〜縁結び〜

海の日と重なり、休日となっている7月20日。15歳の誕生日を迎える財前はいつもよ
り少しオシャレをして、待ち合わせ場所でスマホを弄りながら、とある人物を待っていた。
「財前はん。」
「あっ、師範。」
「待ち合わせ時間より早めに来たつもりやったが、先越されてしもたな。」
「楽しみすぎて、早めに来ちゃいましたわ。なんて、冗談っスわ。」
冗談とは思えないような嬉しそうな顔で財前はそんなことを言う。素直なのか素直でない
のか分からない財前の言葉に、銀はふっと微笑む。
「今日は財前はんの誕生日やからな。財前はんの行きたい場所、どこでも付き合うで。」
「行きたいとこはいくつか考えとります。その前に軽くお昼食べて行きましょ。」
「ええで。ほんなら、まずは腹ごしらえやな。」
昼食にはまだ少し早い時間であったが、混まないうちにと二人は早めに昼食を取ることに
する。誕生日に銀とデートが出来るということで、そこまで態度には出さないものの、財
前はかなりテンションが上がっていた。

早めの昼食を食べ終えると、財前はスマホを出して、これから行こうと思っている場所の
地図を調べる。
「これからどこに行く予定なんや?」
「ココに行きたいと思ってるんスけど。」
スマホに映し出されている地図を財前は銀に見せる。その場所を見て、銀は意外そうな反
応を見せる。
「何度か行ったことのあるお寺さんやけど、ホンマにここでええんか?ワシの好みとか気
にせず、財前はんの行きたいとこでええんやで。」
「ええんです。俺が行きたいと思ってるんで。知ってるなら、案内してもろてもええです
か?」
「もちろん、ええで。」
財前が行きたいという場所は、大阪では有名なお寺であった。自分ならまだしも財前がそ
こへ行きたいというのはかなり意外だったので、銀は自分に気を遣っているのではないか
と少し心配になる。しかし、そんな心配とは裏腹に財前はかなりご機嫌な様子で、銀の隣
を歩いていた。
「着いたで。」
「師範のおかげで迷わず来れましたわ。ありがとうございます。」
「礼には及ばんで。」
銀は何度か訪れたことのある場所なので、迷うことなく来ることが出来た。
「こないなところ来たら、まずはお参りっスよね。」
「せやな。」
「俺、あんまりお参りの仕方とか分かってないんで、教えてもろてもええですか?」
「ええで。ほんなら、まずはあそこにある・・・」
訪れたことがあるということは、もちろんお参りもしている。このお寺でのお参りの仕方
を銀は財前に丁寧に教える。銀と一緒にお参りが出来ることが嬉しくて、財前は心を込め
て願掛けをした。真剣に願掛けをしている財前を見て、銀はこれまた意外な一面を見たと
いった気分で、その横顔を眺める。
「随分真剣にお願い事しとったなあ。どんな願い事したん?」
「大した事やないっスわ。」
「教えてくれへんのか?」
「内緒です。」
「はは、まあ、願い事は人に教えない方がええいう場合もあるしな。」
秘密にしたいのならと銀はそれ以上財前がどんな願い事をしていたかを追求しなかった。
(別にそないに隠したいわけやないけど、師範との『縁結び』的な願い事したいうのを本
人に言うのは恥ずかしいしな。やっぱり内緒にしとこ。)
そんなことを考えながら、財前はちらりと銀を見る。銀も財前の方を見ていたようで、し
っかりと目が合った。
「どないしたん?」
「い、いや、別に何でもないっスわ!」
「この後はどないする?他のお堂とかに行ってみるか、別の場所に移動するか・・・」
「あっ、もう一つしたいことがあるんです。」
むしろ、これからしたいことがメインだと言わんばかりに財前はそんなことを口にする。
「したいことがあるんやったら、それをするのが一番やな。」
「したいというか、して欲しいって感じかもしれんですけど。」
「何や?」
そのして欲しいことを示すために、財前は御朱印や御守りがある寺務所の方へ銀を連れて
行く。そこに貼ってある一枚の紙を指差すと、財前は恥ずかしそうに銀にねだる。
