月蝕狂想曲 −曲種−

ここは、様々な種族が住む世界。人族、獣族、鳥族、魚族、虫族、花族などが共生してい
る。人族以外は、二つのモードを持っており、感情や気分、状況によってモードが変わる。
それぞれの種族が、その種族特有の特徴を持っており、その特徴を生かしながら環境に順
応している。今日は明るい満月が夜空に輝いている。しかし、今日の満月は少し特別で、
その兆候がゆっくりと表れ始めていた。

(さーてと、そろそろ陸上がっとこうかな。)
鯛モードになり海で泳いでいた種ヶ島は、そろそろ陸に上がろうと、海岸の岩場に向かっ
て泳ぎ出す。いつもの岩場に着くと、海から上がろうとする。
「よいしょっ・・・って、あれ?」
普段は陸に上がれば自動的にヒトデモードになり、鯛モードの尾びれは人の脚になるはず
なのだが、今日は何故かヒトデモードになることが出来ない。
「えー、ヒトデモードになれへんのやけど!」
意識してヒトデモードになろうとしてみるが、やはりなることが出来ない。鯛モードのま
までは、しっかり陸に上がることが出来ないので、尾びれを海につけたまま種ヶ島は岩場
に座る。
「今までこないなことなかったんやけどなあ。ん?今日って満月やなかったっけ?何やち
ょっと欠けて見えるような・・・」
海を泳いでいるときは、大きな満月が海を照らしてくれていたのでかなり明るいなあと思
っていた。岩場に座ってその月を見てみると、一部が陰に覆われ、明らかに欠けているこ
とに種ヶ島は気がつく。
「こんなとこで何してるんだし?」
不思議そうに月を眺めている種ヶ島に声をかけたのは大曲だ。その声に気づき、種ヶ島は
大曲の方に顔を向ける。
「あっ、竜次!」
「いつもはヒトデモードで海岸にいる時間だろ。そんなとこに座って、何してんだ?」
こんな時間でも大曲はちょくちょく種ヶ島に会いに来るので、いつもいる場所にいないと、
種ヶ島を探すために海岸を歩き回っていた。
「聞いてや!竜次!今、ヒトデモードになれへんねん!せやから、ちゃんと陸に上がれん
くて。」
「は?何でだよ?」
「理由は分からへん。竜次はもう一つのモードにちゃんとなれるん?」
特に意識していなかったが、試しにモードを変えてみようとするが、大曲ももう一つのモ
ードに変化することが出来なかった。
「・・・確かに、インコモードになれねぇな。」
「やろー?せやけど、竜次が来てくれてよかったわ。陸に上がれへんから、ずっと海かこ
ういうとこにしかおれへんからな。」
「俺はもう一つのモードになれなくても大した影響はねぇけど、お前は大変だな。」
「まあ、竜次が側におってくれたら、そこまで困ることはないけどな☆」
大曲の側にいられないことが一番困ることだと、種ヶ島は笑いながらそう言う。種ヶ島の
隣に腰かけながら、大曲はふと夜空に目をやる。
「ん?何か月欠けてねぇ?今日、満月だったよな?」
「やっぱ竜次もそう思う?あー、さっきよりもっと欠けとる。こういうの何て言うんやっ
たっけ?」
「皆既月食じゃねーか?」
「それやそれ!あんだけ欠けてると結構暗くなってまうな。」
「そうだな。」
特にすることもないので、二人はしばらく欠けていく月を眺めていた。いつの間にか月の
光っている部分は三日月くらいの大きさになっていた。そんな欠けた月を眺めていると、
大曲の胸がざわついてくる。
(何だ?ちょっと変な気分だし・・・)
月を見るのを止め、視線を下に下げると、種ヶ島の赤い尾びれが目に入る。種ヶ島の魚の
部分を見て、大曲の心にあり得ない欲求が芽生える。
(スゲェ美味そう・・・食いたい。)
無意識にそんなことを考えてしまったことに、大曲の心臓は跳ねる。それをきっかけに大
曲の鼓動はひどく速くなる。
「いや、ありえねぇだろ・・・」
「ん?どないしたん?」
「いや・・・別に何でもねぇ。」
チラリと種ヶ島の尾びれに目をやると、先程感じた気持ちがどんどん湧き上がり、目が離
せなくなる。
