Drunks!!

ただいま氷帝学園レギュラーメンバーはとある山荘に来ている。山荘と言ってもそんじょ
そこらにある山荘とは比べものにならない程大きく豪華なものだ。そうここは、跡部の家
の別荘。今日は三年生の引退パーティーをするためにここに来たのだ。だが、そのことを
監督やレギュラー陣以外のメンバーには知らせていない。それもそのはず、このパーティ
ーであることをしようとメンバーは計画している。それを他の人に知られては困るのだ。
「うっわあ、マジで広いよココ。すっげー!!」
「普通の家と大して変わんないよな。部屋の様相とか。」
「当然だろ?それよりお前ら先に風呂に入ってきちまえ。その方が後々楽だろ。」
いつも眠っているジローもさすがに今回ばかりは目を覚まし、広い部屋の中心で騒いでい
る。滝も様相に感心するしかない。他のメンバーもおのおのソファに座ったり、置物や絵
を見てすごいすごいとはしゃぐ。そんなメンバーに跡部は風呂に入って来いと命令した。
ここには全員がいっぺんに入れるくらい大きな大浴場が備えられているのだ。
「跡部は入らないの?」
「俺はこっちでパーティーの用意をしてから行く。」
「そっか。じゃあ、お先。」
跡部だけを残して、他のメンバーはお風呂に入りに行く。跡部はその間に大きなキッチン
からたくさんのあるものを出し、リビングのテーブルにそれを並べる。
「さーて、こんなもんか。」
キッチリ用意が出来ると満足そうに笑って、跡部もお風呂へと向かった。

「あー、サッパリしたあ!!」
「跡部、もう用意は出来てるん?」
「完璧だぜ。ほら、見ろよ。」
お風呂から上がったメンバーを連れ、跡部はリビングのドアを開ける。そこには色とりど
りのビンやカンがテーブルの上に並んでいた。
『おお――!!』
それを見たメンバーは歓声を上げる。テーブルの上にならんでいるそれは、赤ワイン、ロ
ゼ、白ワイン、ビール、チューハイにカクテル、泡盛に日本酒・・・・とにかくたくさん
の種類のアルコール類だった。
「跡部、よくこんなに集めたねー。」
「結構、大変だったんだぜ。親にバレないようにワインくすねたり、年誤魔化して買った
りとか。」
「やるねー。ところで、これいつ飲むの?」
滝だけでなく、他のメンバーも早く飲みたいとうずうずしている。もう少し待てよと跡部
は何となくじらす。全員が落ち着いてテーブルの周りに腰かけると跡部はもういいぜとい
う感じでパチンと指を慣らした。
「よし、みんなそろったな。もう飲んでいいぜ。好きなの選べよ。コップはそこらへんに
あるのを好きに使え。」
『よっしゃー、飲むぞー!!』
メンバー全員それぞれ好きなお酒を選び飲み始めた。カンのものはそのまま、ワインや日
本酒などビンに入っているものはグラスやコップに入れて飲む。その飲んでいる飲み物は
一人一人いかにもというものだった。
「おいC〜Vvこれならジュースと変わらないよね。」
ジローが飲んでいるのは、レモンチューハイだ。チューハイ類はアルコールが喉を刺激す
る以外は普通のジュースと大して変わらない。
「これ色超キレイじゃねぇ?このピンクの奴かなり甘いぜ。」
「岳人らしいやん。へぇ、これ度数はかなり高いけど意外と飲みやすいんやな。」
岳人が飲んでいるのはカラフルなカクテルで、忍足が飲んでいるのは沖縄から持ってきた
と思われる泡盛だ。何故、泡盛などというものまであるかというのは謎だが、とにかく飲
みやすいらしい。
「跡部はどれ飲むんだ?」
「俺はやっぱワインだな。」
「そっか。俺、どれにしようかなー?」
跡部はグラスに真っ赤なワインを注ぎ、香りをある程度楽しんだ後、少しだけ口に含む。
