Excited in the train

「あー、今日は楽しかったな!」
久々に遠出して、デートに来た跡部と宍戸は帰宅しようと駅のホームへ向かっていた。少
し早めに切り上げたため、帰る時間としては余裕だった。
「お、電車来てんじゃん。跡部、乗ろうぜ。」
「ああ。」
たまたま帰りの電車が来ていたために二人はそれに乗り込む。しかし、席は全部埋まって
いる状態で、二人は立っていることを余儀なくされた。
「何だ、座れねぇじゃん。しょうがねぇ、跡部あっちのドアの方行こうぜ。」
「そんなとこに立ってたら、席が空いても座れねぇぞ。」
「だって、席空いたって二人分空かなきゃ意味ねぇだろ?だったら、二人そろって立って
た方がマシじゃねぇ?」
「まあ、そうだけどよ。俺達が降りるのは終点の駅だぜ。もし、空かなかったらずっと立
ってんのか?」
「そんときは、そんときだ。俺らそんな体力ないわけじゃねーし。」
まあ、別にいいけどよと跡部は宍戸の言う通りに入り口とは反対側の窓へと歩いてゆく。
この時間ならそこまで混みはしないだろうと余裕を持って二人はドアの前に立った。しば
らくそこで話しているが、なかなか電車は発車しない。どうしたのだろうかと疑問に思っ
ていると、車内アナウンスが流れた。
『大変お待たせしております。ただいま○○駅で人身事故が発生したため、運転を見合わ
せております。もうしばらくお待ちください。』
「人身事故だってよ。」
「ったく、迷惑な話だよな。まあ、いい。一人でいないだけマシだ。」
そんなに長くは止まってはいないだろうと思っていた二人だったが、思った以上に電車は
止まっている。次第に人の数が増えてきた。本当の発車時刻を30分以上も越えているの
だ。その間の電車に乗るべきだった人が次々とその電車の乗車してくるのは免れないであ
ろう。
「何か・・・随分、人が乗ってきたな。」
「こんだけ止まってんだ。仕方ねぇだろ。」
「この電車、満員電車になるのかなあ。それは嫌だよな。」
「まあな。でも、この様子だとそうなることは考えてた方がいいぜ。」
「マジで?じゃ、俺、こっちにいよう。」
他の人を体を合わせるのは嫌だと宍戸はドアと座席の境の角に寄りかかった。ここなら手
すりや何かである程度隙間が出来るので、ぎゅうぎゅうづめの人の中にいるよりかはいく
らか楽だ。あえて触れ合わなければいけないとしたら、今目の前に立っている跡部だけ。
それなら別に何の問題もないと宍戸は一番いい場所を確保する。
「てか、まだ発車しねぇのか?もういい加減、動いてくれねぇと困るよな。」
「だよなー。本当満員電車状態になってきてるし。跡部、大丈夫か?」
「ああ。こっちにテメェがいるよりは何倍も安心だ。」
「どういう意味だ?」
「テメェが俺以外の奴らとくっついてるなんて許せねぇ。」
「何だよそれ?ま、確かに俺もそう思うけどな。跡部以外の奴らとこんなにくっついてい
なきゃいけねぇなんて、激苦痛。」
「言ってくれるじゃねぇか。」
そんなに大きな声で話しているわけではないので、まわりに人にハッキリ聞き取れられる
ということはないだろうが、二人そろってかなりすごいことを言い合っている。そんなこ
とを言っている間はまだ笑い合う余裕もあったが、車内環境はどんどん悪化していってい
る。もうこれ以上乗れないだろうというころになったとき、再び車内アナウンスが流れた。
『大変お待たせしました。間もなくの発車です。お急ぎのところ本当に申し訳ございませ
んでした。ドアが閉まります。』
ぷしゅーという音と共に、跡部達がいるところとは逆の扉が閉まる。電車内は人で埋まっ
ている。身動きなどほとんど出来ないであろう。二人は自分達が下りる駅が終点で本当に
よかったと思った。
「マジで満員電車になっちまったな。」
「ああ。マジウゼェ。」
「確かに。この状態はキツイよな。」
ガタンっ
『うわっ!!』
電車が揺れると二人の体はさらに密着する。跡部からすれば、後ろにいる人達もそうであ
るのだが、向かい合って体が触れ合うのと、背中越しではだいぶ感覚が違う。あまりにも
跡部の顔が目の前にあるので、宍戸からすればドキドキだった。宍戸から見える人の顔は
跡部だけだ。他の人々は全て宍戸に背を向ける状態で立っている。
「これは思った以上にストレスが溜まりそうだ。」
「そうだよな。お前はいろんな人と触れ合ってなきゃいけねぇんだし。」
「宍戸、このイライラを誤魔化してくれ。」
「は?・・・わっ!?」