「師範の作った御守りが欲しいです。」
「写仏で、オリジナルの御守りか。なかなか面白そうやな。」
「今日は誕生日やし、師範が作った御守りもらえたら、メッチャええ誕生日プレゼントや
なーと思て。あっ、もちろん俺も作って、師範にあげますけど。」
「そないに素直に頼まれたら断れへんな。」
「誕生日やからって、調子乗ってわがまま言うてすんません。」
「わがままなんて思ってへんで。むしろ、そないにハッキリ欲しいものを教えてくれて、
嬉しいと思っとる。ほんなら、一緒に御守り作ろうか。」
「はい。」
財前らしからぬ可愛らしいおねだりに、銀は嬉しそうな表情で頷き、早速それをしようと
財前を誘う。銀なら断ることはないと思っていたものの、いざそれをもらうことが出来る
となると、財前の胸はひどく高鳴った。二人分のオリジナル御守り作成キットを購入する
と、二人は色を塗ることが出来る場所へと案内される。
「作り方の通りにやっていけばええな。」
「そうっスね。」
まずは合掌して念仏を唱えるところから始めるが、それを行う銀の姿は本当に様になるな
あと財前はそんな銀に見惚れていた。
「財前はんもやらないとやで。」
「あっ、はい。えっと・・・」
銀に見惚れていたため、自分でするのを忘れていた財前は銀にそう言われ、慌てて行う。
今度はそんな財前を銀が眺める。
「ほんなら、文字をなぞって仏様に色を塗っていけばええんやな。」
「結構センス問われますよね。」
「好きに塗ったらええ。ワシもそないにセンスがある方やないしな。」
「師範が塗ってくれるんやったら、それだけでもうありがたいっスわ。」
「ははは、ホンマに財前はんは嬉しいこと言ってくれるなぁ。」
そんな会話を交わしながら、二人は思い思いに色鉛筆で色を塗っていく。財前の誕生日プ
レゼントになるということで、銀は想いを込めて丁寧に丁寧に仏様に色をつけていく。財
前も銀のことを考えながら、心を込めて色をつけていった。ある程度出来上がると、二人
はお互いの紙を覗いてみる。
「師範、いろんな仏像とか仏様とか見てるのもあって上手いっスね。ありがたみ凄いっス
わ。」
「そないに褒めても何も出ぇへんで。財前はんのは、何というか・・・仏様の衣の色が四
天宝寺のジャージみたいな色やな。」
財前に褒められ、銀は照れながらそんなことを言う。財前の塗った仏様を見てみると、既
視感のある色味で、黄色と緑でバランスよく色付けされたその感じが四天宝寺中テニス部
のジャージを思い出させる。
「へっ!?そないなこと・・・あっ・・・」
財前としては全くそんなことを意識せずに色を塗っていた。しかし、改めて見てみるとそ
の色はどう見ても四天宝寺のジャージの色であった。
「・・・師範のこと考えながら塗っとったんで、きっとその所為っスわ。」
「ワシのこと考えながら塗っとったんか?」
「師範にあげるもんやし、仏様の雰囲気、師範に似とるなーって思って・・・」
「フッ、それならしゃーないな。せやけど、それ聞いて嬉しいで。おおきにな。」
「そんなん言うのずるいっスわ。」
照れから顔を赤く染めている財前の頭を銀は優しく撫でる。それが嬉しくて仕方がなく財
前はきゅんきゅんと胸をときめかせ銀を見る。
「綺麗に色も塗れたし、あとは名前を書いて、御守り袋に入れる感じやな。ここに書く名
前はワシのでええか?それとも財前はんの名前にしとくか?」
「師範の名前がええです。」
「そうか。ほんなら、財前はんの方には財前はんの名前書いてな。」
「はい。」
色を塗った仏様の横に自分の名前を書いた後、御守り袋に入れる。始める前と同じように
念仏を唱えた後、作った御守りを一旦お寺に預ける。預けた御守りが戻って来たところで
手作りの御守りの完成だ。
「約束通り、ワシが作った御守りは財前はんにプレゼントや。誕生日おめでとう。」
「ありがとうございます。メッチャ嬉しいです。俺が作ったのは、師範にあげます。」
お互いに作った御守りを交換し合うと、銀と財前は顔を見合わせて笑う。これほど嬉しい
