金太郎×白石
金太郎Side
バレンタイン当日、白石は金太郎と一緒に帰っていた。そんな学校からの帰り道、他の人
の邪魔にならないところで立ち止まり、白石は金太郎の方を向く。
「はい、金ちゃん。約束してたバレンタインのチョコやで。」
白石からチョコを受け取り、金太郎は全力で喜ぶ。
「バレンタインのチョコやー!!よっしゃー!!」
「はは、そないに喜んでもらえると頑張って作った甲斐があるわ。ちょっと開けてみ。食
べるのは家帰ってからでもええから。」
白石にそう言われ、金太郎はラッピングを解き箱を開ける。中にはパッと見タコ焼きに見
える何かが入っていた。しかし、匂いは間違いなくチョコレートの匂いだ。そんな白石か
らもらったタコ焼きにそっくりなチョコを見て、金太郎は目を輝かせる。
「金ちゃんにはどんなチョコがええかなあって考えてたら、やっぱタコ焼きかなと思て。
生地はホットケーキミックスで、ソースはチョコレートで中にもチョコが入ってるんや。
その青のりみたいなんは抹茶なんやで。こんなチョコ作るん、金ちゃんにだけやで?」
「おおきに、おおきに!へへっ、ワイだけのチョコやー!!」
自分のために白石が作ってくれたということを聞いて、金太郎はさらに笑顔になる。
「ワイ、知ってるんやで。バレンタインのチョコって特別なんやって。」
「せやなあ。俺のチョコも特別やで。金ちゃんにあげるんは本命チョコや。」
「せやから、大事に大事に食べるからなぁ!お返し、やっけ?それも今度用意しとくで!
楽しみにしててなぁ!」
「ホンマに?ほんなら、お返し、楽しみにしとるで。」
バレンタインチョコを受け取り、素直に大喜びしてくれる金太郎にきゅんきゅんしながら、
白石は笑顔でそう返す。白石から貰ったタコ焼きのような本命チョコ。やっぱり白石のこ
とが大好きだと思いながら、金太郎はニコニコと笑顔を浮かべて、大事そうにそのチョコ
レートを眺めた。
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白石Side
バレンタイン当日、金太郎はチョコレートのたくさん入った紙袋を持った白石に突撃する。
そして、用意してきたチョコレートを白石に渡した。
「白石、バレンタインのチョコやで!受け取ってや!」
「チョ、チョコ?俺に・・・やんな?・・・ええの?」
かなり戸惑っているような様子の白石に金太郎は首を傾げる。自分がチョコをあげたい相
手など白石以外にはいない。
「ええに決まっとるやん!バレンタインのチョコは、好きやと思っとる相手にあげるんや
ろ?ワイが一番好きなんは白石やもん。せやから、これは白石にやで!」
「ええと、おおきに。嬉しいわ。ほな、ありがたくいただくで。」
まだドギマギとしている様子の白石に金太郎は素直に思っていることをぶつける。
「白石、何や緊張しとるん?そないにぎょーさんチョコ貰っとるし、貰い慣れてるかと思
ってたわ。」
「貰い慣れてるかと思ったって・・・ええーっ、なんやそれ。別に、そないなことないわ。」
こんなにたくさん貰っていてもそうなのかと金太郎は不思議そうな顔をする。
「ふーん、そうなんやな。ほんなら、ワイからのチョコ貰うんもドキドキしたりするん?」
「面と向かって渡されると、やっぱり緊張するし・・・ドキドキするもんやで。」
それを聞いて、金太郎は悪戯っ子のようにニッと笑う。白石の学ランの襟を掴んで、白石
の体勢を少し低くさせた後、背伸びをして無防備な唇にキスをする。触れた唇はほのかに
チョコの味がし、その甘さでキスをされたことに気づき、白石の顔はぶわっと赤く染まる。
「白石がぎょーさんチョコ貰っとっても、白石のこと一番好きなのはワイやで!さっき腹
減って他の奴に貰ったチョコ食うたから、チョコの味したやろ?これもワイからのバレン
タインチョコや!」
にひひと笑いながら、金太郎は白石を見る。こんなことをされたら、他のチョコを食べて
も金太郎とのキスを思い出してしまうと、白石は口を押さえて真っ赤になっていた。