この窮屈さが何とも苦痛だと、跡部は不機嫌な顔をして宍戸にそれを訴える。宍戸は跡部
以外の人と接触していないので、パーソナルスペースが全くないという苦痛は感じない。
しかし、跡部は違うのだ。その不快感を誤魔化したいと跡部は宍戸にとあることをする。
「なっ・・・テメェ、どこ触ってっ・・・」
「どこって、俺の手はが届くところはこのあたりだがな。他のところには動かせねぇ。」
「わわっ・・・動かすな!!」
幸い宍戸のまわりにはある程度のスペースがあるので、肘から下あたりは動かすことが出
来る。その部分だけでは自由に動かせる手を使って跡部は宍戸のおしりをバッチリ撫で回
しているのだ。
「テメェはどこの痴漢だっ!!」
「あんまり騒いでると気づかれるぜ?」
「うっ・・・って、わあっ!!太股を撫でるな!!」
今日の宍戸の服装は赤いパーカーに白いハーフパンツ。ハーフパンツということは、下か
らでも上からでも簡単に手を入れられてしまうというわけで・・・。裾から手を入れる形
で跡部は宍戸の太股をゆっくりを撫でた。さすがにこれには宍戸も驚いてしまう。しかし、
抵抗することは全く不可能。この状態では身動き一つとれないのだ。
「うっ・・・ちょっ・・・跡部、マジやめろ。」
「どうした?この程度で感じてんのか?」
さっきまであんなに不機嫌顔だった跡部の顔が今は実に楽しそうだ。確かにこれは満員電
車の不快感を完璧に誤魔化すことが出来る。しかし、宍戸からすれば気づかれてはいけな
いし、止めさせることも出来ないし、いつものような反応を見せてもいけない。とにかく
リスクが大きすぎる。そんな宍戸の反応を楽しむのが跡部のしたいことなのであろう。
「お前、すげぇ心臓ドキドキいってるぜ。そんなに興奮してんのか?」
「こんな状況で、ドキドキするなっていう方が無理だろ。」
「あっ、じゃあ、こうしたらどうよ?」
体が密着しているために、宍戸の反応は直に跡部に伝わる。鼓動の速さも、だんだんと速
くなる呼吸も、体の震えもバッチリ伝わる。これはいいシチュエーションだと、跡部は行
為をさらに発展させてしまおうと試みた。さっきまでハーフパンツの裾にあった手を少し
上に持っていき、腰の部分から下着の中まで滑り込ませる。これはヤバイと宍戸の体はビ
クンと跳ねた。
「っ!?・・・あ、跡部、それはダメだって!!」
「俺はすげぇキツイ思いしてるんだぜ?テメェの顔や声で少しでも和らげてくれよ。」
「ふざけんなっ!!わー、やめろやめろっ!!」
もちろんこのやりとりは全て小声でしているのだが、これ以上騒ぐとさすがにまわりの人
も気づいてしまう。ほんの少しまわりの人の頭が動いただけで、宍戸はヤバイと感じて、
声を立てるのをやめた。宍戸の制止の声がやむともやまずとも跡部は自分のしたいと思う
ことをどんどん進める。滑り込んだ手はそろそろ宍戸の蕾に到達しかけていた。
「宍戸、あんまり大きな声出すんじゃねぇぞ。」
そう囁く跡部の声は明らかに楽しそうな笑いを含んでいた。嫌だということを表すように
宍戸は小さく首を振るが、跡部がそんなことでやめるはずがない。蕾を探り出した指はそ
の花を咲かせてやろうと、ゆっくりと内側に埋め込まれる。
「・・・ひっ・・・ぁ!」
その感覚に思わず声が出てしまったが、電車の揺れる音で掻き消されるほどの小さな声だ。
一瞬気づかれてしまったのではないかと、宍戸の顔は一気に羞恥の色で染まる。しかし、
まわりの人々は全く気づいてはいない。
「気づかれてはねぇから安心しろ。けど、あんまり大きな反応するとバレるかもな。」
「お前・・・最悪っ・・・」
「最悪だと思ってるわりには、ここの具合いいみたいだぜ?どんどん解れていってる。」
「ふ・・ぅあっ・・・指、動かすなぁ。」
自分にだけ聞こえるような声で喘ぐ宍戸に跡部は強い興奮を覚える。もう満員電車に乗っ
ていることなど忘れてしまうくらいだ。さらに鳴かせてやろうと緩んできたそこにもう一
本指を増やしてやる。
「いっ・・・あぁっ・・・」
「すげぇな。こんな場所でお前のここは俺の指を二本も飲み混んでるぜ。」
「ハァ・・・やだ、跡部・・・も・・・やめ・・・」
これ以上されると全てにおいて堪えられなくなってしまうと、宍戸は潤んだ声で訴える。
だが、こんなところでやめる気など跡部にはさらさらない。宍戸の弱いところを見つけて
はそこを容赦なく攻めた。
「んっ・・・や・・・そこダメっ・・・」
「宍戸、声がデカイ。もう少し抑えてろ。」
「じゃ・・・やめろよぉ・・・」