そんな跡部を尻目に宍戸はいまだに何を飲もうか迷っていた。
「日本酒とかはどうよ?」
「うーん、まあ何でもいいや。」
跡部のすすめで宍戸は結局まず日本酒を飲むことに決めた。グラスではなく普通のコップ
に半分くらい入れて飲む。
「跡部さん、白ワイン飲んでいいですか?」
「ああ。勝手に飲め。」
「俺はビール飲もう。」
真面目と思われる鳳も滝もしっかり自分の飲みたいものを確保し飲んでいく。所詮は好奇
心旺盛な中学生。飲めるのだったらいろいろ試してみたいと思う年頃なのだ。
「宍戸先輩、俺にも日本酒下さい。」
「おう。結構いけるぜ。」
さすが、日吉。飲みたいと思うのはやはり純和風の日本酒だ。みんなが種々のお酒を飲ん
でいる中、一人だけそのどれにも手をつけていない者がいた。樺地だ。樺地だけはどうし
てもお酒のカンやビンに手をつけようとはしなかった。

一時間後、かなり速いペースで飲み続けていた氷帝メンバーは、もうすっかり酔って出来
上がっていた。ジローは既にソファの上で爆睡している。岳人は笑い上戸、忍足は泣き上
戸、滝と宍戸は絡み上戸で、鳳は情緒不安定になりまくっている。一番問題なのは日吉で
暑いと言って服を脱ぎだす。それを止めようとすると得意の古武術で攻撃されてしまうの
だ。跡部はもちろんこの程度じゃ酔ったりはしない。樺地はもとから飲んでいないので、
当然のことながらシラフだ。だが、あまりにも変わりすぎたメンバーを前にオロオロしま
くっている。
「暑い・・・。」
「日吉、ダメやでー。そないなことしたら。」
「うるさいなあ。」
バシッ
「い、痛いで日吉〜。岳人ぉ、日吉がぶったぁ。」
「あははは、ダメだよ日吉叩いちゃあ。」
何だか会話と雰囲気が全くあっていない三人は周りから見るとすごい光景だ。関係性が全
く分からない。半分はだけたような格好の日吉にぶたれて、ボロボロ泣く忍足。それを止
めようとしている岳人は大爆笑だ。かなり奇妙な光景だが、酒に酔っているのでこのくら
いはしょうがないだろう。
「滝さーん・・・・。」
「どうしたの?長太郎。」
「何か俺、今すごく寂しいですよぉー。」
「そっかぁ。じゃあ、俺がいいこいいこしてあげるー。こっちおいで。」
酔って赤くなった顔で、鳳はわけの分からないことを発しまくる。それに対応しているの
かしていないのか、滝もかなりほろ酔い気分で鳳の言葉をとらえ、無駄にベタベタしよう
とする。
「長太郎可愛いよぉー。いいこいいこ。」
「うれしいです。俺、滝さんの飼い犬になりたいです〜。」
「えー、ホントぉー?じゃあ、なってぇ。」
お互いに言っていることのヤバさに気づいていない。それを聞いて、跡部は呆れながらも
笑っていた。こんなもの見ても跡部が上機嫌なのには理由がある。そう宍戸だ。
「跡部ぇ、長太郎とかズルイー。俺もいいこいいこしてぇ。」
「ガキかテメーは。」
「う〜、跡部・・・俺のこと嫌いなのかぁ?」
「しょうがねぇ奴だな。」
宍戸は相当な絡み上戸で無駄に跡部に甘えてきている。冷たいことを言うと途端に涙目に
なって、構えよ〜というような感じで見つめてくる。そんな表情が跡部にはたまらなく可
愛く感じられた。跡部に頭を撫でてもらえると宍戸はまるで猫のように体を跡部にすり寄
せる。
「お前、猫みてぇ。首とかも撫でてやろうか?」
「やっ・・・首はやめろよぉ。くすぐったいだろー。」
猫にするように首を撫でてやると、宍戸はビクッと体を震わせて嫌がった。くすぐったい
というか、過敏に反応してしまうようだ。
「樺地、お前も何か飲めよ。」
跡部は樺地にも酒を勧めるが、樺地は首を横に振って絶対に飲もうとしない。樺地だけ何