誕生日プレゼントはないとばかりに、財前は本当に嬉しそうな顔で笑った。
「そないに嬉しそうな顔されると、こっちまで嬉しくなってまうな。」
「嬉しいのはホンマですから。あっ、ブログ用に師範が作った御守りと俺が作った御守り
写真撮ってもええですか。」
「もちろんや。ワシが持っておくか?」
「あっ、そうしてもらえると助かります。」
銀に二つの御守りを持ってもらい、財前はそれをスマホのカメラで撮る。上手く撮れたと
財前はご機嫌な様子でスマホに目を落とす。
(ええ感じに撮れたな。ブログ書くときアップしよ。)
スマホをしまうと財前は再び銀の方へ目線を戻し、声をかける。
「師範。」
「どないしたんや?」
「もう一か所行きたい場所があるんスけど・・・」
「どこでも付き合うで。次はどこへ行きたいんや?」
「ここからすぐの場所なんスけど、ついて来てください。」
銀から自分の分の御守りを返してもらった後、銀の手を引くようにして、財前はその場所
へと歩き出す。財前の言う通り、その場所へは大した時間もかからずに到着した。
「ココの善哉を師範と一緒に食べたいです。」
「夫婦善哉の店か。ここも有名な店やな。」
「師範、結構詳しいんスね。」
「まあ、寺社仏閣系の場所は一人でもよう行ったりするからな。その近くの有名な場所も
わりと目に入るねん。ほんなら、入ろか。」
銀の言葉に頷くと、財前は一緒に銀とその店に入る。『夫婦善哉』というちょっと特別な
善哉を銀と一緒に食べれるということで、財前はドキドキわくわくしていた。ちょうど二
人で座れる席が空いていたので、ほぼ待つことなく入ることが出来た。
「とりあえず、これは頼みたいんスけど、これお椀二つに分かれてるだけで、一人前らし
いんスよね。せやから、もう一品何か頼まなアカンのですけど、どれがええと思います?」
「財前はんが食べたいもん頼んだらええと思うが・・・ちなみに、夫婦善哉は温かいのと
冷たいのがあるみたいやけど、どっちを頼むんや?」
「せっかくなんで、温かい方にしようかなと思うとります。」
「ほんなら、氷善哉なんかええんちゃうか?どっちも二人で分けて食べたらええと思うね
ん。」
「師範がそう言うならそうします。」
「氷善哉は宇治抹茶の方でええか?」
「はい。師範が選んでくれるのでええです。」
メニュー表を見ながら、二人はそんな会話を交わす。夫婦善哉と宇治抹茶の氷善哉を注文
すると、それらが来るのを待つ。
「お待たせしましたー。」
しばらくすると、夫婦善哉と氷善哉が運ばれてくる。夫婦善哉は財前の前に、氷善哉は銀
の前に置かれ、好物の善哉を前にし、財前の目はキラキラと輝く。
「あっ、食べる前に写真撮ってもええですか?」
「ああ。これも後でブログにあげるんか?」
「誕生日の記念にいろいろ撮っておきたいんスよ。」
「それはええな。好きなだけ撮ったらええで。」
「ありがとうございます。」
まずは自分の目の前にある夫婦善哉を撮り、その後で銀の前にある氷善哉を少しだけ自分
の方へ寄せ、スマホで撮る。撮った写真を見て、満足そうにしている財前を見て、銀はふ
っと笑う。
「上手く撮れたんか?」
「はい。あっ、夫婦善哉の片方、師範にあげます。食べてください。」
「おおきに。」
二つ並べられたお椀のうちの一つを財前は銀に渡す。どちらも目の前に善哉、ちょうど真
ん中あたりに氷善哉を置き、手を合わせていただきますと口にする。
「やっぱ美味いっスね。」
「せやな。氷善哉はどうやろ?」
真ん中に置かれている氷善哉の氷をスプーンで掬い、銀はそれを口に運ぶ。宇治抹茶の苦
さと善哉の甘さ、そして、氷の冷たさがあいまって、銀の舌の上でとろける。
「これも絶品やな。財前はんも食べてみ。」
そう言いながら、銀は氷と善哉を掬うと、財前の口元へと持っていく。あまりに自然に食
べさせてくる銀にドキドキしながらも、財前は口を開けパクンとそれを食べる。
「ホンマや。メッチャ美味い。」
