エレクトリック・キッシーズ

とある合宿所の夜、大曲と種ヶ島は部屋でくつろいでいた。
「つーか、お前、そのパジャマはどうしたんだし。」
「ええやろー?ふわふわモコモコでメッチャあったかいで!」
最近寒いからと種ヶ島はモコモコのパジャマを買っていた。デザイン的には女子みたいだ
と思いつつも、180cmを越える種ヶ島が余裕で来ているということはサイズはメンズ
で間違いないのだろうと、大曲はじっと種ヶ島を眺める。
「そないに見てきてどうしたん?あ、あまりの可愛さに見惚れとるん?」
冗談っぽくそう言う種ヶ島に大曲は目を逸らしながら答える。
「いや、そのデザインを普通に着こなすのはさすがだなと思ってよ。」
「はは、竜次に褒められて嬉しいわ☆」
大曲に褒められて気をよくした種ヶ島は、ベッドに座って本を読んでいる大曲の隣に腰か
けて悪戯に笑う。
「何だし?」
「可愛い俺にキスしてもええんやで?」
「はあ?」
「せぇへんの?」
少しうっとおしいと思いつつも、ほんの少し顔を赤らめてキスされるのを期待してる顔を
可愛いと思ってしまう。本を置くと、いつものセリフを言いながら、大曲は顔を近づける。
「勘弁しろし。」
パチンッ!!
『っ!?』
唇が触れ合うその瞬間、二人の唇に静電気が走る。思ってもみない衝撃に二人は一瞬驚い
た後、笑い出す。
「あはは、唇痛ったぁ!バチってきて、ビックリしたわ!」
「フッ、お前がそんな服着てるからだろ。静電気ヤベェな。」
まさか普通のキスがこんな刺激的なものになるとは思っていなかったので、二人は面白く
なってしまう。明日この話を他のメンバーにもしてやろうと思いながら、よりイチャイチ
ャし始めた。

「・・・てな感じで、昨日竜次としたキスがヤバかったんよ。」
次の日、静電気でバチッとしたキスのことを種ヶ島は越知や毛利、君島や遠野に楽しげに
話す。
「さして興味はない。」
「まあ、越知はそう言うと思ってたし。」
そんな話をされてもと、越知はいつものセリフを口にする。予想通りの反応だと、大曲は
苦笑する。
「キスで電気が流れるなんて面白いじゃねーか!新しい処刑法が出来そうだな!」
「そんなの誰にやるんですか。」
電気が流れるキスとは面白いと遠野はあからさまにテンションが上がる。本当は少し興味
があるがそれを隠しながら、呆れたようにそうつっこむ。
「確かに痛そうですけど、ちょっと興味はありますね。」
一番素直な感想を口にする毛利に、種ヶ島は嬉しそうな顔を見せる。
「せやろー?毛利もツッキーと試してみたらええやん。ツッキー興味ない言うとるけど、
ホンマは興味津々やで☆」
種ヶ島にそう言われ、毛利はチラッと越知の方を見る。他のメンバーは気づけないが、毛
利はほんの少しだけ越知がドキドキしていることに気がついた。

その日の夜、133号室では毛利が普段部屋では着ないセーターを身に着けていた。
「月光さん。」
「どうした?」
「今日、種ヶ島さんが話しとったこと、試してみたいんですけど・・・」
椅子に座って、ラケットの手入れをしている越知におずおずとした雰囲気で、毛利はそう
頼む。
(可愛いな。)
普段とは少し違った格好で、控えめにそう言ってくる毛利を見て、越知は心の中でそう呟
く。
「唇に静電気はだいぶ痛そうだが大丈夫か?」
「えっ!?いや、それはまあそうなんですけど・・・どんな感じなんやろーってのはやっ
ぱ気になって・・・」
そこまで言うのならと、越知はわざと静電気を起こりやすくさせるためにシャツの上にフ
リースを羽織る。そして、毛利に向かって手を広げる。
「試す分には構わないぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
完全に受け入れ態勢の越知にドキドキしながら、毛利はゆっくりと越知に近づく。ぎゅっ
と目をつぶり、越知の唇に自分の唇を近づける。そんな毛利の様子を越知はじっと眺めて
いた。
(毛利のこんな顔が見れるならこれも悪くは・・・)
バチッ!!
「っ!!」
「んんっ!!」
毛利の唇が触れたその瞬間、バチッと静電気が流れる。予想以上の衝撃に越知は目をパチ
クリさせる。
「うっわあ、ホンマにバチッときましたわ!えっへへ、月光さんもメッチャビックリしと
る。」
「いや・・・」
毛利にそう言われ、越知は口を押さえながら目を逸らす。これは思ったよりもドキドキす
ると思いながら、越知はニコニコとしている毛利に目をやる。
(確かに痛いは痛いけど、月光さんのビックリした顔も見れたし、またやってもええなあ。)
いつもとは違うキスにドキドキしながら、どちらも胸を高鳴らせて口元を緩ませた。