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銀×財前
銀Side
バレンタイン当日、財前は銀がいつも滝行をする学校裏の滝の前に銀を呼び出した。銀よ
りも早くその場所に足を運び、ドキドキと胸を高鳴らせながら銀が来るのを待つ。今日は
二年生よりも三年生の方がホームルームが長かったようで、約束の時間をほんの少し過ぎ
てから銀が慌てた様子でやってきた。
「待たせてもうたやろうか。ほんで、話言うんは――」
「あっ、師範。いや、全然待っとらんので大丈夫です。話というか何というかって感じな
んスけど・・・」
そう言いながら、財前は鞄から用意していたチョコレートを出す。赤い包装紙に金色のリ
ボンが巻かれたチョコレートの入った箱を財前は銀に差し出す。
「これ、バレンタインデーのチョコレートです・・・」
「!チョコレート・・・ワシにか?」
「はい。・・・一応、それ、本命チョコなんスけど・・・あっ、いや、やっぱ何でもない
っス。」
恥ずかしそうに財前はそんなことをふわっと漏らす。『本命チョコ』という言葉を銀は聞
き逃さず、その胸はひどく高鳴っていた。
「正直、とても驚いたわ・・・」
「そうっスよね。俺からバレンタインチョコなんてもろても嬉しくなんか・・・」
うつむきながらそんなことを言う財前の頭を銀は優しく撫でる。そして、口元に嬉しそう
な笑みを浮かべ、財前に声をかける。
「せやけど・・・嬉しいで。なんや・・・こういうんは照れくさいもんやな。おおきに。」
銀に声をかけられ、財前は顔を上げる。目に映った銀の顔は実に嬉しそうな表情で、嬉し
いという言葉が嘘でないのが分かった。銀のその言葉と表情に、財前の胸はひどくときめ
く。
「師範、あの・・・」
「この銀、来月は必ずお返しを贈るで。せやから、楽しみに待っててな。」
「!・・・はい。」
来月のホワイトデーにお返しをくれるという銀の言葉に、財前はドキドキしながら頷く。
やはり銀のことが大好きだと思いながら、財前は恥ずかしそうに顔を緩ませ、銀の顔を見
つめた。
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財前Side
バレンタイン当日、財前は銀と甘味処に来ていた。好物の白玉ぜんざいを銀に奢ってもら
って、ほくほくとした気分で店を出ると、銀が立ち止まり声をかける。
「財前はん、ちょっとええやろか?これ、財前はんにと思て用意してきたんや。」
そう言いながら、銀は財前に和柄の包装紙でラッピングされた箱を渡す。
「バレンタインのチョコレートや。」
「あの、このチョコ、ホンマにもろてええんですか。」
まさか銀からバレンタインのチョコレートがもらえるとは予想していなかったので、財前
は思わずそう尋ねる。
「もちろんや。財前はんのために、用意さしてもろたんやで。普通のチョコよりはちょっ
と和風な方がええかなと思て、あんことチョコで作られたケーキみたいなものを用意して
みたんやが、受け取ってもらえるやろか?」
「・・・あー、そーゆーことなら、いただきます。ありがとうございます。」
銀の話を聞くと、用意されたバレンタインのチョコレートは明らかに自分の好みに合わせ
たものであった。それは是非食べてみたいと、財前は銀からその箱を受け取る。財前がチ
ョコレートを受け取ってくれたので、銀はホッとしたように笑う。
「そないあからさまにホッとせんでもええでしょ。俺が突っ返すとでも思ったんスか?」
「いや、財前はん、自分が気に入らんもんは、容赦なく断りそうやなと思うて。しかも、
ワシからのチョコレートなんて、ホンマ断られてもおかしくないやないか。」
「フッ・・・アホやな。ほな、ハッピーバレンタインって言うときましょか。」
銀が贈ってくれるものを自分が断るわけがないと、財前はそんなことを言う。いつも通り
の態度を取っているが、銀からバレンタインのチョコレートが貰え、財前は心の底から嬉
しいと思っていた。『ハッピーバレンタイン』という言葉は、まさに今の自分の気分を表