あまりの美味しさに財前の顔はふにゃっと緩む。あまり見ない財前の表情に、銀は図らず
もときめいてしまう。
(好きなもの食べてる財前はん、ホンマにかわええな。)
「やっぱ、ここ来て正解っスわ。夫婦善哉も氷善哉もメッチャ美味いっス。」
「せやなあ。善哉は美味しいし、財前はんは嬉しそうやし、ワシもええ気分やで。」
「!と、とりあえず、溶ける前に食べちゃいましょ。」
自分の好きなものを食べているわけでもないのに、自分と同じくらい嬉しそうな銀を前に
財前は軽く頬を染め、自分のスプーンで氷善哉を口に運び、熱くなった顔を冷やす。優し
い甘さの夫婦善哉に、宇治抹茶のおかげで少し大人な味の氷善哉。好きなものを銀と一緒
に存分に味わえるこの時間が、財前にとってはとても幸せな時間であった。
「お参り出来て、師範が作った御守りもらえて、美味い善哉もぎょーさん食えたんで、満
足っスわ。」
夫婦善哉の店を出て、財前はそんなことを言う。
「そうか。それはよかった。」
「それじゃ、師範の家に行きましょ。」
「うむ。・・・って、そないな話聞いてへんで。」
当然のようにそんなことを言い出す財前に、銀は一旦頷きながらも突っ込む。
「ダメなんスか?」
「別にダメなことはないが・・・夜は家族で誕生日パーティーとかせぇへんのか?」
「家族には今日は師範の家泊まる言うて来てます。それに俺ももう中三なんで、家族より
好きな人と誕生日は一緒に過ごしたいっスわ。」
飄々と言っているつもりであるが、恥ずかしさを誤魔化しきれず、そんなことを言う財前
の声はほんの少し上擦っている。
「そう言ってあるんやったら、断るわけにはいかんな。ほんなら、うちに行こか。」
「はい。あの・・・」
「どないしたん?」
「わがまま言うて、すんません。」
「今日は財前はんの誕生日やろ?多少のわがままは大歓迎やで。」
無茶を言った後にこうして素直に謝ってくる財前が可愛くて、銀は何でも許してやろうと
いう気分になる。夕食は二人で家で食べようということで、軽く買い物をした後、二人は
一人暮らしをしている銀の家へと向かった。

銀の家で夕食を食べ、誕生日ということで買ったケーキも食べ、順番に入浴も済ます。あ
とはもう寝るだけなのだが、眠るにはまだ早い時間であった。財前の誕生日が終わるまで
後数時間。せっかくなので、もっとイチャイチャしたいなあとそわそわしていると、銀に
声をかけられる。
「財前はん。」
「何ですか?師範。」
「ちょっとこっちに来てくれへんか?」
そう言いながら銀が手招いているのは、ベッドの上だった。ちょっとそういうことを期待
しつつ、財前はドキドキしながらそこへ移動する。銀から借りた少しぶかぶかの浴衣を身
につけながら、財前は銀のベッドに乗り上げる。財前の体が全部乗り上げると、銀はふわ
っとベッドの上に財前を押し倒す。
「えっ・・・!?」
「嫌やったら、全然嫌言うてくれてもええんやけど・・・いつもは、財前はんの方から誘
ってきてくれてるやろ?今日は財前はんの誕生日やし、ワシの方からしてみようかなと思
て。」
慣れないことをしているためか、銀の顔は赤く染まり、その声色はひどく緊張したような
ものになっている。まさか銀の方からそういう雰囲気を出してくれると思っていなかった
ので、財前の心臓は壊れそうなほど高鳴る。
「今、メッチャドキドキしすぎてヤバイんスけど・・・」
「やっぱり嫌か?」
「そんなことあるわけないやないっスか。むしろ、師範の方が無理してません?」
「ちょっと緊張はしとるけど、無理なんてしてへん。財前はんとしたいと思っとる。」
普段言われないようなことを言われ、財前の身体はぞくぞくと震える。早く銀に触れられ
たい。顔を真っ赤に染めながら、財前は甘えるような声でその想いを口にする。
「ほんなら、早よしてください。俺も師範とメッチャしたいです。」
その気になっている財前の色気は半端ないと、銀はその色にあてられる。財前の両手首を
掴むようにして銀は唇を重ねる。何度か触れるだけの口づけを繰り返していると、もっと