寮のはなれでは、遠野の部屋に君島がいた。遠野に呼ばれて来たのだが、遠野の格好を見
て、君島は不満げな表情を見せる。
「・・・遠野くん、その格好は?」
「どうだ?似合うだろ?」
コーディネートの内容よりも君島はその素材がどういうものかに注目し、それが何を表し
ているかに気づいていた。
(中に着ているのは、ウールのセーター、アウターはポリエステルのジャケットですか。
この組み合わせは・・・)
「さすがに室内でこれは暑いな。これは脱いでおくか。」
わざとらしくそう言いながら、遠野はジャケットを脱ぐ。脱ぐ瞬間、パチパチと小さな音
がしているのを君島は聞き逃さなかった。
「さてと、新しい処刑法の実験台になってもらうぜ。」
「遠慮しておきます。」
「遠慮すんなよ。これ試せるのお前しかいねーんだから。」
昼間の種ヶ島の話を遠野が試そうとしていることは分かっていた。試したいのは電気の流
れるキスなので、試せる相手が自分しかいないという言葉を聞いて、君島は図らずもとき
めいてしまう。
「キス、するぞ。」
「痛いキスなんて嫌ですけど。」
「そう言うなって。なっ?」
妖しげに笑う遠野を前にし、君島はドキドキしてしまう。
(その顔はずるい・・・)
近づいてくる遠野の顔をじっと眺めながら、君島は遠野のしようとしていることを止めよ
うとはしない。唇が触れる直前で君島は目を閉じる。
バチンッ!!
「いっ・・・!!」
「んんんっ!!」
予想以上の痛さに君島は小さく声を上げる。それは遠野も同じであった。
「はは、ヤッベェ、超痛てぇし。」
そう言いながらも遠野の顔は赤く染まり、嬉しそうな笑みが浮かんでいる。
「本当ですよ。こんなキスどこがいいのか理解出来ません。」
「俺は好きだけどな。」
「私は・・・好きじゃないです。」
そんなことを言いながらも君島の胸はひどくときめき、顔は赤く染まっていた。チラリと
遠野の方を見てみると、指先でくちびるに触れ、頬を染めながら嬉しそうにしている。そ
んな遠野に君島はムラっとしてしまう。
「私はいつものキスの方が好きなので、させてもらいますよ。遠野くんも無理矢理してき
たんで、文句言わせませんからね。」
遠野をベッドに押し倒しながら君島はそう口にする。
「今のキスでその気になってんじゃねーか。」
「うるさいですよ。ちょっと黙っててください。」
そう言って、君島は遠野にキスをする。先程しっかり放電されたこともあり、今度のキス
はひどく甘く優しく感じられた。