も飲めないのは可哀想なので、跡部はキッチンを指差しジュースがあると言った。
「樺地、冷蔵庫にジュースが入ってる。酒飲むのが嫌だったらそれ飲んでもいいぜ。」
「ウス。」
樺地は素直にそのジュースを取りに行き、コップに移して飲んだ。これで、全員が何かを
飲んでいることになる。

さらに三十分が経つと、だんだんと脱落者(眠ってしまう者)が出てきた。日吉はずっと
日本酒を飲んでいたので、かなりもう酔っている。はだけたままの格好で床に倒れ、その
まま眠ってしまった。
「日吉、寝ちゃったねー。毛布かけないと風邪引いちゃう。」
滝は毛布を取りにいこうと立ち上がった。だが、まともに歩くことが出来ない。進もうと
したその瞬間、滝はバランスを崩して鳳の上へと倒れた。
「うわっ!!」
ドサッ
座っていた鳳はその衝撃で倒れてしまう。鳳の上に滝が乗っているという状態になり、そ
れは見ようによっては、滝が鳳を押し倒したようにも見える。
「あははは、滝が鳳押し倒してるー。」
「違うよ〜。ちょっと倒れちゃっただけぇ。ゴメンなー、長太郎。」
「大丈夫です。でも、俺的にこのままでもいいっスよ。滝さんすごくいい匂いです。」
「えー、じゃあもうちょっとこのままでいようかなぁ。長太郎の顔、こんなに近くにある
し。でも、何かこの体勢結構ヤバイよねー。」
分かっていながらも滝は体を起こそうとはしない。しばらくそのままの状態でいるとこの
二人にも強い睡魔が襲ってきた。
「滝さん、俺、すごく眠いです〜。」
「ふぁ〜、俺も・・・。じゃあ、おやすみのちゅうしてあげる〜。」
「・・・・んぅ・・・」
周りに人がいるにも関わらず、滝は普通に鳳にキスをする。そして、そのまま(もちろん
口は離した後で)二人は夢の中に落ちていった。
「何だぁ、結局滝も鳳も寝ちゃったじゃん。」
「ひっく・・・寂しくなるなぁ・・・」
「てか、何で侑士泣いてるのさ。お酒飲んでんだからぁ、もっと楽しくいこうぜ♪」
「何か・・・悲しいねん・・・」
「そうかぁ?じゃあ、俺も滝と同じことする〜。」
「同じこと・・・?」
そういうと岳人は忍足を押し倒して、口に思いきりキスをした。アルコールの所為で思考
能力が落ちている忍足は抵抗しようとも思わない。なので、岳人は調子に乗ってかなり深
いものにしていく。
「んんぅ・・・ん・・・んん・・・・」
ちょうどテーブルに隠れる形になっているので、樺地や跡部や宍戸からはその様子は、直
接的には見えない。だが、微妙な声が忍足の口から漏れているので、かなり聞いていてど
うしようかという気分になってくる。
「岳人ぉ、もう離してやらないと、忍足苦しそうだぜ。」
宍戸に言われ、岳人はいったん忍足から離れた。口を塞ぐものがなくなったので、忍足は
空気を取り込もうと大きく息を吸う。
「ハァ・・・ハァ。」
「ゴメンな侑士。苦しかったか?」
「ううん。大丈夫やで。岳人の口ん中甘いなあ。」
「そう?あー、何か俺も眠くなってきちゃったよ。寝ちゃおうかなぁ・・・・。」
倒されている忍足の横に仰向けになって、岳人は呟いた。忍足ももう目がトローンとして
いて、今にも眠ってしまいそうだ。結局、この二人も深い眠りについてしまった。
「何だよ、みんなだらしねぇな。なあ、跡部。」
「そうだな。でも、お前もかなり酔ってると思うぜ。テンション高すぎ。」
「そうかぁ?それにしても、お前さっきからワインばっかだな。何かお前がその赤い奴飲
んでると血飲んでるみてぇ。」
「何だよそれ?そんなこと言ってるとお前の血飲んじまうぞ。」
「わあー、やだやだぁ。だって、痛そうじゃん。首んとこ噛むんだろ?」
「俺は吸血鬼かよ。つーか、さっきから何なんだお前。重いんだけど。」
