花咲くバレンタイン
〜White Day〜(比嘉)

甲斐×平古場

甲斐Side

ホワイトデーの放課後、学校のすぐ近くにある浜辺に甲斐は平古場と来ていた。海を眺め
つつ、平古場の方を振り返ると甲斐は平古場に声をかける。
「なぁ、いいもんやるから手、出してみ?」
「手?」
甲斐に言われるまま平古場は手を出す。そんな平古場の手の上にピンク色の包みに赤いリ
ボンがついたお返しを乗せる。
「じゃーん!チョコのお返しの菓子!」
「あー、今日はホワイトデーだったな。開けてみてもいいば?」
甲斐が頷くと、平古場はリボンをほどき、ピンク色の包みを開ける。中にはイチゴのよう
形のお菓子が入っていた。
「忘れずにちゃんと用意してきたさー。美味そうやんに?」
「確かに美味そうさー。こんな菓子、初めて見たやし。」
「もらったチョコがでーじまーさんだったから俺も気合い入れたってわけ。受け取ってく
れると嬉しいさー。」
「もう開けてるし。一つ食べてみるか。」
そう言いながら、平古場はイチゴの形をしたピンク色のお菓子を一つ口に入れる。カリっ
と歯を立てると甘酸っぱい味が口いっぱいに広がる。イチゴの味もするがそれとはまた別
のフルーティな酸味。そして、ホワイトチョコレートにも似た甘さ。
「でーじまーさん。俺、この味好きさー。」
「これ、イチゴにルビーチョコレートってのがコーティングされてるらしいさー。凛はイ
チゴ味のもの好きだし、見た目もピンクで可愛いからいいなあと思って。味も気に入って
もらえたならよかったさー。」
「ありがとーな。ホワイトデーのお返し、しっかり受け取ったさー。」
ニッコリと嬉しそうに笑う平古場の表情に甲斐の胸はドキンと高鳴る。バレンタインデー
に貰ったもう一つのもののお返しをしなければと、甲斐は平古場の手を引いて、近くに生
えている大きな木の陰に連れて行く。
「こんなとこに連れて来て、何するば?」
「バレンタインのとき、凛がちゅーしてくれたから・・・それのお返しもしなきゃと思っ
て。」
それを聞いて、平古場はドキッとしながらも余裕のあるふりをする。
「三倍返し・・・してくれるばぁ?」
「い、一応、そのつもりだけど・・・そこまでにならなかったらごめんちゃい。」
平古場の頭の横の木の部分に手をつくと、甲斐は頭を傾け平古場に顔を近づける。さすが
恥ずかしいと平古場はぎゅっと目をつぶる。甲斐も甲斐でドキドキしながら、平古場の唇
に自分の唇を重ねる。三倍返しということだったので、バレンタインデーにしたときより
もいくらか深い口づけを甲斐は平古場に施す。
「んっ・・・ぅ・・・」
ほんの少し唇の隙間から漏れる声に甲斐の胸はドキドキと高鳴る。しばらく平古場の唇と
舌を味わった後、甲斐はゆっくりと顔を離した。
「三倍返し・・・ちゃんと出来てたば?」
「もー、十分やっし。でーじちむどんどんしてヤバイくらいさー。」
「俺もさー。凛の唇も口ん中もでーじ甘酸っぱくて、ファーストキスみたいな気分だった
さー。」
甲斐のそんな言葉に平古場はふっと吹き出す。胸をときめかせながら、お互いに顔を見合
わせて笑う。日が傾き、オレンジ色に染まる浜辺の端で、甲斐と平古場はホワイトデーを
存分に楽しんだ。

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平古場Side

ホワイトデー当日、平古場は甲斐を呼び出した。いつもはすぐにどこかに行ってしまう甲
斐も今日ばかりは平古場の目の届く場所で行動し、平古場が探しに行かなければならない
という状況にはならなかった。
「わざわざ呼び出しといてなんだけどよ、なんでもないさー。」
呼び出した甲斐を前に平古場はそんなことを言う。今日が何の日か分かっている甲斐は、
くすくす笑いながら言葉を返す。
「今日はホワイトデーやんに、お返しくれるんだろー?」
「・・・フ、バレてるか。チョコのお返し、もちろん用意してるばーよ。ほれ・・・」
用意してきたチョコのお返しを甲斐に差し出すが、甲斐が受け取ろうとする直前で平古場
はその手を引っ込める。
「いや、やっぱどうしようかな?」
「ちょっ、凛!何でそんなに焦らすかよ?」
受け取ろうとしたところで渡すのを止められ、甲斐は少し怒ったような口調でそんなこと
を言う。さすがにこれ以上からかうのは可哀想だと、平古場は甲斐の手を取って、お返し
を手渡す。
「冗談だって、怒んなよ。これお返し。チョコ、ありがとうな。」
「凛はたまに意地悪さー。でも、お返し、ありがとうやー。嬉しいぜ。」
「バレンタインのとき、裕次郎も似たようなことしてただろーが。」
「そーだったっけ?」
「まあ、いいさー。それより、ちょっとそれ開けてみれ。」
あげるのは焦らしたが、お返しの中身を見た甲斐の反応が見てみたいと、平古場はその場
で開けることを促す。平古場に勧められるまま、甲斐はラッピングされているそれを開け
る。中にはハート型の箱が入っていた。
「随分可愛らしい箱やっさー。」
「中もなかなかやし。開けてみれ。」
ハート型の箱の蓋を開けると、中にもたくさんのハートが詰まっていた。
「ハートがいっぱいさー!」
「バレンタインのとき、裕次郎がハート型のチョコくれただろー?だから、俺もハートを
いっぱい返してやろうと思ってよ。」
少し照れながらも平古場はニッと笑ってそう話す。そんな平古場が可愛くて仕方がないと
甲斐は平古場から貰ったたくさんのハートを落とさないようにしながら、ぎゅーっと平古
場を抱き締めた。
「でーじ上等さー!凛からいっぱい好きって気持ち貰ったみたいで、しに嬉しいさぁ!」
「はは、分かりやすく気持ちはばんない込めたつもりさー。」
「こんなにハートがいっぱいなるくらい凛は俺のこと好きなんばぁ?」
「ま、まあ・・・そうかも?」
恥ずかしさから断定はせずに平古場はそんなふうに返す。否定されなかっただけでも甲斐
は十分に嬉しかった。
「えへへ、俺も凛のこといっぺーかなさんどー。」
「っ!!・・・俺も。」
自分とは違いハッキリと分かりやすい言葉で気持ちを伝えてくる甲斐に、平古場はきゅん
としてしまう。自分も同じ気持ちであることを伝えるため、甲斐の背中に腕を回し、ぎゅ
っと制服を掴みながら平古場は同意を表すような言葉を口にする。それがまた嬉しくて、
甲斐はさらに強い力で平古場のことを抱き締めた。

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