岳人×忍足
バレンタインに用意したプレゼントを渡すため、岳人と忍足はデートがてら公園にやって
きた。
「商店街、結構歩き回ったな。」
「せやなぁ。まあ、岳人が行きたい言うてた場所も行けたし、よかったんちゃう?」
「なっ!聞いてた通りなかなかよかったぜ!」
「とりあえず、一旦ここで休んどこか。」
緑の多い公園のベンチに座り、二人は一旦休むことにする。
「そうだ、バレンタインのときに用意したプレゼント、今渡すな。」
「ああ、俺も持ってきたで。」
鞄の中からプレゼントを出すと、岳人はそれを忍足に手渡す。
「バレンタインの日はチョコありがとな。ホワイトデーは別に用意するから、これはバレ
ンタインのプレゼントってことで受け取ってくれ。」
「おおきにな。開けてみてもええ?」
「大したもんじゃないけど、役には立つと思うぜ。」
「役に立つ?そないなプレゼントなんやな。」
どんなプレゼントだろうと、わくわくとした気分で忍足は包みを開ける。
「これはハンカチ?」
「いや、メガネ拭きだぜ。俺はメガネかけてないから、ちゃんとした使い心地は分からね
ぇけど、メガネかけてるやつらの評判はメチャクチャよかったぜ。」
「へぇ、なるほどな。ちょっと使うてみてもええ?」
「もちろんいいぜ。使ったみた感想も聞かせて欲しいし。」
袋からメガネ拭きを出すと、忍足はメガネを外し、わざとレンズに触れた後、それで拭い
てみる。
「ああ、確かにこれはええな。拭きやすいし、メッチャ汚れもよく落ちるわ。」
「あと、曇りづらくもなるらしいぜ。」
「そりゃええな。有り難いわ。メッチャええプレゼントやん。おおきに。」
伊達眼鏡ではあるが、常にメガネをかけている忍足にとって、そのプレゼントは非常に有
り難いものであった。
「気に入ってもらえたみたいでよかったぜ。結構迷ったけど、それにして正解だったな。」
「有り難く使わせてもらうで。ほんなら、今度は俺からのプレゼントやな。」
岳人からもらったプレゼントを鞄にしまうと、忍足は自分が用意したプレゼントを岳人に
渡す。
「一応、岳人が好きそうなもん選んだつもりやけど・・・」
「へぇ、そりゃ楽しみだ。」
少し大きめの箱に入ったそれ岳人は開けてみる。中には何枚かの羽根が垂れ下がった金属
の円の中心にサンキャッチャーがついている飾りが入っていた。
「うわあ、超キレイ!ちょっとドリームキャッチャーみあるけど、サンキャッチャーだよ
な?」
「せやな。その羽根もキレイやし、こういうんも好きかなあ思て選んでみたんやけど、ど
うやろ?」
「好きだぜ!超俺好みのプレゼントで、すっげー嬉しい!」
本当に嬉しいようで岳人は満面の笑みを浮かべて忍足を見る。あまりに嬉しそうにしてい
るので、忍足もつられて笑顔になる。
「ちょっと出してみてもいいか?」
「ええんちゃう?」
「ならちょっとだけ・・・」
羽根のついたサンキャッチャーを箱から出すと、岳人はそれを太陽に向けてかざしてみる。
太陽の光が当たると、円の中心のボールがその光を反射し、地面にプリズムを映し出す。
「おー、結構キレイにたくさん出るな。」
「ホンマやな。メッチャキレイやん。」
「へへ、合宿所に帰ったら、部屋の窓のとこにつけよう。」
「ジローなんかはビックリするやろな。」
「だな!」
くるりと忍足の方を振り返ると、持っていたサンキャッチャーの光が忍足を包む。虹色の
光の粒を纏った忍足を見て、岳人は思わず見惚れてしまう。
「急に黙ってどないしたん?」
「あ、いや、サンキャッチャーの光が侑士に当たっててさ・・・侑士がすげぇキレイだな
って思って。」
「何や俺のことキレイって言われてるみたいで、ちょい照れるわ。キレイなのは当たっと
る光やのに。」
「いや、キレイなのは光じゃなくて侑士の方。」
きっぱりとそう言う放つ岳人の言葉に忍足は頬を赤く染める。
「そないに褒めても何も出ぇへんで。」
「別にそういうつもりじゃねーし。なあ、ちょっとだけでいいから、眼鏡外して。」
岳人に言われ、少し恥ずかしいと思いながらも、忍足はメガネを外す。サンキャッチャー
を少し高く上げると、虹色の光が忍足の素顔を照らす。
(ああ、何か・・・)
吸い込まれるかのように、岳人は忍足の唇にキスをする。まさかこんなところでキスされ
るとは思っていなかったので、忍足はいつものポーカーフェイスを崩して慌てたような素
振りを見せる。
「なっ、が、岳人っ!こないな場所でそれは・・・」
「へっ?あっ!いや、今のはその、違くて・・・何ていうか・・・」
岳人自身もキスするつもりなど一切なかったので、忍足と同じくらいかそれ以上に動揺す
る。
「絶対コレのせいだ。これの光が当たってる侑士が本当キレイで可愛くて、気づいたらキ
スしてた。」
「どないやねん。まあ、別に嫌やったわけやないけど・・・そりゃビックリはしたけどな。」
メガネをかけ直しながら忍足はそんなことを言う。そんな忍足の言葉に岳人はドキドキし
てしまう。
「これはとりあえずしまっとこう。もうちょっと休んだら、またどっか移動しようぜ。」
「ああ。それがええな。」
意図せずキスしてしまったことで、二人の鼓動はこの上なく速くなっていた。想定外のド
キドキ感を感じながらも、それが少し嬉しくて、どちらも顔が緩んでいた。