいい。宍戸の手は
いつの間にか、跡部の指示を受けることなく勝手に一番よく快感を感じる場所を擦ってい
た。
(うわあ、すげぇ恥ずかしいのに、手が止まんねぇー。ヤベェ、マジで気持ちいい・・・。
このままじゃ、本気でそのままイっちまう。)
「あっ・・あ・・・あん・・・はぁんっ・・・」
『ハァ・・・ハァ・・・いいぜ、宍戸。もっと、そういう声聞かせろ。』
「も・・あっ・・・ダメ・・・跡部っ・・・!」
『くっ・・・ぅ・・・!』
どちらも自分自身を止められなくなり、快感に染まる身体をその高みまで運んでゆく。相
手にそのことを伝えようと、お互いに受話部分に唇を近づけ、その声を聞かせる。その声
がまたお互いを高め合う。ほとんど同時に二人は、自分の掌に熱を放ち、その手を力なく
ベッドに横たえる。しばらく何も口に出せず、二人の耳にはお互いの乱れた呼吸だけが響
いていた。

手についた白い液をティッシュで拭き取り、ベッドの下へと落としたズボンと下着を穿く
と、宍戸はオンフックを切り、普通に耳に電話を当てる。
「もしもし、跡部?落ち着いたか?」
『ああ。テメェこそどうなんだよ?』
「俺もだいぶ落ち着いた。ちゃんとズボン穿いたしな。」
『何だよ、もう穿いちまったのか?これからもっといろいろさせようと思ったのに。』
「一人でそんなに出来ねぇよ。・・・テメェがしてくれるっつーんなら別だけど。」
少し照れたような口調で宍戸はそんなことを言う。こんなことを言われてしまっては、跡
部も調子に乗ってしまう。
『俺にされるならいいってのか?』
「まあな。さっきのも確かに気持ちよかったけど、やっぱ物足りねぇなあなんて思っちま
うし。自分ですんのと跡部にされるのじゃ雲泥の差があんだよ。」
『だったらしてやるよ。今から俺の家に来ねぇか?俺も生の宍戸でやっぱりしてぇし。こ
こ、三日間キスの一つもしてねぇしな。』
「そういやそうだな。マジで今から行ってもいいのか?」
『ああ。むしろ、来い。今、俺はテメェに触れたくて我慢出来ねぇ。テメェが来ねぇなら
俺がそっちへ行くぜ。』
「あー、じゃあ行く。ちょっと待ってろよな。すぐに行ってやるから。」
『待ってるぜ。早く来いよ。』
「おう。じゃあ、いったん電話切るぜ。後でな。」
『ああ。』
ピッ・・・
電話を切ると宍戸は、ドキドキしながらも顔を緩ませる。跡部と仲直り出来た上に、テレ
フォンSEXなど普段はしないようなことが出来たのだ。しかもこの後、跡部に会える。
それが素直に嬉しくて、宍戸は必要なものを鞄にヒョイヒョイと入れ、部屋を飛び出した。
「へへへ、何かイライラなんてどっかにぶっ飛んじまった。跡部と直接話すの久しぶりだ
から超楽しみ〜vv早く会いてぇなあ。」
ウキウキとした様子で宍戸は、いつもの靴を履いて家を出る。外に出るといても立っても
いられず宍戸は走り出した。ケンカの後の仲直り。今回もそれはいい感じに二人を近づけ
たようだ。

                                END.

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