種ヶ島が話の発端ということもあり、静電気でビリっとするキスの噂はあっという間に中
学生にも広まる。岳人と忍足もどこからかその話を聞いていた。
「なあなあ、侑士。今、噂になってるアレ知ってる?」
「あー、高校生発端のアレか。この時期にキスするとビリってするってやつやろ?」
「そうそう、それ!ちょっと試してみたくねぇ?」
「気にはなるけど、ホンマにビリっとしたら痛そうやん?」
「そんなに帯電させなきゃ平気だろ。今、ちょうど誰もいねぇしさ。」
練習が終わり、自動販売機の近くで岳人と忍足はそんな会話をする。確かに今なら試せる
かもと忍足は頷こうか迷う。少し周りを見回し、本当に誰もいないことを確認した後、忍
足は照れた様子で頷く。
「まあ・・・一回だけやったらええで。俺もちょっと気になるし。」
「よっしゃ!じゃあ・・・」
ほんの少しだけ服を擦ると、岳人は背伸びをし、忍足は軽く頭を下げてキスをする。
パチッ・・・!
『っ!!』
唇が触れた瞬間、軽く音が鳴るほどの静電気が走る。
「あはは、痛ってぇ!」
「ふふ、思ったよりビリっとしたわ。」
痛いは痛いがキスでこんな感覚になれるのは面白いと、岳人も忍足も笑ってしまう。
「噂は本当だったな。」
「せやな。これはちょっと誰かに話したくなるわ。」
「なっ!俺の部屋のメンバーはみんな知ってそうだったし、知らなそうな奴に話してやろ
ーっと。」
噂は本当だったとその身を持って試し、二人は実に楽しそうな雰囲気で寮に向かって歩き
出した。

練習後、姿を見ていないジローを樺地は探しに来ていた。
(今日はこっちの気がするな。)
直感で樺地は東屋へとやって来る。予想通り、ジローは東屋の椅子で眠っていた。
「ジローさん、起きてください。」
樺地に声をかけられ、ムクっとジローが起き上がる。
「おはよー、樺ちゃん・・・」
「おはようございます。そろそろ日が暮れるので、寮へ戻りましょう。寒くなるので・・・」
「分かったー。」
目を擦りながら椅子に座ると、ジローはふと最近誰かから聞いた話を思い出す。
「そういえばさー、今の季節にちゅうすると静電気で唇がビリビリってするらしいよ。」
「そうなんですか?」
「最近誰かから聞いたんだけどね、んー、誰だったかなぁ。まあ、いっか。本当にそうな
るかちょっと気になるよねー。」
「確かに・・・そうですね。」
それを聞いてジローはパッと覚醒したように笑う。
「じゃあ、試してみる?」
「えっ、さすがにそれは・・・」
「ちょーっとちゅってするだけだから!ビリっとしたらすぐ離れるし。」
「ウ、ウス・・・」
反射的に頷いてしまったが、それはキスすることになるのではないかと、樺地はドキドキ
してしまう。
「じゃあ、ちょっとだけ・・・」
樺地が大きいので、ジローは東屋の椅子の上に立ち、ちゅっと軽く樺地の唇に口づける。
『・・・・?』
唇をつけてみたが特にビリっとすることはない。
「樺ちゃん、ビリッてした?」
「いえ、していないです。」
「俺もー。あれー?」
首を傾げるジローであるが、ジローの格好とさっきまで木の椅子で横になっていたことを
考えると、静電気が起こる状態ではないのではないかと樺地は気づく。
「ビリっとするのは静電気のせいなんですよね?」
「そう聞いた気がする。」
「自分もジローさんも、静電気が起こる状態ではないと思います。」
「なるほどー。さすが樺ちゃんだね!ていうか、そうなるとただちゅうしただけになっち
ゃったね!ちょっと恥ずかC〜。」
「ウス。」
何となく恥ずかしいと二人は軽く顔を赤らめる。しかし、ちょっと嬉しい気持ちもあるの
で、二人の顔はほんのり緩んでいた。