激しい口づけをねだるように財前は舌を出す。そんな財前のリクエストに応えるかのよう
に、銀はより深い口づけを財前に施した。
「はっ・・・んむ・・・んっ・・・んん・・・」
舌が絡み、互いの唾液が口の中で混じり合う。重なる唇は言葉を紡ぐよりも雄弁に想いを
伝える。次第に上がっていく体温に、速くなる鼓動。これからもっと触れ合い、気持ちよ
くなれるという期待感が胸の奥から溢れてくる。
「はぁ・・・師範・・・」
「キスだけでも・・・結構アレやな。」
「そうっスね。師範とキスするの、俺、メッチャ好きっス。」
「そんなに素直に言われると、照れてまうな。」
照れたように笑いながら、銀は財前の頬を撫でる。その手にすっと自分の手を重ねると、
財前はもっと様々なところに触れて欲しいという視線を銀に向ける。
「今日は財前はんの誕生日やから、財前はんの好きなようにしたいと思うんやが・・・」
「それに答えるのは結構恥ずかしいんスけど・・・」
「あっ、せやな。すまんな、こないなことに考えが回らんくて。」
「けど、師範になら教えてもええです。というか、こんなこと師範と以外にする気はない
んで。」
あせあせと戸惑っている銀の手を財前は胸のあたりに持っていく。そして、もう片方の手
で自分の胸の突起を示し、恥じらうような表情を浮かべながら言葉を続ける。
「俺、師範にココ弄られるの好きです。せやから、今日はココをぎょーさん弄ってくださ
い。」
素直にして欲しいことを口にする財前に、銀はドキッとしてしまう。恥ずかしそうにしな
がらも、期待感を募らせている財前の期待に応えるように、銀は胸に置かれた手を滑らせ
る。
「んっ・・あっ・・・!」
指先が軽く突起に触れただけでも、財前はその身を震わせ声を上げる。少し触れたことで
抓みやすくなっているそこをキュッと抓むと、財前はさらに大きな反応を見せる。
「あ・・んっ・・・!!」
「確かによさそうやな。ほんなら、しばらくココを弄らせてもらうで。」
財前が予想よりもよい反応を見せているので、両手の指を使って銀は胸の突起を重点的に
責める。初めは優しく擦ったり、軽く抓んだりしていたが、途中から少し強めに弄った方
が財前の反応がよりよくなることに銀は気がつく。
「んっ・・・しは・・んっ・・・」
「財前はん、少し強くされた方が気持ちええ感じなんか?」
「っ!!」
図星なのだが、それを素直に認めるのは恥ずかしすぎると財前は肯定も否定もせず、銀か
ら目を逸らす。
「教えてくれるとありがたいんやけど。」
「えっと・・・その・・・」
「こうされるのと・・・」
「んっ・・ぁ・・・」
「こうされるの・・・」
「あっ・・・ああぁんっ・・・!!」
「どっちがええかって・・・言わずもがなな感じやな。」
試しに軽く抓んだ後、強めに抓み反応を比べてみたが、明らかに後者の方がよさそうな反
応を見せる。それならばと、先程よりだいぶ強い力でそこを弄る。
「あっ・・んんっ・・師範っ・・・ああっ・・・・!」
「痛かったら教えてな。」
「ひぅっ・・・ん・・・しはっ・・・気持ちいっ・・・」
「大丈夫そうやな。」
銀の指が突起を抓むたびに電流が走るような快感を覚え、財前の身体は大きく跳ねる。ビ
クビクとしながら絶え間なく喘ぐ財前に、銀はそこまで態度や顔には出さないが、ひどく
興奮していた。
「ハァ・・・師範っ・・・あっ・・・俺、もぉ・・・アカンっ・・・!」
「ホンマにココが弱いんやな。」
「やっ・・・そないに・・・強くされたらっ・・・・」
激しく呼吸を乱し、先程より切羽詰まったような声を上げている財前がどんな状態なのか
を銀は理解していた。
(アカン、気持ちよすぎて、ホンマにこれだけでイってまうかも・・・)
そんな財前の状態を分かっているため、銀は一旦そこから指を離す。強い刺激を受けてい
たそこはじんじんと疼き、もう一度大きな刺激が欲しいと震える。焦らされるようなその
感覚に、財前は銀にもう一度触れて欲しいと甘い声でねだる。