(あ、これはまずいかもしれねぇ・・・)
「悪い、修二。やっぱ、今日は一緒にいれねぇかも・・・」
このままこの衝動が大きくなっていくと取り返しのつかないことになると、大曲は種ヶ島
から離れようとする。
「えっ!?何で!?」
「何か今日、俺おかしくてよ。」
「嫌や!行かんといて!!」
一人にされるのは嫌だと、種ヶ島は縋るように大曲の服を掴む。困ったような顔をしなが
ら、大曲は種ヶ島を説得しようとする。
「たぶん今日だけだから、少し我慢してくれ。」
「俺、今日はここから動けへんのやで?せめて、理由聞かせて!」
何か理由があるならば我慢しようと、種ヶ島は必死でそう問う。理由が理由なので、口に
するのはどうかと思ったが、種ヶ島を納得させるには話すしかないと、大曲は今感じてい
る衝動を種ヶ島に伝える。
「あー・・・何つーか、お前が、特にその魚の部分が、スゲェ美味そうに見えて、ガチで
食いたいって衝動に駆られてんだ。」
「えっ!?」
「だから、今はお前の側にいるわけには・・・」
「食いたいって、比喩じゃなくて文字通りの意味でってこと?」
「ああ。」
それを聞いて、種ヶ島はゾワッと身体の奥が熱くなるのを感じる。
(竜次が俺のこと、本気で食いたいって思っとるってことやんな?何やそれ、メッチャ興
奮する。)
大曲の言葉で、種ヶ島の中にある被食本能のスイッチが入る。
「ホンマに我慢出来なくなったら、俺のこと食べてもええから、一緒にいて欲しい。」
「何言ってんだ。そんなの出来るわけ・・・」
大曲がそう言いかけると、種ヶ島はちゅっと大曲の唇にキスをする。
「三大欲求って、どれかを満たせば他の欲求が和らぐって言うやん?食べたい欲求が強い
んやったら、エッチなことして誤魔化したらええんちゃう?ま、今日はヒトデモードには
なれへんから、最後までは出来ひんのやけど。」
悪戯に笑いながら種ヶ島はそんな提案をする。
「デカ勘弁しろし。」
そう言いながらも試してみる価値はあるかもしれないと、大曲は種ヶ島の提案に乗ること
にした。

先程種ヶ島からしてきたキスより何倍も激しいキスを大曲は種ヶ島に施す。
「んむっ・・・んん・・・」
「ハァ・・・修二・・・」
(確かにちょっと誤魔化される気もするが、直接コイツの味を感じて、逆にそういう気持
ちが強くなってる気もするな。)
種ヶ島の舌を味わいながら、大曲はそんなことを考える。
「はっ・・・んっ・・・ごくん・・」
大曲にキスをしてもらいながら、確かにいつもとは違うことに種ヶ島は気づいていた。
(今日の竜次、唾液がいつもよりメッチャ多いな。俺のこと食べたすぎて、涎が出てまう
って感じなんかな?)
それはそれで嬉しいと、種ヶ島は嬉々として口の中に流れ込んでくるそれを飲み込む。食
べたい衝動に駆られている大曲の唾液を飲むことで、種ヶ島は食べられたい欲求が大きく
なっていくのを感じる。
「ふはっ・・・ハァ・・・どや?気分は?」
唇が離れたので、種ヶ島は大曲にそう尋ねる。激しめのキスで赤く染まっている種ヶ島の
顔を見て、大曲はより種ヶ島を食べたい気分になる。
「・・・逆効果だし。余計に美味そうに見える。」
「はは、さよか。んー、やっぱキス程度じゃアカンか。ほんならこれはどうやろ?竜次、
もうちょいこっちに来て座って。」
海に足をつけるように大曲を座らせると、種ヶ島はパシャっと海の中に入り、大曲の脚の
間に移動する。服で隠れている大曲の熱を出すと、優しくそれに触れる。
「んっ・・・」
「竜次が俺を食う前に、俺が竜次のコレを食べたるわ。」
「チッ、勘弁しろし。」
「んじゃ、いただきます☆」
大曲の気分を少しでも和らげようと、ふざけた調子で種ヶ島はそう言って、大曲の熱を口
に含む。ふざけてはいるものの、していることはそれなりなことなので、大曲のそれを咥
え、種ヶ島の心臓はひどく高鳴っていた。
「くっ・・・」
「んっ・・・んんっ・・・」
(竜次の熱い・・・今日は繋がれへんのに、そういう気分になってまう。)