ある程度酔ってから宍戸はずっと跡部の膝の上に座っている。絡み上戸の宍戸はただいま
跡部とベタベタしたくてしょうがないのだ。
「えー、別にいいじゃんかぁ。俺はぁ、跡部とくっついてたいのー。」
「そんなことしてると襲っちまうぞ。いいのか?」
ニヤニヤしながら、跡部は宍戸の顔に手をやり質問した。宍戸は嫌だと首を振るが、跡部
の膝からはどこうとしない。
「やだぁ。俺はただこう跡部とくっついてたいだけなのっ。そういうのはしたくないー。」
「じゃあ、どこまでオッケーなんだよ?」
「えっとぉ・・・キスくらいまでならいいぜ。岳人とか滝とかもやってたしな。」
「そうか。じゃあ、遠慮なくさせてもらうぜ。」
跡部は目の前にある顔に深く口づける。息苦しくなるくらなのだが、宍戸はもっとして欲
しいというのを表すかのように顔を傾け、跡部の首と頭のところに手を回した。こんなふ
うに二人がイチャイチャし始める中、唯一まだ起きている樺地は既に眠ってしまったメン
バーのために毛布を取りに行った。
「んぅ・・・んんっ・・・・ん・・・」
「お前の口ん中いろんな味がすんぞ。何飲んだ?」
「えーと・・・日本酒も飲んだし、チューハイも飲んだし、カクテルも飲んだし、ビール
も飲んだ。」
「統一性ねぇな。でも、まあうまいからいいや。」
「・・・んん・・・」
いったん離しても跡部はまたすぐに口を塞ぐ。跡部のしてくれるキスは大好きなので、宍
戸はそれを素直に受け入れる。それも、今はかなり酔っている状態。少し離した時に漏れ
る感想は跡部にとって普段は聞けないようななかなか悦なものだった。
「跡部のキス気持ちイイ。もっとしてぇ。」
「おいおい、そんなこと言ってんと俺我慢出来なくなっちまうぜ。」
「キスはいくらでもしていいからぁ、なあ、早く。」
「はいはい。」
いつもと違う宍戸にかなりハマりながら跡部はキスすることを続ける。しばらくしている
と宍戸が急に暑いと言い出し、上着を脱ぎ始めた。
「何してんだよ?」
さすがにそこまでされると本格的にヤバクなると跡部は軽く抗議する。そんなことはおか
まいなしに宍戸は跡部の服も脱がし始めた。
「俺だけ裸なの嫌だから、跡部のも脱がす。」
「ちょっと待てよ。それ、お前誘ってんのか?お前がしたいなら今ここでしてやるぞ。」
「するのは嫌だって言ってんだろ!!今日はこのままでずっといるんだ。」
「このままったって・・・ったくよぉ。」
いつもなら宍戸の意見など聞かず迷わず押し倒す跡部だが、今は酒がだいぶ入っているの
で自制心が働いている(普通は逆だ)。軽く溜め息をついて、ぎゅっと宍戸を抱きしめた。
宍戸は嬉しそうにニコっと笑って、素直に跡部に甘える。
「跡部、好きだぁ。」
「ああ。そうかよ。どれ位だ?」
「う〜ん、いっぱい。すっげぇいっぱい!!」
「お前なんだよそれ?でも、ま、俺様は誰にでも好かれてるけどな。」
「違う〜!!俺が一番なのぉ。だから、跡部の一番も俺じゃなきゃダメなんだよぉ!!」
すっかり酔っ払っている宍戸は、普通なら言わないような無茶苦茶なことを跡部に言いま
くる。そんな中、樺地がたくさんの毛布を持ち、この部屋に戻ってきた。そして、床で眠
ってしまっている者に丁寧にかけてゆく。
「あっ、サンキューな樺地。」
「ウス。」
「俺達にも一枚くれねぇか?もうそろそろ俺も眠たくなってきた。」
「ウス。」
樺地は一枚の毛布を跡部に手渡す。樺地もかなり眠そうな顔をしていたので、跡部は一際
大きなソファを指差し、そこに寝るように指示した。跡部の言うことを聞き、樺地は残り
の一枚の毛布をかけ、そこに横になる。