「師範・・・ココ、ぎゅってして欲しいです・・・」
「どんな感じがええんや?」
「痛いくらい・・・強くがええです・・・」
「そないに強くがええんか?」
「焦らさんといてください・・・師範・・・」
「ホンマ、財前はんはえっちやなあ。」
乱れた財前は本当に可愛らしいと思いながら、銀は財前の希望に応える。今まで一番強く
そこを抓むと、財前の身体は一際大きく跳ねる。
「あっ・・・ああぁんっ・・・!!」
欲しかった刺激を受け取り、財前は熱い雫で下着を濡らす。確かにひどく気持ちいいと思
っていたが、まさか胸を弄られているだけで達するとは思っていなかったので、財前は急
に恥ずかしくなり、両手で顔を隠そうとする。
「何で顔隠すんや。」
「やって、胸弄られただけでイクとか・・・ハズすぎてアカンっスわ。」
「それだけ気持ちようなってくれてるのなら、ワシは嬉しいと思うで。」
そんなことを言いながら、銀は着乱れた浴衣から覗く下着をさりげなく脱がしてしまう。
確かに財前のそこは自らが出したモノで濡れており、軽くそこに触れれば銀の手も濡れる。
その手をもう少し下へと持っていき、まだ閉じている蕾に触れる。
「んっ・・・師範っ・・・!」
「財前はんので、いつもより楽に入りそうやで。」
「んぁっ・・・ああっ・・・!」
濡れた指を財前の中に入れると、銀はゆっくりとその部分をほぐしていく。銀の指が数度
出入りすると、財前のそこはもっと大きなモノを飲み込みたいと収縮を繰り返す。
「あっ・・・んっ・・んんっ・・・・」
「少し触るだけで、財前はんのここはすぐ柔らかくなるな。」
「そうならんと・・・師範の入らないやないっスか・・・」
「はは、確かにな。」
予想外の言葉を口にする財前に銀は思わず笑ってしまう。しかし、そんな言葉を聞いて、
銀は早く財前の中へ入りたくなってしまう。
「まだ、もう少し慣らした方がええと思うんやが・・・」
そう呟く銀の顔を見て、財前は銀がどうしたいと思ってるかを理解する。銀の方へ両手を
伸ばすと、足をより大きく開き、誘うような言葉をかける。
「師範ももう我慢出来へんのでしょ?もう大丈夫なんで、早う来てください・・・」
「財前はん・・・」
そんな言葉を聞いて、銀はより我慢出来なくなる。既に大きくなっている熱を外へ出すと
財前の蕾に押し当てる。
(師範の熱い・・・アカン、メッチャドキドキする。)
大きく深呼吸すると、銀はぐっとその身を進める。狭い入口を押し広げられ、熱い塊が内
側へねじ込まれる。ともすれば痛みを伴いそうなその瞬間も、財前にとっては至福の瞬間
であった。
「うあっ・・・ああっ・・・!!師範っ・・・!」
「ハァ・・・くっ・・・」
ある程度まで入れると、引き込まれるように最奥へと導かれる。熱く狭い財前の中は銀に
とっても極楽であった。
「はっ・・・あ・・・師範っ・・・・あっ・・・」
「今日は・・・一段とええ感じやな・・・」
「師範の・・・イイとこに全部当たってて・・・気持ちええ・・・」
「ワシも気持ちええで。財前はんの中は、ホンマに極楽みたいやな。」
「もっと気持ちようなりたいんで、動いてください・・・」
「ああ、せやな。」
財前の内側を存分に味わうかのように銀は大きくそれを動かす。柔らかい壁を熱い楔で擦
られ、財前は銀にしがみつきながらその大きな快感を享受する。
「あっ・・・あ・・んっ・・・しは・・んっ・・・師範っ・・・!」
誕生日に大好きな銀と繋がっているという幸福感。その感覚を存分に味わおうと、財前は
全身で銀を感じ、幾度も銀を呼ぶ。
(師範とするの気持ちええ。幸せや。師範、大好き・・・)
「財前はん・・・」
名前を呼ばれ、財前はしがみついている手をほんの少し緩める。腕を緩めたことで、銀と
財前の顔は触れ合うすれすれの近さで向かい合うことになる。互いの吐息が感じられるく
らいの近さで、銀は財前に想いを伝える。
「好きやで。」
「っ!!」
「ワシは財前はんのこと、ホンマに好きやと思うとる。財前はんが15年前の今日生まれ