大曲のモノが口に入っていることに興奮しながら、大曲を気持ちよくさせて、何とか気を
紛らわせてやろうと種ヶ島は懸命に口を動かす。
「ハァ・・・んっ、修二・・・」
「んんっ・・・んっ・・・」
種ヶ島の口内の気持ちよさに酔いしれながら、大曲は海の中の種ヶ島の尾びれに目をやる。
いつの間にか満月は陰で全て覆われ、赤黒いベールを纏い、静かに空に浮かんでいた。海
を照らす明かりはなくなっているにも関わらず、大曲の目にはハッキリとその尾びれが見
えていた。それは海の中で赤く揺らめき、大曲の本能を刺激する。
(もしアレが食えたら・・・)
種ヶ島の魚の部分を食べたい欲求が収まらず、揺らめくそれを口にする想像をしてしまう。
その瞬間、ゾクゾクと身体の奥が痺れるのを感じる。
「うあっ・・・!!」
「んんんっ!!」
種ヶ島を食べることを想像し、大曲は達してしまう。思ってもみないタイミングで放たれ
たため、一瞬むせそうになるが、口の中のそれを種ヶ島は何とか飲み込む。
「んっ・・・ハァ・・・ちょっと急にやったからビックリしてもうた。」
大曲の出したものを残らず飲み込んだ後、種ヶ島は苦笑しながらそう言う。
「ハァ・・・ハァ・・・やっぱ、ダメだ。」
「えっ?」
軽く呼吸を乱しながら、種ヶ島の方を見ないようにしながら大曲は呟く。
「今、お前を食うこと想像してイッちまった。マジで食欲なんだが性欲なんだか分かんね
ーな。」
大曲のその言葉に種ヶ島はひどく興奮し、ドキドキと胸を高鳴らせる。
(そないに俺のこと食べたいんや。そんなやったら、ホンマに食べて欲しい・・・)
大曲の捕食衝動につられるかのように種ヶ島の被食本能は高まる。
「竜次は・・・」
「何だし?」
「竜次は何でそないに俺を食べたい思う気持ち我慢するん?」
「は?そんなの当たり前だろーが。好きな奴食いたいと思って、はい、食べますはおかし
いだろ。」
「俺が嫌がってたり、あからさまに人の部分食べたい言うんやったらそれは分かるで。せ
やけど、竜次が食べたいんは俺のこの部分やろ?」
そう言って、種ヶ島はざばっと陸に上がり、鯛モードの尾びれを大曲の前に晒す。今、食
べたくて仕方がないと思っている部分を目の前に出され、大曲は焦る。
「マジで止めろ!!これでもかなり必死で抑えてるんだぞ!」
「竜次は鳥族やし、その欲求はそないにおかしいことやないと思うで。毛利やってツッキ
ーの蜜を食事として摂ってるやろ?それと同じやで。」
「いや、それとは違うだろ。それはどちらかと言えば、さっきお前が俺のを飲んだのと同
じ感じだし。」
大曲の抵抗感がなかなか弱まらないことに種ヶ島はもどかしくなる。
(ああ、早く竜次に食べられたい。)
「これから俺が言うことは、竜次の欲求に対する許可やなくて、俺からの頼みだし、今一
番して欲しいことや。」
「どういうことだ?」
何が言いたいか分からないと大曲はそう聞き返す。大曲の顔を真剣な表情で見つめ、種ヶ
島は今一番伝えたいことを口にする。
「竜次、俺を食べて。」
「っ!!」
冷静に言っているように見えるが、種ヶ島の顔は興奮に染まり、呼吸は軽く乱れていた。
種ヶ島のその言葉に大曲の捕食衝動は耐えきれないほどに大きくなる。
(そんなこと言われたら、本当に我慢出来なくなちっちまう。いや、でも・・・)
まだギリギリ理性が働いて、ひどく呼吸を乱しながらも大曲はその衝動に耐える。そんな
大曲の様子を見て、種ヶ島はもう一押しだと言葉を続ける。
「俺を食べてまったとしても、竜次は何も悪くないで。俺がそうして欲しいって頼んどる
んやから。せやから、な?たとえ食べてまったとしても、ヒトデモードでちゃんと再生出
来るから心配せんでもええで。」
「ぐっ・・・」
魅力的すぎる種ヶ島の誘いに、大曲の体は勝手に動いてしまう。目の前にある種ヶ島のそ
こが極上のご馳走に見え、意思に反してそこに顔が近づいてしまう。
(ダメだ!もう我慢出来ねぇ!!)
