甲斐×平古場
甲斐Side
バレンタイン当日、学校の近くの海に甲斐と平古場はやって来ていた。穏やかな波の音を
聞きながら、平古場は甲斐にチョコレートを差し出す。
「ほら、裕次郎。チョコレートさぁ。」
「なあ、このチョコってさ・・・もしかして俺のだったりする?」
「ほかに誰がいるやし。正真正銘、俺から裕次郎へのバレンタインチョコさー。」
この状況で渡して、甲斐以外へのチョコレートであるわけがないだろうと、平古場は笑う。
大好きな平古場からチョコレートを貰うことが出来、甲斐は素直に喜ぶ。
「やった!でーじ嬉しいさぁー!」
「はは、喜びすぎやっし。」
「喜びすぎって・・・いいだろ別に。貰えるなんて思ってなかったんだからよー。」
自分からのバレンタインチョコをここまで喜んでくれるのが嬉しくて、平古場の気分は上
がる。
「まあ、そこまで喜んでくれるなら準備した甲斐があるやー。」
「これでも抑えてる方なんだぜ。本当にありがとうやぁ。」
今ので喜びを抑えてる方なのかと平古場は少し驚く。それなら、もっと喜ばせてやろうと、
平古場はニッと笑って甲斐の襟もとを掴み、ちゅっと軽くキスをする。突然の平古場から
のキスに甲斐は目をパチクリさせ、ぶわっと顔を赤く染める。
「来月のお返しは、今のも含めて三倍返しだからな!」
悪戯に笑う平古場の言葉に甲斐の心臓はドキドキと高鳴る。『三倍返し』をどう捉えてい
いか分からないが、来月のお返しは必ず平古場が喜ぶものを用意しようと甲斐は心に決め
た。
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平古場Side
バレンタイン当日、甲斐はよく来る浜辺に平古場を呼び出した。どうしてもあることを意
識してしまう今日、ほんの少しの期待感を胸に甲斐の前に立つ。
「こんなとこに呼び出したってっことは・・・」
「ん?どうしたばぁ?凛。」
「何もないってことないだろ。今日が何の日と思ってるばー。」
もちろん今日が何の日か分かった上で、今日ならではのものを渡すために甲斐は平古場を
呼び出している。平古場がそわそわしているのを見て、甲斐は少しだけからかいたくなる。
「もしかして凛、何か期待してるんばぁ?」
「・・・別に期待とかしてないし。や、ちょっとだけしたかもだけど・・・」
「あはは、それならその期待に応えてやるさー。」
そう言いながら、甲斐は用意していたバレンタインのチョコレートを平古場に渡す。
「って、このタイミングでチョコ渡すばぁ?意地が悪いやっし・・・」
甲斐からバレンタインチョコを貰えたことは非常に嬉しいと思うのだが、それを期待して
いることを見透かされ、絶妙なタイミングで渡されるのはちょっと悔しいなあと思ってし
まう。
「あれ?あんまり嬉しくないばぁ?凛が喜びそうなチョコ選んだんだけど。」
「あーもう、勝てんさー。チョコ、ありがとうやー。」
平古場が笑顔でお礼を言ってくれたので、甲斐も満面の笑みになる。せっかくなので、そ
のチョコを食べている平古場が見てみたいと甲斐は今食べることを提案する。
「凛に買ったチョコ、美味しそうで俺もちょっと味見してみたいさー。今ここで一緒に食
わん?あっ、何なら俺が食わせてやるさー。」
そんな甲斐の提案にふっと笑いながら平古場は頷く。甲斐がくれたハート型のチョコレー
トを二人で食べながら、甲斐も平古場も存分にバレンタインデーを満喫した。