「それは出来ねぇな。とにかくまわりに気づかれないように喘げ。」
「んな無茶なこと・・・」
出来ないとは繋げず、宍戸は跡部の肩に顔を埋め、出来るだけ声が外に漏れないようにと
努力した。服の振動と耳元であるというので、跡部だけはその濡れた声と熱い吐息が聞く
ことが出来る。もう何駅過ぎたなどということはこの二人には分かっていなかった。頭が
ぼーっとし、宍戸にとっては立っているのもやっとである。
「はっ・・・いい加減やめねぇと・・・俺、マジ耐えらんねぇ・・・」
「あーん?もうちょっと楽しませろよ。」
「でも・・・ぁ・・・そろそろ・・・限界っ・・・・」
言われなくても跡部には分かっていた。体が密着しているのだから、前がどのような状態
になっているかなど丸分かりだ。しかし、ここで出されても後処理はどうしようか・・・
そのままの状態でいるのはかなり不快であろう。そんなことを考えながら跡部はいったん
手を止める。
「イキたいか・・・?」
小声で跡部は尋ねる。こんな状態で放っておかれるよりは、確かにイッてしまった方が楽
なのだが、宍戸も跡部と同じことを考えている。そうした後、どうするかが問題なのだ。
しばらく頷けないでいる宍戸だったが、やっぱりこの状態は耐えられない。駅に着いたら
濡れた下着などは脱いでしまえばいいと、跡部にイカせて欲しいと訴える。
「やっぱ・・・この状態は無理・・・」
「それじゃあ・・・」
(イカせて・・・)
この後は口パクだけで、宍戸は跡部に伝える。そうする宍戸の表情は何ともいえない、可
愛さがあった。
「しっかり声、抑えておくんだぞ。」
コクンと頷くのを確認すると、跡部は宍戸の内側で一番敏感なところを擦り上げる。その
瞬間宍戸の体は一際大きく震え、今まで溜まっていた熱を全て放った。幸い太股を伝って
流れるということは無かったのですぐにまわりにバレてしまうということはなさそうだ。
すっかり力の抜けてしまった宍戸の体を支えてやると、跡部は満足そうな笑みを浮かべて
その頬に軽くキスをしてやった。

結局、終点の駅まで座れなかった二人だが、ハッキリ言ってその方が好都合であった。下
手に動かなければならないとなると下着の不快感がもろに感じられてしまう。
「あーあ、これどうすんだよ?」
「鞄に入れて持って帰ればいいだろ。」
「じゃあ、その間俺はノーパンか。」
「そうなるな。てか、そういうことを普通に口に出来るお前がすげぇ。」
駅の男子トイレの個室で二人はそんなことを話す。同時に出るとさすがに怪しまれるので
順番に二人は外へと出る。宍戸が先に出たのだが、跡部が出てくるのに少し時間がかかる。
普通にトイレを使っているのかなあと思った宍戸だったが、それにしては出てくるのが早
すぎた。
「随分、遅かったな。何してたんだ?」
「別に。あえて言うならお前と同じだ。」
「は?意味分かんねぇ・・・あっ!!」
自分と同じという意味がすぐには分からなかった宍戸だが、何となく顔が赤くなっている
跡部を見て気づいてしまった。
「もしかして・・・お前も?」
「るせー、テメェが思った以上にいい反応するから。」
「うわあ、変態だと思っていたけど、そこまで変態とはねぇ。」
からかうような口調で宍戸はそんなことを言う。何となくカチンと来た跡部はハーフパン
ツのみを身につけた宍戸のおしりをまた軽く撫でた。
「うわっ、テメェこんなところで痴漢行為してんじゃねぇよ!!」
「ふん、テメェが俺様を怒らせるようなことを言うからだ。」
「ホント、変態だお前は!!」
「あーん?犯されてぇのか?」
ギラリと睨みつけられ、宍戸はだじろいでしまう。さすがにこれ以上されるのは勘弁だ。
「まあ、いいや。さっさと帰ろうぜ。こんな格好でそんなに歩いてたくないからな。」
「そうだな。ここまで迎えに来てもらうか。」
「あ、いいなら俺も送ってくれよ。」
「送るに決まってんだろ?」
当然のことだと跡部は笑いながらそう言った。電車に乗るまでは普通のデートだったのだ
が、思ってもみない状況になり、あんなことをしてしまった。跡部はもちろん楽しんでい
たのだが、実は宍戸も結構楽しかったなあと思っている。普通に満員電車に乗るだけだっ
たらひらすらウザイのみであろう。満員電車さえも楽しみの一つにしてしまう。それは跡
部にしか行えない大胆な試みであった。

                                END.

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