大きく口を開け、大曲は種ヶ島の尾びれの真ん中あたりに噛みつく。
「あんっ・・・!!」
大曲に噛みつかれ、種ヶ島は甘い声を上げる。噛みついてしまったら、もう後戻りは出来
ない。そのまま魚に齧りついて食べるかのように、種ヶ島の鯛の部分を口に含み咀嚼する。
(あっ、マジで竜次に食べられとる。)
その瞬間、大曲に食べられたところから痛みではなく、極上の快感が全身に広がり、種ヶ
島を絶頂へと導く。
「んあっ・・・あああぁっ!!」
本来満たされるはずのない欲求が満たされる恍惚感。種ヶ島がそんな快感に身を投じるの
と同時に、大曲も今までに感じたことのない極致感に達する。
(ヤベェ・・・想像以上に美味すぎる・・・)
種ヶ島の鯛の部分を口に含むと、吸いつくような弾力ととろけるような舌触りを感じ、噛
めば鯛特有の清らかな甘さと芳醇な旨味が溢れ出す。口を離してあらわになった身の部分
は、桜色と白のコントラストが息を飲むほど美しく、まるで光を纏っているかのように透
き通っていた。
「ハァ・・・わりぃ、止められねぇ。」
それほど魅力的な味を持つ種ヶ島のそこを一口食べるだけで終えることなど到底出来ず、
大曲は再びそこへ口をつける。
「んあんっ・・・ええで。ぎょーさん食べて。」
大曲に食べられることは、普段している繋がる行為よりももっと深く完全に一つになれる
行為だと種ヶ島は考えていた。自分の一部が大曲の一部になる幸福感。そんな幸福感に身
も心も震わせながら、大曲にその身を食べられるたびに、種ヶ島は達する。
「はぁっ・・・あっ、竜次っ!!ああぁんっ!!」
「んっ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
「もっと、もっと食べてっ・・・!!」
食べられることを求められ、強い捕食衝動とやみつきになるほどの甘美な味に、大曲は夢
中になって種ヶ島の鯛の部分を食す。
「んっ・・・修二っ・・・!!」
十分すぎるほど自分の中に種ヶ島を取り込み、本能的な欲求が満たされると、大曲も恍惚
としながら深い絶頂を迎えた。

白い光がだんだんと戻っていく満月の下で、ところどころ欠けている尾びれを海に浸けな
がら、種ヶ島はゴロンと横になっていた。
「はあー、ホンマ最高やったわ☆いつもみたいなエッチは出来へんかったけど、それに匹
敵する気持ちよさやったな。」
「何言ってるんだし。いや、本当マジでありえねぇことしたし・・・」
ご機嫌な種ヶ島とは対照的に、捕食衝動が落ち着いてきた大曲は自分のしてしまったこと
に罪悪感を抱き、少ししょんぼりしていた。
「食べられる前にも言うたけど、竜次は何も悪くないからな?全部俺のせいにしてええん
やで?」
「そういうわけにはいかねぇだろうよ。実際ガチで食べちまったのは俺なんだし。」
食い散らかされた種ヶ島の尾びれを見ながら、大曲は大きな溜め息をつく。
「俺のこの部分、あんまり美味くなかった?」
「いや、メチャクチャ美味かった。今まで食ったもんの中で圧倒的1位になるくらいには
美味かったな。今もまだ口の中にその味がちょっと残ってるし。」
「はは、そんなにか。せやったらそんなにしょんぼりせんでもええやん。」
「でもよ・・・」
少しでも大曲の感じている罪悪感を減らしてやりたいと、種ヶ島は大曲の手をぎゅっと握
り、穏やかに笑いながら言葉を紡ぐ。
「俺の一部を食ったっちゅーことは、俺の一部が竜次の一部になるってことやろ?それっ
てホンマすごいことやん。本当の意味で一つになるっちゅーか。俺はそれがメッチャ嬉し
かったで。」
「本当の意味で一つになるか・・・」
「そうなることが嬉しすぎて、竜次に食べられるのメッチャ気持ちよく感じて、何やエッ
チしてる気分やったな。」
「まあ、確かに食うたびにイッてるみてぇな感じだったもんな。」
「せやねん!竜次はどないな気分やった?やっぱ、食べたくないって思いながら食べとっ
たん?」
種ヶ島を食べることに対してギリギリまで抵抗していたために、食べている間もそう思っ
ていてもおかしくないかもしれないと、種ヶ島はそう尋ねる。