している言葉であった。
「受け取ってくれて、おおきに。ハッピーバレンタイン、財前はん。」
笑顔でそんな言葉を口にする銀に財前の胸はこの上なくときめいていた。今日は最高のバ
レンタインデーだと思いながら、銀も財前もお互いの顔を見て笑った。
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千歳×橘
千歳Side
バレンタイン当日、橘は四天宝寺中の近くの公園に千歳を呼び出した。帰りに用があると
橘からメールを貰った千歳は、学校が終わると公園へと足を運ぶ。
「ああ、千歳。来たか。」
「用って何ね?」
「今日はバレンタインやろ?お前にと思って、作ってみたばい。」
そう言いながら、橘は簡単なラッピングが施されたチョコレートを千歳に渡す。この間、
タコ焼き屋のバレンタインキャンペーンで貰ったというチョコを使って、千歳のためにバ
レンタイン用のチョコを作ったのだ。
「・・・ん?こんチョコ貰ってよかと?」
「ああ。一応、お前の好みに合わせて甘さとか調節してみたばい。口に合うといいんだが
な。」
「ありがとう。たいぎゃ嬉しかぁ・・・さっそくひとくち。」
橘から受け取ったチョコを袋から一つ出し、千歳はそれを口の中に放り込む。口に入れた
瞬間、チョコレートの香りが口いっぱいに広がり、舌の上で甘くとろける。実に自分好み
の味に千歳は舌鼓を打つ。
「・・・んー・・・ちょうどよか甘さで美味かね。せっかくやけん、一緒に食べん?」
「お前の好みに合わせて作ったけん、俺にはちょっと甘すぎばい。一緒に食べるんは出来
んばってん、食わせてやってもよかよ?」
そう言って、千歳の持っていたチョコレートが入った袋を取り上げると、その袋から一つ
チョコレートを出し、千歳の口の前に持っていく。
「ほら、口開けろ。あーん。」
楽しそうに笑いながら、そんなことをしてくる橘に千歳はもうメロメロだった。橘の作っ
たチョコレートを橘が食べさせてくれるという至福の時間。今日は帰ったら存分に橘とイ
チャイチャしようと考えながら、千歳は大きく口を開けた。
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橘Side
「桔平ー。」
学校からの帰り道、橘が帰ってくるのを待っていた千歳は橘を見つけると走ってやってく
る。橘の前まで来ると、千歳は小さな紙袋に入ったチョコレートを橘に差し出した。
「はい、桔平。チョコレートたい。」
「おっ、チョコレートか。そうか、バレンタインだったな。」
千歳が差し出すチョコレートを見ながら、橘はふっと笑う。
「今日がバレンタインちこと忘れてたと?俺はたいぎゃ楽しみにしてたとに。」
「忘れていたわけじゃない。ただ、テニスだなんだで忙しくしているうちに当日が来てし
まった気はするな。」
「あはは、桔平らしかね。」
やはり橘はあまりバレンタインなどを気にするタイプではないのだなあと、千歳はほんの
少し安心したような気持ちになる。あまり気にしていないおかげで、何の疑いもなくバレ
ンタインを自分と一緒に過ごしてくれる。それが嬉しくて、千歳は目を細めて笑う。
「一応、桔平が食べれるように甘くないビターチョコ選んでみたばってん、受け取っても
らえると?」
「ありがたくいただくよ。いや、しかし・・・」
千歳から受け取ったチョコレートをじっと眺め、橘は呟く。何か不都合があったかと千歳
は心配するような表情で橘を見る。
「どぎゃんしたと?」
「こうしてもらってみると、やはり嬉しいものだな・・・はは。」
眉を下げ、橘はふっと顔を緩ませる。自分のあげたチョコレートを嬉しいと言われ、千歳
も橘以上に嬉しくなる。
(桔平、たいぎゃむぞらしか〜。チョコレート準備しといてよかったばい。)
橘の笑顔にときめきながら、千歳は橘の隣を歩く。今日も橘の家に泊まる予定なので、も
っとバレンタインらしいことをしたいと考えながら、千歳はふふっと抑えられない笑みを
溢した。