もう少し練習をして行きたいと、宍戸は跡部に自主練の相手をしてもらっていた。だいぶ
日が傾き、そろそろ夕食の時間になるというところで、二人は練習を終わらせ戻ろうとす
る。
「自主練付き合ってくれてサンキューな。」
「ま、たまにはな。」
タオルで汗を拭きながら、跡部は今朝レストランで高校生達がしていた会話を思い出す。
(そういえば、朝食のときに高校生が面白いこと話してたな。ちょっと宍戸で試してみる
か。素材的にはこれとこれを擦り合わせればいけるか?)
静電気が起きやすい素材の組み合わせを見つけ、宍戸に隠れながらそれを擦り合わせる。
ある程度、帯電したことを確認すると、宍戸に声をかける。
「おい、宍戸。」
「ん?何だよ?」
宍戸が振り向いたと同時に、跡部は宍戸にキスをする。
バチンッッ!!
「いっ・・・!!」
「っ!!」
予想以上に帯電していたようで、想定以上の衝撃が唇に走る。
(あ、これ、昼間に岳人やジローが話してた奴じゃねぇ?って、それってつまりキスされ
てるってことじゃねーか!)
「ちょっ、跡部っ!!こんなとこでふざけんな!!」
「結構な衝撃だと思ったが、随分余裕じゃねーの。」
「アレだろ?静電気でキスするときにビリってするってやつだろ?」
「ああ、今日の朝、一軍の高校生達が話しててな。お前も知ってたんだな。」
「今日、岳人とジローが話してたんだよ。つーか、急にキスするな。すげー痛かったし。」
顔を真っ赤にしながら文句を言ってくる宍戸に、跡部は少々ムラっとしてしまう。
「もう一回させろ。」
「はあ!?嫌に決まってんだろ!」
「誰も見てねぇよ。」
そう言いながら、跡部は先程と同じように帯電させる。宍戸の手首掴むと、再びちゅっと
口づける。
パチンッ!!
「んあっ!!」
先程よりも弱めの静電気が流れ、宍戸は思わず声を上げる。その声を聞いて、跡部の口元
には笑みが浮かぶ。
「いい反応するじゃねーの。可愛いぜ。」
「本当ふざけんなよ!!こんなの全然嬉しくないんだからな!!」
唇の痛みと恥ずかしさから涙目になり、顔を真っ赤にしてそんなことを言う宍戸を、跡部
はどうしようもなく可愛いと思ってしまう。
(嬉しくないって言葉が出ること自体、ちょっと嬉しいと思ってるじゃねーか。)
心の中でそうつっこみながら、跡部はもう少し可愛らしい反応を見せる宍戸を堪能するこ
とにした。

その日の夜、220号室ではベッド争奪ジャンケンに負けた平古場が甲斐に頼み込み、同
じベッドで寝かせてもらっていた。電気を消し、ベッドのカーテンが閉まっている中、二
人は向かい合って横になり、小声で話す。
「なあ、凛。あのキスの噂知ってるば?」
「ビリビリってするやつか?」
「そうそう、それ!せっかく今日はこうして寝れるし、試してみたくねぇ?」
「えー、痛いのは勘弁やしが・・・まあ、ちょっとは気になるな。」
痛いのは嫌だが、中学生らしい好奇心はある。気になるならばしてみようと、どちらも着
ている冬用のパジャマを軽く擦り、静電気を溜める。
「これくらいでいいか?」
「ふふ、裕次郎の髪、ぶわってしてるやっし。十分だろ。」
ドキドキしながら、ただでさえ近い距離の顔をより近づける。唇同士がちゅっと触れ合っ
た瞬間、放電するような小さな音が響く。
パチッ!!
『んっ!!』
「あがー、でーじバチッとしたな。」
「だからよ。思ったよりバチッてして、ビックリしたさー。」
唇に触れながらそう言ってくる甲斐に、平古場はくすくす笑いながらそう返す。予想以上
の静電気の刺激に驚きつつも、どちらも楽しそうな表情を浮かべている。
「試しにもう一回してみるば?」
「えー、もう一回するば?まあ、いいけど。」
今度は特に服を擦ったりはせず、そのまま唇を重ねる。さすがに一回目でしっかり放電さ
れているため、二度目のキスは静電気の痛みは伴わなかった。
「二回目は平気っぽいな。」
「だーるなー。」
「凛はどっちのが好き?」
「ビリッてするキスも面白くて悪くないやしが、やっぱ普通のがいいな。」
「俺も。もっとしてもいい?」
「全く裕次郎は仕方ないやぁ。いーぜ。」
静電気なしのキスなら何度でもしたいと、二人で同じ布団で寝ているのをいいことに、甲
斐と平古場は何度もキスを交わす。
「ビリビリのキスの感じ忘れるくらいしちまったな。」
「もっかいビリビリのしとくかー?」
「いや、せっかくイイ感じなのに最後が痛いのは勘弁さー。」
「はは、じゃあ、最後にもう一回だけ。」
ちゅっ
痛くないキスをもう一度すると、甲斐は嬉しそうに笑って平古場を見る。
「おやすみ、凛。」
「おー、おやすみ。裕次郎。」
刺激的なキスを一度だけして、普通のキスを何度もした二人は満足した様子で目を閉じた。