「さっきも言ったようにお前のそこ、本当美味かったからな。一度食べたら止められなく
なっちまった。食ってる間は罪悪感よりも圧倒的に多幸感がすごかった。食ってる間の多
幸感ヤバかったのは、お前がさっき言ったことを無意識に感じてたからだろうな。」
「本当の意味で一つになるってヤツ?竜次もそう思ってくれとったんならよかったわ!」
今でこそ若干罪悪感があるようだが、食べている間は多幸感がすごかったということを聞
いて、種ヶ島は嬉しそうな表情になる。そうこうしているうちに、皆既月食は終わりを迎
え、明るい満月が輝き出す。
「あっ・・・」
皆既月食が終わると同時に、種ヶ島の尾びれは人の脚に変わる。種ヶ島の予想していた通
り、ヒトデモードになると、どこも欠けていない状態になっていた。
「脚の一部が欠けてるとかはないみてぇだな。」
「俺の言った通りやろ?たぶんやけど、鯛モードになっても元に戻っとると思うで。」
そう言いながら、種ヶ島は海に飛び込み、鯛モードになってみせる。先程まではあちこち
欠けている状態であったが、今は食べられる前と全く同じ傷一つない綺麗な尾びれになっ
ていた。
「本当に元に戻ってるし。」
「だから言うたやろ?何も心配せんで大丈夫やって。」
信じていないわけではなかったが、元通りになっている種ヶ島の尾びれを見て、大曲は心
からホッとする。その表情を見て、種ヶ島はにっと笑う。
「俺のここ、ちゃんと元通りになっとって安心した?」
「まあな。」
再び陸に上がり、ヒトデモードになると、種ヶ島はすっと大曲の首に腕を回す。
「・・・何だし?」
「竜次は見かけによらず、真面目で優しくて気にしぃやからなー。」
「見かけによらずは余計だし。」
「せやけど俺は、そんな竜次が大好きやで。」
にっこりと微笑みながら、種ヶ島は想いを込めてそう伝える。至近距離でのその表情と愛
情いっぱいのその言葉に大曲の胸はひどくときめく。
(やっぱ好きだ。)
「勘弁しろし。」
そう言いながら、大曲は目の前にある種ヶ島の顎を掴み、想いを込めてその唇にキスをす
る。言葉よりも行動で示してくれる大曲の愛情表現に、種ヶ島はむずむずしながらもキュ
ンキュンしてしまう。そんな大曲にもっと愛されたいと、種ヶ島はほのかに顔を赤らめな
がら口を開く。
「なあ、竜次。」
「何だし?」
「もう一回俺のこと食べてくれへん?」
「は?それはさすがにだろ。」
また何を言い出すんだと、大曲は戸惑うような表情でそう返す。そんな大曲の反応を楽し
みながら、種ヶ島は言葉を続ける。
「今度はヒトデモードで、比喩的な意味の方で。竜次はウミネコモードでもインコモード
でもどっちでもええで☆」
(そういうことかよ。)
種ヶ島の言葉の意味を理解し、大曲はふっと笑う。
「俺に食われながらあんなにイキまくってたのにまだ足りねぇって?」
「っ!!そ、それはそれ、これはこれやもん。」
恥ずかしそうに顔を赤らめながらも、種ヶ島はそういうことをしたいという欲求を隠さな
い。確かに月食中は種ヶ島が鯛モードから変化出来なっかったこともあり、したいと思っ
ていても最後まですることは出来なかった。それならば、今からするのも悪くないと、大
曲は種ヶ島の誘いに乗ることにする。
「ヒトデモードのお前も十分美味そうだし。」
「いくらでも食べてええで!」
「フッ、しゃあねーなあ。今度は違う意味で一つになるか。」
「ええな☆しよ、竜次。」
あからさまな誘いの言葉に大曲は素直にドキッとしてしまう。食べたくなる、食べられた
くなるほどに大好きな相手と交われる歓び。そんな歓びを存分に味わおうと二人は深く抱
き合う。

月食を越えた満月の明るい光が大曲の真っ白な羽を照らす。そんな大曲の腕の中では海の
星である種ヶ島が眩しいほどの笑顔を浮べ、その星を輝かせる。食物連鎖の如く本当の意
味で一つになり、繋がり合うことで一つになる。そんな至福のひとときを二人はもうしば
らく堪能するのであった。

                                END.

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