七夕 ―SideA―

毎年のことだが 今年も空は曇っている
七夕の夜に晴れるということは ほとんどない

そんな星の見えない夜に
お前は笹を飾りたいと言って
俺の部屋の窓辺に 小さな七夕飾りを飾らせた

笹にはいくつかの飾りと二枚の短冊
『もっと強くなりたい!』
お前らしい願い事
ガキみてぇだって笑ったら 素直にお前は怒りやがる

そんなお前の手に握られた
小さく折られた赤い短冊
それが気になって ヒョイと取り上げて読んでみた

『これからもずっと跡部と仲良くできますように』
飾られている短冊より ずっと丁寧な字で書かれている
何でもない願い事だが それがかなり嬉しくて
俺の顔は思わず緩んだ

笹に飾られたもう一つの短冊
わざとドイツ語で書いたそれを
お前はたぶん読むことが出来ない

だから俺は見せてやった 日本語で書いた赤い短冊
お前は顔を真っ赤にして 怒った後で笑いやがる

一年に一度の七夕の夜
俺達はきっと 織姫と彦星に負けねぇくらい
お互いのことを思いあっている

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