練習が休みの日、合宿所内のカフェから寮へ戻ろうとしている白石、銀、財前のもとへ金
太郎が駆け寄ってくる。
「白石ー!!」
金太郎には珍しくふわふわした感じのアウターを羽織っている。
「おっ、金ちゃんどないしたん?」
「お前、そんな上着持ってたっけ?」
「似合うとるやん。」
「これ、コシマエに借りたー!」
普段見慣れない格好の金太郎に白石、財前、銀はそれぞれ声をかける。
「あんなー、別の部屋の兄ちゃん達に聞いたんやけど、静電気ぎょーさん溜めてちゅうし
たら、ビリビリってするんやって!それ、メッチャオモロそうやん!」
「ああ、確かにその噂流行っとりますね。」
「へぇ、そうなんか。」
金太郎の話を聞いて、財前と銀はそんな会話を交わす。
「こういう服着て、ゴシゴシってすると静電気いっぱいなるって聞いたから、コシマエが
貸してくれた。」
そう言いながら、金太郎は着ている上着をゴシゴシと擦る。すぐに静電気は溜まり、金太
郎の髪がふわっと広がる。
「うわ、メッチャ静電気溜まってそうやん。それは間違いなくバチッてするやろ。」
金太郎の様子を見ながら白石はそう口にする。
「白石、ちょっとかがんで!」
「えっ?こう?」
白石が少し屈むと、金太郎は背伸びをして、白石の唇にキスをする。
バチンッッ!!
「〜〜〜〜っ!!」
「っ!!」
わりと分かりやすい音がしたので、傍目に見ていた銀と財前もかなり大きな静電気が流れ
たことに気がつく。
「痛ったあ。ちょっとビリっとするレベルやなかったんやけど。」
「あははは、メッチャビリってした!!メッチャオモロイ!!」
その衝撃に大笑いしながら、金太郎は再度上着を擦り出す。
「白石、もう一回しよ!」
「いや、ちょい待ち!!ホンマに痛いからやめっ・・・」
バチンッ!!
「んんんっ!!」
「あははは、メッチャビリビリする!」
その衝撃がツボなようで、金太郎はその後も何度も電気の走るキスを繰り返す。
「遠山、ホンマ容赦ないな。」
「止めるか?」
「いや、結構オモロイんでもうちょっと様子見ましょ。」
そう言いながら、財前は二人の様子をスマホで撮る。その後、数回繰り返した後、金太郎
は満足したようで白石を解放する。
「ビリビリのちゅう、メッチャオモロかったわ!!白石、おおきに!」
「ハァ、ハァ・・・」
嵐のように走り去る金太郎を見送って、三人はしばらくその場に留まる。
「白石部長、今、メッチャエロい顔しとりますよ。」
パシャっとその顔をスマホで撮りながら、財前はからかうようにそんなことを言う。何度
もキスをされた恥ずかしさとビリビリと唇に電気を繰り返し流された衝撃に白石の顔は真
っ赤に染まり、目は潤んでいた。
「何やあのキス。激しすぎるわ・・・」
『フッ・・・』
白石が思わず呟いた言葉に、銀も財前も吹き出してしまう。その相手が金太郎ということ
がさらにツボだった。
「いや、あれホンマにヤバイからな!銀も財前も試してみたら分かるで。あー、もう、何
やドキドキが治まらへん。ちょっと先に帰っとくわ。」
ふらふらとした足取りで、白石は一足先に寮へと戻る。
「白石はん、大丈夫やろか?」
「そないに心配せんでも大丈夫でしょ。あれでも白石部長、遠山のこと大好きですし。ち
ょっとよかったとか思ってるんちゃいます?」
「はは、確かに嫌だとは言ってなかったもんな。」
白石を見送った後、二人きりになり、どちらも少しドキドキしてしまう。
「なあ、財前はん。」
「何です?」
「ワシらもビリビリするキス、試してみぃひん?」
「えっ!?」
思ってもみない銀の言葉に財前はドキッとしてしまう。
「いや、ちょっと気になってしまってなあ。もちろん財前はんが嫌やったら、無理にとは
言わへんけど・・・」
「・・・師範がしたいならええですよ。」
「ホンマか?無理してへんか?」
「してないッスわ。せやけど、ここじゃ恥ずかしいんで向こうの木の陰でお願いします。」
それならばと、銀は財前の手を引き、近くの木の陰に移動する。人目につかないところに
移動したことで、余計にドキドキ感が増してしまう。
「あんまり痛いのは嫌なんで、静電気溜めるのは軽くでお願いします。」
「あ、ああ。」
軽くだけ着ている服を擦り、銀は財前の肩に手を置き、財前の唇に自身の唇を近づける。
(メッチャドキドキする・・・)
財前がそんなことを考えている間に、銀の唇が触れる。
パチンッ・・・
『っ!!』
本当にパチッとしたことに驚きながら、銀と財前は唇を離し、顔を見合わせる。
「確かに結構痛かったですね。」
「せやなあ。白石はんはもっと痛いのが何回もやろ?それは確かに大変そうやわ。」
「せやけど、俺は今の感じ嫌いやないですよ?」
「はは、さすが財前はんやな。」
ドキドキしながらも、二人はくすくす笑う。
「さすがにそろそろ戻らんとな。」
「そうですね。あの、師範・・・」
そろそろ戻ろうと話しながら、財前はきゅっと銀の服の裾を掴む。
「ん?どないしたん?」
「その・・・もう一回だけ、キスして欲しいです。ビリっとしてもしなくてもええんで。」
上目遣いでそんなおねだりをしてくる財前が可愛すぎると、銀は顔を緩ませる。
「ええで。ほんなら、もう一回だけな。」
「ありがとうございます。」
はにかんだように笑う財前の手をぎゅっと握り、銀は優しく財前に口づけた。