「みんな寝ちゃったぜ。何か俺も眠たくなってきた・・・。」
「じゃあ、寝るか。そうだその前に・・・。」
跡部はズボンのポケットから何かを取り出した。小さなケースに黄色を帯びた色の小さな
粒がたくさん入っている。それをいくつか宍戸に渡し、跡部はそれを飲むように言った。
「何コレ?」
「飲んどけ。薬とかじゃねぇから安心しろ。」
「おう。」
宍戸は渡されたその粒をすぐ側にあった樺地が持ってきたジュースで流し込む。それを確
認すると跡部はソファにゴロンと寝転がった。必然的に宍戸は跡部の上に倒れる形となる。
その上から跡部は樺地の持ってきてくれた毛布をかけた。
「跡部、もうこのまま寝ていい?」
「ああ。もう俺もかなりキてる。少し飲みすぎたみてぇだ。」
二人とも他のメンバーよりかなり多く飲んでいて、もう眠くてしょうがなかった。おやす
みというあいさつも交わさずに二人はすぐにまどろみ始めた。

次の日、ほとんどのメンバーは起きたと同時に頭にひどい痛みを感じていた。
「う〜、頭痛ーい・・・。長太郎、大丈夫?」
「全然ダメです・・・。少し飲みすぎちゃいましたね。」
岳人や忍足は頭も痛い上に他の不快感も感じている。岳人は笑いすぎで顔の筋肉が痛く、
忍足は泣きすぎた所為でかなり目が腫れていた。
「目が重いわぁ。何でやろ?」
「顔が何か痛い・・・。頭も痛いし・・・。」
かなり飲んでいたため記憶が曖昧らしい。滝や鳳、岳人や忍足以外にももう一人、頭を押
さえ、かなりつらそうな顔をしてる者がいた。
「俺・・・何でこんな格好してるんだ?」
そう日吉だ。何故か乱れている自分の格好に大きな疑問を持ちながら、痛む頭を抱える。
この五人以外は何故か二日酔いにはなっていない。樺地は飲んでいないのだから当然だ。
ジローは少し飲んだだけで、すぐ寝てしまったからなのだろう。跡部と宍戸はあんなに飲
んだにも関わらず、全くもって二日酔いにはなっていない。それは、跡部が寝る直前に宍
戸に飲ませたあの黄色い粒に秘密があった。
「ふあ〜、よく寝た。って、何で俺こんな格好してんだ!?跡部、お前ここで・・・」
「してねーよ。第一それ自分で脱いだんだぞ。何でか知らねぇけど、何故か俺まで脱がさ
れるし。なあ、樺地。」
「ウス。」
「そ、そっか。あれ?そういやあんなに酒飲んだのに全然頭とか痛くねぇや。何でだろ?」
「俺様のおかげだ。感謝しろよ。」
「へぇ、そうなのか?サンキュー。」
宍戸も昨日の夜の記憶はほとんどないらしい。だが、跡部はバッチリといろいろなことを
覚えているので、それを思い出してニヤニヤしていた。
「さて、今日は近くの湖まで行こうと思うんだがお前らどうする?」
「俺は行かない・・・。」
「俺も遠慮しときます・・・。」
「俺も無理やな。」
「俺もー。」
「俺もちょっと無理です。」
「何だよお前ら、ダセェな激ダサだな。」
体の調子が特に悪くない宍戸は二日酔いになっている他のメンバーをバカにする。むぅっと
いうような表情をするが、五人はそれどころではなかった。今日、まともに行動が出来るの
は跡部、宍戸、樺地、ジローの四人だけだ。跡部はその三人を連れて、湖に行くことにした。

昨日は全部を忘れられる程、楽しい夜になった。だが、今日の一日の過ごし方は真っ二つに
分かれてしまった。跡部は初めからこの状態を予測できていたのだろう。ふっと口元を緩ま
せて跡部は三人を連れて外へ出る。その笑みにはいろいろな意味が込められているのだった。

                                END.

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