てくれて、四天宝寺のテニス部に入ってくれて、ワシと出会ってくれて、そして、こんな
ふうにワシと心を交わしてくれて、ホンマおおきに。この縁に心から感謝しとるで。」
「・・・・っ」
銀と交わっている状態で、そんな言葉を聞き、財前は抱えきれないほどの嬉しさとときめ
きと感動で、大粒の涙を溢す。こんなにも人に想われていることが心地よいものだとは銀
と出会うまでは感じ得なかったことだ。
「そんなん言われたら・・・泣いてまうやないっスか・・・」
「せっかくの誕生日やし、伝えとかんとと思うてな。」
「俺も師範のこと大好きです・・・師範に出会えて、ホンマによかったと思うてます。」
「嬉しいで。おおきにな。」
「師範・・・」
「ん?」
「キスしてください。」
「ああ、ええで。」
言葉と同時に口づけを交わすことでも想いを伝えたいと、財前はそんなことをねだる。も
ともと触れそうなほど近くに互いの顔があるため、二人はそのまま唇を重ねる。言葉で、
唇で、そして深く深く繋がっている部分で、二人は想いを確かめ合う。触れ合っている場
所からお互いを想う気持ちが流れ込み、心も身体も多幸感に包まれる。
(もう全部が気持ちええ・・・ホンマ幸せな誕生日や・・・)
『――――っ・・・』
心も身体も繋がっている恍惚感に浸りながら、二人は甘い絶頂に達する。しばらくその身
を重ねたままで、銀も財前も甘い余韻に浸っていた。

着乱れてきた浴衣や着物を整えると、銀と財前は二人で布団に入り会話を交わす。
「あー、もうちょっとで俺の誕生日、終わっちゃいますわ。」
「せやなあ。少し名残惜しいな。」
「せやけど、今日はずっと師範と一緒におれたんで、メッチャええ誕生日でしたわ。あり
がとうございます。」
本当に嬉しそうにそんなことを言ってくる財前に、銀はきゅんとしてしまう。
「ワシも今日は一日財前はんと一緒にいられて、ホンマに楽しかったで。」
笑顔でそう返してくれる銀の言葉が嬉しくて、財前の顔は自然と緩む。誕生日が終わる前
にもう一つくらい銀に何かをしてもらいたいと、財前は少し考える。
「師範。」
「何や?財前はん。」
「誕生日が終わる前にもう一つだけ、わがまま聞いてもろてもええですか?」
「ええで。ワシに出来ることやったら何でも。」
「あの・・・一回だけでええんで、名前で呼んでみて欲しいです。」
「名前で?ああ、苗字でなくってことやな。」
銀の声で呼ばれるのであれば、どんな呼び方でもよいのだが、名前で呼ばれるとどんな感
じなのだろうと、財前は興味があった。そんなことはお安い御用だと、銀はその頼みを受
け入れる。せっかくなので、誕生日が終わる直前に言ってみようと銀はしばらく時計を眺
めていた。そして、時計の針が23時59分になったときに、その言葉を口にする。
「誕生日おめでとう、光。」
「っ!!」
「誕生日が終わる前最後に、誕生日おめでとう言うたんはワシやな。」
ニッと笑いながら銀は言うが、そんなことよりも『光』と名前で呼ばれた衝撃が強すぎて、
財前の心臓はこの上なく高鳴っていた。
「師範に名前呼ばれるのメッチャ嬉しいんスけど、ちょっとまだ心臓に悪いんで、普段は
いつも通りの呼び方でええっスわ。」
「心臓に悪いってどないやねん。」
「名前で呼ばれるとドキドキしてしゃーないっスわ。こないにドキドキすると思ってなか
ったんで、今はまだちょっと無理っス。」
「はは、それならしゃーないな。まあ、財前はんがそう呼んで欲しい言うたら、名前で呼
ぶようにするわ。」
思ったよりも真っ赤になっている財前の顔を見て、銀は可愛らしいなあと笑う。もう日付
が変わり、財前の誕生日は終わってしまったが、幸せな一日だった誕生日の余韻を二人は
布団の中でまだまだ楽しむのであった。

                                END.

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