四天宝寺のメンバーがそんなことをしているとき、千歳の散歩に付き合い、橘は合宿所近
くの山の中にいた。少し休憩をしようと、二人は木の下に腰かけていた。
「そういえば、桔平は例の噂知っとる?」
「例の噂?」
「静電気でビリっとなるキスの話ばい。」
「ああ、同室の千石が高校生がそんな話をしていたと騒いでいた気がするな。」
そのときの千石の様子を思い出して、橘は苦笑する。
「知っとるなら話が早いばい。」
「何だ?試したいのか?」
「せやね。よかと?」
首を傾げてそう尋ねてくる相棒を橘は少し可愛らしいと思ってしまう。
「まあ、ここなら誰もおらんけん、別に構わんばい。」
「そんなら・・・」
橘の許可を得たので、千歳は片手は地面につけたまま、橘の頬に触れ、ちゅっとキスをす
る。
『・・・・?』
唇が触れ合っても特に何も起こらないため、二人は頭にハテナを浮かべる。
「ビリっとこんね。」
「そうだな。」
「もう一回試してみるばい。」
「ああ。」
もう一度キスをしてみるが、やはり何も起こらない。その後、何度か試してみるが、やは
り静電気は起こらなかった。
「んー、あの噂は嘘やったんかね?」
「どうだろうな。ん?というか、静電気でビリっとさせるなら、木に触れてたり、地面に
手ついていたりしたらダメじゃねーか?」
「あー、確かに!じゃあ、ちょっと立ってしてみるばい!」
自分も橘も地面や木に触れていたため、電気が逃げているということに気づき、千歳は立
ち上がる。もっと確実にさせるため、千歳は着ている服を軽く擦った。同じように橘も立
ち上がり、軽く服を擦る。
「立ってるとお前がデカくて、ちょっとしづらいな。」
「俺が屈むけん、問題なかよ。」
橘は軽く上を向き、千歳は少し屈んで頭を下げる。もう何回目かも分からないキスをしよ
うとすると、唇が触れた瞬間、お互いの唇に大きな衝撃が走る。
パチンッ!!
『っ!!』
これが噂のビリっとするキスかとどちらも驚きながらも嬉しくなる。唇を離すと、どちら
の顔にも笑みが漏れる。
「はは、たいぎゃ痛かぁ。」
「これは確かになかなか刺激的ばい。」
やっと実験が成功したとばかりに二人は笑う。
「結構ビリっとしたな。」
「なっ!桔平試せてよかったばい。」
刺激的なキスを体験することが出来たと嬉しそうにしながら、二人はもうしばらくこの場
でイチャイチャすることにした。

                                END.

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